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離婚に伴うお金の問題とは?金銭トラブルを防ぐ方法と請求のポイント

離婚を考えたとき、多くの人が「お金の問題」に直面します。

離婚時のお金の問題である、財産分与、婚姻費用、養育費、慰謝料といった金銭に関わる話し合いは、離婚をめぐる手続きの中でもトラブルが起こりやすいテーマです。借金や金銭感覚の違いなど、「お金が原因で離婚したい」というように、離婚理由に関わることもあります。

夫婦の離婚は、気持ちや感情の争いが大きくなりがちですが、現実問題として「離婚とお金」の問題を解決しなければ、納得のいく離婚にはなりません。法律知識のないまま進めると、トラブルになったり不利な条件に合意したりして、後悔する結果を招いてしまいます。離婚時に金銭を請求できる権利について理解しておかないと、損をすることもあります。

今回は、離婚に伴うお金の問題について具体的に解説します。離婚を準備する際のチェックリストとしてもご活用ください。

この解説のポイント
  • 離婚時は、現実問題としてお金のトラブルが多発する
  • 離婚に伴うお金の問題のうち、財産分与、慰謝料、養育費が特に重要
  • 離婚とお金のトラブルを回避するには、法律知識と裁判例に基づいて進める

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

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離婚に伴うお金の問題とは

喧嘩する男女

離婚には、感情的な問題だけでなく、財産や金銭に関する現実的な課題が数多く存在します。はじめに「離婚とお金」についての具体的な問題をまとめ、それぞれのポイントを解説します。

離婚時に生じる主なお金の問題(一覧)

離婚時に生じるお金の問題には、次のものがあります。

財産分与

財産分与は、共同生活中に形成された財産(共有財産)を、離婚時に公平に分与する手続きです。対象は預貯金や不動産、車など、夫婦が協力して築いた財産であり、婚姻前の個人資産や相続した財産は対象外です。分与割合は2分の1ずつが原則ですが、特別な事情があるときは例外もあります。

専業主婦(主夫)にとって、離婚時に検討すべき「お金の問題」の中でも特に大きな割合を占めることが多いです。

財産分与の問題を解決するポイント」参照

住宅ローンや借金の分配

共有名義の住宅やローンがあると、その扱いが離婚時に大きなトラブルとなりがちです。

夫婦の生活のためにした借金は、財産分与の中で引き継がれるため、離婚したからといって支払いを免れることはできません。ローンを引き継ぐ、売却して清算するといった複数の選択肢がありますが、自宅不動産に一方が住み続けることを希望する場合、感情的な対立があると解決が難航することが多いです。

慰謝料

離婚原因が不貞やDV・モラハラといった違法行為にあるとき、慰謝料を請求することができます。慰謝料は、夫婦の一方の不法行為によって他方が負った精神的損害を回復するために請求する金銭です民法709条、710条)。離婚時の慰謝料は、数十万円〜300万円程度が相場の目安ですが、行為の悪質性や損害の程度によっても増減します。

慰謝料請求には証拠が必要なので、できるだけ多額の慰謝料を請求したいなら、事前に記録や資料を集めておくことが大切です。

慰謝料の問題を解決するポイント」参照

婚姻費用・養育費

養育費は、親権を取得した親が他方に対して、未成年の子供の養育に要する費用の分担を求めることです。離婚して夫婦関係がなくなっても、親子の関係はなくなりません。離婚時に親権を取得しなかった親にも、子供の扶養義務は残り続けます。

子供がいる場合、養育費の取り決めは非常に重要です。金額は、協議や調停・訴訟で決めますが、裁判所が公表する「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて定めるのが通例です。支払いの取り決めを曖昧にして離婚してしまうと、後にトラブルとなる危険があります。

なお、離婚前にも、生活費の分担として婚姻費用の請求が可能です。

婚姻費用の問題を解決するポイント」「養育費の問題を解決するポイント」参照

年金分割

年金分割とは、離婚後に、婚姻期間中の厚生年金や共済年金の加入歴を分割する制度です。分割割合は原則として50%とされ、年金事務所での手続きが必要です。年金分割を怠ると、将来の年金額に大きな影響が生じるため注意が必要です。

