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協議離婚とは?話し合いの進め方とうまく離婚する方法の流れを解説

協議離婚は、夫婦が話し合って離婚を成立させる最も一般的な方法です。令和2年人口動態統計によると、日本における離婚件数の約90%は「協議離婚」という結果でした(つまり、離婚調停や離婚裁判に至るケースはごく一部です)。

しかし、協議離婚を甘く見てはいけません。協議離婚の流れでは、親権や養育費、財産分与といった難しい法律問題を、夫婦が当事者のみで取り決める必要があります。準備不足があったり、合意内容が法的に見て不十分だったりすると、不適切な協議離婚が後のトラブルにつながります。

今回は、協議離婚の基本的な流れと話し合いの進め方について弁護士が解説します。有利な解決を得るには、先の流れを理解し、相手の反論を予測しながら戦略的に進める必要があります。協議離婚をスムーズに進め、後悔のない離婚を目指すための参考にしてください。

この解説のポイント
  • 協議離婚でうまく離婚する方法を知れば、費用と時間、手間を節約できる
  • 協議離婚の流れの初めに、離婚を切り出す前の準備を徹底することが重要
  • 協議離婚の流れの最後に、合意した離婚条件を離婚協議書にして証拠化する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

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協議離婚とは

協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって合意し、離婚届を提出することで成立する離婚の形態です。調停や訴訟のように裁判所の手続きを介さず、夫婦間で条件を決め、市区町村役場の窓口に離婚届を提出するだけで手続きが完了するため、最もシンプルで早期に解決できる方法です。

初めに、協議離婚がどのような場合に成立するのか、基本知識を解説します。

協議離婚が成立するケース

協議離婚は話し合いによる離婚であり、協議離婚に向けた流れを「離婚協議」と呼びます。協議離婚は法的な手続きを経ないので、進め方に決まったルールがあるわけではなく、合意の内容も、当事者間で柔軟に決められます。

ただし、協議離婚が成立するケースは、夫婦間の話し合いで合意できることが条件です。合意については「離婚すること」と「親権の帰属」の2点について必要となります。つまり、夫婦双方が、離婚に同意し、かつ、いずれが親権者となるかについて意見の対立がないケースでしか、協議離婚は成立しません。離婚だけでなく親権の帰属についても合意を要するのは、離婚後の子供の生活を不安定にさせてしまわないためのルールです。

離婚までの流れ」の解説

協議離婚を選ぶ理由とメリット・デメリット

多くの夫婦が協議離婚によって離婚するのは、離婚調停や離婚裁判(離婚訴訟)といった裁判所を介する手続きが不要であり、迅速に離婚することができるからです。また、裁判費用がかからないのは当然、弁護士を依頼する場合にも、調停・訴訟よりも安価に済むことが多いです。

協議では離婚できないとき、調停前置主義に従ってまず調停を申し立て、それでも解決しないとき訴訟に移行するという流れで進みます。協議離婚は話し合いの手続きなので、速やかに済まそうとすれば譲歩や妥協を要します。相手との対立が深いとき、先に進めていくか、それとも協議離婚で成立させてしまうかは、次のメリット・デメリットを考慮して決めてください。

協議離婚のメリット

協議離婚は、相手に受け入れてもらえれば、すぐに離婚が成立できるメリットがあります。調停や訴訟のように裁判所を使う必要もなく、かかる費用や時間も少なくて済みますし、離婚条件も、必ずしも法律の定めに従わければならないわけではありません。

  1. 手続きが簡易である
    調停・訴訟のように裁判所を介する煩雑さはありません。
  2. 迅速に離婚できる
    離婚条件が整えば離婚届を提出するだけで完了するため、早期解決が可能です。
  3. 話し合いで自由に取り決めできる
    養育費や財産分与といった離婚条件について双方の合意に基づいて自由に条件を設定できます(例えば、「養育費について算定表の相場を超える額とする」「養育費を請求しない代わりに財産分与を増額する」など)。
  4. 離婚理由を問われない
    裁判で離婚できる理由(法定離婚事由)がなくても合意すれば離婚できます。
  5. 費用を削減できる
    裁判所を利用しないことで、弁護士費用や訴訟費用を抑えられます。

