
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
養育費が支払われない事態は、ひとり親家庭にとって非常に重大です。
しかし、離婚時に取り決めても、養育費の支払いが滞ることがあります。最後まで養育費を支払い続けた割合は25%(4人に1人)という統計もあります(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」)。当事務所にも、次のような相談が数多く寄せられます。
養育費が支払われない場合の請求方法は、主に「家庭裁判所による履行の確保の手続」と「地方裁判所による強制執行の手続」の二段階があります。まずは任意の支払いを促した上で、家庭裁判所による履行勧告・履行命令で働きかけ、最終手段として強制執行を行います。
近時の法改正で、先取特権や法定養育費の制度、一回の申立てで財産調査から差押えまで連続して行う制度などが導入され、回収の手段は強化されています。
今回は、養育費が支払われないときの対応と、払ってくれない相手への請求方法について、弁護士が解説します。
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養育費とは、子供の養育や監護のために、離婚後に両親で分担すべき費用のことです。
離婚後は夫婦ではないものの、子供の親に変わりはなく、子を監護していない親(非監護親)は、子を監護する親(監護親)に、扶養義務に基づいた養育費を支払う必要があります。

養育費は「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて決めるのが裁判実務であり、権利者・義務者の年収、子供の人数・年齢をもとに一定の幅のある目安が算定できます。しかし実際は、離婚時に取り決めても、養育費が支払われない家庭は少なくありません。さらに、「請求できるとは知らなかった」「相手と関わりたくない」「早く離婚したい」といった理由で、養育費を取り決めてすらいない家庭も決して少なくありません。
取り決めた養育費が支払われないときの対応には、主に「任意の支払いを促す方法」「家庭裁判所による履行の確保の手続」「地方裁判所による強制執行」があります。また、そもそも養育費を取り決めていなかった場合、「養育費の取り決めがない場合の対応」を参考にしてください。
「子供がいる夫婦の離婚」の解説


取り決めた養育費が支払われない場合、まずは任意の支払いを促す方法を試みましょう。
具体的には、電話やメール、LINEなどの日常的に利用している連絡方法で請求することから始めてください。未払いを許さないために、期限に1日でも遅れたら連絡をするのがよいでしょう。遅れを放置していると、それが当たり前になって軽視され、徐々に支払いが滞るようになります。
自分で請求するときは、相手の態度を硬化させないよう、次の点に注意してください。
日常的な連絡手段で請求しても拒否されたり、無視されたりするなら、内容証明で請求書を送付する方法が有効です。内容証明であれば、書面の内容と到達日を記録することができ、心理的なプレッシャーを与える効果があります。また、婚姻時にDVやモラハラがあるなど、直接連絡できない場合、弁護士を通じて連絡するのがおすすめです。
調停や審判で養育費を定めていた場合、家庭裁判所による履行の確保の手続を利用できます。任意の協力が得られない場合に、強制執行に進む一歩手前として活用しましょう。
履行勧告は、家庭裁判所が義務の履行状況を調査し、養育費が支払われていない場合、義務者に対して履行を勧告する制度です(家事事件手続法289条)。具体的には、家庭裁判所から義務者に対して電話や郵便で連絡がいき、養育費を支払うよう督促してもらうことができます。
申出に費用はかからず、書面や口頭、電話でも依頼することができるため手軽に利用できます。家庭裁判所調査官が調査や勧告を担当するのが一般的で、裁判所から連絡が来ることはあまりないため、強いプレッシャーを感じて支払いを継続してもらえる可能性があります。
ただし、履行勧告は、あくまでも任意の支払いを督促するに過ぎないため、相手が従わなくても罰則はなく、強制力もありません。
履行命令は、家庭裁判所が義務者に対し、養育費の支払いを命じる制度です(家事事件手続法290条)。正当な理由なく命令に従わない場合、10万円以下の過料に処されることがあります。家庭裁判所に申立書を提出し、1件500円の手数料がかかります。
制裁がある点で履行勧告よりは強力であるものの、10万円の過料でしかないため、未払いの養育費が高額な場合は支払いが期待できません。また、財産の差押えを行うこともできません。
養育費が支払われないときの最終手段となるのが、強制執行です。
強制執行には、対象となる財産によって不動産執行・動産執行・債権執行などがありますが、養育費の強制執行でよく活用されるのが給与の差押えです。強制執行には、確定判決、和解調書、調停調書、審判書、執行認諾文言付きの公正証書といった「債務名義」が必要です。
以下では、義務者が任意に履行しない場合の強制執行の方法について解説します。
直接強制とは、給与や預貯金などの財産を差し押さえる手続きです。
養育費などの扶養債権は、一部に不履行があれば、期限が到来していない将来分についても給与などの債権を差し押さえることが可能であるという優遇措置があります。また、通常の債権では給与の4分の3が差押禁止とされるところ、養育費の場合は2分の1まで差し押さえが可能です。

「養育費の強制執行」の解説

間接強制は、義務者が支払わない場合、一定の期間内に履行しなければ間接強制金(制裁金)を支払うよう命じることで心理的圧力をかける手続きです。義務者が支払い能力を欠く場合などを除き、養育費が支払われないケースでも利用することができます。
強制執行によって差し押さえるには、財産を特定することが必要となります。
差し押さえるべき財産が不明な場合、次の手続きを利用することが可能です。2020年4月施行の民事執行法改正により、これらの方法が新設ないし強化されました。
「財産開示手続と第三者からの情報取得手続」の解説