年金分割の問題を解決するポイント」参照

協議離婚の進め方」の解説

お金が原因で離婚することもある

「離婚時にお金でもめる」というだけでなく、離婚理由が「お金の問題」である夫婦も珍しくありません。お金が原因で離婚するのは、例えば次のケースです。

金銭感覚の違い

夫婦間の金銭感覚のズレが、価値観の違いにつながって離婚原因となる例があります。一方から見ると「浪費癖がある」、逆に「過剰な節約をしている」と思えると不満を引き起こし、次第に夫婦関係が悪化していくケースです。

借金問題

夫や妻が、他方に隠して借金をしていたことが発覚すると、夫婦の信頼関係は喪失してしまいます。特に、ギャンブルや風俗通い、ブランド品のショッピングなど、一時的な欲望を満たすための借金だと、修復が困難になる家庭も多いです。

借金を理由とする離婚」の解説

収入格差による不満

夫婦に大きな収入格差があることが、夫婦仲を悪くするケースもあります。例えば、一方が専業主婦(主夫)で、他方の収入に頼っているとき、「収入をどちらが管理するか」「娯楽や趣味にいくらのお金を使うか」といった点で不満が積もることがあります。

家庭における金銭的な優先順位の違い

子供の教育費や住宅ローン、一方の親族への援助などといったお金の使い方について、夫婦間で優先順位が異なると衝突します。

法定離婚事由」の解説

離婚時にお金の問題が起こる理由

離婚時は、特に「お金の問題」が起こりやすいタイミングです。離婚の際にお金について揉めやすい背景には、いくつかの理由があります。

そもそも「離婚」は、夫婦間の感情的な対立が激化しやすい場面です。これまでの夫婦生活で我慢してきた不満が噴出し、言い争いになり、冷静な解決は困難になってしまうこともしばしばあります。そして、「離婚とお金」の問題について、夫婦の法律知識が不足していると、調停や訴訟に発展した際の解決の相場がわからず、混乱してトラブルを増幅させてしまいます。

したがって、離婚時に起こるお金の問題を防ぐには、法律知識を知り、どのような解決が妥当なのかを知ることが大切です。これによりトラブルを減らすと共に、知らないうちに不利な解決を受け入れてしまう事態を防ぐこともできます。

離婚までの流れ」の解説

財産分与の問題を解決するポイント

積み木

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産(共有財産)を、離婚時に分配することです。

結婚後に貯めた預金や自宅不動産の分配などがよくトラブルとなります。財産分与の請求は離婚後2年以内に行わなければならず、期間を過ぎると権利行使できなくなるので注意が必要です。

財産分与の種類

財産分与には、大きく分けて以下の3つの種類があります。

  1. 精算的財産分与
    婚姻中に築いた共有財産の精算を目的として実施される、最も一般的な財産分与。
  2. 扶養的財産分与
    離婚後に一方の生活が困難になるおそれがある場合に、生活を補助する目的で行われる財産分与。夫や妻が病気や障害で働くことができないケースや、早期離婚を実現したいケースなどで相手に対する配慮として用いられます。
  3. 慰謝料的財産分与
    慰謝料の意味合いのある財産分与。不貞やDVなど、相手の不法行為が原因で離婚する際に支払われることがあります。例えば、財産分与について一定の増額をする代わりに慰謝料を求めないケースなどで活用されます。

離婚時の財産分与」の解説

財産分与の決め方と手順

財産分与は、まず夫婦間の話し合いで合意を目指します。協議で決めるなら法律上のルールには縛られませんが、合意が得られない場合、離婚調停や離婚裁判で決着を図ります。この際、裁判実務では、財産分与の決め方には一定のルールがあります。

財産分与の手順は、次のように進めます。

STEP
財産の調査を行う

分与の対象となる財産の調査を行います。隠し財産がないかを確認するため、相手の資産の情報について開示を求めます。

財産の所在が不明な場合や、悪質な財産隠しが疑われる場合は、調停や訴訟に進み、裁判所を通じた調査嘱託によって法的に財産開示を求めることも可能です。

STEP
対象となる財産を決める

財産分与の対象となるものは「共有財産」と呼ばれ、結婚後に夫婦で協力して築いた財産のことです。対象となる財産は、例えば次のものがあります。

  • 結婚した後で貯めた預貯金
  • 購入した自宅不動産など

これに対して、対象外であるものを「特有財産」と呼びます。対象とならない財産には、例えば次のものがあります。

  • 結婚前から保有していた財産
  • 親からの贈与や相続で得た財産
  • 別居後に得た収入や資産

財産の名義によらずに判断されるので、夫・妻の名義の財産だけでなく、子供名義であったり、経営する会社や親族名義に移し替えられていたりする財産も対象となり得ます。

STEP
分配割合を決定する

共有財産は2分の1ずつ分けるのが原則です。ただし、例外的に、貢献度によって異なる割合で分けることもあります。専業主婦(主夫)の貢献度は、家事労働を通じて評価され、通常は対等に扱われます。

