★ ご相談予約をお待ちしております。

別居時に財産を持ち出されたときの対処法は?家具・家電や車、使い込みなどの場合を解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

>>弁護士の詳細はこちら

別居時に財産を持ち出されたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。

別居の際、配偶者が家具や家電、自動車、預貯金口座の通帳などを勝手に持ち出してしまってトラブルになることがあります。実際に、「もう取り戻せないのか」「勝手に持ち出すのは不公平ではないか」といった相談が、当事務所にも数多く寄せられています。婚姻中に夫婦で協力して築いた共有財産は財産分与の対象となるところ、勝手に持ち出されて処分されたり、預貯金を使い込まれたりすると、離婚時に大きなトラブルに発展します。

一方で、持ち出す側には、「自分が使っていたものだ」といった言い分があることも少なくなく、全ての持ち出しが違法とは限りません。適切な対処法は、夫婦の共有財産か、それとも特有財産か、生活に必要な範囲での持ち出しかといった事情によって異なります。

今回は、別居時に財産を持ち出された場合の法的な考え方と、家具・家電、車、預貯金の使い込みなどの対処法について、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 共有財産の持ち出しは、離婚時の財産分与で考慮することで公平を保てる
  • 特有財産の持ち出しは、所有権を証明して返還請求を行うことができる
  • 別居時の財産の持ち出しが判明したら、証拠を集めて早急に対応すべき

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)

別居時に財産を持ち出されたらどうなる?

はじめに、別居時に財産を持ち出された場合について、法的な観点から解説します。

別居の際に、配偶者が家具や家電、自動車、預貯金などを持ち出すことは珍しくありません。しかし、これを機に「勝手に持ち出された」「返してもらえない」といったトラブルが生じ、離婚や財産分与の協議が難航することがあります。特に、持ち出した財産が処分されたり、預貯金が使い込まれたりすると、後から取り戻せないおそれがあるため、早急な対応が必要です。

もっとも、別居時の財産の持ち出しが、全て違法なわけではありません。

適切な対処法は、その財産が「共有財産」か「特有財産」かによって異なります。

婚姻中に夫婦の協力によって築いた「共有財産」については、双方が平等な権利を持つべきという考え方に基づき、離婚時の財産分与の対象として公平に分配されます。これに対し、婚姻前から所有していたり相続や贈与で取得したりした「特有財産」は、夫や妻それぞれに帰属します。

別居時に財産を持ち出されたら、「その財産が共有財産か、それとも特有財産か」を整理することが重要です。共有財産なら、離婚時の財産分与で調整でき、持ち出し方や処分の状況によっては返還や損害賠償の請求が可能です。これに対し、自身の特有財産を持ち出された場合、所有権に従って返還請求できる一方、相手の特有財産を相手が持ち出すことは自由です。

以下では、共有財産を持ち出された場合と特有財産を持ち出された場合に分けて、それぞれの法的な考え方と具体的な対処法を解説します。

離婚時の財産分与」の解説

共有財産を持ち出された場合の対処法

ポイント

共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産をいいます。

財産の名義が夫婦のどちらか一方であったり、子供名義であったりしても、実質的に夫婦の協力によって形成されたものは共有財産であり、財産分与の対象となります。例えば、婚姻中の預貯金、購入した不動産や自動車、家具・家電、有価証券などは、共有財産に該当します。

共有財産である場合、名義にかかわらず夫婦が等しく権利を持つため、別居時に持ち出しても、全て違法となるわけではありません。一方で、持ち出された側にも権利があるため、財産分与で調整したり、悪質な場合は返還や損害賠償を請求したりすることができます。

離婚時の財産分与で調整するのが原則

共有財産は、夫婦の協力によって築かれたものなので、財産分与の対象となります。

したがって、別居時に持ち出しても、共有財産であれば分与の対象とされ、離婚時に公平な割合で分配すべきです。財産分与の対象財産の確定は、夫婦の協力関係がなくなった「別居時」を基準とするのが原則なので、持ち出したからといって他方の権利は失われませんし、別居後に使い込んだとしても別居時の額で分与するのが基本となります。

例えば、家具・家電を持ち出した場合や、自動車を別居後も使用している場合でも、いずれも財産分与の対象とします。預貯金についても、別居時における残高をもとに財産分与の対象とします。相手が財産を隠したり、使い込んだりすると適正な分与が困難になるため、別居時の財産の存在と価値について正確に把握しておくことが重要です。

