別居中の生活費はもらえる?婚姻費用を請求する5つのポイントと相場

夫婦生活をこれ以上つづけていく自信がなくなり、自ら別居することを選んで家を出た女性(妻)の中にも、今後の生活費についてお悩みの方は多くいらっしゃいます。

特に、これまで専業主婦として家事をしており、夫の収入で生活をしていた、という家族の場合には、生活費がなくなってしまうことを理由に、「離婚したい。」という気持ちを抱えながらも同居せざるを得ないことも少なくありません。

しかし「生活費が得られない。」ということを理由に、夫婦関係は既に終わっている(破綻している)にもかかわらず同居を続けることは、夫側にとっても妻側にとっても不幸なことです。

いわば生活費を人質として結婚生活を強要し、専業主婦として今後も収入が得られない、という泥沼を避けるために、生活費(婚姻費用)をもらうための交渉・調停・審判といった手続を利用することができます。

そこで今回は、別居中の生活費婚姻費用をもらうために、別居する妻側に知っておいてもらいたい婚姻費用の知識を、離婚問題を得意とする弁護士が解説します。

1. 生活費がなくても別居したほうがよい?

別居中の生活費の目途がつかないと、なかなか別居に踏み切ることができないという妻の方も多いのではないでしょうか。実家が近くにあればよいですが、そうでない方も多くいます。

しかし、別居中の生活費が心配だからといって、別居時期を遅らせることには、次のようなデメリットがあります。

  • 別居しないことで、夫婦関係が「破綻」しているとはいえなくなる。
  • 夫婦関係が「破綻」していないことで、異性と肉体関係があると「不貞」となり、慰謝料請求される。
  • 夫婦関係が「破綻」していないことで、離婚原因が妻側にあると、同意なく離婚するのが困難となる。
  • 別居しないことで、精神的ストレスが大きくなる。
  • 別居しないことで、親の険悪感が子に伝わり、育児に悪影響を及ぼす。

別居を、夫と話し合いをして円満に進められればよいですが、そもそも円満に別居ができる、という方は、別居中の生活費をすんなり払ってもらえるか、すぐに離婚が成立するため、あまり問題にならないかと思います。

今回の解説は、夫に無断で別居を決行せざるを得ず、そうであるがゆえに、夫からは、「勝手に出て行ったのだから生活費など払わない。」と言われている妻の方に、特に理解しておいていただきたい内容です。

2. 別居中の生活費を要求する方法

「別居中の生活費」についての不安、悩みが、妻側での一方的な別居をあきらめなければならない理由とはならないことをご理解いただいたところで、具体的に、別居中の生活費を夫から勝ち取る方法について、弁護士が解説します。

「別居中の生活費」は、法律の専門用語では、「婚姻費用」といい、別居中の生活費を請求することを、専門的には、「婚姻費用分担請求」といいます。

婚姻費用分担請求の方法は、まずは話し合いからはじめ、話し合いによっては夫側が納得せず、強行な場合には、弁護士に依頼して協議を進めてもらったり、調停、審判などの方法によって請求していくこととなります。

① 【協議】で別居中の生活費を請求する

離婚や親権、財産分与など、離婚にともなう協議には強硬になって戦っていた夫も、生活費(婚姻費用)については、話し合いですんなりと支払ってくれた、というケースも少なくありません。

特に、お子さんがいらっしゃり、子は妻側で養育をする、という場合には、妻はともかくとして子に対する愛情はあるという夫の場合、生活費(婚姻費用)は、子のためにも支払う、といったケースは多くあります。

そのため、まずは、必要となる別居中の生活費をリストアップし、夫に対して、メール、電話、LINE、郵送など、通常の連絡方法によって、請求することを試してみてください。

また、妻側は離婚をしたいと考えていたとしても、夫側は復縁を望んでいるというケースでは、妻側の請求どおりの別居中の生活費を支払ってもらえることが期待できます。

② 【合意書】で別居中の生活費を確定する

夫との話し合いによって、別居中の生活費を支払ってもらえることが決まったら、別居中の生活費についての合意内容を、書面にしておかなければなりません。

合意内容を書面に記載しておかなければ、後に支払われなくなったときに、「別居中の生活費を支払うという合意はしていない。」と言われたとき、争うための証拠が手元にない、ということになってしまいます。

