離婚・男女問題

養育費・婚姻費用の算定表が改正!増額請求できる?【2019年12月23日】

2021年6月16日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

こちらの解説は、動画でもご覧いただけます。

養育費や婚姻費用を算定するときに、家庭裁判所の実務で重要視されている「養育費・婚姻費用算定表」が改正されました。

新しい養育費・婚姻費用算定表は、最高裁判所の司法研修所から2019年12月23日に発表され、同日より適用されることとなりました。

従来の算定表は、これによって算定される養育費、婚姻費用が実態を反映していない低額なのではないか、という批判の多いところでありました。これを受け、新算定表に改訂された後は、1万円~2万円程度の増額が見込まれます。

そこで今回は、

  • 新しい養育費・婚姻費用算定表の具体的な変更内容
  • 増額請求が可能な場合の方法、対応など

といった点について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

養育費・婚姻費用について

養育費・婚姻費用算定表の改正

養育費・婚姻費用はいずれも、夫婦関係が悪化して離婚に至るときに、夫婦間で決めておくべき「お金の問題」の中でも重要なものです。

離婚時に決めておくべき「お金の問題」には次のようなものがあります。

  • 財産分与
  • 慰謝料(不貞行為、DVなど)
  • 婚姻費用
  • 養育費

このうち、婚姻費用と養育費は、期間によって金額が変動するため、期間が長期間となるほど高額になります。

特に、離婚に向けた話し合いが難航し、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟に長期間かかると婚姻費用は高額化します。また、子どもが幼く、将来成人するまでに長期間を要するほど、養育費は相当高額になります。

養育費とは

養育費とは、夫婦が離婚をしたときに、親権・監護権を取得しなかった方の親が支払う、子どもの養育、教育、医療などにかかる費用の分担のことです。

民法は、別居中の子どもの生活保持義務を定めています。

そして、夫婦が離婚したとしても、親子関係はなくなりません。そのため、親権・監護権を取得しかなった親にとっても、「子どもの親」であることは変わらず、離婚後は養育費を負担し続ける必要があります。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦としての関係は続いているものの別居中の人にとって、相手方配偶者と子のための生活費の負担のことです。

つまり、別居をしている間も、相手方配偶者の生活を、自分と同等程度のものとする義務がある結果、収入の多い方は、収入の少ない方に対して、一定の生活費を与えなければならないというわけです。

この婚姻費用は、たとえこの先は離婚を考えていて、夫婦関係が致命的に悪化していたとしても、夫婦としての籍が残っている限り支払を継続しなければならないのが原則です。なお、婚姻費用は「別居中の生活費の問題」だけでなく、同居中でも請求することができます。

新しい養育費・婚姻費用算定表とは

養育費・婚姻費用算定表の改正

養育費・婚姻費用の決定は、話し合いによって合意ができないときには、家庭裁判所の調停・審判で決定することとなります。実務上、裁判官、調停委員の判断の基準となるのが「養育費・婚姻費用算定表」です。

離婚の協議中、調停中であるなど、まだ養育費や婚姻費用の決まっていない方は、2019年12月23日以降は、新しい算定表にしたがって決定することとなります。

そこで次に、養育費・婚姻費用算定表が改正された理由や、どのように利用されるのかといった点について解説します。

養育費・婚姻費用算定表とは

実務上、養育費・婚姻費用は、払う側の親(義務者)の年収から、税金や住居費、日常生活に一般的に必要となる費用などの「必要経費」を控除し、平均的な家庭の生活費、平均的な学費を考慮して決めた係数をかけて算出します。

そして、この複雑な計算方法をわかりやすく表の形式にまとめたのが、養育費・婚姻費用算定表です。表の形式になっており、一見してわかりやすいため、家庭裁判所の実務でよく使われるようになりました。

算定表では、子の人数と年齢、夫婦双方の年収をもとに、一定の幅のある養育費・婚姻費用の支払額を導き出すことができます。

旧算定表(2003年~2019年12月22日)への批判

2019年12月22日以前の旧算定表は、2003年に作成されたものが使い続けられていました。しかし、社会情勢が変化し、旧算定表で定める養育費・婚姻費用は実態に合わない低額なものとなっているという批判がされていました。

まず「社会情勢の変化を踏まえていない」という点について、2003年から2019年までの間、消費税をはじめとした税制が大きく改正され、個人の負担は増加しています。

その上、物価も上昇していますが、物価変動の影響は算定表に反映されていませんでした。子どもにもスマートフォンを持たせることが当たり前の時代になったように、通信費の負担も増大しています。

婚姻費用や養育費が、一般的に生活に必要となる支出に充当されるべき費用である以上、これらの実態の変化は、算定表に反映されるべきものです。

新算定表に基づき、養育費・婚姻費用を増額請求する方法

養育費・婚姻費用算定表の改正

2019年の新算定表への改正では、養育費・婚姻費用は社会情勢の変化にあわせて増額方向で修正されています。

そのため、養育費・婚姻費用を増額請求できる場合があります。大部分のケースでは養育費、婚姻費用を月額1万円から月額2万円程度、追加で請求できるようになります。

そこで、新算定表に基づいて、養育費・婚姻費用を増額請求する方法について解説します。

新旧の算定表を比較する

まず、新旧の算定表を比較し、自分の状況が、増額請求が可能なケースであるかを検討してください。

特に、現在まだ離婚協議中、離婚調停中などで、養育費・婚姻費用についての取り決めを終了していない場合には、損をしてしまわないよう、すぐに確認するようにしましょう。

既に養育費・婚姻費用について一定の取り決めをしている場合にも、その取り決めが2019年12月23日以前になされたものである場合には、新算定表に照らして増額が可能か比較してください。

