離婚・男女問題

財産分与の割合の「2分の1ルール」(原則)と修正の裁判例(例外)

2021年6月12日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

離婚のとき、婚姻期間中に協力して貯めた財産を分与する手続きが「財産分与」ですが、この財産分与の割合には「2分の1ルール」という有名な原則があります。

つまり、家庭裁判所の実務において、財産分与の割合は、夫婦共有財産を2分の1ずつ(半分ずつ)にする、という原則です。

一方でこの原則には例外があります。つまり、特殊な事情があるときには「2分の1ルール」が修正され、例外的に、2分の1より大きい(もしくは小さい)財産を分け与えるべきとされる場合があるということです。財産分与について家庭の個別事情から修正を求めるとき、このような例外的な事情が認められた事例を知っておく必要があります。

そこで今回は、

  • 財産分与の割合の「2分の1ルール」の内容とその理由
  • 「2分の1ルール」を修正すべき事情
  • 「2分の1ルール」の例外が認められた裁判例

といった財産分与と離婚に関する諸問題について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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財産分与の割合の「2分の1ルール」とは(原則)

財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、他方に対して財産の分与をする手続きのことです(民法768条1項)。例えば、「妻が専業主婦、夫の収入で暮らしていた」という家計の場合には、夫が婚姻期間中に貯めた貯金を、妻に半分を分け与えることとなります。

財産分与には、夫婦が婚姻中に協力して築き上げた財産を分けるという「清算的財産分与」という性質があります。このほか、離婚後の弱者救済という「扶養的財産分与」、離婚原因に対する有責性の補償という「慰謝料的財産分与」という性質をあわせもつ場合もあります。

このうち「清算的財産分与」について、夫婦当事者間の公平を意識して、家庭裁判所の実務で適用されているのが「2分の1ルール」です。

参考解説

2分の1ルールの計算方法

財産分与について、夫婦双方の財産形成への寄与度を考慮して、公平な分配となるように検討されます。このとき、分与割合は原則として2分の1とされます。

2分の1ルールに基づくと、分与すべき財産の額は次のように計算することができます。

財産分与額=共有財産÷2-権利者名義の財産

このとき「財産」の中には、積極財産(プラスの財産)だけでなく消極財産(マイナスの財産)も含まれることに注意が必要です。積極財産(プラスの財産)とは現金・預貯金・不動産などに代表される財産的価値のあるもののことをいい、消極財産(マイナスの財産)とは住宅ローンや借金などのことです。

積極財産(プラスの財産)が消極財産(マイナスの財産)よりも少ないときには債務超過となるため、財産分与はできません(清算的財産分与はできませんが、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与が問題となることはあります)。

参考解説

2分の1ルールが原則となる理由

財産分与の際の分与割合は、財産形成に対する夫婦双方の寄与度を考慮し、公平になるように決められており、家庭裁判所の実務では2分の1ルールが原則となっています。

このことは、妻側が専業主婦で無収入の場合であっても、共働きで双方に収入がある場合であっても、原則としては変わりがありません。

公平を加味する場合には、例えば専業主婦の場合には、その家事労働による「内助の功」が財産形成にどれほど貢献しているかということを明確に算定することは困難ですが、だからこそ、妻の貢献が夫に劣るものではないということを考え、公平に2分の1と考えられているわけです。

かつては女性蔑視的な考え方から、「夫が仕事をし、妻は専業主婦」という場合には妻の家事労働の価値を軽視し、財産分与の割合を2~3割とすることもありましたが、現在はこのような考え方は修正されています。

離婚原因は影響しない

夫婦の一方に離婚原因の存在する場合、例えば、夫婦の一方が不倫・浮気をしたことを原因として夫婦関係が破綻した場合には、この2分の1ルールについて不倫をされた側がとても不公平を感じることがあります。

しかし、実務上、離婚原因がどちらにあるか、また、その責任がどれほど大きいかという点は、慰謝料請求において考慮すべきこととされ、財産分与には影響しないとするのが原則です。

参考解説

財産分与割合「2分の1ルール」が修正された裁判例(例外)

財産分与のときの割合が2分の1とすることが原則となっているのは、それが夫婦間の公平にかなうと考えられているからです。逆にいえば、2分の1とすることが公平でないと考えられるような特殊な事情があるときには、分与割合が修正されることがあります。

