離婚・男女問題

離婚を求める相手が弁護士を依頼後は「直接交渉」できない?

2021年6月12日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

離婚の直接交渉

離婚を求める相手が、弁護士を依頼して内容証明郵便などで離婚請求をしてきたとき、「直接本人と会って話をしたい」、「直接交渉すれば、分かってくれるはずだ」とご相談に来られる方がいます。

なかには、「つい先日まで仲良くやっていたはずなのに、弁護士がついたら突然言っていることが変わった」、「弁護士が黒幕で、けしかけているのではないか」と質問される方もいます。

しかし、弁護士が報酬などの「金目当て」で相手をけしかけて離婚請求させているとか、慰謝料請求させているといった可能性は極めて低いです。むしろ「夫婦関係は円満だと思っていたのは自分だけだ」という反論を食らってしまう前に、直接交渉を強行してしまうデメリットを理解しておく必要があります。

そこで今回は、突如、相手方配偶者から離婚請求されてしまった方に向けて、

  • 弁護士がついた相手方との直接交渉を求めることのデメリット
  • 直接交渉できない場合の正しい対応方法
  • 代理交渉を弁護士に依頼する方法

といった離婚協議のポイントについて、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。この解説は、夫側・妻側のいずれでもあてはまります。

なお「離婚の相手の弁護士から突然連絡が来たときの対応方法」についての解説もあわせて参考にしてください。

離婚を求める相手の弁護士が、直接交渉をさせない理由

離婚の直接交渉

相手方配偶者が別居を開始し、離婚を求めているとき、その代理人となった弁護士から手紙が届くことがあります。弁護士からの手紙は、「配達証明付き内容証明郵便」という特殊な形式で、配達日と記載内容を証拠化して行われます。

弁護士からの最初の連絡の目的は、「離婚の希望を伝え、離婚の協議を開始すること」にあります。そのため、一定の誠意を持ち、失礼な対応は避け、しかしながら一方で、離婚に向けた強い覚悟とプレッシャーを伝えてきます。

離婚に関する交渉を多く取り扱っている、いわば「プロ」である弁護士と対峙するにあたり、冷静かつ適切に対処することは一般の方には困難なことが少なくありません。そして、弁護士からくる通知書の末尾には、「本件については当職が窓口となりましたので、直接のご連絡はお控えください」といった文言が記載されていることが通常です。

相手の弁護士が直接交渉をさせない理由には、次のようなものがあります。

  • 弁護士が窓口となり、法律知識・裁判例の知識を生かして有利な解決としたい。
  • 相手の交渉の手間、精神的ストレスを取り除きたい。
  • DV・モラハラ・虐待の被害が拡大することを防ぎたい。

いずれの理由も、離婚を求めて弁護士を依頼した相手側にとっての都合であり、あなたには関係ないことのように思えます。それでもなお、このような事態に至ったら、直接交渉はおすすめできません。

参考解説

相手本人との直接交渉をすべきでない4つの理由

離婚の直接交渉

突然、相手の弁護士から手紙がきたときに、これを無視して直接本人と交渉をしてはいけないことについて解説しましたが、このように解説してもなお、「本当に相手の気持ちなのか、信用ができない」、「直接会って確かめたい」というご相談を受けることがよくあります。

しかし、繰り返しになりますが、相手方代理人である弁護士の指示を無視して、直接連絡を取って交渉をしようとすることはおすすめできません。

そこで、相手本人と直接交渉をすべきでない理由について、4つに分けて解説します。

【理由1】相手の敵対心をあおる

相手方配偶者の代理人である弁護士が「直接の連絡をしないでください」と書面に記載していることは、弁護士が勝手に決めたわけではありません。「相手方配偶者が定めたルール」だと考えてください。つまり、相手方本人もそのように書面に記載されることには納得をしているはずなのです。

弁護士は、法律相談を受けるときに、次のように伝えています。これは実際に当事務所が、「相手から連絡が来たらどうしたらよいのか」と質問されたときに回答している内容でもあります。

