離婚・不貞

離婚協議書を公正証書にする方法と注意点【弁護士解説】

2020年6月25日

離婚協議書公正証書

夫婦の協議によって離婚が決まることを「協議離婚」といい、このときに作成される書面のことを「離婚協議書」といいます。

離婚協議書には、離婚をする際の離婚条件、離婚後の子どもやお金のルールなど、夫婦間の重要な取り決めがかかれています。そのため、より強い効力を有する「公正証書」の形式にしておくことがお勧めです。あとから、相手方が離婚協議書の通りにルールを守らなかったとき、「公正証書を作成しておけばよかった」と後悔しても後の祭りです。

裁判によらずに強制執行できるメリットのある公正証書にも一定の限界があり、デメリットがありコストもかかるため、はじめから公正証書にすることを前提に協議書を吟味することが重要です。

今回は、離婚協議書を公正証書にする方法、公正証書に記載しておくべきことや注意点について弁護士が解説します。

「離婚・不貞」弁護士解説まとめ

離婚協議書を公正証書にする理由

離婚協議書公正証書

夫婦間で離婚についての協議をした後、合意内容を書面化した「離婚協議書」は、法律上有効な契約書面です。このため、夫婦は離婚協議書の内容にしたがって、双方の義務を誠実に履行しなければなりません。

合意をしたことを示すために、離婚協議書という「書面」による客観的な証拠を残しておくことでは必ずしも十分ではなく、それでもなお、離婚協議書を「公正証書」とすることには、大きな理由があります。

そこで、このように法律上有効な合意書面を、あえて公正証書とする理由について、弁護士が解説します。

離婚協議書とは

離婚協議書とは、養育費、財産分与、慰謝料など、離婚をするにあたっての条件やルールを定め、夫婦でこれを約束した書面です。離婚についての話し合いを「離婚協議」といいますが、この離婚協議の結果をまとめ、約束として形に残すのが離婚協議書の役割です。

「離婚協議書」という言葉自体は法律に記載のある文言ではないため、上で見たような離婚に当たってのルール等を記載した書面であれば、それを離婚協議書と呼称します。

そして、先ほど解説したとおり、離婚協議書は夫婦間で交わした約束を書面化したものですので、法律上有効な契約書となります。

公正証書とは

公正証書とは、法律の専門知識を有する「公証人」によって作成された公文書です(公証人法1条1項)。公文書とは、社会的信用の担保された公的な書面(例えば運転免許証など)を指します。

このような公正証書の性格から、公正証書には高度の証明力があり、信頼も高いです。つまり、離婚や男女問題のトラブルが裁判所で争われるとき、公正証書はとても意義のある文書となるわけです。

離婚協議書を公正証書にして作成することには、メリットもありますがデメリットもあります。

離婚協議書を公正証書にするメリット

離婚協議書を公正証書にするメリットには、主に次の2点です。

  • 法的有効性が担保されること
  • 債権回収(養育費・慰謝料など)の確実性が高まること

夫婦の間で協議の結果、自分たちだけで作成した離婚協議書は、曖昧な記載、不十分な記載がなされていることがあり、ときには法的に効力を有さない記載が含まれることも少なくありません。

その点、公正証書は法律の専門知識を有する公証人の手によって作成されるため、法的に有効な書面が作成されることが担保されます。また、その内容においても、疑義が生じない明瞭な書面が作成されます。このため、離婚協議書完成後に無用な争いが生じるリスクを極力減らすメリットがあります。

次に、離婚協議書を公正証書とすることで、養育費、慰謝料その他の金銭に関する支払義務違反について、裁判手続によらずに「強制執行」による回収を可能とします。つまり、支払いがなければ義務者の財産を差押えすることができます。

したがって、養育費を受け取る側(権利者)にとっては、相手方(義務者)からの養育費の支払いがストップした場合、これを公的機関によって強制的に履行させることができるというメリットがあります。よく利用されるのが、義務者の給与債権の差押えです。

