離婚・男女問題

扶養的財産分与とは?請求が認められる金額・期間と請求方法

2021年6月26日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

扶養的財産分与の請求

離婚時の財産分与で、特に専業主婦であった女性側(妻側)など、離婚後にすぐには仕事につけず収入が得られないおそれがあるとき、扶養的財産分与が認められるケースがあります。

離婚時の財産分与では、婚姻期間中の財産を公平に分配する「清算的財産分与」が主ですが、これ以外に、「扶養的財産分与」、「慰謝料的財産分与」といった別の性質の財産分与が認められることがあります。

離婚を機に、女性側(妻側)の生活が困窮してしまわないよう、援助をするという意味の「扶養的財産分与」を知っておくことで、損をしない離婚条件を目指しましょう。

今回の解説では、

  • 扶養的財産分与の認められるケース
  • 扶養的財産分与の金額・期間
  • 扶養的財産分与を請求するときの注意点

といった離婚と財産分与の問題について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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扶養的財産分与とは

扶養的財産分与の請求

財産分与には、次の3種類の性質があります。

  • 清算的財産分与
  • 婚姻期間中に夫婦の協力によりつくりあげた財産を、公平の観点から原則として2分の1ずつ分与することです。財産分与の大半が、清算的財産分与です。

  • 扶養的財産分与
  • 離婚後に経済的弱者となる側の配偶者(多くの場合は妻側)に対して、その救済的な意味合いで与えられる財産分与

  • 慰謝料的財産分与
  • 離婚原因について責任のある配偶者(いわゆる「有責配偶者」)に対する慰謝料と同様の意味合いで支払わせる財産分与

一般に議論される財産分与のほとんどが、清算的財産分与です。しかし、今回解説するとおり、離婚後の生活に不安があるときには扶養的財産分与が認められるケースもあるため、積極的に主張していくようにしましょう。

参考解説

扶養的財産分与が認められる理由

夫婦は離婚をすれば扶養義務がなくなります。子どもがいる場合には、離婚後も養育費がもらえますが、養育費はあくまで子どもの養育にかかる費用であり、その養育をおこなう母(元妻)の生活費は含んでいません。

そのため、離婚をきっかけとして、これまで仕事をしていなかった配偶者の経済的な苦境を救う必要があることが、扶養的財産分与が認められる理由です。

例えば、妻が離婚を機に専業主婦となって、これまでの仕事のキャリアをあきらめて家事・育児に専念し、一方で夫は仕事をつづけて順調に出世し、年収を増加させたという場合、離婚後、妻側はすぐには働けないことがあります。

また、すぐに仕事につけたとしても、これまでのキャリアはなくゼロからのスタートとなり、離婚前の収入に戻ることは困難な場合が多いです。当然ながら、婚姻期間中も仕事をしつづけた夫側よりも収入が低くなるのは当然です。

このような理由から、離婚後、経済的に自立するまでの一時的なサポートとして家庭裁判所の実務で認められ得るのが、扶養的財産分与です。

扶養的財産分与は、本来であれば結婚している間しか認められない夫婦の相互扶助義務・扶養義務を、困窮するおそれがあるということの救済のために、例外的に離婚後の一定期間だけ延長するというものです。そのため、認められる金額や期間も、必要最小限のものとされることが通常です。

扶養的財産分与の金額

扶養的財産分与は、離婚後の困窮を一時的にサポートするため家庭裁判所が認めるものであるため、法律上の明確な基準はありません。

この点で、離婚後の元配偶者の生活費、という点で、同じく生活費を意味する婚姻費用について定められた養育費・婚姻費用算定表が参考になります。ただし、扶養的財産分与は扶養義務がなくなることが原則である離婚後の、一時的なサポートとして認められるものであるため、婚姻費用よりも低額とすることが通常です。

婚姻費用は、夫婦が同一の生活を保持できる程度の金額とされていますが、扶養的財産分与ではそこまでの支払いは認められず、生活を維持し、経済的自立の準備を進めるのに最低限の金額程度が認められることが実務です。

なお、扶養的財産分与は、あくまでも例外的な救済措置であることから、十分な生活資金が与えられるとは限らず、請求する側においても、きちんと生活を立て直して経済的自立を目指す努力を怠ってはなりません。

扶養的財産分与は、あくまで例外であり、最低限とされることが通常と解説しましたが、離婚協議によって話し合いの末、これを超える金額で合意をすることもあります。

特に、離婚を請求している相手が有責配偶者であり、相手が一方的に離婚することは困難なときには、離婚に応じる条件として、より高額な扶養的財産分与を請求できることがあります。

