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連れ去り別居は許される?違法な連れ去りから子供を取り戻す方法

離婚に向けた別居の際、子供の扱いがトラブルとなることがあります。

配偶者が子供を無断で連れて別居を始めたり、子供を連れ去って返してくれなかったりといったケースでは、大きな精神的苦痛を抱くでしょう。

相談者

妻が子供を連れて出ていってしまった

相談者

違法な連れ去り別居に当たるのでは?

一刻も早く取り戻したいと願うのは当然ですが、実力行使は、かえって不利な状況を招きます。「実家に押しかけて強引に連れ戻す」といった方法は法的に許されず、更に問題を複雑化させます。子供を取り戻すには、家庭裁判所を通じた法的手続きを活用するのが適切です。

今回は、「連れ去り別居」が違法となる場合や、連れ去られた子供を取り戻す方法を、弁護士が解説します。子供の連れ去りは、「連れ去られた夫側」の相談例が多いですが、自身の行動が「問題のある連れ去り」と指摘されないよう、妻側でも正しい知識を理解しましょう。

この解説のポイント
  • 連れ去り別居されても感情的な行動は避け、法的手段で冷静に対応する
  • 子の引渡し審判・子の監護者の指定審判・審判前の保全処分の3点セット
  • 連れ去り別居から子供を取り戻すには、専門性の高い弁護士のサポートが必要

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

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連れ去り別居は許される?

子ども

子供の連れ去りは、夫婦双方にとって深刻な問題であり、違法な連れ去り別居は決して許されません。養育環境は「子の福祉」を優先すべきであり、親の都合で連れ去るのは不適切です。ただし、子供を連れて別居する行為が、全て違法な「連れ去り別居」となるわけではありません。

違法な「連れ去り別居」か、正当な理由に基づく子供を連れての別居なのかは、事前の夫婦の合意や監護実績、子の福祉に対する配慮などを総合的に考慮して判断しなければなりません。

連れ去り別居とは

連れ去り別居とは、夫婦の一方が、他方の同意を得ずに子供を連れて別居を始める行為のことです。夫婦仲が悪化し、離婚に向けて別居を試みる際、親権や監護権に争いがある状況だと、連れ去り別居が起きやすい傾向にあります。

同居中に、妻が子供を連れて別居するケースが典型例ですが、面会交流後に子供を返さなかったり、保育園で待ち伏せして連れ去ったりといったトラブルもあります。

子供を連れて家を出ることが違法な「連れ去り別居」になるかどうかは、連れ去りの態様や経緯、従前の監護の状況などによって判断が異なります。

子供がいる夫婦の離婚」の解説

違法な連れ去り別居となるケース

違法な連れ去り別居かどうかは、子の福祉(利益)と、子供と共に別居する正当な理由の有無によって判断されます。加えて、事前の協議や合意が十分になされているかや、別居後の子供の生活が安定しているかといった点も考慮されます。

相手の同意なく、子供の生活環境を乱す形で連れ去ると、違法となる可能性が高いです。親権に争いがあると、監護実績を積むために一方的に子供を連れ去る人がいますが、調停や裁判ではマイナス評価を受けるため逆効果です。

子供を連れていく行為が、違法な「連れ去り別居」に該当するのは、以下のケースです。

監護実績のない親による連れ去り

同居中に主に子供の世話をしていたのが一方の親であるとき、他方が子供を連れて別居する行為は、違法な「連れ去り」と評価される可能性が高いです。例えば、ほとんど育児に関与していない父親が、親権を得たいがために無理やり子供を連れて家を出ることは子の福祉(利益)に反しており、違法な「連れ去り別居」の典型例です。

面会交流中の連れ去り

別居後の面会交流で、一時的に子供を預かった親が、監護親に子供を返さない行為も、違法な連れ去りに含まれます。面会交流は、子供と離れて暮らす親との絆を維持するためのものであり、連れ去りの手段とすることは許されません。

