離婚・男女問題

子どもを連れて別居するときに知っておきたい注意点【弁護士解説】

2021年6月11日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

子どもを連れて別居するときの注意点

夫婦の関係が悪化し、離婚に向けて別居をするとき、「子どもを連れて出たほうがよいのか」という不安についてご相談を受けることがよくあります。

特に、妻側(女性側)で子どもが幼いとき、育児の観点から「大切な子どもを必ず連れて出たい」という希望が強いかと思います。将来の離婚のとき、親権を勝ち取るためにも、子どもを連れて出る、いわゆる「子連れ別居」がおすすめです。

しかし、別居をされて残される配偶者の側もまた、子どもに対して愛情があるのは当然であり、子どもを連れて別居をするときには、夫婦間の対立がさらに激化することが予想されます。

そこで今回は、子どもを連れて別居する側の方に向けて、

  • 子どもを連れて別居する際の注意点
  • 子連れ別居が子どもの環境に与える影響を最小限に抑える対策
  • 子どもを連れて別居後、離婚に向けて有利に進める方法

といった子連れ別居に関するポイントを、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

まとめ解説
離婚前の別居について知っておきたい全知識【弁護士解説】

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子どもを連れて別居するケース(子連れ別居)とは

夫婦関係がうまくいかなくなっても、子どもに対する愛情は夫婦のいずれも変わらず持ち続けていることが多いのではないでしょうか。

離婚条件の重要な要素として「親権」を家庭裁判所で争うこととなったとき、実務的に、「現状、どちらが子どもを養育しているか」、つまり、過去の監護実績という要素がとても重要視されます。家庭裁判所では、親権は「子の福祉」を基準として判断するからです。

そのため「離婚に向けて別居はしなければならないが、親権を相手に渡したくない」と考えるとき、子どもを連れて別居をすることとなります。一方、子どもを連れて出ていかれてしまった側では、大変な喪失感を感じるとともに、激しく抵抗をしてくることもあります。

これが、いわゆる「子連れ別居」の問題です。

なお、一般的に、子どもが幼いうちは妻側(女性側)が育児を担当し、別居をするときにも家を出ていくことが多いため、子どもを連れて別居をするケースでも妻側(女性側)の相談が多いですが、夫側(男性側)でも、今回の解説と同様のことがあてはまります。

子どもを連れて別居するときの注意点

子どもを連れて別居するときの注意点

監護実績をつくりあげることが親権争いに有利にはたらくとはいえ、子どもを連れて別居をするときには多くの注意点があります。

準備なく安易に子連れ別居を開始すると、次のようなデメリットを受けてしまうこともあります。

  • 残された配偶者の反感を買って強行に反発される
  • 警察へ通報するなど問題が拡大し、離婚協議が円満に進まなくなる
  • 「子の連れ去り」と評価されてむしろ親権争いに不利になってしまう

そのため、ここでは子どもを連れて別居をするときに、特に注意しておいてほしいことについて解説します。

子どもに必要な荷物はすべて持ち出す

子どもを連れて別居をするとき、相手の反感を買ってその後の話し合いが円満には進まない場合でも、子どもの環境に影響を与えないよう、必要な荷物は必ず持ち出すようにしてください。

別居時の荷物持ち出しの一般論として、現金・預貯金通帳などの貴重品類、運転免許証・パスポートなどの身分証の持ち出しが必須であるほか、子どもを連れて別居するときに、特に持ち出しておいたほうがよい荷物として、次のものをチェックしておいてください。

  • 子どもの分の身分証(健康保険証、マイナンバーカードなど)
  • 子どもの常備薬
  • 子どもの教育に必要なもの(教科書、筆記具など)
  • 子どもの思い出の品(写真・アルバム、子どもの作った物など)
  • 子どもが安心感を感じる物(お気に入りのおもちゃ、毛布など)

なお、別居時の荷物持ち出しの一般論については、下記の解説で詳しく説明しています。

参考解説

連れ去りといわれないための対策

「子どもの連れ去り」は違法であり、行ってはなりません。子どもを連れて別居することが、「子どもの連れ去り」にあたるのかどうかはとても難しい問題ですが、生活が安定している状態をこわしてしまうことは違法とされる可能性があります。