扶養的財産分与の支払方法

扶養的財産分与の支払方法については、支払う側に十分な資力があるときには離婚時に一括払いされることもありますが、そうでない場合には毎月払いとすることが多いです。

支払われなくなったときに強制執行(財産の差押え)ができるよう、合意内容を離婚協議書に定めて公正証書化しておくことがおすすめです。

扶養的財産分与の中には、金銭による支払いのほか、次のような解決例もあります。

  • 同居していた自宅を無償譲渡する
  • 同居していた自宅を無償賃貸し、ローン支払いを継続する
  • 支払うべき慰謝料・財産分与を相殺し、減額する

扶養的財産分与は、いつからいつまで支払われるか

扶養的財産分与の請求

扶養的財産分与がいつからいつまで支払われるかについては、扶養的財産分与が認められる期間の目安、扶養的財産分与の基準時の2つの論点が関係します。

その他、扶養的財産分与が認められた後、いつまで支払いを継続してもらえるかについて、事例をまじえて解説します。

扶養的財産分与の期間の目安

扶養的財産分与は、先ほども解説したとおり、扶養義務を負わない離婚後に、例外的にサポートとして支払われるものであるため、経済的自立の準備のために最低限認められるにすぎません。

そのため、実務上、認められるとして、およそ1年から3年程度とすることが多いです。また、仮にその期間中に十分な収入を得ることができなかったとしても、それ以上の負担が必要となるわけではありません。

ただし、次のようなケースでは、今後の経済的自立が困難なことがあり、長期間の扶養的財産分与の支払いが命じられる裁判例が存在します。

  • 離婚時に高齢であり、今後就労する可能性がないケース
  • 離婚時に重度の精神疾患にかかっており、今後就労する可能性がないケース

扶養的財産分与の基準時

扶養的財産分与の「基準時」の問題とは、つまり「いつの財産状態を考慮して、扶養的財産分与が必要なほど困窮する可能性を判断するか」という問題です。

扶養的財産分与は、あくまでも離婚後に困窮するおそれがあるとき、扶養義務はなくなるにもかかわらず例外的に認められるものです。そのため「収入がなくなるので不安だ」という程度を超えて、相当程度に生活が苦しくなっていなければ認められません。

そのため、扶養的財産分与の基準時は、離婚時とするのが実務です。つまり、離婚時において将来困窮の可能性があるなら、扶養的財産分与を認めてもらいやすくなるというわけです。

この点、夫婦の公平のため、夫婦の共有財産を貢献度に応じて分ける「清算的財産分与」では、「夫婦の協力によって財産を築き上げたかどうか」で判断するため、その財産の「確定」の基準時は「別居時」、その財産の「評価」の基準時は「離婚時」とするのが実務です。

別居をすれば、その後は協力して財産を築き上げることは通常ないと考えられるからです。

参考解説

【事例1】事情変更で、扶養的財産分与が中途終了するケース

扶養的財産分与が、離婚後に困窮する配偶者への一時的なサポートにあることから、そのような特殊事情がなくなったときには救済の必要性がなくなるため、扶養的財産分与の支払いを終了すべき場合があります。

事情変更の1つ目は、当事者の死亡です。当事者が死亡すれば、扶養的財産分与は一審専属的であり相続はされないため支払が終了するのは当然です。

事情変更の2つ目は、もらう側の再婚です。再婚したことにより生活が安定すれば、元配偶者に養ってもらう必要はなくなります。当事者の話し合いにより扶養的財産分与を定める場合には、離婚協議書において「再婚した場合には支払義務が消滅する」などと記載しておくことが有効です。

再婚以外の事情でも、資格を取得して収入の高い仕事につけたなど、困窮する可能性を抜け出すことができたことも事情変更と考えられます。ただし、どのような事情があれば支払を止めることができるのか争いとなる可能性が高いため、事前にしっかり合意を離婚協議書に定めておくことがおすすめです。

参考解説

【事例2】扶養的財産分与が一生続くケース

これに対して、ご家庭の事情によっては、扶養的財産分与を一生分認めるというケースもあります。扶養的財産分与の期間は、「経済的自立の準備に必要となる最低限の期間」とすることが一般的ですが、そもそも今後経済的自立が難しいと考えられる事例もあるからです。

このような特殊事情の典型例が、離婚時に相当高齢であることです。熟年離婚のときには特に注意が必要です。離婚時に高齢であると、もはやこれから新しく職を探すことが難しく、一生分の扶養的財産分与を認めるべき事例があります。

特に、元配偶者が十分な収入を今後も得続けられるときや、元配偶者に十分な資産があって離婚しなければ相続をすることで今後の困窮を避けられたというときには、扶養的財産分与が長期間認められる傾向にあります。

なお、年金分割は、扶養的財産分与とは別に検討しなければなりません。

扶養的財産分与を請求するために主張すべき事情

扶養的財産分与の請求

ここまで解説してきたとおり、本来であれば離婚後は夫婦の相互扶助義務・扶養義務を負わないのが原則であるため、扶養的財産分与はあくまでも例外的な救済措置です。

そのため、扶養的財産分与を請求するときに、少しでも高額かつ長期の請求を認めてもらうためには、次のような家庭裁判所が考慮している有利な事情を積極的に主張しなければなりません。

