離婚・男女問題

離婚調停で調停委員が相手の味方をするとき、中立・公平を保つ対策

2021年8月9日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

離婚調停を進めていると、「調停委員が相手の味方をしているのではないか」、「自分の主張を無視しているのではないか」と感じることがあるでしょう。実際、そのような法律相談を多くお聞きしています。

離婚調停は、白黒はっきりつける手続きではなく、あくまでも話し合いを仲介してもらう手続きであり、担当する調停委員は、中立かつ公平な立場とされています。なので、実際には、いずれかに不当な肩入れをするということはありません。

ただし、調停委員は法律の専門家ではありません。また、調停委員といえども1人の人間であるため、離婚調停を進めていくにあたってどうしても夫婦の片方に共感したり好意(あるいは嫌悪)を抱いてしまったり、中立・公平を保てなくなってしまったりすることがあります。

今回の解説では、

  • 離婚調停における調停委員の役割
  • 調停委員が中立・公平でなくなったときの対応方法
  • 相手の味方をする調停委員への対処法

といった離婚調停の法律知識について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

離婚調停における調停委員の役割

調停委員は、離婚調停を担当する調停委員会の構成員であり、男女1人ずつの調停委員が担当します。

調停委員会にはほかに、裁判官が1名所属し、合計3人で調停を担当しますが、裁判官は複数の事件を一度に担当しており、基本的には調停の審理には参加しません。そのため、調停委員が、とても重要な役割を占めます。

離婚調停は、あくまでも話し合いによる円満な解決を目指すもので、判決のように結論を下してもらうものではないため、調停委員も「真実を明らかにしよう」という姿勢ではなく、夫婦双方の関係を調整するよう立ち回ります。

そのため、離婚調停では、調停委員が中立かつ公平に振る舞うことが重要となります。つまり調停委員は夫(または妻)のいずれの味方にもならないということです。男女2人の調停委員がいますが、それぞれが男性の味方、女性の味方というわけでもありません。

このような調停委員の役割から、調停委員は、中立・公平を保つため、バランス感覚をとって夫婦双方への発言を慎重に行うことが通常です。しかし、それでもなお、調停委員の中立・公平が疑われ、一方の味方をしているのではないかと疑わしいケースがあります。

相手の味方をする調停委員の発言の原因と、切り返し方

離婚調停において、調停委員の発言や態度が、相手の味方をしている、中立・公平ではない、と感じるとき、適切に対処するためには、その原因を知る必要があります。

中には、調停委員のやり方に問題があるケースだけでなく、そもそも調停委員がその役割を果たしているだけであったり、離婚調停、離婚裁判などの制度上そのように見えてしまうだけであったりすることもあります。

調停委員は判断を強制する役割ではない

離婚調停は、裁判とは異なり、あくまで話し合いと意見の調整を行う場であり、裁判所が判断を下す場ではありません。そのため、調停委員は、夫婦どちらの当事者に対しても、意見を強制することはありません。

例えば、あなたから見て夫(または妻)が明らかに間違ったこと、事実と異なる嘘を言っていたとしても、調停委員がそれを否定したり、間違いを正してくれたりすることは期待できません。

逆に、調停段階で、相手の態度を否定したり、強く正そうとしたりしてしまうと、感情的な対立を生み、調停による解決が困難となってしまうおそれがあり、調停委員はそのような対応を避ける傾向にあります。

このような調停委員の態度が、真実と反する事実の主張、間違った法的見解を支持し、相手の味方をしているように見えることがありますが、これはあくまで調停委員の役割によるものであり、あなたに不利な対応というわけではありません。

調停委員が、相手の主張する事実や見解を伝えてくるとき、それが相手の味方をするように聞こえるのであれば、「そのような主張が正しいという意味ではないですよね」、「その意見は強制ではありませんね」と確認することで、調停委員が相手の味方ばかりするわけではないことを確認できます。