2026年4月施行の民法などの改正では、養育費の履行確保手段も追加されています。
具体的には、養育費に先取特権が付与されたことで、判決書や調停調書といった債務名義がなくても、父母間で作成した文書(合意書など)に基づいて強制執行が可能となりました。この場合、差し押さえることのできる上限額は、子1人あたり月額8万円とされています。
また、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合でも、暫定的に子1人あたり月額2万円の「法定養育費」を請求できる制度も導入されています。
養育費について離婚時の取り決めがない場合、離婚後であっても請求は可能です。
この場合、まずは話し合いで請求し、決裂する場合は家庭裁判所に調停・審判を申し立てます。後に未払いとなった際に強制執行が可能となるよう、合意した内容は合意書に記載し、公正証書化しておくことがおすすめです。

利用すべき法的な手続きは、タイミングによって異なります。
離婚とともに養育費を定める場合、離婚調停・離婚裁判(離婚訴訟)で行います。一方、離婚後に初めて取り決める場合や増減額を請求する場合は、養育費請求調停・審判で行います。
「養育費・婚姻費用算定表」に基づき、権利者・義務者の年収、子供の人数・年齢によって決めるのが裁判実務であり、算定表に基づいた妥当な請求であれば、相手が協力的でない場合でも、調停委員や裁判官が説得して、支払いを促してくれることが期待できます。
いずれの場合も、調停調書、確定した審判書・判決書などは「債務名義」となり、未払いの場合に強制執行が可能です。
なお、2026年4月1日施行の法改正により、離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合でも、監護を主に行う親は他方に対し、子1人あたり月額2万円の「法定養育費」を請求できます。
「離婚調停の流れと進め方」の解説


次に、養育費で不利益を被らないために、知っておくべき注意点を解説します。
養育費の請求権には時効があります。そのため、長期間放置すると、過去の養育費を遡って請求することはできなくなります。時効期間は、取り決めの仕方で異なり、離婚協議書に基づく請求の場合は「権利を行使することができることを知った時から5年間」「権利を行使することができる時から10年間」(民法166条)、調停・審判に基づく請求の場合は10年間(民法169条)です。
養育費は、親が子供に対して負う扶養義務が根拠となります。
そのため、元配偶者の両親(子にとっての祖父母)に支払い義務はなく、養育費が支払われなくても元配偶者の家族への請求はできません。ただし、法的な権利はなくても支払いをお願いすることは可能です。孫への愛情がある場合、肩代わりして支払ってくれるケースもあります。
なお、民法877条は、直系血族および兄弟姉妹には扶養義務があることを定めています。祖父母と孫は直系血族であるため、養育費が支払われないことで最低限の生活すら難しい状況であれば、祖父母には扶助する義務が生じます。
養育費は、将来長期間にわたって支払われるため、事情の変更がある場合は増減額を請求できます。ただし、一方的な変更はできず、当事者間の合意か調停・審判の手続きが必要です。特に、離婚を優先するために養育費で譲歩していた場合、支払いが滞ると「そうであれば当初の取り決めよりも増額したい」と考えるケースも少なくありません。

最後に、養育費の未払い回収を当事務所にお任せいただくメリットを解説します。
養育費が約束通りに支払われず、自身での対応に行き詰まった場合は、弁護士への相談がおすすめです。未払い問題を法律の専門家に依頼することで、スムーズな解決が期待できます。
当事者間の話し合いでは感情的になりやすく、無視や拒否をされて解決に至らないケースも少なくありません。弁護士に相談すれば、代理人として全ての交渉を引き受けることができます。当事務所には、家庭裁判所長を歴任した経験豊富な弁護士が在籍しており、裁判所の実務に精通した知見を活かして交渉にあたることで、大切な養育費を回収することができます。
未払い養育費の請求には多様な手段があり、個別の状況に応じて選択する必要があります。
当事務所では、これまでの解決実績をもとに、相手方の収入や就労状況、過去の合意内容を総合的に分析し、最も効果的な回収プランを立案します。特に、2026年施行の法改正により、回収手段の幅が広がったため、こうした新たな手段も駆使した解決策を提示することができます。
養育費請求のための調停や強制執行といった裁判所の手続きは非常に複雑であり、自身で進めようとすると多くの時間と手間がかかります。特に、強制執行を行う場合、相手の財産を特定した上で、専門的な書類を正確に作成しなければなりません。
当事務所に依頼すれば、煩雑な作業を全て任せることができるため、仕事や育児、生活への影響を抑え、迅速に養育費回収に着手することができます。
今回は、養育費が支払われない場合の対処法について解説しました。
「養育費を支払ってもらえない」というのは、母親(元妻)の立場からよく相談を受ける内容ですが、回収するまでの具体的な流れを知れば、あきらめず養育費を支払ってもらうことができます。なお、家族の形は多様化しており、父親(元夫)から相談を受けるケースも増えています。
養育費が支払われないとき、家庭裁判所を通じた履行確保の手続き(履行勧告・履行命令)から、地方裁判所の強制執行まで、段階に応じた法的手段があります。適切な手続きを選択し、早急に対処することが必要となります。また、これらの法的手続きを行使するために、離婚協議書を公正証書化するなど、離婚時の養育費の定め方にも配慮が必要です。
養育費が支払ってもらえずに悩んでいる方は、ぜひ早めに弁護士へ相談してください。
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