協議離婚のデメリット

協議離婚は、時間や費用を抑えたい夫婦にとって魅力的な選択肢ですが、慎重に準備しないと後からトラブルが生じるリスクも伴います。

  • 本人間の議論では冷静になれない
    夫婦が直接話し合うことは、感情的な対立が激しいと困難です。特に相手がDV・モラハラ気質だと、協議だけで終わらせようとすると自分が譲歩することとなります。
  • 法律知識が不足していると不利な解決となる
    裁判官や調停委員のような中立的な第三者がいないので、不公平な条件を押し付けられていることに気付かず離婚してしまうリスクがあります。協議の段階から弁護士を依頼することで防ぐことができます。
  • 将来にトラブルが起こってしまう
    口頭の合意のみで離婚条件を約束したり、離婚協議書の記載を知らなかったりすると、離婚の合意が成立した後にトラブルを残すおそれがあります。

協議離婚の流れと話し合いの進め方

次に、協議離婚の流れと話し合いの進め方について順番に解説します。

離婚協議は、夫婦間で行われる離婚についての話し合いであり、法的な側面を抜きにすれば、様々な家庭で日常的に行われます。そのため、進め方に法律のルールがあるわけではありません。うまく離婚するには、相手の気持ちや反論にも配慮しながら進める必要があります。

STEP

協議の事前準備をする

協議離婚をスムーズに進めるには、相手に切り出す前に準備をしましょう。準備が万全でないと、反論に応じて「その場しのぎ」の対応をして不利な流れになってしまいます。

必要書類や証拠を準備する

協議離婚で財産分与や養育費、慰謝料といった争点を話し合うために、関連する資料を事前に集めましょう。例えば、預金通帳や保険証券、不動産登記簿謄本といった資産のリスト、住宅ローンや借用書、クレジットカード明細などの負債の情報、家計簿や給与明細、確定申告、養育費の算定表といった生活費や養育費に関して必要となる資料などを手元にそろえてください。

離婚相談の準備とメモ」の解説

争点と予想される反論を整理する

相手の反論を予想し、争点ごとに自分の希望を整理します。

事前に考えておくことで、話し合いになってから感情的に対応することは避けられます。冷静に進めるには、準備の段階で伝えることを決めておくのが大切です。協議離婚で話し合うべき内容は家庭によって様々で、多岐にわたります。

例えば以下の項目を考えてみてください。

  • 親権
    子供の親権を夫または妻のどちらが持つか、離婚後の子供の生活環境も具体的に考えておいてください。
  • 養育費
    支払額の希望や支払期間、支払い方法。双方の収入差、子供の年齢、人数をもとに「養育費・婚姻費用算定表」に従って概算しておきます。
  • 財産分与
    夫婦の共有財産の有無や額、分与の割合などを予想しておいてください。
  • 慰謝料
    不貞やDVなど、離婚の原因が相手にあるとき、慰謝料の金額や支払条件も検討してください。

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離婚後の生活設計を考える

離婚後の生活を、できるだけ具体的にイメージして計画を立ててください。例えば、次の点が重要なポイントとなります。

  • 住居の確保
    離婚後にどこに住むか、新しい住まいを探し、家賃や引越し費用を見積もっておきましょう。
  • 子供の生活環境
    どのように子育てをするか、転校や引っ越しの影響を最小限に抑えるためには、事前に準備しておかなければなりません。
  • 収入の確保
    離婚後に必要な生活費を見積もり、収入の見通しを立てます。専業主婦(主夫)だった場合、どのような仕事に就くかも検討してください。自分一人の稼ぎでは、すぐには経済的に安定しないときは、養育費や財産分与を活用したり、両親からの援助も検討すべきです。

将来、後悔しないよう、離婚を切り出す前にじっくり考えてください。また、離婚の協議は、すぐに終わるとは限らないので、切り出す前に、別居先を準備し、別居時に持ち出す荷物を決めておく必要があります。特に、DVやモラハラ気質の相手だと、突然離婚したいと伝えると激昂し、暴力や暴言の犠牲になる危険があります。

別居時の荷物の持ち出し」の解説

離婚を切り出す日を決める

事前準備の最後に、離婚を切り出す日を決めましょう。

何となくの流れで伝えるのではなく、切り出す日時や状況を定め、計画的に進めなければ、あなたや子供の身に危険が及ぶおそれもあります。決行日を決めたら、直前までには子供や自身の両親などに伝えておきましょう。別居する場合は、相手のいないタイミングで行います。すぐに別居するわけではない場合も、子供が学校に行っている間や寝静まった後などに別室で行ってください。

