別居後に離婚の争いが起こると、相手の弁護士から手紙や電話で連絡がきて、交渉がスタートすることがあります。突然に弁護士から連絡されると、驚いてしまうことでしょう。弁護士からの連絡は、「内容証明」という特殊な郵便形式で届くので、不安を感じて相談される方も多くいます。
しかし、適切に対処しなければ、思わぬ不利益を受けてしまいます。突然の連絡に焦り、パニックになって対応を怠ると、離婚をめぐるトラブルが更に拡大し、不利になるおそれもあります。少なくとも、弁護士からの連絡を無視するのはお勧めできません。
今回は、離婚の相手が依頼した弁護士から連絡が来たときの対応方法について解説します。
- 離婚を求める夫や妻の弁護士からの連絡は、内容証明で来ることが多い
- 弁護士から連絡がきても、焦らず、落ち着いて冷静に対応する
- 相手に主張をわかりやすく伝えるために、回答書を作成して送付する
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相手の弁護士から連絡が来たら?

離婚する相手の弁護士から連絡を受けるときは、内容証明が送られてくるか、もしくは、突然電話が来るか、どちらかのパターンが通常です。それぞれの連絡のパターンごとに、どのように対応すべきかについて解説します。
内容証明で連絡がきたときの対応
離婚問題で、配偶者(夫や妻)が弁護士を依頼することがあります。弁護士からの連絡は、「内容証明」という特殊な形式で送られてくるのが一般的です。内容証明は、郵便形式の1つであり、「いつ郵便を配達したか」という事実と共に、「どのような内容の郵便物だったか」ということを、郵便局が証拠に残してくれる郵便の方法です。

弁護士は、裁判の専門家であり、「裁判では証拠が重視される」ことを理解しています。そのため、離婚問題においても、郵送物を送るときは、証拠としての価値が高い「内容証明」の方法を利用することで、できるだけ証拠化して進めようとするわけです。
「証拠に残す」という重要な効果と共に、弁護士が内容証明を送ることには、「離婚に向けた強い覚悟を示し、プレッシャーを与える」という意味もあります。
弁護士から送られてきた内容証明には「1週間以内に回答をしなければ、調停に進む」といった記載がある場合もあります。このようなプレッシャーに動揺しては相手の思う壺なので、冷静に対応することが大切です。
弁護士から電話がかかってきたときの対応
前章の通り、相手が弁護士を依頼したとき、まずは内容証明が届くケースが多いです。ただし、次のような例外的なケースでは、先に電話連絡が来ることもあります。
- 同意を得ずに別居し、速やかに安否を伝える必要があるとき
- DVやモラハラ、虐待が離婚理由となっていて危険性が高いとき
- 内容証明の送り先が分からないとき
- 相手の電話番号を着信拒否したり、アドレスやLINEをブロックしたりしているとき
内容証明なら考える余裕もありますが、電話だとその場で対応しなければなりません。突然弁護士から電話が来ると焦るでしょうが、冷静に、ポイントを押さえて対応すべきです。
弁護士から電話が来た際の対応方法は、次のように進めてください。
相手が本当に弁護士かどうか確認する
法律事務所の電話番号なら、インターネット上で検索して調査できます。
どうしても不安な方は、知らない番号には応答せず、着信のあった電話番号を検索して調査してください。ただし、無視するとかえって不利な流れになるおそれがあるので、法律事務所の電話番号であることが分かったら、早めに折り返しをするのがお勧めです。
そのまま対応する場合は、念のため、電話口の相手が本当に相手の依頼した弁護士か、弁護士の氏名、法律事務所名、登録番号を確認します。
弁護士であることが分かったら、相手が依頼していることを確認してください。
家族の安否を確認する
次に、配偶者や子供の安否を確認しましょう。
ただし、同意なく別居した相手は、DVやモラハラがあったと主張するおそれがあります。所在を突き止めようとすると「問題のある配偶者」というイメージを強めてしまいます。弁護士は守秘義務を負っており、しつこく聞いても、相手の居所を聞き出すことはできません。
相手の主張を聞くことを重視する
弁護士との電話では、次の2点を意識し、相手の主張を聞くことに徹してください。
- 電話ですぐに結論を出す必要はないこと
- 相手の言うことにすぐに同意しないこと
弁護士の発言が一方的で高圧的だったり、相手の主張ばかり鵜呑みにしていると感じたりすることも多いですが、この場で反論して打ち負かしても、思い通りの解決にはなりません。しっかり言い分を聞き、反論は後から入念に準備して行うのが適切です。
今後の書面の送り先を伝える
弁護士から一通りの主張を聞いたら、その後のやり取りは電話で済ませるよりも、書面で証拠に残しながら進めるのがお勧めです。特に支障がなければ、自分の所在を伝え、主張を書面で送ってもらえるよう求めましょう。
こちらも弁護士を窓口にする
相手に悪質なDVやモラハラがあった場合や、住所を教えると危険があるケースなどでは、こちらも弁護士を窓口にする手が有効です。
弁護士に対応を任せれば、法律知識に基づいて有利な主張をしたり、直接の対応をなくすことでストレスを減らしたりといったメリットがあります。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