相手方が弁護士から受けるアドバイスの例

弁護士に離婚に関するご依頼をいただいたからには、今後の交渉はすべて弁護士に任せてください。

法律知識、裁判例の知識を生かしたほうが有利に交渉できますが、依頼者本人が直接交渉をしてしまってはそのようなメリットを受けることができません。更に、交渉窓口が2つになってしまっては、誰と交渉をしたらよいか相手も混乱し、結論が出るのが遅れてしまいます。

万が一、相手から直接の連絡が来ても、応じてはいけません。間違って電話に出てしまった場合でも「弁護士に任せている」とだけ伝えて連絡を拒否するようにしてください。

そのため、もし本人に連絡をしたり「会って話したい」と伝えたりしても、電話は着信拒否、メール・LINEはブロックされている可能性が高いです。もし連絡がとれたとしても「弁護士に任せているから、弁護士に連絡をしてほしい」と言われるだけです。

むしろ、相手方配偶者も納得の上で決めたルールに違反して、直接の連絡を強要することは、ますます相手方本人の感情を逆なでします。「自分に対する理解がない」、「交渉に対して不誠実だ」、「尊重してもらえていない」という印象を抱かせ、円満な話し合いを阻害する可能性が高いです。

相手の敵対心を加熱させることは、当方が有利な条件での離婚を望む方針であっても、逆に、離婚せずに復縁を望む方針であっても、いずれにせよ希望通りの解決とはならなくなってしまいます。

【理由2】自分にとって不利な証拠になる

相手が直接の接触を拒否しているにもかかわらず頻繁に連絡をとろうとすることは、当方にとって不利な証拠として利用されてしまうおそれがあります。

特に、相手方が離婚を請求している理由に、当方の「執拗なつきまとい」、「頻繁な連絡の強要」といった問題点の指摘があるとき、離婚協議におけるこのような問題行動は、同居中にも同種の問題行動を繰り返していたことの証拠として利用されます。

協議離婚による話し合いで解決できず、離婚調停、離婚訴訟へと発展する場合、度重なる着信履歴、メールの履歴、LINEのトーク履歴や、その問題ある記載内容といったものは、よく証拠として提出されます。

「同居しているのであれば直接話せるのだから、頻繁に電話やメール・LINEをすることはない」というご反論もあることでしょう。しかし、実際には同居中でも、とても高い頻度で、威圧的なメール・LINEを繰り返し送る人も存在します。

証拠によってしか事情を知ることのできない家庭裁判所にとってみれば、弁護士がついた後でも相当な頻度で直接の連絡を繰り返しているようなときには、「執着心の強い、問題のある人物だ」というイメージが強く残ってしまいます。

【理由3】DV・モラハラを推認させる

相手方が離婚を求める理由が、DV・モラハラなどの当方の問題行為にあるという主張をしているときには、ますます直接の連絡は控えたほうがよいケースといえます。

本当に過去にDV・モラハラをしてしまったという自覚がある場合に、再発させないためにも直接接触をすべきでないことはもちろんです。しかし、相手の主張が虚偽である場合、つまり、DV冤罪のケースでも、直接の連絡をすることはおすすめできません。

DV冤罪だと、「相手の弁護士も嘘を聞かされているから、どうしても本人に一言いってやりたい」という怒りが沸くことは理解できます。

しかし、電話連絡、メール連絡などだけでなく、実家や転居先を探し当て、訪問する、といった行為は、「ストーカー」というイメージを持たれ、DV、モラハラという妻側の主張にとって有利な証拠として利用されます。

当事務所への法律相談のなかには、「自分はDVなどしていない。直接話し合って、主張を真実のとおりに正したい」と相談される方もいます。しかし、このような戦い方は、本人に直接接触せずとも弁護士を通じてでも行うことができます。弁護士が窓口となったにもかかわらず直接交渉をしようと試みることは「DV、モラハラの可能性のある危険人物」という印象を、更に強くするだけです。