相手がDV・モラハラ気質なとき、別居して弁護士を介して伝えるのがお勧めです。

STEP

相手に離婚を切り出す

離婚を切り出すのは、夫婦双方にとってデリケートな問題です。

伝えられた相手にとってもショックが大きいと予想されるので、慎重に進めるべきです。相手に配慮しながら、一方で自身の安全を守るためにも、難航しそうな協議は弁護士にご相談ください。これまで一度も「離婚をしたい」という意思を伝えたことのない家庭では、過剰な反応をされる危険があるので注意を要します。

安全対策を講じる

離婚を切り出す際は、相手が感情的になるリスクを考慮して、安全を確保する工夫が必要となります。

  • 子供を保護する
    子供は実家に預けておくか、一緒に別居するなど、離婚の協議に巻き込まれないようにします。
  • 部屋を整理して危険を除去する
    部屋の中に包丁などの危険な物がないように片付けておいてください。
  • 避難の準備をする
    相手が暴力を振るう可能性があるとき、自分で伝えるなら、いつでも逃げられるようドアの近くを離れないようにしましょう。実家や友人宅、ホテルなど、安全な場所に逃げられるよう準備し、生活必需品や数日分の服をまとめておきます。

なお、暴力のリスクがある場合に自分で伝えるのはお勧めではなく、別居後に弁護士を通じて伝えるか、離婚調停に進むべきです。

モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

タイミングを見極める

話し合いのタイミングは、相手が冷静で話を受け入れやすい状況を選んでください。定型化することは難しいですが、避けるべきタイミングは次の通りです。

  • 相手が疲れているとき(仕事から帰宅後すぐなど)
  • 相手がストレスを抱えている時期
  • お酒を飲んでいるとき
  • 外出中などで落ち着いて話せる環境にないとき
  • 子供が近くにいるとき

伝え方を工夫する

切り出す際は「離婚したい」という意思を明確に伝えてください。曖昧な態度では伝わらなかったり、「説得すれば離婚を回避できるのでは」と思われ、受け入れてもらえなかったりするおそれがあります。円滑に進めるには、本気度と覚悟を見せることが大切です。モラハラ気質の夫や妻に虐げられてきた人ほど、明確な意思表示が必要です。

ただし、直接的な言葉を選ぶ一方で、相手を傷つけない配慮も必要です。刺激をしすぎると話し合いが進まず、逆効果なこともあります。

  • 口頭で伝える場合
    感情的にならず、冷静に話してください。相手の非難や侮辱はせず、離婚を決断した理由をはっきりと伝えるのが重要です。協議離婚で終わらせようとするなら、一度で決着させるのでなく、時間をかけて納得いくまで話し合う姿勢が重要です。
  • メールやLINEで伝える場合
    直接の対話が難しい場合には、メールやLINEを活用する手段もあります。この場合にも、長文を送ってしまうと相手の気持ちを逆なでするおそれがあります。必要なことを簡潔に、ただし誠意を込めた文面で伝えてください。

書面やメール、LINEなら、事前によく文章を推敲することができます。適切な内容なら、相手に受け入れてもらえる可能性を上げることができますし、離婚の意思を伝えたことを証拠に残すことができるのでお勧めです。

STEP

離婚の条件を決める

離婚することに合意が得られたら、具体的な離婚条件を決めていきます。後のトラブルを防ぐためにしっかりと取り決めることが重要です。離婚は、夫婦関係の最終的な清算なので、条件を曖昧にしたり中途半端なまま離婚したりしないようにしてください。

抜けや漏れがないか心配な方や、話し合いが難航するケースでは、弁護士に相談し、家庭の状況に合ったアドバイスを得るようにしてください。

協議で何を決めるべきか、以下の点を参考にしてください。

子供の問題を優先して話し合う

子供がいる夫婦は、離婚条件の中でも親権を最優先で話し合う必要があります。親権を父母の一方に決めなければ離婚届は受理されません。金銭的な条件は譲り合いが可能な場合でも、子供のことだけは絶対に譲れない人もいます。親権の話し合いは、「子の福祉」の見地から考えていきますが、争いがある場合には協議離婚は難しいこともあります。