残された配偶者から、子どもの連れ去りであるという非難を受けると、警察に通報されたり、親せきや友人にしつこく連絡をされて行方を捜されてり、保育園や学校で待ち伏せされたりといった危険が生じるおそれもあります。そのため、「連れ去りではないか」という反論を受けないよう準備が必要です。

具体的には、別居をした後に、速やかに連絡をして子どもの身の安全を伝え、今後の手続きの流れについて説明する、ということが重要です。DV・モラハラが存在する場合のように、自分で直接連絡することに精神的苦痛が大きい場合には、弁護士を代理人として代わりに連絡してもらうことが有効です。

子どもに会えない相手にも配慮する

残された配偶者の側でも、「自宅に帰ってきたら、もぬけの殻だった」とすれば、喪失感はとても大きいことが予想されます。今後離婚に向けて進む場合、少しでも相手との信頼関係が回復できるよう、相手の気持ちへの配慮も必要となります。

夫婦関係が悪化したとき、「相手に会いたくない」という気持ちは当然でしょうが、「子どもを会わせたくない」というのはあくまでもあなたの気持ちであり、子どもの気持ちを尊重した対応をすべきです。

家庭裁判所の実務でも、親権や面会交流の争いは、「子の福祉」を基準として検討されるのであり、親の気持ちに従うわけではありません。

DV・モラハラ・虐待がある場合の対応

DV・モラハラがある事例のように相手の協力が期待できないようなケースや、子どもへの虐待がある事例のように子どもに危険が及んでしまうようなケースでは、特に子どもを連れての別居を急ぐ必要があります。

身の安全を最優先に考えなければなりませんが、可能な限り、DVや虐待については証拠を残しておくことが重要です。このことは、離婚において親権・監護権を必ず勝ち取ることはもちろん、慰謝料請求をする際にも役立ちます。

DV・虐待の証拠として、次のような資料を準備してください。

  • DV・虐待している音声の録音
  • DV・虐待行為の録画
  • DV・虐待によって受けた傷の写真
  • DV・虐待の状況をその都度記録した日記

なお、特にDV・モラハラ・虐待が存在するとき、少しでも別居の影響を小さくするためにも、適切な別居先の選定が重要となります。

参考解説

子どもの環境への影響を最小限にする

子どもを連れて別居するときの注意点

以上の注意点をきちんと守って別居を開始することにより、子どもを連れて別居をするにあたってのデメリットを相当程度回避することが可能です。

しかし、「別居をするのは子どもにとってかわいそうだ」といった意見もあるように、夫婦の別居は、子どもの感情面にも大きな影響を与えます。そのため、子どもの気持ちの面でのケアも必要となります。

子どもの養育環境への影響を最小限にするために、子どもをつれて別居を開始した親が行っておくべき対策について解説します。なお、残された親が子どもへの愛情を持っていることを前提として、協力が得られるよう粘り強く説得を続けることも忘れてはなりません。

保育園・学校の問題

夫婦の離婚問題が、子どもの教育環境に悪影響を及ぼすことは避けなければなりません。そのため、子どもを連れて別居をするとき、子どもの通う保育園、学校の問題について事前準備が必要です。

別居先が同一学区内の場合には、住所の届出を行うほかは特に通園・通学には影響がありません。これに対して、遠方に別居する際には、別居をしても通園・通学をすることができるかどうか、また、転校させる場合には、住民票を速やかに移すなど、編入要件を早く満たすよう手続きを進める必要があります。

参考解説

子どもへの伝え方

夫婦が仲良くなくて家庭内別居の状態が続いていたり、夫婦喧嘩でお互いに罵り合っていたりといった家庭環境は、子どもの精神に大きな影響を与えます。さらにその上に別居ともなれば、精神不安点な状況となってしまうことも多くあります。

子どもの気持ちへの影響を最小限にするために、「別居することについて、いつ、どのように子どもに伝えるか」ということがとても重要です。

子どもへ別居を伝えるときに注意しておくべきことは、常に笑顔で話しかけ、子どもが自分を責めてしまわないよう子どもの責任ではないことを伝え、夫婦ともに子どもへの愛情は変わらないことを伝えることです。

このことを示すために、たとえ子連れで別居をした後でも、面会交流のルール作りをしたり誕生日やクリスマスにはプレゼントを贈ったりすることが有効です。子どもがある程度大きい場合には、自由に行き来してもよいと伝えることも効果的です。