相手が依頼した弁護士からの連絡への対処法と注意点

次に、離婚の相手が依頼した弁護士から、連絡を受けたときの対処法と注意点を解説します。最も大切なのは「焦らず冷静に判断すること」です。受領後すぐに行動すれば、時間的な余裕は十分にあります。対応に迷うときは、先に弁護士のアドバイスをお聞きください。
相手の内容証明をよく読む
相手の主張を理解するため、送られてきた内容証明をよく読む必要があります。
相手の弁護士から送られてきた書面を精査すれば、多くの情報を読み取り、その後の有利な対応につなげることができます。弁護士から最初に送られる書面は「受任通知」「通知書」といった題名で、主に次の項目が記載されます。
- 相手の依頼した弁護士の情報
氏名、法律事務所の住所、連絡先など - 代理権の範囲
本人から離婚問題についての一切の交渉を任されたことなど - 相手の離婚問題についての方針
離婚を希望するか、拒否するかなど - 相手の求める離婚条件
解決金、慰謝料などの金銭支払、財産分与、親権・養育費など - 離婚問題の交渉をする際に求めるルール
直接の連絡・接触の禁止、不倫相手と別れてほしいことなど
弁護士からの連絡を無視しない
次のポイントが、「弁護士からの連絡を無視してはいけない」ということです。
弁護士からの連絡だと、強い恐怖を感じたり、回答するのが面倒で放置してしまったりしがちです。しかし、連絡を無視してしまうと、単に離婚問題の解決が遠のくだけでなく、解決においてあなたが不利になるおそれがあります。
離婚問題を争う相手が「弁護士に依頼した」ということは、つまり、「無視されたり、希望する解決にならなかったりすれば、調停・裁判といった法的解決を求める意思がある」ということを意味します。弁護士から届いた内容証明を無視したからといってあきらめることはなく、その後に直接弁護士から電話がきて回答を求められたり、場合によってはすぐに離婚調停を起こされて法的手続きに発展し、泥沼化してしまったりします。
離婚までの流れは、まずは交渉を試みますが、決裂する場合には調停、そして訴訟へと進みます。先の段階に進むほど長期化し、弁護士費用や訴訟費用などの経済的負担も大きくなってしまいます。まずは話し合いでの早期解決できないか試すためにも、弁護士からの最初の連絡には、決められた期限までに回答しておくべきです。
「離婚までの流れ」の解説

配偶者(パートナー)に直接連絡しない
弁護士から突然連絡がきても、配偶者(パートナー)本人に直接連絡してはいけません。
弁護士名義で不利な書面が届いた人から、「弁護士が言わせているのではないか」「本人に直接話せばわかってくれるはず」といった相談を受けることがあります。しかし、相手が弁護士を代理人に選任し、交渉の窓口に指定したときは、これに従って誠意ある対応をすべきです。受任通知にも「今後の交渉は弁護士が担当し、直接の連絡は控えてほしい」と記載されるのが通常です。交渉窓口の指定があるのに、相手方本人と直接連絡をとることは、次のリスクがあります。
- 自分に対する心証が悪化し、感情的対立から離婚協議がうまく進まない。
- 「しつこい」「自己中心的」「非常識」といったイメージを与える。
- DV・モラハラ気質なのではないかと推認させる事情となる。
相手方が、離婚理由としてDVやモラハラの存在を主張するときは、特に注意を要します。「DV・モラハラの危険がある」と主張されると、反論したくなるのは当然です。しかし、このように主張されて弁護士が付いたにもかかかわらず直接連絡を取ろうとする行為は、「実際にDVやモラハラをしていたのではないか」という悪い印象を強めてしまいます。
その結果、離婚協議がうまくいかずに調停や訴訟に進んだとき、調停委員や裁判官から不利な指摘を受けることにも繋がりかねません。
「相手が弁護士に依頼したら直接交渉は禁止?」の解説

主張を正確に伝える回答書を準備する
送られてきた文書の検討が済んだら、自身の主張を正確に伝える回答書を用意しましょう。
相手方から来た通知の内容を、もう一度冷静に確認してみてください。通知書には、離婚問題について相手方が希望する解決の内容や、その理由が記載されています。「相手がどのような請求をしているか」によって適切な回答は異なるので、相手の主張を理解することが大切です。
回答書に書いておくべき内容は、次のようなものです。
- 請求内容への反論
例:慰謝料が高すぎる、親権を獲得したいなど - 事実に対する反論
例:記載された内容が事実ではない - 回答期限・回答方法についての要望
例:回答期限を延長してほしい、支払いを分割にしてほしいなど
相手方の受任通知に記載された主張や理由が、到底受け入れられない要求や、事実でない記載がある場合であっても、感情的になってしまわず、冷静に否定するようにしてください。
弁護士との対面交渉には用心する
交渉の過程で、弁護士と対面で話す機会があるときは、十分に用心してください。
受任通知に対して回答をすると、相手方の弁護士が、面談での交渉を申し出てくるときがあります。しかし、相手が弁護士に依頼して連絡をしてきたときに、あなた自身だけで弁護士と対面交渉することはおすすめではありません。
弁護士は交渉のプロであり、相手のペースに飲まれるおそれがあるからです。万が一、対面交渉したとしても、納得できない内容の合意書には絶対サインをせず、こちらも弁護士に相談してからに応じるようにしましょう。
「協議離婚の進め方」の解説