調停成立のためにバランスをとっている

調停委員は、離婚調停において互いの意見・主張を伝達する役割ですが、単に伝達するだけにとどまらず、調停を成立させるため、伝え方に工夫をほどこすことが多くあります。つまり、あなたに対してはあなたに不利な意見を伝え、相手に対しては相手に不利な意見を伝え、お互いの譲歩を引き出した上で、調停成立につなげようとすることがあります。

調停成立のためとはいえ意見を否定されると、相手の味方をしているように聞こえ、中立・公平でないと感じるでしょう。

例えば、調停委員が、夫婦の双方から譲歩を引き出して離婚を成立させようとして、離婚を拒否している側に「相手は離婚の意思が強いから、なかなか離婚拒否しても復縁は難しいのではないか」と伝えたり、慰謝料支払いを拒否する側に「裁判にいくと一定の慰謝料は避けられないのではないか」と伝えてくることがあります。

他方で、このようなとき、相手もまた、調停成立のために調停委員から不利な見解を示され、同じような思いをしている可能性があります。

しかし、法律の解釈は様々であり、調停委員の示す考え方だけが正しいわけではありません。

調停委員の意見に納得できないときには、「法的な考え方」という次元で争うのではなく、「法律問題として正しいかはわからないが、そのような解決は納得がいかない」と拒否することで、あなたの意見を明確に示すことが有効です。

法律論ではなく倫理・道徳で判断されている

調停委員は、法律の専門家ではありません。そのため、離婚調停における発言でも、必ずしも法律論に基づく発言ばかりではなく、自分の常識や経験に基づいて、問題解決に導こうとするような発言をすることがあります。

しかし、このような常識や経験は、その人なりの倫理や道徳、価値観が色濃く反映されていることが多く、実際には、法律的に正しい解決ではないこともあります。

このようなとき、法律や裁判例にのっとって考えたほうがあなたにとって有利になるときには、法律や裁判例の根拠をきちんと示して、説得的に説明する方法が有効です。

そして、法律、裁判例を示して調停委員を説得するやり方は、離婚問題を多く取り扱う弁護士を依頼して代わりに行ってもらうとより一層効果があります。

そもそも解決の相場があなたにとって不利である

逆に、法律論があなたにとって不利なケースで、調停委員が法的見解に固執すると、あなたにとって中立・公平ではないと感じることがあります。

調停委員は中立・公平な立場ですが、単に事実の伝達役となるだけでなく、一定の法的見解を述べることももちろんあります。このようなとき、調停委員が述べる法的見解は、一般的には、おおむねそうなるであろうという相場がある程度決まったものであることが多いです。

例えば、婚姻費用や養育費は、養育費・婚姻費用算定表に基づいて、互いの収入、子の年齢と人数によりある程度目安が決まります。また、「有責配偶者(破綻に責任のある配偶者)の離婚は、相手が拒絶していると難しい」というルールも、実務では一般化しています。

調停委員が、法律の解釈について意見を述べるとき、相手に肩入ればかりしているとか、中立・公平を害していると感じるのであれば、それはむしろ、そもそもの法的な解決の相場が、あなたにとって不利な状況であるというケースもあります。

とはいえ、調停は話し合いですから、離婚裁判で戦った場合とは結果が異なることもあります。お互いが同意すればどのような解決でもよいわけですから、たとえ相場だからといって、調停委員の意見を鵜呑みにし、押し付けられることは避けなければなりません。

法的によくある結論を押し付けてこようとする調停委員には、「法律論はさておき、納得はいかない」、「譲歩することはできない」と明確に伝え、調停の成立が困難で裁判に移行する可能性があることを示すという態度が有効です。