通常、債権の差押えの際に、給与債権を対象とする場合には、その4分の3が差押え禁止債権とされているため、その4分の1までしか差押えることができません。

しかし、養育費の強制執行の場合には、養育費を支払ってもらう権利を保護するため、給与の2分の1まで差押えをすることができます。

参 考
民事執行法改正による財産開示手続・第三者からの情報取得手続

民事執行法は、昭和54年に制定された、権利の強制的な実現についてのルールを定める法律です。平成15年と平成16年に改正がなされていますが、この度、権利実現手続きの更なる改善のため、改正がされています。 ...

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離婚協議書を公正証書にするデメリット

離婚協議書を公正証書にするデメリットには、以下の2点が考えられます。

  • 法的拘束力の強度が増し、柔軟な支払方法に応じてもらえない
  • 時間と費用がかかる

公正証書作成のメリットの裏返しとして、養育費や慰謝料などの金銭の支払義務者にとっては、公正証書を作ることによって法的拘束力がより高まります。そのため、柔軟な支払方法によって対応することが難しく、支払義務者としては自己の生活に少なくない影響が生じる可能性も出てくるデメリットがあります。

また、夫婦双方にとっての公正証書を作ることのデメリットは、公正証書の作成に時間と費用が掛かることです。

ただ、費用は離婚協議書の内容、分量にもよって変わりますが、妥当な内容にすることによって相当程度の費用に抑えることができます。時間がかかるというデメリットについても、夫婦がそろって公証役場に行かなければならないという手間がかかりますが、弁護士に依頼することで代わりに公証役場へ出頭してもらうことができます。

離婚協議書を公正証書にする手順

離婚協議書公正証書

離婚協議書を公正証書化しておくデメリットはそれほど大きくなく、養育費や慰謝料などが将来未払いとなったときのことを考えると、強制執行を可能にしておくために公正証書を作成しておくメリットが大きいことをご理解ください。

しかし、その上でもなお、これから離婚協議書を公正証書として作成することを考えている方にとっては、公証役場に赴いたことがないという方がほとんどではないでしょうか。公正証書化する費用や手間が面倒であったり、方法や手続がわからず、そのまま放置してしまっている夫婦も少なくありません。

そこで次に、離婚協議書を公正証書にする手順について弁護士が解説します。

離婚条件の協議をおこなう

離婚することとなった夫婦が最初に行うべきことは、離婚の条件について話し合いをすることです。

よく、「お互いに離婚をすることは合意しているから」と離婚を簡単なものと甘くみている人がいます。しかし、離婚をすることには合意をしていても、離婚の条件がまとまらず、協議が長期化してしまうことはよくあります。

双方に離婚の意思があるからと言って、足早に離婚届を提出することはお勧めしません。夫婦間で具体的にお金の問題、子どもの問題を話し始めると、どこかに行き違いが生じます。そのとき「こんなことになるなら、離婚は延期しておけばよかった」と後悔しても後の祭りです。

まずはしっかりと離婚条件を話し合い、夫婦間で約束事を決めましょう。

離婚協議書を作成する

そこで、離婚条件を具体的に定めて、離婚協議書に定めます。

離婚協議書は離婚に関する夫婦の「契約書」ですから、契約書に記載がない事項は当事者間で約束がなされていないとされても仕方ありません。離婚にあたって相手に要求しておきたいことは全て伝え、離婚協議書に漏れや抜けがないか必ずチェックしておいてください。

離婚協議書に定めておくべきことには、大きく分けると以下の2点となります。

  • 子どもに関するルール
    :親権・監護権をどちらの親が有するか、養育費の金額・支払方法に関するルール、特別の出費があった場合の負担のルール、面会交流の方法・回数などの取り決め
  • 財産に関するルール
    :財産分与、年金分割、慰謝料など

なお、夫婦は、婚姻から生ずる費用である「婚姻費用」を分担する義務があります(民法760条)。例えば離婚前に夫婦が別居していた場合には、この婚姻費用の精算に関する取り決めも記載することがあります。