離婚問題に強い弁護士に相談する
離婚問題において、相手方配偶者(夫または妻)から突然の連絡を受けたとき、回答を弁護士に相談したり、対応を依頼したりするのが賢明です。
相手方の弁護士と直接交渉して、有利な条件を勝ち取ることができるのか、不安が大きい方もいるでしょう。こちら側も弁護士に依頼し、弁護士同士で交渉してもらうことで、知識と経験を活かし、有利な解決とすることが期待できます。
本解説は、離婚を求める相手から連絡が来た方に向けて記載しています。
そのため、有利な条件で離婚したい方だけではなく、離婚には応じたくない(復縁したい)方にもあてはまります。
「離婚に応じたくないなら、弁護士の連絡は無視すればよい」という考え方は、相手の感情を逆なでし、問題を拡大させ、泥沼化させる原因ともなります。少なくとも、このような誠意のない交渉態度では、信頼関係を回復して復縁するのは難しいでしょう。
「離婚相談の準備とメモ」の解説

離婚の相手方への回答書【書式】

離婚の相手が、交渉を弁護士に依頼し、弁護士から内容証明で連絡がきたときには、こちらからも書面で回答するのがおすすめです。「言った・言わない」の水掛け論になることを避け、あなたの反論をきちんと証拠に残しておくことができるからです。
弁護士から内容証明で突然の連絡をうけたとき、相手方へ送付しておくべき回答書の文例を紹介しておきます。
回答書
20XX年XX月XX日
弁護士◯◯◯◯先生
【住所・氏名】
拝復 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、20XX年XX月XX日付で貴職より送付いただきました「受任通知」と題する書面について、当方の回答は以下の通りです。
まず、当方としても、夫婦関係をこれ以上円満に継続していくことは困難であると考えており、近々離婚をすることに異存はありません。
しかし、貴職の通知書では、離婚理由は当方の不倫、DV及び度重なるモラハラ発言にあると主張されていますが、私の認識とは大きく異なり、到底承服しかねます。したがって、貴職の提案する条件での離婚には応じかねますし、同様の理由で慰謝料はお支払いできません。
とはいえ、当方としても離婚調停に進む前に話し合いの機会を持ち、早期に離婚を成立させたいという気持ちがあります。つきましては、希望する離婚条件について、当方の弁護士と相談の上、改めて連絡致しますので、しばらくお待ちください。
敬具
上記の回答書はあくまでサンプルであり、実際に送るときは、個別のケースに応じた追記・修正が必要です。
上記の例では、具体的な反論は書いていません。具体的な反論を行うには法律の専門知識が必要であり、かつ、最初の回答書の段階で全てを完璧に書いてしまうのは適切ではないからです。交渉事は、先に情報を全て開示してしまっては不利になりかねません。一回で終わろうとはせず、粘り強く交渉するためにも、先に弁護士に相談してから対応するのがお勧めです。
まとめ

今回は、別居後に、相手の弁護士から突然連絡が来たケースにおける、適切な対応方法について解説しました。
弁護士から直接連絡が来ること自体、人生であまりないことでしょう。その上、内容証明という特殊な形式で送られてくると、焦って冷静な対応ができない方も少なくありません。不適切な対応をして不利な状況に陥らないよう、対応のポイントをよく理解しておいてください。
相手の弁護士から連絡がきたときは、こちらも離婚問題に精通した弁護士に速やかに相談してください。スピーディに対応してくれる弁護士なら、すぐに法律相談を実施して、法的な観点から「どのような回答をするべきか」をアドバイスしてくれます。
- 離婚を求める夫や妻の弁護士からの連絡は、内容証明で来ることが多い
- 弁護士から連絡がきても、焦らず、落ち着いて冷静に対応する
- 相手に主張をわかりやすく伝えるために、回答書を作成して送付する
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協議離婚は、夫婦の話し合いで離婚条件に合意し、離婚届を提出することで成立します。この手続きは比較的簡単で迅速に進められる一方、難しい法律問題があっても自分達で乗り越えなければなりません。
合意内容が曖昧なままだと後にトラブルが生じるおそれがあるので、「協議離婚」の解説を参考にして進めてください。