相手が、面会交流後に子供を返さないおそれがあるときは、交流のルールを明確にした書面を作成したり、第三者機関を利用したりといった対策が効果的です。

連れ去りの手段に問題がある場合

子供や配偶者に暴力や脅迫を用いるなど、手段に問題がある場合も違法となります。例えば、次のような手段は、連れ去り別居として問題視される可能性があります。

  • 子供を虐待して無理に連れていく
  • 保育園や学校で待ち伏せして子供を連れ去る
  • DVやモラハラによって配偶者から子供を奪う

違法な手段によって連れ去ることは、子の福祉(利益)に沿わないばかりか、別居後の子供の生活を危険にさらすおそれがあります。

離婚前の別居の注意点」の解説

正当な子連れ別居として許されるケース

一方で、子供を連れて別居することが、全て違法な「連れ去り別居」なわけではありません。正当な理由がある場合や、子供の利益にもなる場合には、、子供を連れて別居することが許されます。

DVやモラハラが深刻で、子供が虐待されている場合は、安全を確保するために別居が必要です。このとき、子供を連れて別居する正当な理由があるので、違法にはなりません。むしろ、身の安全を守るため速やかに別居すべき状況といえます。

子連れで別居してもよいケースには、以下の例があります。

主たる監護者が子供を連れて出る場合

同居中に主に子供の世話をしていた親が、別居する際に子供を連れて行く行為は、監護権に基づく正当な行為とみなされます。

離婚を予定している場合、いずれは別居せざるを得ず、その際に親権は一方の親が取得します。したがって、離婚に向けて、子供と共に新しい生活を始めたとしても、違法な「連れ去り別居」にはなりません。

相手が子供を虐待している場合

相手が子供を虐待しているときは、子供の安全を確保するため、一緒に別居する必要があります。この場合、子供を連れて出ても違法な連れ去りにはなりません。ただし、後々トラブルを避けるために、虐待の事実を示す証拠(録音や録画、ケガの写真、診断書など)を準備しておくのがお勧めです。

配偶者によるDVのおそれがある場合

配偶者から暴力を受けている場合、子供にも危害を加えられるおそれがあります。子供の前で暴力を振るわれること自体も子供に心理的な悪影響を及ぼすので、子供を連れて避難することは違法な「連れ去り別居」ではありません。

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連れ去り別居された直後にすべき対応

女性

次に、連れ去り別居が発覚した直後、速やかに行うべき対応を解説します。

連れ去り別居は、親権争いに関わるだけでなく、子供が危険に晒されるおそれもあるため、スピード重視で行動すべきです。ただし、感情的に相手を非難したり、実家に押しかけたりするのではなく、冷静に対応するようにしてください。

子供と配偶者の所在を確認する

連れ去り別居されたとき、「子供の安全」が最優先です。真っ先に、子供と配偶者の所在を確認し、安全を確保しましょう。別居した相手の居場所を確認するには、次の方法があります。

  • 直接連絡する
    まずは配偶者に直接連絡を試みます。責任追及したり否定したりすると拒絶されるおそれがあるので、「子供の安否」に絞って確認する姿勢が重要です。
  • 実家に連絡する
    本人に連絡を拒否されたら、義両親や兄弟姉妹、共通の友人などに連絡します。
  • 警察に相談する
    子供の安全が懸念される場合、警察に相談する手もあります。連れ去り時に暴力を振るわれたり虐待の可能性があったりするなら、迅速に対応すべきです(「警察に相談する」の通り、民事事件の解決には適していません)。
  • 弁護士を通じて連絡する
    計画的な別居だと、すぐに弁護士から連絡が来たり、置き手紙があったりすることがあります。このとき、子供の安否は弁護士を通じて確認できます。

ただし、あくまで「子供の安全」という優先事項の確認に留めましょう。無理やり居場所を特定しようとしたり実家に押しかけたり、弁護士が付いたのに直接連絡したりといった行為は、調停や裁判の際に「問題ある配偶者」と見られる危険があるため控えてください。

連れ去り別居は、用意周到に進められることが多いです。相手が警戒して、十分な準備をしていることを理解し、不利な立場にならないよう慎重に行動すべきです。子供を連れ去られて不安になる気持ちは理解できますが、緊急時こそ冷静な対応が重要です。

相手が弁護士に依頼したら直接交渉は禁止?」の解説

警察に相談する

配偶者による子供の連れ去りについて、警察に相談すべきケースがあります。

相手が子供に暴力を振るうなどの危険が迫るときは、警察に対応を求めるべきです。連れ去った配偶者に大きな問題があるなら、児童相談所と連携して対応されることが期待できます。

