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家庭内別居から離婚するときに知っておきたい注意点【弁護士解説】

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

「家庭内別居が長期間続いていますが、離婚を認めてもらうことはできますか」という法律相談を受けることが多くあります。

しかし、この質問は、家庭内別居についての認識が誤っているといわざるをえません。

家庭裁判所の実務では、家庭内別居は、実際に別居をする場合に比べてとても軽視されています。夫婦間では「すでに破綻している」と思っていても、家庭内別居がどれほど長くても「十分な別居期間があり、夫婦関係が破綻している」とは到底認められないケースが多いです。

とはいえ一方で、子どもの養育環境の問題、生活費などの経済的な問題、世間体や仕事の都合といったさまざまな事情で家庭内別居を続けざるを得ない方がいることも理解できます。

そこで今回は、

  • 家庭内別居のままできる限り早く離婚する方法
  • 家庭内別居から離婚までにかかる期間
  • 家庭内別居から離婚を求めるときの注意点

といった家庭内別居と離婚の問題について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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家庭内別居とは

家庭内別居とは、既に夫婦関係が破綻しているにもかかわらず、同居を続けている夫婦のことをいいます。法律上の明確な定義はありませんが、次のような状態にあてはまるような冷めきった家庭は、家庭内別居であるといってよいでしょう。

  • 寝室が別
  • 長期間、性交渉がない
  • 食事が別
  • 家事(風呂・洗濯など)もそれぞれ別に行う
  • 1日に1度も顔を合わせない
  • 顔を合わせても言葉を交わさず無視する
  • 顔を合わせるとストレスを感じる、同じ空気を吸うのも嫌だ

今回解説するとおり、家庭内別居は、少なくとも「離婚を求める」という点においては利点はなく、ただちに解消して別居を開始すべきです。夫婦関係が劣悪なまま同じ家に住み続けることは、夫婦いずれにとってもストレスとなることはもちろん、子どもの健全な発育にも悪影響を与えます。

冒頭でも解説したとおり、本人間では家庭内別居を「もはや破綻している」と考えていたとしても、これは法的な判断とは異なります。家庭裁判所の行う「破綻」の判断基準からすれば、夫婦が同居している時点で「まだやり直せる可能性は十分にある」と評価されてしまい、法律上の「破綻」ではないと判断される可能性が高いです。

家庭内別居のメリット

家庭内別居を選択する夫婦が多く存在する理由は、家庭内別居にもメリットがあるからです。

家庭内別居のメリットは、手間と費用がかからず、現状を変える必要がないことです。

家庭内別居であれば、生活費や家賃・光熱費が少なくて済み(もしくは、相手方が負担してくれ)、家事の手間も少なくて済み、子どもの養育環境を変える必要がありません。世間体や職場のことについても気にする必要がありません。

家庭内別居のデメリット

これに対して、家庭内別居を続けることのデメリットは、本解説で説明するとおり、離婚に向けた進みが遅くなってしまうことです。既に離婚への決意が固いのであれば、覚悟をもって惰性を打切り、別居を開始するべきです。

また、無理と我慢を重ねることによりストレスが増し、子どもの養育環境にも悪影響です。「子どもには不仲はばれないはず」と思っても、意外と空気で察するものです。

離婚を決断しているのであれば、早期に別居を開始することに全くデメリットはなく、むしろ離婚に有利に働きます。相手から別居を拒絶されているなど、外的要因によって別居を遅らせてしまっている方は、下記の解説もあわせてお読みください。

参考解説

家庭内別居で離婚することはできる?

離婚を決意しているにもかかわらず家庭内別居を続けている夫婦は少なくありません別居には大きな覚悟、費用や手間などがかかる一方で、同居を続けておけば生活費の負担が少なくて済み、子どもの養育環境の変更を考える必要もなく、世間体も保たれます。

結論を申し上げれば、家庭内別居でも離婚すること自体は可能です。ただし、別居をしていたほうが、「離婚をできる限り早く、有利な条件で進める」という目的をより達成しやすいのは言うまでもありません。

法定離婚原因とは

民法において定められる、離婚訴訟において強制的に離婚請求が認められるための離婚原因のことを「法定離婚原因」といいます。つまり、法定離婚原因が存在すれば、相手が離婚に反対していても離婚することができるというわけです。