参考解説

【理由4】相手の対抗手段は豊富にある

離婚を要求する相手に弁護士がついて、突然、直接の連絡を禁じられた方の中には、「弁護士が付いていなければ仲直りできていたはず」、「復縁したいのだから直接連絡をとってもよいはず」と相談される方もいます。

しかし、離婚問題について相談する先は、弁護士だけではありません。特に、前章でも解説したとおり、DVやモラハラを主張するようなケースでは、支援団体や公的団体、カウンセラーなど、離婚に関する悩みを聞き、味方になってくれる窓口は多く存在します。

「突然弁護士から通知がきて、連絡がとれなくなった」というのは当方側の認識であり、実際には相当以前から弁護士などのものへ継続的に相談していた可能性が高いと考えておくべきです。

直接本人に連絡をして交渉をして、千に一つ、万に一つもうまくいくのであれば、弁護士としてはおすすめできませんが自己責任で行うことを止めることはできません。しかし、直接連絡をされてしまった相手方でも、対抗策はたくさんあり、即座に離婚調停を申し立てられ、ますます問題がややこしくなることが予想されます。

直接交渉できないとき、弁護士にどう対応したらよいのか

離婚の直接交渉

以上のとおり、離婚を求める相手に弁護士がついた後では、直接の交渉を進めようとしてはいけないということを理解した上で、それではどのように対応したらよいのか、という点を解説していきます。

特に、相手に弁護士がついてしまったわけですから、離婚問題を数多く扱い、法律の知識と経験、交渉力を備えた強い武器を手にしてしまったわけです。このような相手に対して自分自身で連絡することに不安を感じるときは、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

連絡方法は問わない

相手方の弁護士への適切な連絡方法としては、受任通知に記載されている連絡先(法律事務所の住所、電話番号、FAXなど)へ連絡することが通常です。

内容証明郵便などの方法で送られてきた受任通知には、相手方の弁護士名、法律事務所名とともに、住所、電話番号、ファックス番号などが記載されていることが一般的です。

電話で連絡をする場合には、ホームページで業務時間を調べ、業務時間内に電話をするとよいでしょう。弁護士は、仕事として連絡窓口となっているわけですから、相手方本人に直接連絡をする場合と違って、業務時間内の常識的な範囲の連絡であれば、特に遠慮する必要はありません。

法律事務所の住所も記載されていますが、弁護士は裁判所に出廷したり出張していた李など、事務所に四六時中いるわけではありません。訪問して面談を希望する場合にも、電話でその旨を伝えて日程調整するようにしてください。

まずは率直な希望を伝える

相手が求めてきているとおり、自分としても離婚をしたいと希望をしているとしても、求める離婚条件には差があることがほとんどです。また、離婚理由として挙げられている事実関係にも、争いたい部分、納得いかない部分がある場合が多いです。

相手方が依頼した弁護士は、相手方の味方であり代理人ですから、送られてきた通知書は、相手方の意見・主張しか反映せずに作成されています。このような書面が納得いかない内容であることは当然です。

そして、相手方が依頼した弁護士は、交渉の窓口として、伝えられた内容についてはすべて依頼者である相手方本人に報告をします。相手に必ずそのまま伝えてほしいときは、手紙を渡してもらう方法も有効です。

そのため、言いたいことや、離婚方針に関する希望がある場合には、率直な気持ちを、まずは相手方の弁護士に伝えるようにしてください。希望を伝えるだけですから、この際に法律のことをあまり難しく考える必要はありません。

ただし、自分にとって不利なことを言うべきではなく、また、双方の希望が大きくかけ離れていて話し合いによる解決が困難なときは、離婚調停をすみやかに申し立てるべきケースもあります。

面会交流を求める

相手方配偶者と離婚をするとしても、親子関係はなくなりません。相手方がDVやモラハラを主張するとしても、子どもに悪影響のない限り、子どもに対する愛情は示し続けるべきです。

