離婚・男女問題

離婚協議書で決めた条件を、離婚後に変更することができますか?

2021年7月27日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

夫婦間の離婚の話し合いで、合意し、離婚協議書を作成した後でも、一度決めた条件を変更したいと考えることがあります。

十分に時間をとって話し合ったつもりでも、将来のさまざまなケースについて考えきれていなかったり、予想外の事情が発生してしまったりして、離婚協議書どおりに進めていくことが困難なことがあります。

しかし、一度離婚の合意に至ったとき、その合意した内容の変更は原則として不可能です。あとでいくらでもやり直せるのでは、離婚問題を一回的に解決できず、離婚協議書の意味がなくなってしまいます。離婚協議書では通常、後戻りできないことを示すために「清算条項」を記載します。

ただし、例外的に、①変更に相手も同意する場合、②意思表示に瑕疵があった場合、③事情変更があった場合に、離婚協議書の内容を変更できる場合があります。

今回の解説では、

  • 原則として離婚協議書を変更できない理由
  • 離婚協議書を、事後的に変更することができるケース
  • 離婚条件ごとの、離婚協議書を変更するときの方法

といった離婚協議書を締結した後の法律知識について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

まとめ解説
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原則として、離婚協議書は変更できない

原則として、一旦合意した離婚協議書は、後から変更することができません。いつでも変更ができてしまうとすれば、離婚協議による話し合いで離婚問題を終局的に解決することができなくなってしまいます。

話し合いの末、離婚届を提出すると、その時点から夫婦の関係は失われます。そのため、離婚時に決めておくべき次のような主要な問題については、離婚と同時に決めておき、離婚協議書に合意しておくことが通常です。

お金に関する離婚条件子どもに関する離婚条件
  • 親権・監護権
  • 面会交流
  • 養育費

特に、対立の深い離婚事件では、離婚時にしっかり話し合っておかなければ、離婚後は協議に応じてもらえないおそれもあります。

このように離婚協議書を最終解決とし、ここで定めた以外のことについて将来も請求しないことを示すために、離婚協議書に「一切の債権債務がない」ことを示す「清算条項」を記載することが通常です。

ただし、親権・監護権については離婚時に必ず定めておかなければならないのに対して、それ以外の離婚条件は、必ずしも離婚時に決めなければならないわけではありません。

そのため、離婚時に決めなかった離婚条件については、離婚協議書を作成後(ないし離婚後)にあらためて請求できます。例えば、離婚後に慰謝料や財産分与を請求するケース、離婚後に面会交流を求めるケースといった例です。

例外的に、離婚協議書を変更できるケース

以上の通り、原則として一旦合意した離婚協議書を変更することはできませんが、例外的に、離婚協議書を変更できるケースとして次の3つがあります。

変更に相手が同意する場合

例外的に、離婚協議書を作成した後でも、その変更について相手が同意する場合には、離婚協議書に記載された離婚条件について変更することができます。

特に、将来の事情変更が問題となりやすいのが子どもの問題ですが、相手も子どもに対する愛情はあって、変更に同意してくれる可能性があります。そのため、特に子どもの問題について離婚協議書を変更したいと考えているときには、まずは「相手が変更に同意をしてくれないかどうか」を、話し合ってみるのがおすすめです。

話し合いの結果、離婚協議書の変更に相手が同意するときは、当初の書面が無効であることを確認するとともに、あらたな合意を内容とする書面を作成しておくようにしてください。

意思表示に瑕疵があった場合

例外的に、離婚協議書における合意の意思表示に錯誤があったときには、その合意を取り消すことができます(民法95条)。また、合意を強制されてしまった場合には強迫(民法96条1項)、だまされて合意をしてしまった場合には詐欺(民法96条2項)を理由に、同様に合意を取り消すことができます。

裁判例(東京地裁平成28年6月21日判決)では、次のように判示して、不貞行為や不貞相手との子どもの存在などを隠して締結した清算条項つきの離婚協議書について、錯誤により無効(※2020年4月新民法施行前のため「取消」でなく「無効」)と判断しました。

東京地裁平成28年6月21日判決

被告Y2が被告Y1との継続した不貞関係や婚外子の妊娠の事実を隠して、清算条項を含む本件協議離婚書を原告X1に示し署名させたことは、被告Y2が、慰謝料の支払いを免れて被告Y1との再婚を果たすためであったものと認められ、その清算条項は、原告X1の要素の錯誤により無効であるから、原告X1は、被告らに対し、不貞行為による慰謝料の請求ができるものとするのが相当である。

事情変更があった場合

例外的に、前提となる事情に大きな変更があったときには、離婚協議書に記載された離婚条件について変更することができます。ただし、些細な事情の変化ではなく、重要な事情について、離婚協議書の内容を変更する必要があるほどに大きな変化がなければなりません。

また、離婚協議の当初より話題になっていたような事情の変更は、離婚協議書に予定されていたと考えることができます。そのため、離婚協議書を変更するほどの事情変更とは、当初予測することができなかったようなものに限られます。

なお、もしも離婚協議書を作成するとき既に、将来的な事情変更が予想されているときには、そのような事情変更があったとき離婚条件をどのように変更するのか(もしくは変更しないのか)をあらかじめ話し合い、協議書に定めておくことがおすすめです。

【離婚条件別】離婚協議書を変更するときの方法

次に、離婚後に変更がよく問題となる離婚条件ごとに、離婚協議書で定めたことを変更するときの方法について解説していきます。

特に、前章で解説した3パターンのうち、締結後に事情変更があったことを理由として離婚協議書を変更するときのポイントを中心に解説します。

子どもの親権・監護権の変更

未成年の子どもの親権・監護権については離婚時に必ず決めておかなければなりません。そして、離婚協議書などで一度決めた子どもの親権・監護権について、次のような事情変更により変更を検討すべきケースがあります。

