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不倫による離婚でも財産分与は必要!有利に解決する方法は?

離婚時の財産分与は、離婚で払うお金のなかでも高額になることが多いです。そのため、財産分与を払う側で、かつ、相手に離婚の責任があると考えているときには、「相手のせいで離婚をするのに、なぜ財産分与をしなければならないのか」と疑問に思い、相談に来られる方がいます。

また、逆に財産分与をもらう側でも、このような反論を受けてしまい、「不倫をしたから財産は分け与えないといわれたが、何ももらえないのでしょうか」といった法律相談をされることもあります。

しかし、結論としては、不倫による離婚でも財産分与は必要です。同じように、離婚原因について責任のある配偶者(有責配偶者)の離婚でも、財産分与は当然に必要です。

今回は、不倫による離婚でも財産分与が必要な理由と、片方が有責のときの財産分与の考え方について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 財産分与は、婚姻期間中の財産の清算なので、離婚の責任とはあまり関係がない
  • 財産分与と慰謝料を含めた総額で、損をしないために、離婚の責任について証拠集めが大切

なお、離婚時の財産分与について、有利に解決するための法律知識は、次のまとめ解説をご覧ください。

まとめ 財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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不倫による離婚でも財産分与は必要

ポイント

不倫は、民法770条1項に定められた法定離婚原因でも、最も代表的なもので、法律の専門用語では「不貞」といいます。

不倫をした場合には、離婚訴訟において強制的に離婚が認められる可能性がとても高いのが実務の扱いです。不倫をした側に、離婚の責任があると考えられるためです。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

民法(e-Gov法令検索)

しかし、不倫による離婚であっても、財産分与は必要となります。つまり、離婚の原因をつくった、いわゆる「有責配偶者」であっても財産分与を請求できます。不倫だけでなくDVや悪意の遺棄といった他の法定離婚原因でも同じです。

なお、財産分与には清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類がありますが、ここでは最も多い清算的財産分与を中心に解説します。

有責配偶者にも財産分与すべき理由

「夫婦の一方当事者の不倫のせいで離婚をせざるをえなくなったにもかかわらず財産分与を得られるのは不当ではないか」という疑問が生まれるのではないでしょうか。しかし、財産分与とは、あくまでも夫婦が共同でつくりあげた財産を公平のために分配するという制度です。

不倫しても、協力して夫婦生活を営んできたのであれば、このような財産分与の趣旨には反するところはありません。

一方で、財産分与は必要であったとしても、不倫が原因で離婚せざるを得ない状況となったのであれば、別途、不倫の慰謝料が問題となります。

財産分与と慰謝料の関係

不倫をした有責配偶者側からも財産分与が可能であるとはいえ、有責配偶者は、その責任について慰謝料請求を受けることとなります。財産分与が得られるとはいえ、不倫の責任追及を回避することはできません。

不倫と財産分与は無関係
不倫と財産分与は無関係

認められる慰謝料の相場は100万円~300万円ほどであり、婚姻期間や不倫の期間、性交渉の回数・頻度、不倫に至った責任の程度、悪質性といった事情によって慰謝料額は増減します。

このような不貞慰謝料の相場からして、夫婦の共有財産の金額によっては、慰謝料額よりも財産分与額のほうが高額となり不公平感が募ることがあります。このようなケースに備えて、次に解説するような財産分与を有利に解決する方法、手段についても理解しておくことが有益です。

【立場別】不倫による離婚で財産分与を有利に解決する方法

ハート

一方の配偶者に不倫があり、これが原因で離婚したときの財産分与の問題について、立場によって解決策が異なります。

例えば、不倫をした、財産分与を請求する側としては「不倫をしてしまったが、十分な財産分与をもらえるのだろうか」、不倫をされた、財産分与を支払う側としては「相手に不倫があるのだから財産分与は払いたくない」というように、抱く疑問、不安も立場によって異なります。

そこで、この章では、下記4つの各立場に分けて、自分が不倫による離婚で財産分与を有利に解決するための方法について解説します。

財産分与はまずは夫婦当事者間の話し合い(協議)を行い、解決しない場合には調停へと移行します。

そのため、特に自分が不倫をしてしまって不利な立場にあるときでも、話し合い(協議)で相手が合意する条件であれば、より有利な解決を実現することも可能です。そのため、粘り強い説得と交渉が大切です。