財産分与の調停」の解説

持ち出した共有財産を使いこまれた場合

持ち出された共有財産が使い込まれた場合でも、その分は財産分与で考慮しないのが公平です。

例えば、別居時に持ち出した通帳を使って預貯金を引き出したり、持ち出した家具・家電や車を売却したりしたときは、持ち出した配偶者の特有財産から補填するか、もしくは、財産分与における他の財産で調整するのが適切です。

ただし、持ち出した財産が手元にない場合、その財産の評価額は争いになりがちです。預貯金であれば、別居時の残高で評価するのが基本となります。これに対し、家具・家電や車は、中古売却価格の査定などをもとに考慮することとなります。

なお、持ち出した共有財産を売却し、生活費に充当した場合は、婚姻費用で調整するケースもあります。婚姻費用は「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて算定しますが、この際に、共有財産から使い込んだ額を控除するという方法です。

別居中の生活費の相場」の解説

悪質な場合は返還や損害賠償の請求が可能

共有財産の持ち出しでも、悪質な場合は法的責任が生じる余地があります。

例えば、財産分与を免れる目的で持ち出して売却したり、浪費したり、隠匿したりした場合、離婚時の財産分与での調整では十分な救済が得られないことがあります。こうしたケースでは、共有財産であっても、返還を求めたり、不法行為として損害賠償を請求したりする方法を検討すべきです。さらに財産を処分されるおそれがある場合、仮差押えなどの保全手続きも活用できます。

ただし、「離婚時の財産分与で調整するのが原則」なので、返還や損害賠償の請求が認められるかは、持ち出しの目的や経緯、態様、処分の有無といった個別の事情によって慎重に見極める必要があります。認められるかどうか、裁判例も踏まえて以下のように考えることができます。

返還や損害賠償の請求が認められない場合

共有財産の持ち出しについて、返還や損害賠償の請求が認められなかった裁判例があります。

東京地裁平成4年8月26日判決

「持ち出した財産が将来の財産分与として考えられる対象、範囲を著しく逸脱するとか、他方を困惑させる等不当な目的をもって持ち出したなどの特段の事情がない限り違法性はなく、不法行為とならない」とし、持ち出された財産の調整は分与時に行うべきとして、損害賠償請求を否定しました。

東京地裁平成25年4月23日判決

「婚姻中の夫婦の一方は、夫婦共有財産について、当事者間で協議がされるなど、具体的な権利内容が形成されない限り、相手方に主張することのできる具体的な権利を有しているものではないと解すべき」とし、共有財産である預金を払戻しても、不法行為による損害賠償の対象にならないことを示しました。

返還や損害賠償の請求が認められる場合

上記の裁判例からしても、悪質な場合には返還や損害賠償の請求が認められる余地があります。例えば、次のように違法性が強度な場合、責任追及が可能であると考えられます。

  • 「全財産を持ち出す」「全預金を引き出す」など、将来予定される財産分与の範囲を大きく超える可能性のある持ち出し行為
  • 生活に必要ではない財産を嫌がらせ目的で持ち出す行為
  • 財産を持ち出すことで、相手が困窮してしまう場合

このような悪質なケースに備え、持ち出された財産を取り返すために、「何を持ち出されたか」「どのような態様か」といった点について証拠を確保しておくべきです。実際の判断は難しいため、持ち出された直後に弁護士に相談し、適切な対応を検討してください。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

共有財産の種類ごとの考え方

共有財産の持ち出しといっても、財産の種類によって注意点は異なります。よく持ち出しの対象となる財産には、次のようなものがあります。

  • 家具・家電
    別居後の生活に必要であるため持ち出されるケースが多いです。夫婦の共同生活のために買いそろえたものは共有財産として財産分与の対象となります。
  • 自動車
    名義ではなく購入資金や利用状況などから共有財産かどうかを判断し、持ち出された場合には財産分与の対象として調整します。
  • 預貯金
    通帳やカード、登録印などが持ち出されると、別居後の引き出しや使い込みが問題となりやすいです。取引履歴を証拠として確保し、財産分与での調整が欠かせません。

勝手に処分されると持ち出しそのものが発覚しなかったり、評価額が争いとなったりします。特に、家具・家電や車は、中古価格が落ちやすいため、評価に関する争いが起きやすいです。いずれの場合も「共有財産であること」と「持ち出しや処分の状況」を証拠で示すことが重要です。

