
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
離婚後のトラブルを防ぐために重要な「離婚協議書」ですが、その内容や作成手続きに不備があると、無効になってしまう場合があります。
また、離婚後に状況が変わり、離婚協議書の内容を変更したい人もいるでしょう。しっかり話し合ったつもりが将来の見込みが甘かったり、予想外の事情が生じたりして、協議書通りに進めるのが困難になるケースもあります。
一度合意した以上、その協議書は有効であり、「清算条項」を記載するなどして最終解決としたはずです。例外的に、協議書が無効になったり変更できたりするケースもありますが、慎重に対応する必要があります。
今回は、離婚協議書が無効となる場合と、無効を主張する方法、その後に内容を変更する際の注意点について、弁護士が解説します。
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

内容や作成過程に問題があると、離婚協議書が無効になる場合があります。以下では、協議書が無効と判断される具体的なケースについて解説します。
協議離婚は、詐欺や強迫を理由に取消しを請求することができます。詐欺又は強迫による婚姻を取り消すことができると定める民法747条が、民法767条で協議離婚に準用されているからです。
詐欺や強迫によって離婚が取り消される場合、離婚協議書も効力を失います。離婚協議書は、協議離婚の成立を前提に作られた文書なので、離婚そのものが無効なら、付随して取り決めた条件も無効になるからです。財産分与や養育費といった金銭はいずれも、離婚するからこそ支払われるものであり、離婚が無効になる場合には得られません。
詐欺や強迫は、配偶者(夫や妻)からの場合だけでなく、第三者(例えば義両親など)から受けた場合にも、離婚を取り消す理由となります。
なお、裁判例でも、次のように判示し、不貞行為や不貞相手との子供の存在を隠して締結した離婚協議書について、錯誤により無効(※2020年4月施行の民法改正以前は、錯誤の効果は「取消」ではなく「無効」とされていました)とした事例があります(東京地裁平成28年6月21日判決)。
被告Y2が被告Y1との継続した不貞関係や婚外子の妊娠の事実を隠して、清算条項を含む本件協議離婚書を原告X1に示し署名させたことは、被告Y2が、慰謝料の支払いを免れて被告Y1との再婚を果たすためであったものと認められ、その清算条項は、原告X1の要素の錯誤により無効であるから、原告X1は、被告らに対し、不貞行為による慰謝料の請求ができるものとするのが相当である。
東京地裁平成28年6月21日判決
「離婚協議書の書き方」の解説

離婚協議書が作成されても、その後、離婚届提出までに夫婦の一方が離婚の意思を撤回した場合は、協議離婚は成立しません。離婚の意思は、離婚届の「提出時」に夫婦双方に存在する必要があります。届出の時点で夫婦の一方に離婚意思がなくなっていた場合、協議離婚が無効となり、その結果、離婚協議書もまた無効となります。
「離婚までの流れ」の解説

離婚協議書に記載された内容が法律に反するなど、問題のある条項は効力を有しません。
無効になる可能性のある条項には、以下の例があります。なお、離婚協議書の一部が無効になっても、その他の適切な部分について全て無効になるわけではありません。
離婚協議書で養育費の請求を放棄する条項を定めても無効です。
例えば「妻は夫に対して、将来一切の養育費を請求しない」などと定める例です。同様に「将来養育費を一切変更しない」という合意も無効となります。
養育費は、親が子供を養育する義務を果たすための金銭であり、子供の扶養請求権の一部であるため、親同士で合意しても放棄はできません(民法881条)。したがって、協議書に養育費を放棄すると定めても、子供が将来請求することは妨げられません。
離婚協議書に親子交流(面会交流)をする権利を放棄する条項を定めるのも無効です。
例えば「離婚後に面会を求めない」「積極的に会おうとしない」などと定める例です。また、「養育費が滞ったら面会交流させない」といった条件付きでも無効となります。
親子交流(面会交流)は、親の権利であるとともに子供の権利でもあるため、子の利益を最も優先して決めるべきだからです(民法766条)。
親権者の変更について、民法819条6項では、「子の利益のため必要があると認めるとき」は家庭裁判所が判断できると定められています。そのため、子供の利益を守るため、離婚協議書で「親権者変更を申し立てない」という条項を設けても、法的な効力を有しません。
離婚協議書で婚氏続称を制限する合意をしても無効です。
離婚後は旧姓に戻るのが原則ですが、離婚後3ヶ月以内に届け出ることで婚姻時の氏を継続して使用できます(婚氏続称)。婚氏続称は、結婚時に姓を変更した側(妻など)にとって、離婚の影響を最小限に抑えるために重要です。「自分の姓を名乗ってほしくない」と感情的に求める人もいますが、協議書で制限することはできません。
公序良俗に反する法律行為は無効となります(民法90条)。離婚協議書でも、法律に違反する行為を強制する条項や、著しく常識外れな内容は、無効となるおそれがあります。
なお、金利の上限を定める「利息制限法」は離婚協議書には適用されませんが、法定金利が年3%であることから、あまりに高金利だと公序良俗違反と評価されるおそれがあります。例えば「不貞慰謝料を分割払いにするケース」などでは注意を要します。
手続きや内容に不備がある場合、必ずしも無効とはならなくても、離婚協議書を活用する際の支障となります。希望した解決は実現できず、離婚後にトラブルを残してしまいます。
離婚協議書の記載が曖昧だと、後から解釈をめぐる争いが生じます。
例えば「養育費は適宜支払う」として金額を書かなかったり、「毎月支払う」として支払日を定めなかったりすると、具体性に欠けるため、請求が難しくなってしまいます。
協議書は、夫婦間の合意内容を第三者に証明するための文書です。相手が約束に従わない場合には裁判所に証拠として提出することとなりますが、その内容が不明確だと、何をどのように履行すべきか、協議書上で判断することができません。
離婚協議書には双方の署名と押印をしておくべきです。これがないと、作成者が不明確となり、夫婦の合意を証明できなくなります。署名押印のない協議書では、「自分の意思で作成したものではない」「文案は見たが、合意はしていない」といった反論を許してしまいます。

