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養育費が払われないときの対応丨請求から強制執行までの流れ

養育費が払われないことは、母子家庭(ひとり親家庭)にとっては重大事です。しかし実際は、離婚時にきちんと取り決めておいても、養育費が支払われ続ける家庭は、統計上2割ほどに過ぎません。

今回は、離婚時に養育費を確実に取り決める方法と、養育費が払われないとき養育費を回収する方法を解説していきます。

養育費が払われないと母親であるあなたの生活設計が立ち行かなくなるのはもちろん、子どもの育児にも悪影響を及ぼします。子どもに十分な教育や医療を受けさせることができないおそれもあります。

養育費が払われないとき、子どものためにも一刻も早く養育費を回収すべきです。そのためには、内容証明で請求する方法から離婚時の取り決め、合意した養育費を回収するための強制執行(財産の差押え)までの一連の流れを理解しておく必要があります。

この解説でわかること
  • 養育費を確実に取り決めるためには、公正証書で定めるのがおすすめ
  • 養育費が払われないとき、まずは内容証明を送って請求する
  • それでも養育費が払われないなら、強制執行(財産の差押え)で強制的に払わせる
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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離婚時に、養育費を確実に取り決める

本

まず、養育費を確実に受け取るためのスタート地点として、離婚時に養育費を確実に取り決めることが大切です。

確かに、離婚時に取り決めておいた養育費も、すぐに支払いが止まってしまい継続的に支払いが受けられない例も多いです。しかし、養育費が払われない状態になったときに強制執行までしっかりと行って回収できるためには、離婚時の取り決めが適切に証拠化されていることが必須です。

離婚協議書を公正証書化する

離婚協議書は、離婚時に約束した離婚条件を定めた書面であり、養育費という重要な離婚条件についても、かならず離婚協議書に書くようにしてください。口約束しかないと、いざ養育費が払われなくなってしまったとき「養育費支払を約束していた」という証拠すら残りません。

離婚協議書を公正証書にしておくと、養育費の請求について調停・訴訟などの法的手続きをあらためて行わなくても強制執行(財産の差押え)ができます。公正証書は、公証役場で作成する公文書であり、まずは夫婦間で離婚協議書を作成した上で、公証人にチェックしてもらい、作成してもらいます。公正証書の作成には夫婦双方が公証役場に出向く必要がありますが、弁護士に代わりに行ってもらうこともできます。

公正証書とは
公正証書とは

強制執行できれば、元夫の不動産・預貯金のほか、給与の差押えが有効です。そのため、元夫としても給与などを差押えられてしまうリスクを感じ、取り決めた養育費を払い続けてくれる可能性が高まります。

調停・審判で養育費を決める

養育費やその他の離婚条件について、当事者間の協議では話し合いがまとまらないとき、調停・審判で家庭裁判所の判断をもらうことができます。

離婚時に養育費について調停で決めようとするときは、離婚調停を申立て、離婚調停でも合意がまとまらないときは離婚訴訟で養育費を決めてもらいます。これに対し、離婚後に養育費を決めたり、増減額を求めたりするときは、養育費請求調停などを申立て、調停でまとまらないときは審判に移行します。

調停や審判における裁判所の決定は、調停調書、審判調書という形で証拠化されます。これらの調書を取得しておけば、養育費が払われなくなったときに、家庭裁判所に履行勧告をしてもらえるほか、強制執行(財産の差押え)をすることが可能です。

養育費が払われないときの対応

弁護士浅野英之

次に、離婚後になって、養育費が払われないときの対応について弁護士が解説します。

養育費が払われないときは、まずは内容証明を送るなどの方法で督促を行い、それでも払われないときには、養育費請求調停を申立て、調停もしくはその後に続く審判で裁判所の決定を得て、養育費の支払いを命じてもらいます。

以下の手順にそって、順に解説していきます。

自分で連絡し、養育費を請求する

養育費が払われなかったとき、まずは相手(元夫)に連絡し、養育費を払ってもらえるよう請求します。連絡方法は、電話・メール・LINEなど普段の連絡方法でよいですが、請求したことが記録に残りやすい方法で行うのがおすすめです。

自分で請求する方法であれば費用はかかりませんから、払われなくなったらすぐ請求するのがポイントです。長期間放置すると相手も払う意欲が失せたり軽視されてしまったりするからです。

事故や病気、急な出費などで支払いが遅れてしまっただけであれば、すぐに催促しておけば支払いを続けてくれるケースも多いです。このようなとき、自分で養育費を請求するのであれば、きつく問い詰めたり責任追及したりして相手の態度を硬化させてしまわないよう次の点に注意してください。

  • 自分勝手で一方的な要求をしない
  • 感情的な伝え方をしない
  • 子どもにとって養育費が必要であることを伝える

なお、相手がすでに支払い拒絶の意思を明らかにしているケースや、DV・モラハラがあって直接連絡することが困難なケースでは、次の段階に進むようにしてください。

内容証明を送付して養育費を請求する

相手に直接連絡して養育費を請求しても、支払いを拒否されたり無視されたりするとき、次に、内容証明を送って養育費を請求する方法に進んでください。

内容証明は、郵送形式の一種で、配達日時・書面の内容などを郵便局が記録してくれるため証拠として活用することができるというメリットがあります。

内容証明とは
内容証明とは

内容証明は、特殊な郵送形式であるため、相手に与えるプレッシャーが強く、養育費の支払いに応じてもらえる可能性が高まります。特に、弁護士名義で内容証明を送れば、「支払いをしなければ調停・審判などの法的手続きを利用する」という確固たる意思を示すことができ、より強い圧力になります。