親権が決まった後は、面会交流、養育費についても話し合いましょう。「養育費・婚姻費用算定表」を活用して、金額、支払い方法、支払期間などを具体的に決めていきます。

財産分与や慰謝料を決める

子供の問題に争いがない場合や子なしの家庭では、次に、財産分与や慰謝料といった金銭的な条件について話し合います。財産分与は、婚姻中に築いた財産を公平に分配する考え方で、預貯金や不動産、退職金などが対象となります。離婚原因が不貞やDVなどの相手の非にあるときは、慰謝料を請求することが可能です。

金銭的な問題は、譲り合って中間的な解決ができればそれほど揉めないこともあります。相場からかけ離れた請求をすると対立が激化するため、早期離婚を目指すなら、現実的な金額の請求に留めるのがよいでしょう。

STEP

離婚協議書を作成する

離婚条件について合意に至ったら、離婚協議書を作成します。

離婚協議書は、離婚の条件について夫婦の合意内容をまとめ、約束を証拠化した書面であり、「離婚契約」とも呼びます。離婚協議書があれば、後から「言った・言わない」の水掛け論となることは避けられます。更に、公正証書化すれば、協議書の内容が守られなかったときに、慰謝料や養育費などの金銭請求について強制執行により財産を差し押さえることができます。公正証書は、公証役場で作成する公文書で、裁判を経ずに強制執行できる強い効果があります。

幼い子供がいると、長期間にわたって養育費の支払いが生じるため、きちんと取り決めしておかなければ、将来未払いとなったときに後悔してしまいます。

離婚協議書の書き方」「離婚協議書を公正証書にする方法」の解説

STEP

離婚届を提出する

最後に、離婚届を作成し、役所に提出すれば協議離婚が成立します。離婚日は、離婚届を提出した日となります。

離婚届には、本人の記載欄に加え、証人2名の署名が必要です。未成年の子がいるときは、父母のいずれか一方を親権者として指定し、離婚届に記載しなければなりません。離婚届は、本籍地、または、住所地の役所に提出します。この際、身分証明書、離婚届に押した印鑑もあわせて持参します。本籍地でない役所に提出するときは、夫婦であったときの戸籍謄本も必要です。

いずれか一方が離婚届不受理申出をしているときは、撤回してから離婚届を提出します。

「離婚の意思」は、離婚届の「提出時」に存在しなければなりません。

口約束はあっても、提出時には離婚の意思がない場合、相手に離婚届不受理申出をされてしまうと離婚ができません。

そのため、必ず、離婚協議書を先に作成して証拠化してから離婚届を出すよう注意すべきです。財産分与や慰謝料などの離婚時の給付は、離婚届を確実に提出した後で支払うようにしてください。

協議離婚でうまく離婚する方法と注意点

協議離婚でまとまらないときの対応は

次に、協議離婚で、できるだけうまく離婚する方法について解説します。

離婚の責任に固執しない

協議離婚は、話し合いによる離婚なので、「離婚の責任がどちらにあるのか」を決定する手続きではありません。むしろ、協議離婚が成立するときは、お互いの非は責めず、曖昧にしたまま合意することが多く、慰謝料の支払いについても定めないケースもよくあります。

明らかに不貞の証拠があるといったケースは別として、夫婦喧嘩の原因や些細な問題点については、離婚を決断したのであればこれ以上追及しないことが、うまく離婚する方法です。感情的な対立を和らげるには、手紙を送って思いを伝えるのも効果的です。

離婚調停・離婚協議中の手紙」の解説

譲歩できる離婚条件を検討する

協議離婚では、相手の希望もあるので、全て思い通りというわけにはいきません。対立が深く、難航しそうなときは、冷静に条件を見直し続ける姿勢が重要です。離婚条件の中でも、財産分与や慰謝料、養育費のように金銭的なものについては、「双方の希望の間を取る」ことによる中間的な解決に向けて譲歩すれば、相手もまた歩み寄ってくれる可能性があります。

相手に不倫や浮気があると、感情的に高額の慰謝料を請求する人もいますが、相手にどうしても離婚したい理由でもない限り、少なくとも協議の段階でまとまることは難しいでしょう。「早期に離婚すること」を優先して譲歩するなら、妥協点が見いだせる可能性があります。