ただし、警察は、民事不介入を原則としており、「どちらに責任があるか」「今後どのように養育すべきか」といった判断はしてくれません。よほど問題ある連れ去り態様でない限り、誘拐罪としての刑事告訴も受けてくれないことが多いです。家庭内の問題に干渉することはなく、どちらの味方でもないので、警察への相談だけでは離婚や親権・監護権の問題は解決しません。

今後の連絡窓口を設定する

相手の所在が確認できたら、今後の交渉窓口を確認しましょう。

連れ去り別居が発生するケースは、親権争いが起こる可能性が高いでます。しっかりと交渉するために、弁護士を依頼する必要性の高い場面です。相手が弁護士を窓口に指定したら、誠意をもって交渉を進め、違法な「連れ去り別居」についての相手の責任を明らかにしましょう。

交渉態度に問題があると、「DVや虐待があった」という相手の主張の真実味が増してしまうので注意してください。冷静に対処できる自信がないなら、自分も弁護士を依頼するのが賢明です。

弁護士から連絡が来たときの対応方法」の解説

違法な連れ去りから子供を取り戻す方法

次に、違法な連れ去りから子供を取り戻す方法を解説します。「強引な連れ戻しは逆効果となる」の通り、法的に認められた裁判所の手続きを活用するのが適切です。

連れ去り別居が発覚したケースでは、その緊急性を考慮して、子の引渡しの審判、子の監護者の指定審判と共に、それぞれの審判前の保全処分を申し立てるのが通常です(実務上「3点セット」と呼ばれています)。

子の引渡し調停・審判

子の引渡し調停や審判は、連れ去り別居された子供の引渡しを求めるために最もよく利用される家庭裁判所の手続きです。

調停では、第三者である調停委員が仲介し、双方が話し合いを通じて合意を目指します。調停が成立しない場合は、裁判官が最終的に判断を下す審判に進みます。審判では、子供の年齢や性別、性格、就学の状況や生活環境、子供の意向などを踏まえ、総合的に判断されます。親の都合の押し付けにならないよう、子の福祉を重視して審理されます。

子の監護者の指定調停・審判

監護者の指定とは、どちらの親が子供を監護するかを決める手続きです。離婚後はもちろん、離婚前の別居中でも、監護者が争点となるケースがあります。

離婚前の夫婦は共同親権なので、連れ去り別居が起こってしまったケースでは特に、監護者を裁判所が指定しなければ子供の引渡しが進みません。そのため、子の引渡しに関する手続きと合わせて、監護者指定の申し立てをするのが通常です。

監護者の指定もまた、子の福祉の観点から、子供の年齢や性別、性格、就学の状況や生活環境、子供の意向などを踏まえて判断されます。

審判前の保全処分

審判前の保全処分は、緊急性の高いケースで利用される手続きです。

子の引渡し審判、子の監護者の指定審判と同時に、それぞれの保全処分を申し立てることで、審判の結果が出る前に家庭裁判所に仮の引渡し命令を下してもらうことができます。保全処分が認められれば、連れ去られた状態が続くことによる悪影響を最小限に抑えられます。

保全処分が認められるには「急迫の危険を防止するため必要があるとき」(家事事件手続法157条1項)という要件を満たさなければなりません。例えば、子供が不安定な環境に置かれている場合や、連れ去った親による問題ある監護・養育から救済すべき場合など、緊急性、急迫性が必要です。

人身保護請求

人身保護請求は、子供が不適切な環境に置かれた場合や、身体の自由を不当に拘束された場合に用いる手続きです。人身保護法2条は「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる」と定めており、この請求は、弁護士を通じて地方裁判所に申し立てられます。

ただし、人身保護請求によって連れ去り問題を解決するには、明らかに違法であり、かつ、他に救済手段がないことが要件となります。また、強制執行できないとう難点もあります。

したがって、実務上は、前章の通り、子の引渡し審判、子の監護者の指定審判と、各審判前の保全処分によって対応する例が多く、人身保護請求は、それでもなお子供を引き渡さない場合の最終手段として位置づけられます。