特有財産を持ち出された場合の対処法

バツを出す女性

次に、特有財産の持ち出しへの対応について解説します。

特有財産とは、夫婦の一方が単独で所有する財産であり、具体的には、婚姻前から所有していた財産、相続や贈与によって取得した財産などが該当します。特有財産は財産分与の対象とはならず、原則として所有者が自由に管理・処分できます。

もっとも、別居時には共有財産と特有財産が混在することが多く、その財産の性質が争いになりがちです。特に、相手の特有財産を誤って持ち出すと、感情的な対立が激化し、離婚の協議が進まなくなってしまうことが多いため注意が必要です。

自分の特有財産を持ち出された場合

まず、配偶者に自分の特有財産を無断で持ち出された場合について解説します。

これは夫婦の財産分与ではなく、所有権侵害の問題です。そのため、所有権に基づいて返還を請求でき、相手が応じない場合、返還請求訴訟などの法的手段を講じることができます。また、特有財産を売却されたり処分されたりした場合、不法行為に基づく損害賠償請求も可能です。責任追及するために、持ち出された財産や保管場所を把握し、証拠を確保することが重要です。

持ち出された財産が処分されたときは損害賠償を請求できますが、散逸する前に財産を保全するため、財産分与請求権を被保全権利とした保全処分(預貯金の仮差押え、不動産の処分禁止の仮処分など)といった法的措置も検討してください。

なお、持ち出した特有財産が使い込まれ、かつ、配偶者に特有財産(個人資産)がない場合、共有財産と同じく「財産分与で調整する」という方法を取らざるを得ないこともあります。

相手の特有財産を持ち出してしまった場合

逆に、別居をする側の立場で、相手の特有財産を持ち出してしまったケースもあります。

悪意はなくても、別居直前は時間的な余裕がなく、生活に必要なものを整理するうちに相手の特有財産まで持ち出してしまうことは少なくありません。しかし、特有財産は所有者の財産であり、夫婦のものではありません。そのため、無断で持ち出すことは許されません。

前述の通り、所有権に基づいて返還を請求され、拒んだり売却したりすれば損害賠償請求を受けるおそれもあります。このような別居前後の不適切な行為は、離婚そのものにおいても不利な事情として考慮されるおそれがあるため、速やかに返却するのが望ましいです。

特有財産か共有財産か争いになる場合

実務上は、「共有財産か特有財産か」について夫婦の意見が異なることがあります。

例えば、婚姻前に一方が有していた預貯金に、婚姻後の給与を入金して生活費に充当していた場合などが典型例です。また、家具・家電や車の購入の際に、婚姻前の貯金と婚姻後の収入を充てた場合などにも、その財産の性質が複雑になり、争いが生じやすくなります。このような場合、名義ではなく実質で判断するため、財産の取得時期や購入資金の出所などを総合考慮します。

民法762条2項で「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」と定められている通り、「特有財産である」と主張する側が立証責任(証明責任)を負います。そのため、婚姻前から保有していたことが分かる通帳や取引明細、売買契約書、登記事項証明書、遺産分割協議書などの相続関係資料、贈与契約書などの証拠を保存しておくことが重要です。

婚姻前の預貯金と婚姻後の収入が混在すると、特有財産の証明が難しくなるため、別居が見込まれる場合、財産の取得時期や資金の流れが分かる資料を整理しておきましょう。

別居時に財産を持ち出された側の対処法

次に、それぞれの立場において、別居時の財産持ち出しのトラブルについて解説します。まず、別居時に財産を持ち出された側の対処法は、以下の通りです。

持ち出された財産を整理する

まずは、どのような財産が持ち出されたかを整理することが重要です。

家具・家電、車、預貯金通帳、有価証券など、持ち出された財産を一覧にし、それぞれが共有財産なのか特有財産なのかを確認しましょう。また、持ち出された日時や現在の保管場所、財産の価値なども把握しておくと、その後の協議や調停で役立ちます。感情的に相手を責める前に、客観的な事実を整理することが適切な解決への近道となります。

証拠を確保する

持ち出しの事実や財産の内容を裏付ける証拠の確保も重要です。

財産が存在していたことを証明するため、動産であれば写真や動画、預貯金であれば通帳や取引履歴、不動産であれば登記簿謄本、車であれば車検証などが証拠となります。また、自身の特有財産であることを主張する場合、「特有財産か共有財産か争いになる場合」で前述した通り、取引履歴や売買契約書などにより、婚姻前や相続・贈与による取得を証明する必要があります。