公証役場に申請する

離婚協議書が完成したら、これを公正証書として作成するために、必要書類をそろえて公証役場へ申し込みをします。

離婚時に、夫婦間の争いをできるだけ回避するために重要なことは、「公正証書にするよりも前に、まず合意内容を書面化しておく」ということです。

もちろん、離婚協議書に記載された内容が法的に問題ないことが前提です。また、公証役場へ提出する必要書類には、当事者の本人確認資料、戸籍謄本などが必要です。

公正証書の作成には、公証人の面前で当事者二人が厚生省所の原本に署名と押印をすることが手続上必要となります。つまり、作成にあたっては当事者双方の合意が必須です。このため、公正証書の作成には夫婦で公証役場まで出向かなければなりません。

離婚協議書を公正証書にするときの注意点

離婚協議書公正証書

夫婦で作成した離婚協議書に、法的に無効な条項や、抽象的な表現があって解釈の余地が生じる条項が存在する場合には、公証人から修正を指示されることがあります。

このような場合、夫婦間で合意した離婚条件の趣旨を変えずに修正できるよう、公証人との調整が必要となります。

そこで最後に、公正証書化を見すえて、離婚協議書の各条項についてどのような内容にしたらよいかを弁護士が解説します。

離婚届の提出についてのルール

夫婦が協議離婚をするためには、夫婦双方に離婚の意思があり、そして、離婚届を提出しなければなりません(民法764条、739条)。

離婚を成立させるためには離婚の意思だけでは足りず、離婚届の提出が必要であることを、離婚協議書を公正証書として作成する際にも意識しておかなければなりません。特に、離婚に争いがあるとき、離婚届の提出についてのルールを定めておかなければ、相手方が離婚届を出さないという事態になってしまうおそれがあります。

離婚届には、未成年の子の親権者を記載する欄があります。つまり、未成年の子がいる場合には、親権が夫婦のいずれにあるかを予め協議で決定していなければ、協議離婚をすることができません。

子の親権の指定

法律上の婚姻関係にある夫婦は、その未成年の子について共同で親権を行使します(民法818条)。「親権」には、「身上監護権(子の居所を指定する権利)」(民法821条)と、「財産管理権(子の財産の管理や、子を代表して財産上の契約を結ぶ権利)」(民法824条)が含まれます。

夫婦であるときは、父母が共同でこれらの権利を行使することが法律上求められていますが、離婚すると、共同行使が事実上困難となります。そのため、離婚後の親権は「単独親権」となり、父母のいずれか一方を親権者として指定することが法律上求められています(民法819条1項)。

なお、2018年6月に行われた民法の一部を改正する法律(2022年施行)では、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることとなりました。

このため、親権の対象となる未成年の子は、18歳未満の子となります。

養育費

養育費とは、自身の資産を有さない、あるいは自身の労力では生活できる能力がない「未成熟子」を養うため、離婚をした夫婦のうち子を養育する方に他方が支払う費用です。

協議でも裁判になっても、離婚問題で最も争いの火種の一つとなるのが「養育費」の支払いの取決めです。争いとなる最大の理由は、その支払期間が長期にわたるためです。

したがって、養育費の支払義務者も権利者も、月々に支払う額、支払期間を慎重に協議を進めることがポイントです。また、その際には、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に、養育費の月額費用がいくらであれば夫婦にとって適正かを協議します。

養育費の支払いの対象となる未成年の子とは、「未成熟子」です。したがって、養育費の支払期間は、18歳までといった制限はなく、自身で生活が可能となる年齢まで(たとえば、大学を卒業する年齢まで、のような取決めも可能です)とする取決めも可能です。

また、公平性の観点から、夫婦の一方に「事情の変更」が生じた場合には、改めて離婚協議書を見直すこともあります。事情の変更の例には、養育費支払いの義務者の収入が激減した場合や、再婚して子が養子縁組となって新たな扶養者が現れた場合などが代表的です。

