別居時の荷物の持ち出しと、別居するときの妻側の5つの注意点

離婚を考えている女性の方であれば、まずは離婚をする前に、一旦別居をするという方が多いのではないでしょうか。

離婚条件を、話し合いによって決めるためには、ある程度の期間が必要であり、夫婦関係が破綻していると、同居しながら話し合いすることは困難な場合があります。

離婚理由が夫側のDVやモラハラにある場合には同居を継続していくこと自体が困難ですし、離婚に争いがあり、調停、訴訟などの争いになる場合にも、同居しながら離婚を進めていくことは困難な場合が多いことでしょう。

しかし、離婚に向けた別居をするとき、「荷物の持ち出し」には細心の注意を払わなければなりません。持ち出してはいけない荷物を持ち出し、DV夫からの激しい攻撃を食らうケースも少なくないからです。

そこで今回は、離婚を考えている妻側の立場に立って、別居時の荷物持ち出しについての注意点を、離婚問題を得意とする弁護士が解説します。

1. 離婚を決意!別居前に話し合いすべき?

離婚をすることを決意し、別居する決断をした女性の方であっても、別居前に一度は、夫側と話し合いをし、離婚をすること、離婚条件などについて協議したほうがよいケースが多いでしょう。

離婚を固く決意していても、なかなか夫に言い出すことができず、こっそりと隠れて別居をする方もいますが、この先調停や訴訟などにこじれたときのリスクを考えると、話し合いを試してみるほうがよいでしょう。

別居をする覚悟があることを伝えて話し合いを進めることで、夫の態度が大きく変化し、夫婦生活が円満に戻ったり、あなたのご希望通りの条件で離婚が成立したりすることも十分考えられるからです。

ただし、夫からの暴力、暴言などのDV、モラハラがある場合、話し合いなどはせずにいち早く別居しなければならないケースもあります。

2. 別居時の荷物に注意が必要な2つの理由

さて、別居先を決め、いざ別居となると、着の身着のままで手早く別居をしてしまう方も多いようですが、別居時の荷物、持ち物には、細心の注意が必要となります。

別居先が決まり、別居をするタイミングが決まったら、別居日の少し前から身の回りの整理をし、別居時に持ち出すべき荷物についてよく検討し、準備しておく必要があります。

別居時の荷物に注意が必要な理由について、離婚問題を得意とする弁護士が解説します。

2.1. 忘れ物を取りに戻れない

夫側との離婚の協議が円満に進むケースや、既に夫婦の冷却期間が長期間となっているケースでは、一旦別居したとしても、あとから忘れ物を取りに戻れるケースもあります。

しかし、夫との離婚協議が十分ではなかったり、夫のDV、モラハラがあるケースでは、ひとたび別居に踏み切ると、持ち出していない荷物があったとしても、忘れ物を取りに戻ることは困難です。

そのため、あとから持ち出していない必需品に気づいた、ということのないよう、別居前に、あらかじめ必要な荷物をすべて持ち出しておく必要があります。

2.2. 夫に勝手に処分されてしまう

夫婦関係が悪化し、感情的な対立が激しい場合には、夫は、別居した妻が残していった荷物を勝手に処分してしまうかもしれません。

荷物を捨てられるまでには至らなくても、勝手に整理されてしまったり、身の回りのものを触られたりすることは、気分のいいものではありません。

夫婦関係の破綻が決定的なケースでは、妻の別居を機会に、夫側が、家の鍵を取り換えてしまい、妻が必要な荷物を持ち出せないようにしてしまうケースも、残念ながら存在します。

「別居まで時間がない。」とか、「大きな荷物を持ち出す余裕がない。」といったケースで、やむを得ず荷物を残しておく場合には、処分されてしまうリスクに備えて、残しておいた荷物の写真を必ず撮っておきましょう。

3. 別居時に持ち出すべき荷物とは?

以上のとおり、別居時には、持ち出すべき荷物について、しっかり検討しておくことが必要であることをご理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、離婚に向けた別居を決断した場合、別居日までにあまり時間的余裕のないケースも多いことでしょう。特に、夫側のDVやモラハラで、生命、身体の危険を感じているときには、速やかに別居をする必要があるのでなおさらです。

そこで、別居を決意した妻の立場に立って、別居時に持ち出しておいたほうがよい荷物について、弁護士がまとめておきます。なお、あくまで一例であり、事案によっては、他にも持ち出した方がよい荷物がないかどうか、考えてみてください。

3.1. 財産に関する物

財産に関する物、例えば、現金、預金通帳、キャッシュカード、クレジットカード、生命保険の証券、実印など、いわゆる「貴重品」は、必ず持ち出しておいたほうがよい荷物であるといえるでしょう。

「さすがに、貴重品は処分されないだろう。」と考えるのは甘い考えであり、夫婦関係が破綻している状態であれば、夫はあなたの持ち物を勝手に処分してしまうかもしれません。処分されて困る物は持ち出しておきましょう。