中立・公平でないと感じる調停委員への対応方法

以上のとおり調停委員は中立・公平な立場から離婚調停を進めますが、この中立性、公平性が損なわれてしまっていると感じるケースがあります。

調停委員がわざと中立でない対応をすることは少ないですが、調停委員も1人の人間であり、結果的にあなたにとって不利な対応をしてしまうことがないとはいえません。また、残念ながら、調停委員の中には、怒りっぽかったり自分勝手な意見を押し付けてきたりなど、その適性や資質が疑わしい人もいます。

そこで、中立・公平でないと感じる調停委員への対応方法について弁護士が解説します。

調停委員とは対立しないようにする

離婚調停において調停委員が相手の味方をしているのではないかと感じたとしても、面と向かって調停委員と対立することはおすすめできません。

残念ながら、調停委員の中には、当事者の意見を頭ごなしに否定してきたり、半笑いで馬鹿にしてきたりといった不適切な態度をとってくる人もいます。

調停委員の中立・公平が疑わしいときでも、調停委員としてはあえてあなたに不利な発言をして和解を促進させようなど、意図があって行ったことかもしれません。また、本当にあなたに嫌悪感を抱いて中立・公平が損なわれているとき、喧嘩を売って対立を深めてしまっては、ますます手続きが円滑に進まなくなってしまい、有利な調停は得られません。

調停委員と対立してしまうのではなく、感情的になることは避ける対応がおすすめです。そして、調停委員があなたに対して不利な結論を押し付けてきたり、相手のいうことに従うよう譲歩を求めてきたりするとき、明確に拒絶の意思表示を示すだけで十分です。

調停委員の中立・公平が疑わしいことを指摘する

調停委員の中立・公平が疑わしいと感じるとき、率直にそのことを調停委員に伝え、改善を促すことが有効です。このとき、感情的に相手を否定しないよう配慮すれば、調停委員に対する失礼にあたることもありません。

むしろ、「相手の味方をしているのでは」というもやもやを抱えたまま離婚調停を進めていては、納得いく解決とはなりません。

ただし、中立・公平が疑わしいと感じることについて、調停委員の元からの性格であったり言い方、態度などが影響していることもあります。そのため、問題点の指摘の仕方が失礼になってしまわないよう、指摘のしかた、伝え方やタイミングに注意が必要です。

不利な合意はしない

中立・公平ではない疑いがある調停委員、相手の味方ばかりする調停委員にあたってしまったとき、離婚やその離婚条件について「合意」さえしなければ、いつでもやりなおすことができます。

調停はあくまでも話し合いを重視した制度であり、調停委員がどれほど強く自分の意見を伝えてこようとも、そのとおりの判断が強制的に下されるわけではありません。そのため、納得のいかない条件では決して合意をしないようにしてください。

調停委員の「早く離婚を成立させてしまおう」というプレッシャーや、「早く終わりたい」といった気持ちに負けてはいけません。

どうしても問題のある調停委員にあたってしまったとき、あなたが離婚調停を申し立てた側であれば、一旦取下げ、時間をおいて再度離婚調停を申し立てるという方法も有効です。また、調停を申し立てられた側でも、離婚を拒否し続ければ調停は不成立となり、離婚裁判で争うことになるため、法律の専門家である裁判官の判断をきちんと受けることができます。

調停委員を味方につける

離婚調停では、あなたが相手に直接意見を伝えたり説得したりすることはできず、すべて調停委員を介して行われます。調停委員次第で、どのような解決となるかは大きく左右されてしまいます。

そのため、調停委員が中立・公平でないのではと感じるときでも、調停委員を味方につける努力をしなければなりません。調停は、裁判と異なり、調停委員の同情や理解が、有利な解決に結果的につながることがあります。

少なくとも調停委員に好印象を抱いてもらうため、常識的な礼儀をわきまえ、誠実に振る舞い、身なりやマナーを守ることが大切です。

その上で、調停委員の見解がどれほど一方的で、中立・公平でないとしても、これを更に一方的に否定するのではなく、「1つの意見としては理解する」という態度を示し、「しかし自分の考えは違う」と冷静に伝えることが重要です。全く譲歩の余地がなく、頭の固い人だと思われてしまうことは損でしかありません。