  • 親権者が病気や薬物中毒になり、育児が困難となってしまった
  • 親権者を援助してくれる予定だった親が亡くなってしまった
  • 親権者の仕事がなくなり、育児が困難となってしまった
  • 親権者が再婚したが、再婚者が子どもに悪影響を与える
  • 親権者が育児放棄・虐待をするようになった

子どもの問題は、子どもが幼いほど将来長期間にわたって続くものなので、当初は予定していなかった事情変更が多く発生する可能性があります。

このようなとき、事情変更を理由として、親権者・監護権者の変更を申し立てることができます。この親権者・監護権者の変更の申立は、離婚時には離婚協議書で定めていたときにも、家庭裁判所に申し立て、調停で審理をしてもらう必要があり、元夫婦間の合意があっても勝手に親権者を変更することはできません。

家庭裁判所の心理では、子どもの福祉の観点から、親権者を変更すべきかが審理され、元夫婦の合意が困難なときには、審判に移行し、家庭裁判所の判断を得ることができます。

なお、親権者となった親に虐待などの問題があるときには、親権制限制度(親権喪失の審判・親権停止の審判)を活用して親権を失わせる方法も有効です。

ただし、親権者となった親が親権を失ったからといって、他方の親が自動的に親権を得られるわけではありません。

面会交流

面会交流は、親権を有していない親が子どもと交流する重要な権利です。

離婚時に面会交流について定めていないときはもちろん、一旦離婚協議書などで定めた後でも、事後的な事情の変更を理由に、より適切な方法、回数などを再度話し合いすることができます。

また、話し合いで解決しないときは、調停を申し立てることができ、それでも合意できないときは家庭裁判所の審判によって決定してもらうことができます。

ただし、面会交流もまた、子どもの親権・監護権と同様、子どもの福祉の観点から決められるため、必ずしも親の希望が認められるとは限りません。

養育費の増減額請求

離婚協議書で一旦定めた養育費について、事後的な事情を理由として増減額を請求することができます。

例えば、一度決めた養育費の増減額が問題となるのは次のようなケースです。

【増額請求のケース】

  • 子どもの進学、留学などにより新たな出費が必要となった
  • 子どもが特別な病気にかかり、多額の医療費が必要となった

【減額請求のケース】

  • 親権者が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組した
  • 親権者側の収入が大きく増額された
  • 非親権者側が仕事を退職することとなり収入が大きく減少した

養育費については、将来長期間にわたる問題であるため、事情変更による増減額請求はよく行われています。そして、その方法は、養育費についての定めがないときと同様、まずは当事者間で話し合い、解決できないときは調停申し立てを行います。

調停で合意に達しないときには、審判に移行し、家庭裁判所の判断を受けることができます。このとき「養育費・婚姻費用算定表」を参考にしながら、一度取り決めた養育費があるときは、これを増減額するほどの事情の変更があるかどうかについて審理されます。

離婚後の財産分与の請求

財産分与は、離婚時に取り決めておく例が多いですが、離婚後に決めることもできます。この場合、離婚後2年以内であれば財産分与を請求できる(民法768条2項但書)となっています。

そのため、離婚協議書で財産分与について決めていなかったときは、離婚後2年以内に、財産分与調停を申し立てる方法により、財産分与を請求する必要があります。

これに対して、一旦財産分与についての取り決めを行ったときは、相手が離婚協議書に違反しても、財産分与をやり直すことはできません。相手が離婚協議書に従って支払いをしないとき、離婚協議書を公正証書化しているときには、強制執行(財産の差押え)をすることができます。

また、財産分与の合意について、前提となる財産の価値に錯誤がある場合や、意思表示に瑕疵のある場合には、その離婚協議書が無効となり、財産分与をやりなおすことを認めた裁判例があります。裁判例(東京地裁平成18年10月16日判決)では、財産分与の対象となる株式の価値に錯誤があるとして、財産分与に関する合意を無効と判断しました。

参考解説

離婚後の慰謝料請求

不法行為の慰謝料請求の時効は「損害及び加害者を知った時から3年間」(民法724条1項)とされています。そのため、離婚にともなう慰謝料は、離婚時から3年以内であれば、離婚後であっても請求することができます。

そのため、離婚協議書で慰謝料を請求していない場合(清算条項も記載していない場合)には、離婚から3年以内であれば、その離婚原因となった不貞行為やDVなどについて慰謝料請求ができます。

また、離婚協議書で一定の慰謝料を受け取っていたり、「これ以上の請求をしない」という「清算条項」を記載していたときであっても、新たな不貞行為が発覚したり、新たに精神的苦痛を負ったりしたときには、その分の慰謝料請求を追加で行うことができます。

離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、離婚協議書によって一旦は合意した離婚条件について、事後的に変更できるかどうかを解説しました。

一旦合意した内容について事後的に変更はできないのが原則ですが、①変更に相手も同意する場合、②意思表示に瑕疵があった場合、③事情変更があった場合では、例外的に離婚協議書を変更することが認められる場合があります。

ただし、いずれの場合も相手にとって不利な離婚条件への変更となるため、相手が反対する場合には再度調停手続きなどで争っていく必要があります。離婚協議書の変更が認められるほどの大きな事情変更があったといえるかどうかについて、見通しを検討してから進めることが有効です。

離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

まとめ解説
離婚協議書の書き方と、必ず記載すべき重要項目、作成方法【書式付】

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

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