2分の1とすることが公平でないと考えられるような場合とは、例えば、財産形成について配偶者一方の寄与が大きい場合や、夫婦間の所得差が大きい場合といったケースです。

ここでは、財産分与割合について、例外的に「2分の1ルール」が修正された裁判例を紹介します。

財産分与の割合は「2分の1ルール」が原則的な運用となっていることから、修正した分与割合にしてほしいと考える場合には、そのように主張する側が、特別な事情について主張し、立証する必要があります。

また、下記に紹介する裁判例はいずれも、個別具体的な事例に対する解決であり、類似のケースで参考にはなりますが、一般化できるわけではありません。

財産形成に特有財産が寄与したことを理由に修正した裁判例

財産分与の対象となるのは夫婦の共有財産であり、特有財産は対象となりません。そして、共有財産であったとしても、その財産形成に特有財産が寄与したという場合には、その共有財産の分与割合について「2分の1ルール」を修正した裁判例があります。

東京高裁平成7年4月27日判決では、夫婦共有財産であるゴルフ会員権の購入代金の大部分が、夫の所持していた株式など特有財産の売却によるものであるという事情から、そのゴルフ会員権が分与の対象とはなるものの、分与の割合は3割6分に留まるものと判断しました。

その他、この裁判例では、別居後の生活状況や経済的状況などについても考慮要素とされています。

この事例では、夫婦共有財産となるものについて、その原資を一方が出したという場合でも、「その財産は共有財産にはあたり分与対象にはなる、ただし、割合において調整される」という結論となりました。3割6分の割合とした算定根拠は示されておらず、類似の事例でどのような割合と判断されるべきかは、主張立証によって変わるものと考えられます。

参考解説

特殊な才能で財産形成したことを理由に修正した裁判例

夫婦の一方の努力や才能によって相当高額な収入を得ていた場合には、これらの事実が財産形成に大きく寄与していると考えられます。そのため、このことを理由に「2分の1ルール」を修正した裁判例があります。

大阪高裁平成12年3月8日判決では、1級航海士の資格を持つ夫が、1年に6か月ないし11か月の海上勤務などにより多額の収入を得ていた一方で、妻は家事、育児をしていたという事情に対して、財産分与の割合を3割(2300万円)と判断しました。

東京地裁平成15年9月26日判決では、一部上場会社の代表取締役である夫が婚姻中に約220億円の資産を形成したことに対して、分与割合を5%(10億円)と判断しました。

大阪高裁平成26年3月13日判決では、医療法人を経営する意思である夫の、医療法人の出資持分に関する分与割合が争いとなったところ、その評価額を純資産評価額の7割とした上で、分与割合を「6:4」と判断しました。

いずれも、夫側の努力や才能によって一般よりも高額な収入を得ていた事例で、「2分の1ルール」を例外的に修正したケースです。特に、会社経営者・個人事業主のケースでは「自分で稼いだお金」について相手の貢献度があるのか、争いが激しくなることが多いです。

参考解説

夫婦の財産が別管理だったを考慮し修正した裁判例

夫婦の生活実態によっては、財産分与の「2分の1ルール」があてはまるような典型的な夫婦ばかりではありません。特に、夫婦それぞれに収入があり、夫婦の財産が別管理となっている場合に、財産分与において特別な考慮が必要となる場合があります。

東京家庭裁判所6年5月31日審判では、夫婦の双方がアーティストとして活動して収入を得ていたが、妻が一定期間活動を休止して家事に専念していたというケースで、財産が夫婦別管理となっているため共有財産のみを分与の対象とすることとしながら、妻が一時期無収入となっていて家事に専念していたことから折半では不公平であることを考慮し、分与割合を「6:4」に修正すると判断しました。

同様に、夫婦の生活実態に変化があり、長期間別居していて財産形成に寄与していないといった事情も、「2分の1ルール」を修正し得る可能性があります。

財産分与割合について有利な解決を得るための方法

上記のように「2分の1ルール」を修正する裁判例は複数存在するものの、裁判例はあくまでも個別のケースに対する解決を示すものにすぎず、「似たようなケース」だからといって同じ結論になるわけではありません。「資格業だから2分の1ではないはず」といった一般化は危険です。