宝石やアクセサリー、貴金属、ノートパソコンなど、高価な物についても同様に、別居時に持ち出しておいた方がよい荷物であるといえるでしょう。

3.2. 生活必需品

別居を決断するときには、今後、離婚がまとまるまでは取りには戻れないと考えるべきです。話し合いで離婚できないときは、裁判まで戻れないことも考えておかなければなりません。

そのため、当面生活できるための生活必需品は、必ず持ち出しておいたほうがよい荷物です。

例えば、運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証などの身分証、普段飲んでいる薬、少なくとも季節分の衣類などを持ち出しておくことが必要です。

3.3. 子供のために必要なもの

妻側が別居をするとき、お子さんがいらっしゃるときには、連れて出ることがほとんどなのではないでしょうか。

あなたはもちろんのこと、お子さんもまた、別居後も変わりなく生活していくために、子供の生活のために必要な荷物についても、別居時に持ち出しておくことが必要です。

「子供に対する愛情はあるから、後からでも協力してくれるだろう。」という考えが、甘かったことを別居後に知ることにならないよう、お子さんが学校で使用する教材、ノート、お子さんが幼い場合には特に育児に必要な物についても持ち出しておく必要があります。

3.4. 思い出の品、記念品など

思い出の品や記念品などは、その持ち主にしか価値がない物であることがほとんどです。あなたの思い出の品について、夫はまったく興味がないでしょう。

特に、結婚前の思い出の品など、夫には何の価値もなく、放置したまま別居してしまうと、あなたのいないうちに整理されたり、処分されてしまったりすることが容易に想像できます。

したがって、思い出の品や記念品など、捨てられてしまうと困るものは、別居時に必ず持ち出すようにしてください。

3.5. 離婚手続に必要な資料

今後の離婚を決意して別居する場合には、離婚が成立するまで戻れない可能性もあることから、離婚手続を進めるために必要な物もまた、別居時に持ち出しておきましょう。

夫側が離婚に反対している場合や、離婚自体には同意していても離婚条件に争いのある場合には、いざ離婚手続が進んでも、必要な資料を夫が協力的に出してくれるとは限らないからです。

特に、離婚調停、婚姻費用分担調停、離婚訴訟などで要求される、源泉徴収票、給与明細などは、必ず持ち出しておくべき荷物であるといえます。

3.6. 離婚協議を有利に進めるための証拠

離婚を進めていくにあたって、離婚条件の折り合いがつかないとき、あなた側に有利に離婚協議を進めるための資料は、あなたが準備し、保管しておかなければなりません。

そのため、別居時には、離婚協議を有利に進めるための証拠となる物を、必ず持って出るようにしましょう。

例えば、あなたが日ごろつけていた日記帳、PC内のデータ、浮気・不倫の証拠となる写真やデータ、DV・モラハラの証拠となる録音、診断書などが、離婚協議を有利に進めるための証拠として考えられます。

また、離婚条件のうち財産分与を決めるときに、夫側に財産を隠されてしまわないように、夫名義の通帳、生命保険証書、不動産の権利証などについても、写真や写しを必ず準備し、別居時に持ち出すようにしましょう。

4. 別居時に持ち出してはいけない荷物とは?

別居を検討している方の中には、別居日までにかなり期間があったり、夫もまた別居自体には同意をしていたりと、別居時に持ち出す荷物について検討する時間が十分にある方もいます。

できればすべての荷物を持って行ってしまいたいという思いもあるでしょうが、夫側の都合もありますからそうはいきません。

そこで次に、別居時に、むしろ持ち出すとトラブルとなりかねない荷物など、持ち出すべきではない物について、弁護士がまとめておきます。

4.1. 相手方名義の物

相手方名義の物を勝手に持ち出すと、その後のトラブルの火種となるおそれがあり、離婚条件の話し合いもまた、円満に進まなくなってしまうおそれがあります。

例えば、相手方名義の預金通帳、相手方の生活必需品、相手方名義の生命保険証書、不動産の権利証などは、財産分与の結果、あなたがどうしてももらいたいものであるとしても、別居時にはひとまず置いて出ることとなります。

勝手に持ち出してしまうことで、離婚協議が進まないことはもちろんのこと、損害賠償を請求されてしまうおそれもありますので、注意が必要です。

なお、財産分与の際に、財産を隠され、過少申告されると、妻側が不利になってしまうおそれがありますので、置いて出るにしても、すべて写真か写しをとっておくことをお勧めしています。

4.2. 共有財産

相手方名義の物は相手方の所有物であることから、別居時に持ち出してはトラブルの原因となるわけですが、夫婦の共有財産もまた、すべて別居時に持ち出してしまっては、トラブルの火種となることでしょう。

夫婦の共有財産は、離婚の財産分与の際には、それぞれ2分の1を取得するのが原則です。ただし、購入時の負担割合や寄与の程度によっては、「半々」ではないこともあります。