民法に定められた法定離婚原因は、民法770条1項に定められた次の5つです。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

家庭内別居でも法定離婚原因があれば離婚できる

家庭内別居中であっても、不貞行為やDVなどのように法定離婚原因にあたることが明らかな事情が存在する場合には、離婚請求を認めてもらうことができます。ひいては、離婚協議の話し合いでも、相手があきらめて離婚に応じてくれる可能性が高まります。

このような不貞行為やDVなどの明らかな離婚原因がある場合には、むしろ家庭内別居中であることにより、別居後よりも証拠がとりやすいともいえます。相手の加害行為を録音・録画しやすいのはもちろん、相手の生活リズムを把握していれば探偵に依頼して不貞の証拠を取得してもらうことも容易です。

「家庭内別居」自体が法定離婚原因になるか

しかし、このように明らかな離婚原因がない場合、例えば「性格の不一致」、「価値観の相違」といった理由で離婚をしたいと考える場合には、家庭内別居は離婚原因とは評価されないのが実情です。

「性格の不一致」などの理由は、その程度が強度であったり、相手に責任があると考えられたりする場合には、法定離婚原因のうち「その他婚姻を継続し難い重大な理由」にあてはまりますが、相当重大な場合に限定されます。

むしろ、長期の別居期間を確保し、これを離婚理由として離婚を進めざるを得ないとき、家庭内別居にとどまっていては、肝心の別居期間がまったくたまりません。ましてや、自分が不貞をした有責配偶者の場合、8年~10年程度の別居期間が必要であるとされていますから、家庭内別居を続けていては、いつまで経っても離婚ができません。

家庭内別居から離婚できるまでに必要な期間

以上のとおり、家庭内別居でも離婚原因にあたる場合はあり、離婚ができないわけではありませんが、早期の段階で別居を開始しておく場合に比べて、離婚が遅れてしまうことは明らかです。ここで「家庭内別居から離婚できるまで、どの程度の期間を見ておけばよいですか」という法律相談がよくあります。

家庭内別居以外に、不貞行為やDVのような明らかな離婚原因があったり、相手が話し合いの結果離婚に同意してくれるような場合には、家庭内別居であっても即座に離婚することができます。

これに対して、「性格の不一致」による離婚請求のように、法定離婚原因にあたらないようなケースで、離婚までに必要な別居期間の目安は2年~5年です。この中に家庭内別居期間は含まれません。同様に、有責配偶者の場合、必要な別居期間の目安は8年~10年で、同じくこの中には家庭内別居期間は含まれません。

離婚までに必要な別居期間についての説明は、下記の解説で詳しく行っていますので、よければ参考にしてください。

参考解説

家庭内別居で離婚する方法

では次に、家庭内別居のまま離婚に進める方法について解説します。

速やかに別居するほうが離婚を早めてくれる可能性が高いことを解説しましたが、諸事情によりどうしても家庭内別居を続けざるを得ず、それでも離婚を求める場合には、家庭内別居によるデメリットを少しでも回避するため、速やかに離婚調停、離婚訴訟といった法的手続きへと進めていくことが有効です。

同居中にできる準備を怠らない

別居をせず、家庭内別居状態のまま離婚を進めていくことには、若干ながらメリットもあります。このメリットを生かし、同居中にしかできない離婚の準備をしっかり進めておくようにしましょう。

具体的には、相手に離婚原因が存在すること、相手に慰謝料請求の根拠があることの証拠を取得しておくことです。これは、不貞行為やDV・モラハラの証拠を収集しておくということです。これらの事情も、家庭裁判所は証拠を重視して審理を進めるため、証拠が全くないのでは、相手の非を認めてもらえないからです。

参考解説

家庭内別居のまま離婚協議を進める方法

別居中の離婚協議だと、相手方の所在を確認したり、相手方の交渉窓口(本人か、弁護士か)を確認したりといった手間がかかりますが、家庭内別居のまま離婚協議を開始する場合には、同居しているわけですからすぐに話しかけて開始することができます。

ただし、家庭内別居で、既に何か月も口をきいていないとか、無視を続けられているといった場合には、一応形式的には同居しているとはいえ、なかなか話し合いも困難な場合もあります。

あまり多いケースではありませんが、家庭内別居で、同居をしながら、弁護士に依頼して離婚協議を進めるという事例も実務上はあります。この場合には、弁護士に任せた以上、同居中といえども離婚の話を当事者間ではしないようにしなければなりません。