住宅ローンと財産分与

財産分与では、「負の財産」である借金も分与されます。離婚時に考えておくべきお金の問題で、特に将来設計に影響するのが「住宅ローン」の扱いです。住宅ローンを含む財産分与は複雑なので、次のポイントに注意して検討してください。

  • 離婚後にどちらが家に住み続けるのか
  • 離婚後に売却するかどうか
  • ローンの契約名義を変更できるか
  • 残債がある場合、誰がローンの支払いを引き継ぐか
  • 連帯保証人を外すことができるか

オーバーローン(不動産価値がローン残高を下回る場合)のケースでは、家の売却や借金の清算において支払いが生じるため、夫婦間で揉めやすくなります。

慰謝料の問題を解決するポイント

離婚における慰謝料は、離婚の原因となった出来事によって精神的苦痛を受けた人が、相手に対してその補填を求める損害賠償のことです。不法行為(民法709条)に基づいて請求するので、慰謝料が認められるには、相手が違法な行為をし、それによって損害が生じたことが必要です。

慰謝料を請求できるケース

離婚時に、慰謝料請求が認められる典型的なケースは、以下の通りです。

  • 不貞行為(浮気や不倫)
    配偶者が浮気や不倫をしたことによる精神的苦痛を理由に、慰謝料を請求できます。
  • DV・モラハラ
    継続的な暴力や心理的虐待があった場合も慰謝料の対象です。
  • 悪意の遺棄
    配偶者が生活費を渡さない、家を出て家庭生活を放棄するなどの行為についても、慰謝料を請求できる場合があります。

これらの行為は、民法770条に定められた法定離婚事由に該当するので、裁判で離婚することができると共に、不法行為としても相当の違法性があると考えられるからです。一方で、性格の不一致や価値観の相違といった理由では違法性が乏しく、慰謝料請求は認められません。

慰謝料は離婚しない場合でも請求可能ですが、精神的苦痛が小さく評価されるため、金額が低くなる傾向にあります。

慰謝料の相場

離婚に伴う慰謝料請求の典型例である「不貞慰謝料」では、その相場は100万円〜300万円が目安となります。その他の有責行為についても、侵害された権利の重大さ、侵害行為の悪質さ、責任の程度などによって、一定の慰謝料請求をすることができます。

  • 不貞行為(不倫・浮気)
    相場は100万円〜300万円程度。ただし、婚姻期間が長い、子供がいるといった事情があると、増額される傾向にあります。
  • DV(家庭内暴力)
    不倫と同じく、100万円〜300万円が相場。暴力の頻度や内容が重い場合には増額されることもあります。
  • モラハラ
    立証が難しい場合が多く、50万円〜100万円程度など、相対的に低額に留まることが多いです。

ただし、上記はあくまで目安であり、個別事情によって変動します。慰謝料を少しでも増額したい場合、相手の行為の悪質性や精神的苦痛の大きさを客観的に証明するのには、写真や音声記録、メッセージの履歴や診断書などの証拠が有効となります。

慰謝料請求の注意点

慰謝料を請求する際は、離婚後3年以内に手続きを行うよう注意してください。

不法行為の時効は原則として「損害及び加害者を知った時から3年間」(生命又は身体を害する不法行為は5年間)であり、この期間を過ぎると請求することができなくなるからです。

また、調停や訴訟で慰謝料を争うときは、証拠が重視されるので、事前に必要な資料を収集しておかなければなりません。慰謝料を請求するケースは揉める可能性が高いので、弁護士に相談して、より有利な条件で解決できるようサポートを求めましょう。

婚姻費用の問題を解決するポイント

お金

婚姻費用とは、夫婦である間、互いの生活に必要となる費用の分担のことを指し、略して「婚費」と呼びます。その内容は生活費全般であり、例えば、家賃や水道光熱費、食費、日用品費、子供の教育費や医療費などが含まれます。

夫婦の別居中も、婚姻関係が続く限り、互いに扶助義務があります。そのため、収入の多い方が少ない方に生活費を負担する義務を負い、この義務をもとに婚姻費用分担請求が行われます。