不倫した、財産分与を請求する方

第1に、「不倫した、財産分与を請求する方」の立場から「不倫したが、十分な財産分与を得たい」というご相談を受けることがあります。

さきほど解説したとおり、不倫をしたことは財産分与に影響しないのが基本ですから、財産分与については原則どおり、夫婦の共有財産の2分の1をもらえます。ただし、もらえる金額の総額をできるだけ増やすためには、財産分与よりもむしろ不貞慰謝料を低額に抑える対策が重要なケースです。

なお、不倫してしまって、こちらが離婚したいのに相手が離婚に応じてくれないとき、有責配偶者からの離婚請求には少なくとも8〜10年の別居期間を要します。このとき、請求できる財産分与を放棄し、すみやかな離婚を優先する方法もあります。

不倫した、財産分与を支払う方

第2に、「不倫した、財産分与を支払う方」の立場から「不倫したが、財産分与の支払いは少なく抑えたい」というご相談を受けることがあります。

この場合、4つのケースの中で最も高額のお金をとられてしまう可能性のある、非常に不利なケースです。

1つの対策として、財産分与が相応な金額となる場合には、その金額の中に慰謝料も含んでいるという主張をし、慰謝料的財産分与の性質も含んだ財産分与とするよう交渉するという手段が有効です。

不倫された、財産分与を請求する方

第3に、「不倫された、財産分与を請求する方」の立場から「不倫された上さらに離婚もするのだから、財産分与はできるだけ多くもらいたい」というご相談を受けることがあります。

この場合、4つのケースの中でも一番有利な立場にあるケースです。そのため、とれる手段をすべて行い、できるだけ高額の請求をしていきたいところです。財産分与、不貞慰謝料請求はもちろん、離婚後の生活に不安がある場合には扶養的財産分与を積極的に主張してください。

あわせて、相手が離婚を求めてくる場合でも「有責配偶者の離婚は困難」という原則があるため、こちらからは積極的に離婚は望まず、むしろ離婚を拒絶し続けることが、交渉上の有利な立場を築くことにつながります。

不倫された、財産分与を支払う方

第4に、「不倫された、財産分与を支払う方」の立場から「不倫されたため財産分与は払いたくない」というご相談を受けることがあります。

不倫をしたことが財産分与に影響しないのが原則のため、財産分与を支払わなければなりませんが、少しでも低額に抑えるためには、相手の有責性を証拠により立証し、高額の不貞慰謝料を獲得することです。

なお、次章でも解説するとおり、不貞の責任をきちんと決め、これを財産分与を低額にする根拠とするためには、不貞発覚直後にそのような合意書を相手と作成するという手段が有効です。

不倫による離婚で財産分与で損をしないための注意点

注意点

最後に、不倫をした側・された側、財産分与を請求する側・支払う側のいずれの立場であっても、不倫による離婚で財産分与で損をしないための注意点についてまとめておきます。

なお、合意した財産分与、不貞慰謝料などの離婚条件についての争いが、離婚後に再燃しないよう、合意が成立したら離婚協議書を作成するようにしてください。このとき、清算条項を必ず記載しておきます。

離婚にともなう慰謝料請求の時効は3年であり、離婚から3年間は不貞慰謝料請求が可能です。財産分与も同様に、離婚時にきちんと決めていない場合離婚後でも請求が可能です。

財産分与の種類を理解し、全て請求する

財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類があり、そのほとんどが清算的財産分与の問題です。

しかし、不倫が絡み一方の公平感を損なうような財産分与の問題では、他の性質の財産分与についても問題となるタイミングがあります。例えば、不倫をされた側では離婚するつもりではなかったことから離婚後に困窮してしまうと主張することで、扶養的財産分与を請求するという手段が有効です。

財産分与の対象財産・評価額・分与割合を争う

3種類の財産分与のうち、清算的財産分与は、夫婦であった期間中に形成・維持された財産を貢献度に応じてわける制度です。

財産分与の流れは、実務では次のように進められます。各段階においてそれぞれ対象財産・評価額・分与割合が争点となりますが、いずれも「不倫をしたかどうか」ということは無関係に争うことのできる争点です。そのため、これらの争点をいずれも争うことが、財産分与における有利な解決につながります。