なお、家庭内別居のまま離婚協議を進めるときは、感情的対立が激化してDV・モラハラに発展して身の安全を害されないよう、細心の注意が必要です。

家庭内別居のまま離婚調停・離婚訴訟を行う方法

形式的には同居しているけれども夫婦の実態はないという状態で、本人間で話し合いをしながら離婚条件のすり合わせを行うということには、相当な困難が伴います。

そのため、別居していれば弁護士に依頼して協議で解決できるようなケースでも、家庭内別居のまま進めるのであれば、早めに離婚調停の申立てへと進むほうがよい場合も少なくありません。

離婚調停であれば、家庭裁判所の期日の日に夫婦双方が、(おそらくは別々に)裁判所に出廷し、調停委員を介して主張を伝えあい、離婚条件のすり合わせを行うことができます。

家庭内別居から離婚を求めるときの注意点

次に、家庭内別居から離婚を求めるとき、同居中であるがゆえに気をつけなければならない注意事項について解説します。

離婚をすれば当然ながら別居となるわけですから、家庭内別居で同居をし続けながらも離婚を求めるということは、子どもや仕事、世間体などのために一定の無理をしている状態となります。そのため、そのストレスや矛盾からくる弊害、デメリットが顕在化してしまわないよう、注意事項をしっかり守って進めなければなりません。

ルール作りをする

夫婦関係がすでに破綻していると考えていても、完全に別居するのではなく家庭内別居を選ぶということは、同居を継続しておけるだけの最低限の信頼関係は残っているということです。

そのため、家庭内別居を続けるのであれば、最低限のルール作りをしておくことが重要です。最低限のルール作りをすることは、次に解説していく「離婚原因をつくらない」、「子どもへの影響を最小限にする」、「生活費の分担請求をする」といった点でも有効です。

家庭内別居をするとき定めておきたいルールは、次のようなものです。

  • 重要な家事の分担
  • 入ってよい場所、入ってはいけない場所
  • 禁止事項
  • 子どもへの接し方、育児の分担
  • 生活費の分担と支払方法、家計のお金の管理

家庭内別居が長期化すると、お互いに言葉を交わさず無視し合い、話し合いすらできなくなってしまうおそれがあります。そのような場合には、別居をして離婚に進めるべきですが、家庭内別居も初期のうちに上記のようなルールを決めておけば、当面の間は守ってくれることもあります。

自分から離婚原因を作らない

家庭内別居を続けるためには、すでに夫婦仲がよくないにもかかわらず同居を続けなければなりません。そのため、配偶者にとって、相当なストレスがかかります。

家庭内別居からくるストレスのあまりに、不倫・浮気に走ってしまったり、家庭内暴力(DV)、モラハラや虐待を行ってしまったりすると、自分から離婚原因を作ってしまうこととなります。これらの行為は、離婚で不利になるだけでなく、慰謝料請求を受けてしまう原因ともなります。

家庭内別居を選択する夫婦は、当初はこれらの明白な離婚原因はなく、性格の不一致、価値観の差異などの事情から不仲がはじまる夫婦が多いです。また、前章で解説した通り、家庭内別居自体は法定離婚原因にあたらないと評価されるのが家庭裁判所の実務です。

しかし、その後に離婚原因を自ら作ってしまえば、離婚原因を作出した側が、将来の離婚において不利にならざるを得ません。

子どもへの影響を最小限にする

子どものいる夫婦の中には、子どものためを思って家庭内別居を選択する方がいます。「子どもが大きくなるまでは、夫婦そろって生活したほうがよい」という意見です。

しかし実際には、家庭内別居は子どもの精神に大きな影響を与えています。夫婦仲が良いのであれば、父母がそろっていることが子どもの情操教育に良い影響を与えますが、家庭内別居を続けてトラブルが絶えないようだと、子どもは敏感に気づきます。むしろ「子どものためにも、早期に別居すべき」という状況の夫婦も少なくありません。