婚姻費用を請求できるケース

婚姻費用を請求できる具体的なケースとして、以下の状況が挙げられます。

  • 別居中の夫婦
    収入が多い方が少ない方に生活費を渡していない場合。別居によって生活拠点が分かれた際、収入の少ない方から婚姻費用の分担を請求されるケースが典型例です。
  • 同居中の夫婦
    たとえ同居していても、生活費の負担が収入に応じたものとなっていない場合には、婚姻費用を請求することが可能です。

ただし、別居の原因が、婚姻費用を請求する側にある場合には、請求が認められないことがあります。例えば、不貞やDVをした配偶者が、勝手に家を出て別居したとき、婚姻費用の請求が認められないリスクがあります。

別居中の生活費の相場」「同居中の婚姻費用」の解説

婚姻費用の決め方と計算方法

婚姻費用は、収入の低い方(権利者)が、収入の高い方(義務者)に対して請求するもので、「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて決めるのが通例です。算定表によれば、婚姻費用の金額は、夫婦の収入と子供の年齢・人数によって算出されます。

まずは夫婦間の協議で合意を目指しますが、決裂する場合は婚姻費用分担請求調停を申し立てます。この調停は、離婚調停と同時に申し立てることができ、その場合は生活の安定を担う婚費調停から審理されます。なお、調停でも合意できないときは審判に移行し、家庭裁判所が金額を決定します。この際も、算定表に基づいた金額が原則となります。

なお、学費が高額である、子供に障害や難病があるなど、特殊な事情を考慮して、例外的に算定表よりも高額な婚姻費用が決定されることもあります。

婚姻費用分担請求の注意点

婚姻費用は、請求時まで遡って未払い分を清算するのが家庭裁判所の実務的な扱いです。そのため、任意に払ってもらえないときは、早めに調停を申し立てておくことが重要です。請求が遅れると支払われない期間が長引き、経済的な負担が増してしまうからです。

更に、婚姻費用には「相手に経済的負担を生じさせることで離婚を前向きに考えさせる」という副次的な効果もあります。相手が離婚を拒否しているとき、婚姻費用の請求は、戦略的な観点からも非常に重要な意味があります。

養育費の問題を解決するポイント

養育費とは、離婚後も親としての扶養義務に基づき、子を監護しない親が他方に対して支払う、子供の生活に必要な費用のことです。具体的には、子供の生活費や教育費、医療費、小遣いや交際費など、自立までに必要となる費用が含まれます。

養育費は、子供の将来を支える重要な役割があり、離婚時に必ず取り決めるべきです。

養育費を請求できる理由

離婚後に親権や監護権を持たなくても、親である以上、扶養義務は継続します。

そのため、監護親は非監護親に対して養育費を請求することができます。養育費は親の義務であり、子供にとっては権利です。「夫から妻に対して支払われる」というイメージもありますが、監護親が父親(夫)の場合には、妻親(母)に対して養育費を請求することができます。

養育費の金額と支払い期間

養育費の金額は、「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて、夫婦の年収、子供の人数と年齢によって決定されるのが通例です。婚姻費用と同じ流れで、話し合いで解決できないときは調停を申し立てることとなります(調停で合意できない場合、離婚前の養育費請求については離婚裁判、離婚後の養育費請求については審判で決定されます)。

養育費の支払い期間は、原則として子供の扶養が必要なくなる時点までとするのが一般的で、成年(満18歳)に達するまでや、大学卒業まで(22歳頃)とする例が多いです。離婚時に子が幼い場合、進路が未定であることがほとんどです。そのため、夫婦間で取り決めを行い、後から必要に応じて再調整できる旨の条項を入れることもあります。

養育費未払いのリスクと対策

養育費について取り決めをしてもその8割は将来的に未払いになってしまっているという統計がある通り、養育費が未払いとなるリスクは非常に高いです。支払われなくなったときに強制執行(財産の差押え)を可能とするために、協議離婚するときは、離婚協議書を公正証書化する方法が有効です。

未払いとなった場合、公正証書に基づいて、速やかに法的な措置を講じる必要があります。

離婚協議書を公正証書にする方法」の解説

年金分割の問題を解決するポイント

年金分割は、離婚時に、婚姻期間中の厚生年金や共済年金の納付実績を夫婦間で調整する制度です。主に、厚生年金の納付の少なかった配偶者の老後の生活を保障するためのものです。