離婚協議書の内容や手続きに問題があると、無効になる場合があると解説しました。
ただ、一方的に破棄したからといって約束がなくなるわけではなく、離婚協議書を無効にする具体的な方法について理解しておく必要があります。
裁判手続きは多くの時間と費用がかかるので、まずは話し合いを試みるべきです。
双方が合意すれば、離婚協議書の効力を無くしたり、約束した離婚条件を変更したりすることが可能です。
話し合いを成功させるには、協議書を精査し、無効となる可能性が高い点を相手に伝え、見直しを求めましょう。相手に譲歩を求める際は自身も歩み寄りを見せるのが効果的で、「養育費を見直す代わりに、財産分与は再検討する」など、具体的に提案すべきです。
離婚協議書を作成していても、離婚届が提出されるまでは離婚は成立しません。
そこで、協議書の内容が不満な場合は、離婚届不受理申出を行ってください。不受理申出をすれば、相手が一方的に離婚届を提出しても受理されなくなります。この手続きを活用すれば、離婚の成立を一時的に止め、協議書の無効を主張したり、条件変更を交渉したりする時間を確保することができます。
交渉で解決しない場合、裁判手続きで「離婚無効確認」を求めましょう。
この手続きでは、最初に調停を申し立て、不成立となる場合は訴訟を提起します。ただし、離婚成立後は相手が非協力的となり、交渉が難航するおそれもあります。
離婚無効確認の手続きであれば、詐欺や強迫があった場合や離婚意思がなかった場合に、協議離婚を無効にできます。訴訟に備え、次のような証拠を集めてください。
裁判で離婚無効が確認されると、離婚協議書も無効になります。成立済みの離婚を無効とするには多くの労力を要し、相手との対立も深まることを覚悟して進めましょう。
離婚協議書が無効となった場合、その後は改めて離婚条件について協議をしたり、離婚条件を変更したりすることができます。
「協議離婚の進め方」の解説

次に、離婚協議書を変更する際の注意点について解説します。
協議書は双方の合意で作成されるため、一方的には変更できないのが原則です。しかし、時間の経過や環境の変化によって離婚当初の取り決めが現状に合わなくなることがあるため、例外的に変更が認められるケースもあります。
離婚協議書が、例外的に変更することができるケースは、次の通りです。
離婚協議書を作成した後でも、相手が同意するなら、記載された離婚条件を変更することができます。特に、将来の事情変更が起きやすい子供の問題について、離婚協議書の段階で具体的に決めず、時期を決めて「別途協議する」と定める例もあります。
したがって、離婚協議書の変更を希望するなら、話し合いを試みましょう。協議の結果、相手が変更に同意するときは、当初の書面が無効であることを確認するとともに、新たな合意を書面に残すようにしてください。
例外的に、前提となる事情に大きな変更があったとき、離婚協議書を変更できるケースがあります。ただし、協議書の作成時には予測できなかった大きな変化でなければならず、些細なものや、作成時から予想できていたものでは、当初の合意を変更する理由になりません。
なお、離婚協議書の作成時に、将来的な事情変更の可能性が分かれば、どのような場合に離婚条件を変更するのか話し合い、協議書に書いておく例もあります。例えば「一方の収入が◯割以上増減額した場合、養育費について再協議する」といった条項です。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