書面の題名は、合意書、念書、覚書など、どのようなタイトルでも構いません。別居中の生活費について、少なくとも次の事項について話し合いをし、決まった内容を書面に記載しておきましょう。

  • 別居中の生活費の金額(月額)
  • 別居中の生活費の支払日(支払期限)
  • 別居中の生活費の支払方法(手渡し・口座振込など)
  • 別居中の生活費の振込先

③ 【調停】で別居中の生活費を請求する

夫が別居中の妻の生活費を支払わず、話し合いにも応じないような場合には、次は、「調停」の方法によって別居中の生活費を請求することとなります。

「調停」とは、裁判所において行われる話し合い(協議)のことをいい、別居中の生活費を請求する調停は、専門用語で、「婚姻費用分担請求調停」といいます。

この「婚姻費用分担請求調停」では、裁判所において、調停委員が夫婦の間にはいって、別居中の生活費の支払についての話し合いを行うことができます。

第三者が間に入って話し合いをすることによって、今後の離婚については争いがある場合であっても、別居中の生活費の支払だけは行ってくれるようになるケースも少なくありません。

④ 【審判】で別居中の生活費を請求する

調停を起こして別居中の生活費を請求しても、夫側が調停に出席しなかったり、調停に出席しても、「別居中の生活費は支払いたくない。」と発言して一切応じなかったりといったケースもあります。

しかし、別居中の生活費が得られないとなれば、特にこれまで専業主婦として収入なく働いてきた女性の方からすれば、死活問題でしょう。

そこで、裁判所の制度では、調停によって解決できない場合にそれで終わりにはならず、婚姻費用分担請求調整によって生活費についての話し合いがまとまらなかった場合、審判に移行し、裁判所が婚姻費用を判断します。

調停に参加してこないような強硬な夫であったとしても、別居中の生活費をあきらめて泣き寝入りすることはありません。

⑤ 裁判所を利用するタイミングはいつ?

別居中の生活費を支払ってくれない夫、拒否する夫に対して、どのタイミングで裁判所を利用した調停・審判に進むべきかは、ケースに応じて慎重に考えなければなりません。

というのも、裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てられたことによって、夫側がへそを曲げてしまい、裁判所に来なかったり、裁判所で決まったにもかかわらず別居中の生活費を支払わなかったりすれば、解決が更に遅れるからです。

このまま粘り強く交渉した方が別居中の生活費を得やすいのか、それとも調停を起こしてしまったほうが結果的に早いのかは、夫の性格、職業、生活態度などによってケースバイケースの判断が必要です。

少なくとも、交渉から調停に移行するにあたっては、「別居中の生活費を○日以内に支払ってくれなければ、調停を申し立てることとなる。」という最後通告を伝えておくほうだよいでしょう。

3. 別居中の生活費はいくらもらえる?

ここまでお読みいただき、別居中の生活費を夫に請求する方法についてご理解いただいたところで、次に「別居中の生活費は、いくらもらえるの?」という疑問に、弁護士が解説していきます。

別居中の生活費を請求する場合に、たくさんもらえればもらえるほどいいわけですが、あまり多く請求してしまっては、夫側の強硬な拒否を招いたり、警戒されたりしてしまうことでしょうから、「相場」を理解することが重要です。

別居中の生活費の相場としては、家庭裁判所でよく利用されている「婚姻費用算定表」が、重要な参考資料です。ここでは、子の人数、子の年齢、夫婦それぞれの収入によって、別居中の生活費を計算します。

しかしながら、この「婚姻費用算定表」で計算すると、「こんなに少ないのか。」、「これほど低い金額では、別居中の生活費としては不十分だ。」と不安、疑問を抱く女性の方も、多いのではないかと思います。

「婚姻費用算定表」は、別居中の生活費を計算する上で重要な資料ですが、あくまでも参考に過ぎません。

実際には、次のような事情により、別居中に、「婚姻費用算定表」を超える生活費が必要となることも多く、その場合には、生活実態にあわせた事情を説明することによって、ケースに応じた生活費を請求すべきです。