例えば、専業主婦で夫の扶養に入っていたとき、離婚後に全く調整がないと、結婚していた場合に比べて、妻の将来もらえる年金が少なくなってしまいます。婚姻期間中に夫の支払った厚生年金保険料は、夫婦の協力によって払われていることを考えると、公平の観点から調整が必要です。

なお、年金分割は、離婚から2年以内に請求する必要があるため注意を要します。

年金分割の対象となる年金

年金分割の対象は、日本の年金制度の「2階部分」に相当する厚生年金や共済年金のみです。「1階部分」の国民年金や、「3階部分」の企業年金は対象外です。そのため、サラリーマンなどの給与所得者の配偶者は年金分割を利用できますが、自営業者の夫婦のように、厚生年金に加入していない場合には適用されません。

また、分割の対象はあくまで婚姻期間中の年金に限られるので、結婚前や離婚後に納付した年金については分割の対象外です。

年金分割の種類と割合

年金分割には、合意分割と3号分割の2種類があります。年金分割をする場合、いずれか、もしくは双方の併用により行います。

合意分割

夫婦間の話し合いで分割割合を決定する制度です。

最大2分の1まで分割が可能ですが、離婚に向けた協議の中で柔軟に割合を定めることができます。3号分割と異なり、2008年4月以前の年金にも適用されます。なお、合意が得られない場合、裁判所において、双方の年金額や婚姻期間中の貢献度などを考慮して分割割合が決定されます。

3号分割

夫婦の一方が第3号被保険者(専業主婦・主夫や扶養内で働くパートタイマーなど)の場合に適用される制度で、2008年4月以降の厚生年金が対象となります。夫婦の合意は不要で、手続きをすれば自動的に2分の1ずつに分割されます。

離婚後もお金の問題に気をつけるべき

注意点

次に、離婚後にも残るお金の問題について、注意点を解説しておきます。

離婚後の生活を安定させる金銭を得るために、支払いをしない相手に対する強制執行や、行政の支援の活用などを検討してください。離婚後のトラブルも、法的手段で解決することができます。

強制執行(財産の差押え)

離婚時に、お金の問題について漏れなく合意しても、離婚後に履行させるには、将来の支払いを確実なものとする準備が必要です。具体的には、離婚条件となった財産分与、慰謝料や養育費が約束通り支払われなかったとき、以下の債務名義があれば、強制執行をすることができます。

  • 協議離婚の場合
    離婚協議書(強制執行認諾文言付きの公正証書にしたもの)
  • 調停離婚の場合
    調停調書
  • 裁判離婚の場合
    確定した判決書

特に養育費は、離婚時に一括で支払われるものではなく、将来にわたって継続的に発生するため、未払いのリスクを防ぐための慎重な準備が必要となります。養育費の未払いが発生したら、真っ先に給与の差押えを検討してください。養育費による給与差押えは、通常の債権と異なり、給与の2分の1まで差押え可能(通常は4分の1まで)なので、不履行に対する強力な対抗策となります。

養育費の強制執行」の解説

離婚後の行政による支援制度

離婚後のお金の問題を考えるとき、将来の収入と支出を予想して生活設計を立てるために、行政による公的支援も活用しましょう。特に、離婚後に母子家庭となるシングルマザーは、ひとり親世帯の生活安定を目的とする「児童扶養手当」を受給することが重要です。

なお、養育費を受け取り、様々な公的支援を活用してもなお生活が立ち行かないときは、生活保護の利用も検討してください。

離婚時の金銭トラブルを防ぐ方法

離婚とお金の問題の重要性を理解したところで、最後に、離婚時の金銭トラブルを防ぐ方法と、注意すべきポイントについて解説します。

事前に準備して計画的に行動する

離婚時にお金のことで悩まぬよう、早めに準備して計画的に行動しましょう。

離婚後の生活を安定されるには、離婚前から生活設計をしっかり考える必要があります。離婚後の収入と支出を具体的に書き出し、必要な資金や相手に請求すべき金銭、親の援助などを踏まえて計画を立てておきましょう。専業主婦(主夫)だった人は、再就職の準備や公的支援の活用なども視野に入れて動かなければなりません。

離婚時に請求できるお金の中でも、財産分与が大きな割合を占めることが多いため、損しないよう夫婦の共有財産を把握しておくべきです。預貯金、不動産、車といった資産、住宅ローンやカードローンなどの負債をリストアップし、証拠となる資料を集めておいてください。