面会交流

面会交流とは、親権を相手に譲る親(非親権者)が、子と面接もしくはそれ以外の方法で親子として交流することです。

未成年の子がいる場合、離婚協議書においてこの面会交流に関するルールを設けることが一般的です。面会交流の取り決めをするとき、両親の意見よりも「子の福祉」を重要視して決めるのが、家庭裁判所の考え方です。

離婚が成立した後、あるいは離婚協議書が作成された後に、離婚した当事者間で、この面会方法等について話し合うことは必ずしも容易とは言えません。

このため、非親権者となる当事者は、離婚協議書には面会交流に関するルールを定めた条項を入れて協議するよう相手に申し入れましょう。

年金分割

年金分割制度とは、公的年金のうち、厚生年金と共済年金につき、年金額を算出する基礎となっている保険料納付実績を分割し、これに基づいて算定された額の年金受給権が、当該分割を受けた者自身に発生するという制度です。

簡単に言うと、保険料納付額の多い方から少ない方へ、記録の分割と付け替えが行われるというものです。

分割方法には合意分割と3号分割という方法があります。

  • 合意分割
    :合意によって案文割合の最大限度2分の1として分割できる制度
  • 3号分割
    :平成20年4月以降に、配偶者の一方が第3号被保険者であった期間について、他方配偶者の保険庁納付実績の2分の1を自動的に分割できる制度

いずれの分割方法であっても、原則として離婚等の日から2年以内に請求を行う必要があるので、注意が必要です。

財産分与

財産分与とは、離婚した相手に対して財産の分与を請求することです(民法768条1項)。つまり、これまでの夫婦共同生活の中で形成された「共有財産」を、離婚を契機に夫婦で分ける仕組みです。

まず、財産分与の対象となる財産は、「共有財産」です。夫婦となってから、夫婦の協力があって形成された財産については、離婚時に、夫婦が互いにこれを折半することで清算します。

これと対となる概念を「特有財産」といいます。特有財産とは、名実ともに夫婦の一方にのみ帰属する財産を言います。たとえば、婚姻前から貯蓄していた預貯金その他の財産、婚姻中に得た相続財産が代表的です。

そして、財産分与の対象となる財産は、実務上「別居時」を基準とします。ただし、別居時の総財産を基準とするとしても、その前後に大きなお金の動きがあれば、これも含めて分与の方法を考えることが実務上多いです。

財産分与の問題は、対象となる財産の性質によっても異なります。

例えば、不動産については、離婚時にこれを売却するのであれば、換価価値は金銭化し、残債ローンを差し引いた残額を分けるのが通常です。

しかし、夫婦の一方が住み続ける場合や、夫婦間に持分割合がある場合には、その処理に当たって複雑化することもあります。その他、預貯金、(生命)保険、子供名義の学資保険、株式、退職金等が、主に共有財産として財産分与の中でどのように分与されるか検討されることとなります。

簡単に言えば、金銭化できるものはすべて一度財産分与の対象と考えてみて、どのように夫婦で分与していくかを話し合い、離婚協議書に記載するようにします。

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離婚協議書公正証書

今回は、離婚の話し合いを行っている夫婦の方に向けて、離婚協議書を公正証書にする理由、メリットやその方法、手続について弁護士が解説しました。

離婚問題について多くの経験を有する弁護士であれば、ご依頼者の希望に沿った柔軟な解決策を講じることです。柔軟な対応や誠実に粘り強く対応する弁護士に離婚問題をご依頼することが大切です。

離婚協議書を作成したり、完成した離婚協議書を公正証書にしたりすることも、弁護士にすべてまとめて以来いただくことができます。

離婚問題にお困りの方は、数々の離婚問題に携わり、ご依頼者に寄り添うことをモットーとする浅野総合法律事務所に、ぜひ一度ご相談くださいませ。

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