相手方が子どもを連れて別居をしたケースでは、相手方と直接交渉してはならないことに変わりはないですが、「子どもと会わせてほしい」と強く求めることは重要です。

離婚に至るまでの間にも子どもとの交流を深めるために、面会交流が必要であり、話し合いで解決しない場合には、面会交流調停を申し立てることが有効です。

「離婚を望まない場合」も適切な対応方法は同じ

「離婚自体には争いがなく、離婚条件について話し合いたい」という場合のほか、「そもそも離婚はしたくない」という場合にも、相手の弁護士への対応方法は同様です。そして、直接話し合いを強要してはならない点も同様です。

とはいえ、実際には、当事務所においても直接話し合って復縁が成功したというケースもあります。

このようなケースで、相手方の感情を害せず、直接の話し合いを実現するためには、相手方の弁護士を通じて「直接会って話したい」ということを伝え、伝言をお願いすることです。このときには、「直接会ってもよいかも」と思ってもらえるように、謝罪すべき部分、譲歩できる部分、今後改善したい部分といった点についても伝え、自分の要求だけになってしまわないようにしましょう。

このような対応は「弁護士を介して話す」という相手のルールを守りながら、最終的には「2人で直接話す」という当方の目的を実現するのに有効です。相手方の主張に対する理解と、それに合わせた改善がポイントとなります。

「同居中の離婚協議」も適切な対応方法は同じ

同居中のまま離婚協議を開始するということが、事例としては少ないながら存在します。

このようなとき、同居中なわけですから同じ家に住んでいるわけで、弁護士から内容証明郵便が届いても「一緒に住んでいるのだから話しかけて当然」、「もう一度当事者間で話し合ってみたい」というご相談が寄せられます。

しかし、同居中であっても、一旦相手に弁護士がついた以上は、直接交渉をせず、弁護士を介して連絡をすべきという点については同様です。そして、別居中の場合と同様、話しかけて直接交渉をしようとしても「その件は弁護士とやってほしい」といわれるだけです。

家庭内別居から離婚に進めるときの注意点については、次の解説も参考にしてみてください。

まとめ解説
離婚前の別居について知っておきたい全知識【弁護士解説】

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こちらも弁護士を窓口とする

最後に、離婚を望む相手方が弁護士をつけてきて、直接話し合うことができなくなってしまったときは、こちら側でも弁護士を依頼して、弁護士同士で交渉をしてもらうという手段が有効です。

弁護士は法律の専門家であり、交渉の専門家です。特に離婚問題を得意としていれば、過去にも多くの離婚調停、離婚訴訟の経験があるため、一般の方が弁護士と話し合っても、有利に協議を進めることはなかなか難しいと感じることが多いのではないでしょうか。

当方の側でも弁護士をつけて、代理人として交渉してもらうことによって、離婚条件をできるだけ有利に進めたり、あるいは、相手方側からの離婚の要求に対して拒絶したりすることができます。

なお、両親や友人に仲介、同席をお願いしようとする方もいますが、第三者の同席は話し合いをこじらせるためおすすめできません。

離婚に関する交渉は浅野総合法律事務所にお任せください!

離婚の直接交渉

別居をした相手方配偶者から、弁護士をつけて受任通知を送られて離婚請求をされたとき、「直接の連絡は控えてほしい」と通知書に記載されていることが通常です。このように交渉窓口を指定された場合に、直接交渉を求めることは自分にとっても不利になるということについて解説をしました。

弁護士からの要望にそむいて直接連絡をとろうとすることは、自分の側でも離婚自体は望んでいるが離婚条件をより有利にしたいという場合にも、自分の側では離婚は望まない(復縁を求めたい)という場合にも、いずれの場合にも大きなデメリットがあります。

今後、話し合いによる解決が難しい場合には離婚調停、離婚訴訟へと発展して争っていることを見越して、不利な証拠を残してしまわないよう適切な対応を心掛ける必要があります。

離婚の相手方配偶者との交渉について、弁護士にお任せいただくことを検討している方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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