  • 別居中の、子の塾代が必要となる。
  • 別居中に、子が私立学校を受験したり、通学したりする。
  • 別居中に、子が習い事をしなければならない。
  • 別居中に、子が重大な病気にかかったり、手術したりする。

4. 別居中の生活費を、弁護士に依頼するメリット

別居中の生活費を夫に対して請求する方法には、メールやLINEなどの通常の連絡方法で連絡して話し合う方法もありますが、夫側が拒否してくる場合には、裁判所を利用した手続きとなります。

家庭裁判所では、生活費がなく困窮してしまう妻側の保護のために、「婚姻費用分担請求調停」の手続が用意されており、比較的簡単なやり方で、別居中の生活費を請求することができます。

したがって、別居中の生活費を請求するだけであれば、必ずしも離婚問題を得意とする弁護士に依頼することは必須ではありません。最後に、別居中の生活費の請求を、弁護士に依頼するメリットについてまとめておきます。

4.1. 家庭裁判所の手続に慣れている

離婚・不貞問題など、家族のトラブルを多く取り扱う弁護士法人浅野総合法律事務所では、婚姻費用分担請求調停はもちろんのこと、家庭裁判所で行われる調停、審判の手続を多く担当しております。

そのため、家庭裁判所で、どのように手続が進んでいくか、調停委員に対して、どのような事実を伝え、交渉したら、よりご依頼者に有利に進めるかについて、熟知しています。

家庭裁判所を利用したことのない、初めての方が自分で調停手続を行う場合に比べて、よりスムーズに手続きを進めることができ、早期に、有利な解決を勝ち取ることが期待できます。

4.2. 離婚問題も一括解決できる

夫婦間のトラブルは、別居中の生活費に限りません。むしろ、急遽別居することとなったために、別居中の生活費が問題になるのであって、その根本には、離婚問題、夫婦間の不和があることが通常ではないでしょうか。

別居をする妻側が離婚を強く求めている場合はもちろんのこと、離婚を求めず、別居のみを進めていた場合であっても、夫婦間の問題を解決することが必要です。

別居をせざるをえなかった原因が、夫側のDV、暴力、暴言、モラハラなどにあるケースや、夫側に不貞(不倫・浮気)の事実があるケースでは、離婚に加えて、慰謝料請求などの問題も解決する必要があります。

別居中の生活費を請求するだけでなく、これらの夫婦関係に付随する問題も、一括して解決できるのが、離婚問題を取り扱う弁護士に依頼していただくメリットです。

4.3. 疑問・不安を解消できる

別居中の生活費の請求を進めるにあたって、家族についての法律に関する、さまざまな疑問、不安が生じることが少なくないのではないでしょうか。

弁護士は、法律の専門家であり、別居中の生活費を請求するにあたって、一般の方々が疑問、不安を感じる多くの問題点について、法律相談でお話をお聞きし、アドバイスを差し上げています。

交渉を進めている中で、相手方である夫や、調停委員、裁判官などから言われたことが、自分に不利な場合、これを信じて進めてよいものか、お迷いになることが多いかと思います。

疑問・不安をすぐに解消できることが、離婚問題を取り扱う弁護士に依頼いただくメリットの1つです。

5. まとめ

今回は、別居中の生活費に不安があって、なかなか別居に踏み切れない妻側の依頼者に向けて、法律相談で説明する内容を、弁護士が解説しました。

別居中の生活費(婚姻費用)は、請求時からの分を算出することが調停の一般的な取り扱いであるため、早めに生活費を請求すべきでしょう。

その金額は、家庭裁判所で活用される算定表が参考にはなりますが、生活実態に合わせて、より高額の生活費を請求することも可能です。まずは話し合いで請求し、協議がまとまらない場合には、調停、審判の方法で請求します。

ご自身で調停、審判を行うのが難しかったり、DVやモラハラがあるなど、自分で交渉をすることが困難なケースでは、離婚問題を得意とする弁護士に、お早めに法律相談ください。

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