扶養的財産分与を請求する側が知っておくべき、請求が認められやすくなる有利な事情について解説します。

年齢が高齢であること

年齢が高齢であることは、扶養的財産分与が認められるために有利な事情となります。

年齢が高齢であると、下記に解説するとおり、その健康状態、再就職の可能性、再婚の可能性などの一切の事情について、扶養の必要性が高まる可能性が高いからです。

そのため、婚姻期間が長期に渡るときや、熟年離婚のときには、扶養的財産分与の請求が認められる可能性が高いです。

離婚時の健康状態が悪化していること

離婚時の健康状態が悪化していると、離婚後に困窮する可能性があるため、扶養的財産分与が認められやすくなります。病状が深刻なときは、高額な医療費がかかるなど更に生活を圧迫するケースもあります。

その上、その健康状態の悪化が、元配偶者によるDV・モラハラなどに起因しているというケースでは、更に離婚後の扶養の必要性が高まります。

なお、健康状態が悪化していることは、後に解説する再就職の可能性が低いことにもつながります。

他に資産や頼るべき人が存在しないこと

扶養的財産分与を請求する側に、他に資産があったり親がサポートしてくれたりなど、経済的な余裕がある場合には、請求が認められない傾向にあります。そのため、これらの資産や頼るべき人が存在しないことを主張しておく必要があります。

また、離婚時の条件において、慰謝料や清算的財産分与として多額の金銭をもらっている場合には、これによって経済的自立の準備ができると考えられて、扶養的財産分与が認められない可能性があります。

再就職の可能性が低いこと

再就職の可能性が低いことは、離婚後に困窮してしまう可能性が高まるため、扶養的財産分与を認めてもらいやすい事情の1つです。特に、高齢であることは、今後の就労可能性が極めて低いことを示す事情の典型例です。

ただし、例えば結婚により専業主婦となった女性であっても、能力や学歴が高かったり、就労しやすい資格を有していたりするときは、すぐに社会復帰できるため、扶養的財産分与は認められづらいです。

子どもの養育が必要であること

乳幼児などの幼い子どもがいることもまた、今後の生活を困窮させる1つの事情となります。幼い子どもを養育していると、再就職の可能性を低めることにもつながります。

ただし、一方配偶者の養育の負担は、原則として養育費支払によってまかなうべきであり、扶養的財産分与はあくまでも補充的に検討されるものというのが実務です。そのため、通常の子どもの養育の負担を超えて、子どもに重大な疾患や障害があるなどの大変さを主張しておくことが重要です。

再婚の可能性が低いこと

「扶養的財産分与の期間」の項目でも解説したとおり、離婚後に再婚して経済的困窮を脱することができたのであれば、扶養的財産分与は不要となります。

そのため、再婚の可能性が低いことを主張することは、扶養的財産分与を請求する側にとって有利な事情の1つとなります。離婚時に(特に女性側が)高齢であることは、再婚の可能性が類型的に低いことを示すことになります。

支払う側に有責性があること

支払う側に有責性があることによってやむを得ず離婚せざるを得なかったため、離婚後に困窮してしまう可能性があるのであれば、扶養的財産分与が認められやすくなります。

本来であれば離婚したいタイミングではない不利な時期に離婚を強いられてしまうとすれば、その後の困窮についてきちんと面倒を見るべきだと考えられるからです。そのため、いわゆる有的配偶者の離婚では、扶養的財産分与が離婚と交換条件とされることが少なくありません。

相手が不貞行為を行った「有責配偶者」であるとき、相手から離婚を請求することはできず、例外的に8年~10年以上の長期の別居期間を経てはじめて離婚できるとするのが家庭裁判所の実務です。

そのため、話し合いによってやむを得ず離婚に応じる場合には、その期間だけ離婚しなかったのであればもらえたであろう婚姻費用を含めて支払ってもらえるよう交渉することが有効です。

参考解説

支払う側に経済的余力があること

扶養的財産分与を認めてもらうためには、支払う側に経済的余力があることが必要です。十分な収入があることのほか、高齢であり既に年金生活だったとしても十分な資産があれば、扶養的財産分与を認めてもらいやすい事情となります。

現実的にも、支払う側にも経済的余力がないのであれば、離婚後はお互いに困窮してしまうのであり、扶養的財産分与で調整すべき事例とは考えられません。

この点で、扶養的財産分与を請求する際にも、相手の財産状況をしっかり把握しておくことが重要です。

参考解説

離婚と財産分与は浅野総合法律事務所にお任せください!

扶養的財産分与の請求

扶養的財産分与は、財産分与の種類の中で、離婚したあとの夫婦の片方の生活の困窮を支えるため、例外的に認められるものです。本来であれば離婚後は扶養義務はないものの、経済的自立までの一時的なサポートとして例外的に扶養義務を拡張するものです。

離婚するときに病気であったり、高齢で将来の生活の見通し(就労・再婚など)が暗かったりといった場合には、扶養的財産分与を請求することが有効です。

特に、離婚を求めてきた相手に不貞行為などの有責性があるとき、相手の意思によっては一方的に離婚することが困難なため、離婚に応じる条件として、扶養的財産分与を交渉材料として使うことができます。

離婚時の財産分与についてお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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