家庭内別居が子どもに与える影響を最小限にするためには、子どもに責任はないことを説明し、愛情を示し続けること、笑顔で話しかけ続けることが重要です。

特に、離婚後に親権・監護権を獲得したいと考えるのであれば、監護実績をきちんと作り、その証拠を記録化しておくことが重要です。

参考解説

婚姻費用の分担を請求する

家庭内別居中のルールとして生活費の分担について定めておくことが重要と解説しました。夫婦間で分担すべき生活費のことを、「婚姻費用の分担」といいます。

別居中に、収入の少ない方が収入の多い方に対して別居後の生活費を請求することを「婚姻費用分担請求」といいますが、婚姻から生じる費用を分担しなければならないことは同居中でも変わりありません。このことは民法に次のように定められています。

民法760条

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

家庭内別居だと、家事や食事をともにすることはなく、各自で用意して別々にしていることが多いです。そのため、特に専業主婦の場合など、一定の生活費を支払ってもらわなければ、家庭内別居中でも生活が立ち行かなくなってしまう危険があります。

婚姻費用の分担を請求する方法は、同居中であっても別居中であっても変わるところはなく、まずは養育費・婚姻費用算定表に基づいて算出した金額を話し合いで請求し、話し合いで解決できない場合には婚姻費用分担請求調停を家庭裁判所に申し立てます。

別居中の生活費の請求については、下記の解説を参考にしてください。

参考解説

家庭内別居と離婚について当事務所によせられる法律相談

最後に、家庭内別居をしながら離婚を求める相談者から、当事務所によく寄せられるその他の法律相談について回答しておきます。

Q1 家庭内別居中に不倫・浮気が発覚したら慰謝料請求できる?

不倫・浮気のことを、法律の専門用語で「不貞行為」といいます。不貞行為とは、夫婦である間に、他の異性と肉体関係を持つことをいいます。

不貞行為が発覚した場合には慰謝料請求をすることができますが、一方で、裁判例において、夫婦関係が「破綻」していると判断される場合には、破綻後に行われた不貞行為については慰謝料請求の対象とはならないものとするのが実務です。「夫婦関係が破綻していたから、不貞行為にあたらない」という反論を、専門用語で「破綻の抗弁」といいます。

この家庭裁判所の実務において、「破綻しているかどうか」の判断基準は、夫婦の主観ではなく客観的事情により判断することとされており、このとき重要視されるのが「別居しているかどうか」という点です。この点で、家庭内別居でどれほど「夫婦関係はもう終わっていた」と反論したところで、家庭裁判所では慰謝料請求を否定する事情とはならないのが実情です。

例外的に、家庭内別居であり、かつ、建物の1階と2階で分かれて生活しているなど生活区域が異なり、収入や財布も別々であったといったケースでは、家庭内別居でも破綻の抗弁が認められることがあります。

家庭内別居を「破綻」であると認めてもらうためには、別居の合意書を作成し、離婚に向けた家庭内別居であることを明確にしておくことも有効です。

参考解説

Q2 家庭内別居の後の離婚では財産分与は不要?

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力してつくりあげた財産(共有財産)を、その貢献度に応じて分与する制度です。一般的には、婚姻関係の開始から別居時までに積みあがった財産について、2分の1ずつとすることが実務上のルールとなっています。

しかし、家庭内別居から離婚をする方の中から「家庭内別居だったのだから、財産構築への貢献はなかった」、「家庭内別居開始時を基準時として財産分与を判断すべきだ」というご相談を受けることがあります。

この点でも、前章で解説したとおり「家庭内別居は、破綻ではない」という考えを原則とする家庭裁判所の実務からすれば、収入や財産が明確に分けられているような例外的なケースでない限り、財産分与は原則どおり、別居時を基準とすると判断されると考えられます。

参考解説

離婚と別居の問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

夫婦ごとの事情により、家庭内別居という選択肢を選ばざるを得ないことは理解できます。もちろん、家庭内別居にもメリットがありますし、家庭内別居後、修復して復縁している夫婦もいます。

しかし、「将来、一緒にい続けることができるだろうか」と自問してみてください。将来の離婚が容易に想像できるのであれば、家庭内別居を続けることにメリットはありません。

特に、「子どもの健全な発育を守るため」という理由で家庭内別居をしている場合、現在の冷え切った家庭環境が、子どもにとって本当に良いものであるかどうか、よく考える必要があります。

とはいえ、別居にも相当な覚悟が必要であり、事前準備を行って有利な離婚につなげていく必要があります。別居を検討している方は、ぜひ一度、別居前に当事務所へご相談ください。

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