次に、よくある離婚条件ごとに、離婚協議書を変更する方法を解説します。
なお、離婚時に定めた条件を事後的に変更する場合、再び争いを繰り返さないよう、公正証書化しておくのがおすすめです。
未成年者の子がいる夫婦の離婚では、親権者を定める必要があります。
しかし、民法819条6項では、「子の利益のため必要があると認めるとき」は、子またはその親族の請求によって家庭裁判所が親権者を変更できることが定められています。例えば、離婚後に次のような事情変更のあるときは、親権者変更を検討しましょう。
子供が幼いうちに離婚するほど、将来的に予想外の事情変更が起こることがあります。事情変更のあるときは、それを理由に親権者変更を家庭裁判所に申し立て、調停・審判による審理を受けることができます。
なお、親権者となった親に虐待などの問題があるなら、親権制限制度(親権喪失、親権停止、管理権喪失の審判)を活用する方法も有効です。ただし、一方の親の親権を失わせても、他方の親が必ず親権を得られるとは限りません。
親子交流(面会交流)は、離れて暮らす親が、子供と交流する重要な手続きです。
離婚時に交流のルールを定めなかったときはもちろん、離婚協議書で定めた場合も、事後の事情変更を理由に、より適切な方法、回数などを再度話し合うことができます。協議で解決しないときは調停を申し立て、それでも合意できなければ家庭裁判所の審判で決めてもらうことができます。
ただし、面会交流もまた、親権・監護権と同じく子供の利益を優先して決めるべきであり、必ずしも親の希望に沿うとは限りません。
当事務所の解決事例でも、協議書で取り決めをした後になって、交流のルールを定め直したケースがあります。
解決事例の詳細は、こちらをご参照ください。

離婚協議書に定めた養育費も、事情の変更を理由に増減額を請求できます。
この場合も、話し合いで解決しないときは調停を申し立て、合意に達しないときは審判に移行して家庭裁判所の判断を受けます。
家庭裁判所の判断は「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決められるため、一度取り決めた養育費を変更できるかどうかは、この表を左右するほどの事情があるかを検討する必要があります。例えば、次のような事情について確認してください。
【増額を請求すべきケース】
【減額を請求すべきケース】
財産分与は、離婚時に取り決める家庭が多いものも、離婚後も5年以内であれば請求が可能です(民法768条2項但書)。
そのため、離婚協議書で財産分与を決めなかったとき、離婚後に改めて調停を申し立て、財産分与を請求することができます。一方で、財産分与を定めて離婚したときは、相手が離婚協議書に違反したとしても、財産分与をやり直すことはできません。
なお、前提となる財産の価値に錯誤がある場合や意思表示に瑕疵がある場合、離婚協議書が無効とし、財産分与のやり直しを認めた裁判例があります(東京地裁平成18年10月16日判決:対象となった株式の価値に錯誤があるとして財産分与の合意を無効とした事例)。
「離婚後の財産分与請求」の解説

不法行為の時効は「損害及び加害者を知った時から3年間」(生命・身体の侵害の場合は5年)とされます。そのため、離婚に伴う慰謝料についても、時効期間の経過前であれば、離婚後でも請求することができます。
離婚時に慰謝料を受け取っていない場合はもちろん、離婚協議書に清算条項があっても、新たな不貞が発覚した際にはその分の慰謝料を追加で請求できます。
最後に、離婚協議書の無効や変更について、よくある質問に回答しておきます。
相手が離婚協議書に違反しても、協議書そのものが無効になるわけではありません。
例えば「養育費を支払わないなら離婚を無効にしたい」といった言い分は通りません。ちなみに、未払いがあった場合は速やかに法的手段を講じる必要があります。このとき、公正証書にしていれば、裁判を経ることなく強制執行が可能です。
一度作成した公正証書の変更は、新たな公正証書を作成する方法によります。
したがって、当事者間で話し合い、どこをどのように変えるかを決めたら、変更内容をまとめ、公証役場で公正証書を再度作成します。
再度作成した公正証書についても、裁判を経ることなく強制執行できる強い効力が生じるため、本当に変更すべきかどうかは、弁護士に相談するなどして慎重に決めることをおすすめします。
「離婚協議書を公正証書にする方法」の解説


今回は、離婚協議書を作成後、無効にしたり変更したりできるかどうかを解説しました。
一旦合意した内容は、変更できないのが原則です。ただし、相手が変更に同意している場合のほか、意思表示に瑕疵があったり離婚意思がなかったり、事情変更があったりした場合には、例外的に離婚協議書が無効になるケースがあります。
無効を主張する際は、相手との話し合いを優先し、離婚前なら不受理申出、離婚後なら離婚無効確認調停・訴訟を活用することが重要です。また、内容を変更することができる場合にも、新たな合意については公正証書化することでトラブルを防ぐべきです。
離婚協議書について対立が生じているとき、法律に基づいた正しい解決策を講じるためには、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/