子の引渡しの強制執行」の解説

連れ去り別居に対処する際の注意点

最後に、連れ去り別居に対処する際の注意点について解説します。

子供の絡む問題は、精神的苦痛が非常に大きいことはよく理解できます。しかし、感情に任せた行動には大きな法的リスクがあります。最悪は、子供を思っての行動が、自分にとって不利になる危険があるため、冷静に対処しなければなりません。

一人では対処が難しいケースも多いので、連れ去り別居をされてしまった場合、経験豊富な弁護士に相談して、適切な手段を選ぶことが重要です。

強引な連れ戻しは逆効果となる

連れ去られた子供を強引に連れ戻す行為は、逆効果となるおそれがあります。

子供を無断で取り戻す行為は、たとえ親であっても、現在の監護者に対する「監護権侵害」となります。暴力や脅迫を用いるなど、悪質なケースでは、未成年者略取誘拐罪(刑法224条)に該当して「3月以上7年以下の懲役」という刑事責任を追及されるおそれがあります。

裁判所は、子供にとって安定した生活環境を保つことを重視しており、法的な手段を取らずに現状を変更する行為には厳しい評価を下します。その結果、無断で子供を連れ戻したことで、かえって親権や監護権を争う際に不利な判断を受ける危険があります。

国外連れ去りの場合の対応

国際結婚や配偶者が外国籍の場合、連れ去り別居の問題は、子供が国外に連れ去られるケースも想定しなければなりません。

子供が不当に国外に連れ去られた場合には、国際的なルールを定める「ハーグ条約」を活用した返還請求を行います。ただし、国外連れ去りを伴う問題は非常に複雑な対処を要するため、ハーグ条約や国際法に精通した弁護士に相談する必要があります。

連れ去り別居は弁護士に相談する

連れ去り別居をされた場合、子供を取り戻すには、迅速な対応が重要です。時間が経過するほど子供が新しい環境に馴染み、相手の監護実績が積み重なることで、親権争いにおいて不利な状況になる可能性があります。調停や審判、保全処分など、状況に応じた手続きを選択してスピーディに対処するには、弁護士のサポートが必要です。

特に、次のようなケースは、弁護士の必要性が高い場面です。

  • 相手があなたのDVやモラハラ、虐待を主張している
  • 別居前に相手がしっかりと準備をしている
  • 子供を連れ去られたが、離婚時には親権を獲得したい

離婚分野の中でも、子供の連れ去りに関するトラブルは事例数が少なく、専門性の高い分野です。依頼する際は、同種のケースについて経験が豊富であるかどうか、相談時に必ず確認してください。

初回の法律相談の際に、連れ去り前後の監護状況や経緯を具体的に伝えることで、しっかりとアドバイスを得て、信頼できる弁護士かどうかを見極めてください。子どもを取り戻すためには冷静に行動し、専門家と連携して進めることが大切です。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、連れ去り別居への適切な対処法について解説しました。

連れ去りの問題は、子供の将来に重大な影響を及ぼす問題であり、離婚時の親権を左右するため、しっかりと対応しなければなりません。ただし、深刻な状況だからこそ、感情にまかせて対応するのではなく、冷静になるようにしてください。強引に子供を取り戻そうとすると、かえって不利な立場に追い込まれるリスクがあるので、子の引渡し審判、子の監護者の指定審判、それぞれの保全処分という法的手続き(いわゆる「3点セット」)で対抗するのが基本です。

連れ去り別居に対抗するための法的手続きは複雑であり、証拠収集についても、通常の離婚事件にもまして手間を要します。経験豊富な弁護士のサポートを受けることで、速やかに必要な準備をして、最善策を講じることができます。

この解説のポイント
  • 連れ去り別居されても感情的な行動は避け、法的手段で冷静に対応する
  • 子の引渡し審判・審判前の保全処分・監護者指定の3点セットを用いる
  • 連れ去り別居から子供を取り戻すには、専門性の高い弁護士のサポートが必要

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参考解説

別居は、夫婦の関係に大きく影響するため、慎重に進めなければなりません。別居をする前に、法的な観点から将来の計画を立て、準備することが重要です。

別居を考えている方や、具体的な方法、手続きについて悩むときは、「別居」に関する解説を参考にしてください。

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