そこで、実際の財産分与の問題を解決するにあたり、有利な解決を得るための方法と、知っておいてほしい知識について解説します。

調停前に解決する

財産分与の争いは、まずは夫婦当事者間の話し合いから始まります。離婚の協議と同時に進むことが多いです。そして、話し合いでは解決できない場合に、離婚調停、そして、離婚訴訟へと進んでいきます。

そのため、話し合いで解決するのであれば、必ずしも家庭裁判所で適用される「2分の1ルール」の通りの解決でなくても構いません。まずは粘り強く交渉をし、解決を目指すようにします。

このとき、どうしても財産分与割合について2分の1以外の割合を適用したいと考えるとき、その他の譲歩できる離婚条件について相手に譲歩をしてあげる、という交渉をすることも有効です(総額で見てどちらが経済的に有利か、慎重に分析するようにしてください)。

対象財産とその評価を争う

次に、財産分与額は、分与割合だけでなく、「どの範囲の財産が対象となるか」や、「各財産をいくらと評価するか」といった点によっても変わってきます。

例えば「分与割合が5:5で、対象財産が1000万円」なら分与額は500万円ですが、「分与割合が4:6」と修正されたとしても「対象財産が500万円」であれば分与額は200万円となります。

財産分与の対象財産は、夫婦が婚姻期間中に共同で築き上げた財産、すなわち「共有財産」であり「特有財産」は含まれません。しかし、夫婦であった期間が長くなればなるほど「どの財産が共有財産で、どの財産が特有財産か」という点には当事者間で争いが生じることが多いです。また車や不動産など、評価額が争いになる財産もあります。

夫婦の一方が財産を隠しているような場合にも、対象財産の金額が大きく変わってしまいます。例えば、相手の収入から考えると開示された貯金額が低すぎる場合などには、事前調査が必要です。

参考解説

より有利な分与方法を主張する

対象財産とその評価、分与割合が決まったとして、実際の財産をどう分けるか、という問題も争いになります。現金・預貯金であれば半分にするのは簡単ですが、不動産や車、経営している事業などのように、きっちり半分にわけることがなかなか難しい財産もあります。

このようなときの財産分与の方法として次の2つの方法があります。

  • 換価分割
    :対象財産を売却し、その代金を分与割合に応じて分ける方法
  • 代償分割
    :対象財産を片方が取得し、分与割合に相当する金銭を相手に支払う方法

この点で、たとえ分与割合が原則どおり「2分の1」となったとしても、より有利な分与方法を主張することが、財産分与でより良い解決を勝ち取るための重要なポイントです。

夫婦財産契約を締結する

ここまで解説してきたとおり、裁判例において個別事情が考慮された結果、財産分与の割合が「2分の1ルール」の原則から修正される場合は確かにあります。しかし、そのような結論を望む場合には、その主張をする側が個別事情を主張立証しなければなりません。

また、個別事情を主張立証したからといって、その事情が原則的なルールを修正するほどの程度に至っていないと家庭裁判所が判断する場合には、「2分の1ルール」が形式的に適用されてしまうこともあります。

このように裁判で敗訴してしまうリスクを回避し、事前に予防しておくためには、夫婦財産契約を締結しておく方法が有効です。

夫婦財産契約は、いわゆる婚前契約の一種で、結婚前に、夫婦の財産に関すること(特に、離婚時の財産分与に関すること)のルールをつくり、合意しておく契約です。

婚前契約は、日本ではまだあまり利用されていないですが、欧米では一般化しています。特に、会社経営者や医師のように、「2分の1ルール」を形式的に適用してしまうと財産分与額が多額になりすぎて不公平感があるようなケースでは、積極的に利用していくべきです。

ただし、一方にあまりにも不公平な婚前契約は無効と評価されるおそれもあります。婚前契約の作成をお考えの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

財産分与をともなう離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

財産分与における分与割合は、「2分の1ルール」が家庭裁判所の実務ですが、これだけで解決できるわけではなく、個別事情に応じてケースバイケースでの対応が重要です。

財産分与は、夫婦であった期間が長ければ長いほど、夫婦の収入差が開いていれば開いているほど、金銭的に多額の争いとなります。感情的な対立が大きく関心を集めがちな不貞慰謝料などの問題よりも、実は優先して検討しなければならない重大な問題であるといえます。

財産分与の絡む離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

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自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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