ただし、親権の争いのように、どうしても譲歩が難しい争点があるケースは、協議離婚を目指すのではなく、調停・訴訟を検討すべきです。

信頼できる弁護士に相談する

協議離婚がなかなか成立しないとき、弁護士のアドバイスが役立ちます。

協議離婚の進まない原因が、夫婦の双方または一方に法律知識がなく、裁判では実現不可能な離婚条件に固執しているようなケースは、弁護士から正しい法律知識を教えてもらって説得すれば、うまく離婚できる可能性があります。弁護士名義の内容証明でプレッシャーをかけて本気度を示したり、窓口にして感情的な対立を排除したりすることも、離婚へのスピードを早める効果が期待できます。

自分で協議を進めるにせよ、相談でアドバイスをもらったり、場合によっては後方支援を依頼したりすることもできるので、まずは法律相談から検討してみてください。

離婚に強い弁護士とは」の解説

協議離婚が成立しない場合のその後の流れ

次に、求める離婚条件がかけ離れていたり、そもそも相手が離婚の話し合いに応じなかったりなど、協議離婚が成立しない場合のその後の流れについて解説します。協議離婚できない場合でも離婚を強く希望するなら、家庭裁判所を利用して法的手続きに進む必要があります。

なお、相手の交渉態度に問題があるときは、離婚協議を録音したり、メールやLINEメッセージを保存しておいたりして、証拠に残すようにしてください。

早めに別居する

離婚の協議中、同居したまま話し合いをしていた場合、まとまらないと分かったら速やかに別居しましょう。同居中の協議は、冷静に話し合いができなかったり、あなたの覚悟が伝わらず「説得したり無視したりすれば離婚しなくても済む」と思われていたりすることがあります。

別居して、物理的な距離を離すことで、お互いに頭を冷やして、離婚について見つめ直すことができます。激しく争っていた離婚条件について譲歩が可能だと気付くかもしれません。性格の不一致や価値観の相違のように、必ずしもどちらかの責任とは言い難い離婚理由の場合には、長期の別居を経ることによって、家庭裁判所で離婚を認めてもらいやすくする効果もあります。

別居期間の目安は、いずれにも離婚の責任がないケースでは3年〜5年、有責配偶者からの離婚請求は8年〜10年程度が相場とされています。したがって、離婚の意思が固いなら、できるだけ早く別居するのがお勧めです。

離婚前の別居の注意点」の解説

離婚調停を申し立てる

離婚調停は、家庭裁判所で調停委員と裁判官が関与し、夫婦の話し合いをサポートする手続きです。協議で合意に至らないとき、中立な第三者の仲介によって、当事者同士よりも譲歩しやすく、感情的な対立を沈めて離婚に進みやすくなります。

離婚調停を希望する一方の申立てによって始まり、非公開の調停室で調整を行います。ただし、あくまで話し合いが基本であり、強制的に離婚させる効果はありません。調停不成立の場合には、裁判離婚に進むかどうかを選択することとなります。

離婚調停の流れと進め方」の解説

離婚裁判を提起する

離婚調停でも成立しないとき、最終手段が離婚裁判(離婚訴訟)です。日本では、「調停前置主義」というルールがあるため、離婚裁判をするには、先に調停を申し立てる必要があります。離婚訴訟は、協議や調停とは異なり、相手が離婚を拒んでも、不貞や悪意の遺棄といった法定離婚事由があれば、強制的に離婚を勝ちとることができます(民法770条)。

ただし、離婚裁判は時間と費用の負担が大きく、証拠によって離婚理由を立証する必要があるため、慎重に進めなければなりません。必要に応じて弁護士を活用し、専門的なサポートを受けながら進めるのがお勧めです。

離婚裁判の流れ」の解説

協議離婚についてのよくある質問

最後に、協議離婚についてのよくある質問に回答しておきます。

協議離婚にかかる期間は?

協議離婚に要する期間は、夫婦の状況や離婚に向けた気持ちの強さ、争点の数や内容によって異なるので、一概には決まりません。

ただ、裁判所を利用する方法に比べ、話し合いで合意できれば比較的短期間で解決できるのが、協議離婚のメリットです。お互い冷静に話し合えれば、最短では数日〜数週間でスピード離婚が成立することもあります。

弁護士に協議離婚を依頼した場合には、1ヶ月〜3ヶ月程度で離婚を成立させることを目標にして進めます。離婚協議が長引くとき、歩み寄る余地がなさそうだと判断できるなら、離婚調停に進む方が結果的に早く離婚を成立させられます。

離婚の協議を途中で中止できる?