そのため、夫婦の共有財産をどのようにわけるかは、離婚協議のうちの財産分与の話し合いによって決めるべきであって、別居時に強行的に持ち出してしまうことは避けるべきでしょう。

別居をしたときに生活に必要となる資金がどうしても足りない場合などに、現金の半分を目安に持ち出すなど、やむを得ないケースも少なくありませんが、持ち出した分は、財産分与などで離婚時に清算されることとなります。

5. 別居時に妻側が注意すべきポイント

最後に、別居を検討している妻側の女性が、特に注意しておくべきポイントについて、弁護士が解説します。

それぞれ、別居を検討している妻、あまり準備をせずに別居を行った妻の方から、特に法律相談の多い内容ですので、注意しておくとよいでしょう。

5.1. 必要以上に持ち出さない

離婚を決意している妻側の立場では、離婚後の生活に不安を感じ、「持っていけるだけ持っていこう」とか、「離婚のときにほしい物はすべて持って出よう。」といった方もいます。

しかし、必要以上に別居時に荷物を持ち出してしまうと、荷物の持ち出し自体が別の争いをまねき、離婚の話し合いがまとまりづらくなってしまうおそれもあります。

特に、現金、預貯金通帳については、財産分与や婚姻費用として、通常認められる程度の金額を超えて持ち出しをすると、夫側から強い反発を招くことが容易に予想されます。

また、預貯金通帳の管理を、妻側で行っていた場合に、すべての預貯金を持ち出してしまうと、むしろ夫側が生活できず、夫側からの返還請求を受けたり、損害賠償請求をされたりするおそれがあり、注意が必要です。

5.2. 別居時の持ち出しは「窃盗」?

別居時に、相手方の持ち物を持ち出してしまうと、刑法にいう「窃盗罪」にあたると主張され、「警察にいくことになる。」と夫側から脅しを受けることがあります。

ただし、刑法では、「親族相盗例」といって、配偶者の間では、窃盗が成立しないこととされていますので、夫側が警察に通報したとしても、「身内の争い」「夫婦喧嘩の延長」として、取り上げられない可能性が高いでしょう。

とはいえ、「窃盗にならないのだから、何を持ち出してもよいのだ。」ということにはならないことは、この解説をお読みいただいていればご理解いただけることでしょう。

持ち出すものが多ければ多いほど、夫側の反発を招きやすいことから、必要な物だけを持ち出すよう心掛けるのが正しいといえます。

5.3. 別居後に荷物を捨てられてしまったら?

別居後に、あなたの荷物が夫によって捨てられてしまった場合には、他人の物を勝手に捨てるという点で、「器物損壊罪」などの犯罪にあたる可能性があります。

器物損壊罪には、さきほど解説しました「親族相盗例」のように、配偶者であれば成立しないという特例はないため、夫が妻の物を勝手に捨てたとすれば、厳密には犯罪に該当することとなります。

しかしながら、離婚を決意して別居をしたときに残しておいた荷物が捨てられてしまった、というケースでは、警察に被害届を出したり、告訴・告発したとしても、事件化してもらえる可能性は低いでしょう。

勝手に処分された荷物について、損害賠償を請求したとしても、一度使った持ち物の価値は低く算定され、納得のいく損害賠償を得られる可能性は低いと考えられます。

したがって、捨てられて困る物は、必ず別居時に持ち出すようにし、家具・家電など、物理的に、時間的に持ち出すのが困難なものは、勝手に捨てられないよう写真を撮っておくようにしましょう。

5.4. 別居先を教えるよう迫られたら?

別居をする前に、いま一度、夫婦間で離婚についての話し合いをしておいたほうがよいと解説しましたが、いざ別居をするときには、別居のタイミング、別居日などは伝えないほうがよいケースが多いでしょう。

実際には、置手紙によって今後の別居と離婚に向けた話し合いの連絡先を伝えることが一般的です。

しかし、別居をする理由によっては、夫に対して別居先を教える必要まではないケースがあります。特に、DVやモラハラによって、精神的、肉体的なダメージを受けている場合、別居先は教えるべきではありません。

子供との面会を理由として別居先を教えるよう強要してくる夫もいますが、子供に会うのは、日時を約束して外で会えばよいのであって、別居先を教えなければならない理由とはなりません。

6. まとめ

今回は、離婚を決意し、別居を考えている妻側に向けて、別居時に持ち出すべき荷物、持ち出してはいけない荷物など、別居時の持ち物についての注意点を、弁護士が解説しました。

別居を決断するときは、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のいずれであれ、離婚についての問題が解決するまでは、もう戻ることはできないことを念頭において、荷物について十分な検討が必要となります。

特に、相手方の財産を持ち出してしまうことでトラブルが激しくなり、離婚協議が進まなくなってしまうことには配慮が必要です。

離婚に向けた別居を決意した方は、別居時の注意点についてのアドバイスをすることが可能ですので、離婚問題を得意とする弁護士に、お気軽に法律相談ください。