養育費請求調停・審判を申し立てる

相手が任意の養育費支払いに応じないときは、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます(なお、離婚前であれば、離婚調停の中であわせて養育費を決めます)。

養育費に関する調停の流れ
養育費に関する調停の流れ

養育費請求調停では、調停委員が間に入って話し合いをすることで、養育費の金額や支払方法について決めてもらうことができます。調停では「養育費・婚姻費用算定表」にもとづいて、子どもの年齢・人数と互いの収入差によってある程度の相場観があります。そのため、養育費がまったく払われていないときは、調停委員が算定表にしたがって相手を説得してくれることが期待できます。

調停で養育費の支払いについての合意ができたときは調停調書が作成され、養育費を受け取ることができます。調停で合意できないときは、調停不成立により終了し、審判に移行して家庭裁判所の判断が示されます。

これらの手続きで作成される調停調書、審判書は、これに基づいて強制執行することのできる強力な書類です。

決められた養育費が払われないとき、強制的に回収する方法

喧嘩する男女

離婚協議書や、養育費請求調停の調停調書などによって養育費を定めたにもかかわらず、定めたとおりの支払いがなされなかったり、払いがストップして継続しなかったりすることがあります。

このようなとき、もはや任意の協力によって払い続けてもらうのが困難なとき、強制的に回収する方法へ進む必要があります。定められた養育費が払われないときに強制的に回収する方法として、次の方法があります。

  1. 履行勧告
  2. 履行命令
  3. 強制執行

※なお、まだ債務名義を取得していない方は、前章「養育費が払われないときの対応」参照

履行勧告

履行勧告は、家庭裁判所から養育費を払わない相手に対して、養育費を払うよう勧告してもらう方法(家事事件手続法289条)です。調停調書・判決などを得ているときに利用できます。裁判所から電話や郵送などで連絡がいき、養育費を支払うよう督促してもらうことができます。

裁判所から連絡が来ることは普段の生活ではなかなかないため、裁判所から勧告が来ることで強いプレッシャーを感じてもらい、養育費の支払いを継続してもらいやすくなります。

特に所定の書式などはなく、家庭裁判所に電話でお願いすることで利用することができ、申立手数料もかからないため、手軽に利用できます。しかし、あくまでも任意の督促にすぎず、相手がそれでも払わないときには罰則も強制力もないため、過信は禁物です。

履行命令

履行命令は、家庭裁判所が養育費を支払わない元夫に対し、養育費の支払いを命じるものです(家事事件手続法290条)。履行命令に正当な理由なく従わないときは、10万円以下の過料に処されます。

履行命令も、履行勧告と同様に、家庭裁判所に電話で申し立てすることができ、申立手数料もかかりません。

ただ、制裁の上限が10万円であり、通常は養育費の未払額がこれ以上となっていることが多いため、結局は支払いに応じてもらえず、あまり効果のないことも多いです。

強制執行

養育費がどうしても払われないときの最終手段として、強制的に回収する方法が強制執行(財産の差押え)です。

強制執行の対象となる財産には、不動産(土地・建物など)、動産、債権(給与・預貯金など)があります。

なかでも、養育費の強制執行の場面でよく利用されるのが、給与の差押えです。給与差し押さえがよく利用されるのは、次の2点のメリットがあるからです。

  • 差押え上限額について
    給与は、差押えられる側にとっても生活のために重要であるため、差押えの上限は給与の4分の1までだが、養育費・婚姻費用など扶養に関する債権であれば、給与の2分の1まで(もしくは33万円以上の金額のすべて)を差し押さえられる。
  • 将来発生する養育費について
    将来発生し続ける養育費についても、1回の強制執行で将来の給与から差押えて回収し続けられる。

強制執行(財産の差押え)をするためには、執行力のある「債務名義」が必要となります。裁判所の判決、調停調書、審判書、強制執行認諾文言付き公正証書などが債務名義にあたります。そして、裁判所で執行文、送達証明書を入手し、強制執行の申立てを行います(支払義務者の住所地を管轄する裁判所が申立先となります)。

なお、強制執行により養育費を確実に回収するためには、相手の財産を把握しておかなければなりませんが、この点で、改正民事執行法(2020年4月施行)では、財産開示手続きが強化されています。

まとめ

今回は、「養育費が払われない」という相談について、母親側(元妻側)の立場から、元夫に対して養育費を請求し、回収するまでの具体的な流れを解説しました。

未払いとなった養育費を強制的に回収する方法には、履行勧告・履行命令から強制執行(財産の差押え)までの方法が用意されており、状況に応じた適切な方法を選択する必要があります。そして、これらの準備のために、離婚時に離婚協議書を公正証書化しておくなど、必要な準備を怠らないことが大切です。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
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弁護士法人浅野総合法律事務所では、家族関係の法律問題を得意としており、未払いの養育費について回収した実績を豊富に有しています。

確実に養育費を回収するためにも、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

養育費のよくある質問

養育費が払われないとき、どう対応するのがよいですか?

養育費が払われないとき、まずは自分で連絡して請求してみて、それでも払われなければ内容証明を送ります。公正証書を得ているときには強制執行ができますが、そうでなければ、調停によって未払い分を請求します。もっと詳しく知りたい方は「養育費が払われないときの対応」をご覧ください。

養育費を払ってくれない相手から強制的に回収することはできますか?

養育費を払ってくれないとき、公正証書を得ていればすぐに強制執行できます。公正証書がないとき、調停調書、審判書などを得られれば、これにもとづいて強制執行できます。もっと詳しく知りたい方は「決められた養育費が払われないとき、強制的に回収する方法」をご覧ください。

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