離婚協議が難航し、話し合いの継続が難しい場合には、協議を一時中止するのも選択肢の一つです。

例えば、相手が感情的になって激しく反論したり、暴力やモラハラに発展したり子供に危険が及んだりするとき、無理に協議を続けると更に悪化するおそれがあります。また、子供の受験や親族の不幸、天災など、協議に集中できない事態が発生したときにも、あわてて離婚するのでなく、一旦中断することを検討してください。

なお、離婚協議を中断している間にも、協議再開に向けた証拠の整理や条件の整理など、準備を進めておいてください。また、協議が進んでいなくても、「離婚を希望している」という意思は伝え続けることで、あなたの覚悟の強さを知らせることができます。

モラハラの証拠」の解説

離婚協議書は必須?

離婚協議書は必須ではありません。協議書がなくても、離婚届さえ出せば、協議離婚は成立します。ただ、取り決め内容を明確化し、証拠に残しておくことは、トラブルの予防のために重要です。曖昧な合意や口約束では、後の紛争リスクが高まります。

協議書を公正証書化しておけば、特に養育費や慰謝料の支払いが滞ったとき、裁判を経ずに給料差押えなどの強制執行が可能です。公正証書にしていないと、未払いがあっても再度裁判をして、勝訴判決をもってしか強制執行ができません。

協議をせずにいきなり調停も可能?

協議を経ずに調停を申し立てることは可能です。

例えば、対立が激しく、協議で終わらないことが容易に予想できる場合や、相手が話し合いを拒否している場合は、協議を試す意味は薄いです。暴力があるケースは、協議すること自体がむしろ危険です。このようなケースは、調停からスタートすることで初めから中立的な第三者が関与し、記録に残しながら丁寧に進める方がよいでしょう。

ただし、争いがあまりに大きく、調停でも解決しないときは裁判に移行する必要がある点は考慮しておかなければなりません。協議せずに調停するなら、事前準備を徹底し、弁護士に依頼して進めるなど、万全の体制で臨むようにしてください。

離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説

協議では離婚したくない場合は?

協議では離婚したくない場合、あくまで互いの同意がなければ協議離婚は成立しないので、単に断るのみで足り、それ以上の行為は不要です。求める条件が相手と合わないなら、たとえ離婚したいとしても、協議離婚では実現できません。

一方で、離婚を拒否するだけでなく、復縁を希望する場合は、そのための努力をする必要があります。具体的には、ただ拒むだけでなく、問題点を振り返り、反省と改善を伝えなければなりません。

なお、勝手に離婚届を出されるリスクがあるときは、協議で離婚したくないなら、離婚届不受理申出をしておくのが効果的です。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、協議離婚の流れと、うまく離婚するための進め方を解説しました。

協議を進める方法や手順は、法律に定めがありません。そのため、どのように進めれば希望する解決が実現できるのかをよく考え、慎重に進める必要があります。求める離婚条件に達しなくても、離婚届を出して協議離婚が成立してしまえば、一旦成立した離婚を無効にするのは非常に困難です。全体の流れを理解することで、場当たり的でなく、戦略をもって対応することができます。

調停や訴訟といった裁判手続きにならない協議の段階でも、離婚問題を弁護士に任せることにメリットがあります。「裁判になったら依頼しよう」というのではなく、裁判の前からしっかりと準備し、法律に基づいた主張を弁護士から行うことが、結果的に納得のいく解決に繋がります。

この解説のポイント
  • 協議離婚でうまく離婚する方法を知れば、費用と時間、手間を節約できる
  • 協議離婚の流れの初めに、離婚を切り出す前の準備を徹底することが重要
  • 協議離婚の流れの最後に、合意した離婚条件を離婚協議書にして証拠化する

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参考解説

協議離婚は、夫婦の話し合いで離婚条件に合意し、離婚届を提出することで成立します。この手続きは比較的簡単で迅速に進められる一方、難しい法律問題があっても自分達で乗り越えなければなりません。

合意内容が曖昧なままだと後にトラブルが生じるおそれがあるので、「協議離婚」の解説を参考にして進めてください。

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