離婚調停では解決できない可能性を伝える

調停委員が、自分の意見を伝えたり、夫婦のバランスをとったりしようとしてくるのは、「調停を成立させる」という目的があるからです。調停を円満に成立させる努力をすることが、調停委員の役割でもあります。

しかし、あなたにとっては、離婚調停だけが離婚問題の解決手段ではありません。調停段階で合意が成立しないとき、より専門的な法的判断を示してもらうため、離婚裁判に移行するという選択肢もあります。

残念ながら、玉石混交の中ではずれの調停委員に当たってしまったと感じるとき、その離婚調停で納得いく解決に導くことが難しいこともあります。

調停委員が、自分の意見を一方的に押し付けようとしていると感じるとき、それは、あなたが相手の意見に譲歩し、調停成立とすることもまた難しくなっていることを示しています。そのため、もはや離婚調停では解決できない可能性があること(離婚裁判で決着をつけるべきであること)を調停委員に伝えることで、調停委員による押し付けを回避できます。

参考解説

弁護士に調停対応を依頼する

多くの離婚調停を経験している弁護士であれば、調停委員が中立・公平でないようにみえる対応や発言をする原因について、過去の豊富な経験から、指摘できることが多くあります。

例えば、調停委員が、妻(もしくは夫)の生活が苦しいことに同情し、できるだけ早期に離婚を成立させようと無理して、中立性が壊れてしまっているとき、その問題点を指摘し、調停委員の発言や態度を修正するよう求めることができます。

このとき、法律や裁判例に基づく解決があなたにとって有利なとき、適切な根拠を示し、調停委員を説得できます。

残念ながら、一方当事者に弁護士がついており、他方当事者には弁護士がついていないとき、調停委員の中には、弁護士の言い分に強く影響され、弁護士のついていない当事者に対し、中立とは思えない対応をしてしまう方がいます。弁護士がついていない離婚調停や、一方のみに弁護士がついている調停で、「声の大きいほうが勝つ」、「ゴネ得」といった状況にあることは否めません。

このような問題点が明らかになったときは、あなたも途中から弁護士をつけることで、調停委員の態度が劇的に変わったと感じることができるでしょう。

弁護士によるチェックをはたらかせることで、調停委員が相手に味方をするような発言をしづらくなり、中立・公平を保つことができます。

離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、離婚調停でよく相談を受ける、調停委員の中立・公平について、調停委員が中立公平を損なっていたり、相手の味方ばかりしていたりするときの対処法を、弁護士が解説しました。

調停委員が相手の味方をしていると感じるケースの多くは、調停委員が離婚調停を成立させるためにあえて不利な法律知識を伝えるなどの戦略的な振る舞いをしていたり、調停委員の役割としてあえて行っていたりする行動が、中立性を残っているように見えてしまうことが原因となっています。

しかし一方で、調停委員としての資質を疑問視せざるを得ない、問題ある対応をする調停委員もいるため、適切な対応方法、切り返し方を知らなければ、不利な調停が成立してしまうおそれがあります。

少なくとも、調停委員の中立・公平が疑わしいと感じるとき、常識の範囲内で、その原因を冷静に伝え、改善を求めるようにしてください。決して、調停委員と感情的に対立してはなりません。

離婚調停での対応をはじめ、離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

弁護士 浅野英之の詳細はこちら

ご相談予約受付中!

法律問題にお悩みのすべての方へ。
弁護士法人浅野総合法律事務所まで、まずはお気軽にご相談くださいませ。
法律相談のご予約は、24時間受付しております。

03-6274-8370

お問い合わせ

-離婚・男女問題
-

法律相談のご予約は、
 24時間お受付しております。 

03-6274-8370

お問い合わせ

© 2021 弁護士法人浅野総合法律事務所