新算定表のほうが高額な場合には、増額を請求すべきケースにあたります。なお、子どもの人数と年齢、夫婦の収入差などによっては、残念ながら新算定表への改正でも増減額があまりないケースもあります。

増額請求の交渉をする

新旧の算定表を比較し、新しい算定表のほうが高く、かつ、既に旧算定表に基づいて養育費・婚姻費用を定めていたような場合には、増額請求の交渉を開始してください。養育費・婚姻費用は、一度合意したとしても、事情の変更に応じて変化することが予定されているものです。

このとき、後述の解説にもあるとおり、増額請求をする根拠を示す必要があります。

増額請求の根拠としては、次のような事情を主張することが重要です。

  • 支払を受ける側の収入が下がったことの証明(給与明細・源泉徴収票・課税証明など)
  • 支払を受ける側の支出が上がったことの証明(通帳の写し、クレジットカード利用明細、家計簿など)

あわせて、相手の収入が上がったことなどが確かな場合には、相手にもそれらを証明すべき資料を開示するよう求めます。

養育費請求調停・婚姻費用分担請求調停を申し立てる

養育費・婚姻費用算定表は、子どもの年齢と人数、夫婦の収入差によって定める形式となっています。

そのため、相手の年収がわからない場合には、支払額を決めることができません。相手の年収は、相手に開示を求めることとなりますが、一度は定めた養育費・婚姻費用を増額請求しようというケースでは、相手が誠実に話し合いに応じてきてくれないおそれも十分にあります。

個人事業主や会社経営者の場合、経費を算入することである程度自由に年収を操作することができるため、十分な資料を入手しなければ適正な支払額は決められません。

また、養育費・婚姻費用算定表は、増額傾向に修正された新算定表といえども一般的な生活を前提とした内容であり、私学や医学部に通いたい、留学したいといった需要を満たすものではありません。

そのため、養育費・婚姻費用の増額請求について話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に調停の申立てを行います。調停では、調停委員が両者の意見を聞き、合意形成のための調整をしてくれます。

養育費請求審判・婚姻費用分担請求審判を申し立てる

調停手続きによっても合意が成立しないとき、審判の申立てを行います。

調停は、家庭裁判所で行う手続きですがあくまでも話し合いであり、相手が合意しないときには養育費・婚姻費用を増額してもらうことができません。

これに対して、審判では、調停委員の意見を参考にしながら、家庭裁判所の裁判官が、養育費・婚姻費用の適正な支払額を決定します。この際にも、算定表が重要な目安として利用されます。

養育費・婚姻費用の増額請求をするときの注意点

最後に、新しい養育費・婚姻費用算定表に基づいて、養育費や婚姻費用の増額請求をするときに注意しておきたいポイントについて解説します。

増額の根拠が必要となる

2019年12月23日に発表された新しい養育費・婚姻費用算定表では、社会情勢の変化を踏まえ、養育費・婚姻費用が増額されています。

まだ養育費・婚姻費用についての取り決めができていない方は、新算定表に基づいたより高い金額を主張することができるのですが、既に取り決めをし終えている人が増額請求する際には、注意しておいていただきたい点があります。

それは、同じく2019年12月23日付で発表された平成30年度司法研究概要では「本研究の発表は、養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない」との記載があるとおり、「算定表が変更された」という事情だけを理由に増額請求をすることはできないということです。

つまり、新しい算定表に基づいて増額請求をする場合には、増額請求をする根拠が必要であり、その根拠については増額請求をする側が証拠により立証しなければなりません。

過去分にさかのぼって増額請求はできない

もう1つ注意しておいてほしい点が、過去分にさかのぼっての増額請求はできないということです。

「算定表が新しくなったのだから、これまで損をしていた気がする。これまでの分も追加で請求したい」という気持ちはよく理解できますが、あくまでも新しい算定表の適用は2019年12月23日からです。

したがって、増額請求が可能な場合には、早めに請求すべきということになります。

養育費・婚姻費用のトラブルは浅野総合法律事務所にお任せください!

養育費・婚姻費用算定表の改正

今回は、2019年12月23日に最高裁司法研修所より発表された養育費・婚姻費用算定表の改正と、増額請求が可能なケースでの対応方法について解説しました。

養育費、婚姻費用について新算定表が適用される2019年12月23日以降も、実際に養育費、婚姻費用を決めるにあたっては、具体的な事情を加味して検討しなければなりません。相手との間で支払額について争いがある場合、その判断はとても難しい問題です。

「実際にいくらの養育費、婚姻費用を請求できるか」といった問題についてご不安のある方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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