離婚協議書が無効になる場合」の解説

離婚までにかかるお金も予想しておく

離婚時のお金のトラブルだけでなく、離婚成立までに必要な費用も考慮しましょう。事前に予想しておくことで予定外の支出を抑えることができます。

別居にかかる費用

離婚を進める過程で別居を始めるケースは少なくありません。

自分が家を出る側は特に、別居や新生活にかかる費用を事前に計算しておく必要があります。具体的には、以下の費用を見積もり、計画に組み込みましょう。

  • 引越し費用
  • 転居先の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料)
  • 別居中の家賃
  • 家具・家電の購入費

離婚協議の期間に応じて増減する費用もあるので、離婚成立までに時間に余裕を持って準備するべきです。

離婚前の別居の注意点」の解説

離婚手続きにかかる費用

離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。

  • 協議離婚の費用
    夫婦間で話し合いが成立した場合、離婚届を提出するだけで済みます。ただし、離婚協議書を作成し、公正証書化することで未払いのリスクを防ぐには、作成費用として請求額に応じて5,000円〜数万円の費用がかかります。
  • 調停離婚の費用
    話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で離婚調停を行うにあたり、申立手数料(収入印紙代)1,200円がかかります。
  • 裁判離婚の費用
    調停で解決しない場合、離婚裁判(離婚訴訟)を提起するには少なくとも1万3,000円の申立手数料(収入印紙代)を要します。争点を追加したり金銭請求をしたりすると、手数料が追加でかかります(手数料額早見表)。

離婚裁判の費用の相場」の解説

弁護士費用

離婚条件の交渉が難航する場合、弁護士に依頼することで、法律に基づいた有利な解決が期待できます。弁護士費用の目安は、次の通りです(ただし、争点の数や業務の難易度によって異なるので、あくまで相場とお考えください)。

  • 協議離婚の弁護士費用:60万円〜80万円
  • 離婚調停の弁護士費用:80万円〜100万円
  • 離婚裁判の弁護士費用:100万円〜120万円

弁護士費用は安くないものの、財産分与や養育費、慰謝料といったお金のトラブルについて有利に解決できるなら、費用対効果で考えて、サポートを依頼するのがお勧めです。

離婚の弁護士費用の相場」の解説

弁護士を窓口にして冷静に話し合う

離婚時の金銭トラブルを防ぐには、専門家を活用するのが効果的です。

感情的な対立が激しいと、結果的に金銭トラブルも拡大してしまうので、弁護士や調停委員を交えて、冷静に話し合いを進めるべきです。調停や訴訟では、法律や家庭裁判所の実務に基づいて、「離婚とお金」の問題について一定の相場感が形成されており、スムーズな解決が期待できます。合意した内容を離婚協議書にしたり、公正証書化したりするのにも、弁護士が役に立ちます。

離婚に伴う金銭問題が複雑なケースは、適切な専門家を頼る必要があります。

  • 弁護士
    離婚時の金銭請求についての法的主張のサポート、協議や調停、訴訟の代理人の役割。
  • 司法書士
    財産分与時の不動産の名義変更などを支援する役割。
  • ファイナンシャルプランナー
    離婚後の生活設計や資産運用のアドバイス。

金銭的な余裕がなくて適切な専門家に相談できないときは、法テラスや自治体の無料相談で弁護士にアドバイスをもらうのもお勧めです。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

まとめ

今回は、離婚に伴うお金の問題について注意すべきポイントを解説しました。

離婚に伴うお金の問題は、財産分与や養育費、慰謝料、借金の分配など多岐にわたり、将来の生活に直結する重要な課題です。夫婦生活を長く続けるほど、いざ離婚したときに請求すべき金額は増えることが多く、その分だけ感情的な対立が起こりやすくなり、トラブルが加速します。

「離婚すると将来お金に困るのではないか」という不安が、離婚を決断する支障とならないよう、離婚に伴う重要なお金の問題についてよく理解しましょう。離婚時の金銭トラブルを回避し、スムーズに解決するには、事前に正しい情報を収集し、冷静に話し合うことが大切です。

財産分与や養育費といった重要な金銭の取り決めについて、後からトラブルとなることを防ぐために、弁護士による専門的なアドバイスを受けて進めるのが安心です。

この解説のポイント
  • 離婚時は、現実問題としてお金のトラブルが多発する
  • 離婚に伴うお金の問題のうち、財産分与、慰謝料、養育費が特に重要
  • 離婚とお金のトラブルを回避するには、法律知識と裁判例に基づいて進める

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