配偶者と協議する

証拠を整理したら、まずは配偶者との話し合いによる解決を試みます。持ち出した理由や現在の保管状況を聴取し、返還するか、それとも財産分与で調整するかを話し合いましょう。生活への不安から持ち出したものの、財産分与で調整されることを相手が理解していれば、離婚を前提とした合意が可能です。しかし、感情的な対立が激しい場合、協議が困難なこともあります。

財産分与の請求を行う

協議で解決できない場合には、法的手続きを検討します。

共有財産であれば、「離婚時の財産分与で調整するのが原則」であるため、離婚と財産分与を請求してください。協議が難しい場合、離婚調停を申し立て、不成立の場合は離婚裁判(離婚訴訟)を提起するという手順で進めます。これに対し、悪質なケースで返還や損害賠償を請求する場合、離婚とは別に訴訟を提起することが可能です。また、財産がさらに処分されるおそれがある場合は、仮差押えなどの保全手続きを利用することも検討すべきです。

離婚までの流れ」の解説

別居時に財産を持ち出す側の注意点

逆に、別居時に財産を持ち出す側でも、注意すべきポイントがあります。夫婦の共有財産を、生活に必要な範囲で持ち出すことがありますが、不利にならないよう配慮が必要です。

無断で売却・処分しない

生活に必要な共有財産を持ち出す場合でも、無断で売却・処分することは避けるべきです。

共有財産を持ち出した場合、最終的には離婚時の財産分与で調整するのが基本ですが、手元にその財産が残っていないと、自身の特有財産から補填しなければなりません。また、財産隠しや浪費といった悪質な持ち出しと評価されれば、損害賠償を請求されるおそれがあります。

別居に伴って財産を移動させる必要がある場合でも、できる限り相手方と協議し、処分が必要な場合には記録を残しておくことが重要です。

相手の特有財産に手を付けない

相手の特有財産は、夫婦の共有財産と区別すべきです。相手が婚姻前から所有していた財産や、相続・贈与で取得した財産は、たとえ夫婦で生活していた家にあるものでも、無断で持ち出してはなりません。また、誤って持ち出した場合は速やかに返還を申し出るべきです。

財産の現状を記録しておく

別居時には、どのような財産が存在し、どのような状態だったかを記録しましょう。後から争いになったとき、自身の持ち出した財産は正確に説明できる必要があるからです。例えば、室内や家具・家電を写真・動画で撮影すること、自動車の状態を写真に残すこと、預貯金の残高証明書を取得することといった方法で、証拠の保存が可能です。

感情的な持ち出しは避ける

離婚に向けた別居時は、夫婦のいずれも感情的になりやすいものです。

「相手を困らせるために財産を持ち出してしまおう」「自分も使うのだから、持って出て当然」といった考えの方は少なくないですが、感情任せの行動は紛争を激化させ、話し合いによる解決を困難にしてしまいます。生活のために持ち出す場合も、必要最小限の範囲にとどめ、財産の内容や理由を記録し、できる限り相手に伝えるといった対応が適切です。

別居時の荷物の持ち出し」の解説

【まとめ】別居時の財産の持ち出し

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、別居時の財産の持ち出しについて解説しました。

別居時に配偶者が家具・家電、自動車、預貯金口座の通帳などを持ち出した場合でも、あきらめてはいけません。持ち出された財産が夫婦の共有財産なら、離婚時の財産分与で調整できます。また、持ち出しの態様が悪質な場合、返還や損害賠償が認められる可能性があります。一方で、生活に必要な範囲の持ち出しは違法にならないケースもあるため、慎重な検討が必要です。

これに対し、特有財産の持ち出しがある場合は、速やかに返還請求をすべきです。放置すると使い込まれるおそれもあるため、財産の内容や持ち出しの事実を裏付ける証拠を集めなければなりません。感情的に問い詰めたり、自力で財産を取り戻そうとすると、かえって紛争が拡大するため、財産分与での調整が原則的な対応であると考えましょう。

別居時の財産の持ち出しは、その後の財産分与や離婚条件に大きな影響を及ぼします。不当な持ち出しが疑われ、対応に迷う場合、速やかに弁護士へご相談ください。

この解説のポイント
  • 共有財産の持ち出しは、離婚時の財産分与で考慮することで公平を保てる
  • 特有財産の持ち出しは、所有権を証明して返還請求を行うことができる
  • 別居時の財産の持ち出しが判明したら、証拠を集めて早急に対応すべき

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)