夫婦の険悪な関係、自分の気持ちを子どもに押し付けることのないよう注意が必要です。

子どもを連れて別居後の経済面の不安を解消する方法

子どもを連れて別居するときの注意点

子どもを連れて別居をするとき、別居後の経済面での不安が頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。子連れ別居後にかかる費用が払えなくなってしまうことで、通園・通学ができなくなったり習い事をやめなければならなくなったりしてしまうことは、子どもの発育に悪影響です。

そこで、子どもを連れて別居後に困窮してしまわないよう、経済面の不安を解消するために利用しておきたい方法について解説します。

婚姻費用の請求

別居後は、収入の少ない配偶者は、収入の多い配偶者に対して、別居後の生活費を請求することができます。

別居後の生活費を「婚姻費用」といい、これを請求することを「婚姻費用分担請求」といいます。婚姻費用は、配偶者の生活費であるとともに、子どもの生活費や、養育に必要となる費用を含んでいます。

子どもを連れての別居が相手の反感を買うとき「勝手に別居をしたのだから、生活費は支払わない」と反論されてしまうことがありますが、このような主張は通りません。子どもへの愛情が残っていることに期待して話し合いをしても解決できないときは、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停の申立てを行うようにしてください。

参考解説

児童手当の受給者変更

児童手当とは、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している場合に支給される公的給付です。

児童手当は、子どもを養育するのに充当すべき重要な給付ですが、配偶者のうち収入の多いほうが受給者となっていることが多く、子どもを連れて別居をするとしても、受給者を変更するためには相手方の協力が必要となります。

そのため、相手が任意に協力してもらえるよう、子どもに会えない相手の気持ちにも配慮しながら粘り強く交渉を続けることが大切です。

児童扶養手当の受給

児童扶養手当は、離婚などによって生じたひとり親家庭の生活の安定と自立の促進のために給付される公的給付です。

18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(もしくは、20歳未満で政令の定める程度の障害の状態にある方)を監護、養育している場合に受給することができますが、原則として、婚姻期間中は受給することができません。

例外的に、父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた場合や、父または母の生死が明らかでない場合といったケースでは、婚姻期間中でも受給できる場合があるため、要件を満たす場合には検討しておくべき給付です。

子どもを連れて別居後、連れ去られてしまったら?

一旦子どもを連れて別居をした後で、相手が子どもを連れ去ってしまうというケースがあります。保育園の前で待ち伏せし、連れ去ってしまうという悪質な事例もあります。

たとえ親権や面会交流などに争いがある事例であっても、このような強硬手段により生活の安全を脅かすことは許されません。

子どもの連れ去り事例は、緊急性が高く、家庭裁判所において専門の法的手続きが準備されています。それが「監護者指定」と「子の引渡し」です。

これらの法的手続きはいずれも審判という手続きですが、緊急性が高いため、一般的に、審判の申立てとともに「審判前の保全処分」という、よりスピーディに審理が進む手続きを利用するのが実務です。

また「まだ連れ去られてしまってはいないけれどもDV・虐待があったため危険だ」というケースでは、DV防止法に基づく保護命令手続や、接近禁止の仮処分を裁判所に申し立てるといった対策があります。

相手に子どもを連れ去られたからといって、連れ去りかえそうと強引な手段をとることは、結果的に不利になることが多いため、法律で認められた適切な手段をとることが重要です。

参考解説

別居と離婚の問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

子どもを連れて別居するときの注意点

子どもを連れて別居することは、離婚への決意が固い場合にはよくあることです。特に、同居中に子どもを監護、養育していた配偶者としては、離婚後の親権・監護権を確保するためにも、子どもを連れて出ることが自然であると考えることでしょう。

しかし、離婚に向けて別居し、離婚協議を円滑に進めるためには、子どもを連れての別居時には細心の注意と十分な準備が必要となります。「子どもの連れ去りだ」と主張され、問題が拡大すると、信頼関係が崩壊して話し合いが困難になってしまうケースも少なくありません。

子どもを連れての別居をお考えの方は、ぜひ別居前に一度、当事務所へご相談ください。

まとめ解説
離婚前の別居について知っておきたい全知識【弁護士解説】

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

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