STEP
財産を調査する

はじめに、離婚を決意したらすぐに財産の調査を開始します。
特に、相手が財産を隠していたり、浪費・使い込みをしていたりするケースでは、調べ方が不十分だと財産分与で損をしてしまうおそれがあります。
「財産分与時の調べ方」について詳しくはこちらをご覧ください。

STEP
財産分与の対象財産を確定する

財産分与の対象となる財産は、夫婦の共有財産です。
これに対して結婚前から有していた財産や、結婚中に自己の名義で取得した財産は「特有財産」として対象外となります。
「どの財産が対象となり、どの財産が対象外か」について双方で主張が異なる場合には、各財産をリストアップして交渉する必要があります。
「共有財産」について詳しくはこちらをご覧ください。「特有財産」について詳しくはこちらをご覧ください。

STEP
対象財産の評価額を確定する

対象財産が不動産や株式、自動車など価値の変動するものであるとき、対象財産の評価額を確定する必要があります。

STEP
分与割合を確定する

清算的財産分与の割合は貢献度に応じるものですが、夫婦の公平の観点から2分の1ルールを原則としています。貢献度がこれと異なり修正が必要であると主張する場合には、異なる貢献度を主張立証をして争う必要があります。
「財産分与の2分の1ルールと修正」についてはこちらをご覧ください。

財産分与を放棄させる

不倫による離婚でも財産分与には影響しないのが原則ですが、財産分与を任意の意思によって放棄することは可能です。

財産分与請求権を放棄してもらえれば、財産分与の議論は一切不要となるため、財産分与を放棄してもらうという手段はとても有効です。しかし、もらえるはずの財産分与をタダで放棄してくれる人はいませんから、放棄を求める場合にはメリットを提案するなどして粘り強く交渉する必要があります。

特に、不倫をした側の有責配偶者が離婚を望み、他方が離婚を望まないという場合には、有責配偶者の離婚には「8年~10年」という長期の別居期間を必要とするのが家庭裁判所の実務ですから、「財産分与を放棄してくれるのであれば、離婚に応じてあげる」という交渉をすることはとても有効です。

この場合、財産分与以外の離婚条件(例えば、親権・監護権、養育費、面会交流)といった点についても譲歩してもらうことが期待できます。

不貞誓約書を作成しておく

財産分与請求権を放棄してもらうために最もよい方法は、相手が責任を強く感じているタイミングで速やかに交渉を開始することです。そして、不倫をした相手が、最も責任を強く感じているタイミングとは、すなわち、不貞が発覚した直後です。

したがって、不倫が発覚したとき、まだ即座に離婚することを決断できる状況でなかったとしても、後の財産分与に有利にはたらかせたいのであれば、その時点で財産分与を放棄させる合意をとっておくことが重要です。

この際、不貞・浮気を将来行わない、行った場合は離婚を請求されても構わない、といった内容の不貞誓約書を作成しておくことをおすすめしています。

まとめ

財産分与は夫婦生活中の財産の清算という制度であるため、不倫の責任については、そもそもその枠内で検討されるものではありません。

しかし、一方の配偶者に不倫があるケースでは、財産分与をはじめとした離婚条件について、特に不倫をされた側が不満や不公平感を抱くことでしょう。不貞慰謝料の相場が100万円~300万円と、意外に低額なこともまた、これを後押しします。

そのため、不倫をした側・された側、財産分与を請求する側・支払う側のどの立場にあっても、納得いく解決とするためには、法律知識を用いて、最大限自分にとって有利な主張をしなければなりません。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
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弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚と財産分与の問題について、多数の解決実績があります。

財産分与をともなう離婚についての難しい問題は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

財産分与のよくある質問

不倫してしまった側で、財産分与で気をつける点はありますか?

不倫してしまったとしても、財産分与には関係ないのが基本なので、原則どおり財産分与を請求できます。ただし、不倫してしまった側では、総額で考えると、不貞慰謝料の争いも軽視できません。もっと詳しく知りたい方は「【立場別】不倫による離婚で財産分与を有利に解決する方法」をご覧ください。

不倫されてしまった側で、財産分与で気をつける点はありますか?

不倫されてしまって離婚に至るとき、それでもなお財産分与が問題となることに納得いかないという方は多いでしょう。このとき、不倫をした側は有責配偶者となり、離婚するのが難しくなるため「離婚するかどうか」という点を交渉材料とすることで、財産分与について有利な譲歩を引き出せるケースがあります。

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