
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
モラハラを受けていても、証拠が手元になくて不安を感じる方がいます。
モラハラは、言葉や態度で相手を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為であり、しばしば離婚や慰謝料を請求する理由として挙げられます。しかし、身体的な暴力(DV)と違って目に見える傷が残らず、証拠を集めにくい性質があります。当事務所でも、次のような相談があります。
証拠がないと、モラハラの事実を否定されたり、態様を争われたりするおそれがあるため、日頃の言動を記録した日記や相手とのやり取りのLINE・メール、録音データ、診断書など、客観的な証拠を確保しておくべきです。
今回は、モラハラの証拠となるものや効果的な集め方、証拠を集めた後に離婚まで進める流れについて、弁護士が解説します。
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はじめに、モラハラでは証拠集めが重要である理由について解説します。
モラハラ(モラルハラスメント)は、言葉や態度で相手を傷つけ、精神的な苦痛を与える嫌がらせ行為を指します。暴言や人格否定、無視などで精神的苦痛を与え、日常的に続くと洗脳やマインドコントロールのような状態になってしまう人もいます。
家庭内暴力(DV)と異なり、直接的な有形力の行使はなく、精神的な圧力や嫌がらせが主となります。そのため、証拠に残りにくく、加害者にモラハラという自覚がないこともあります。しかし、暴言や人格否定、無視などでも、繰り返されれば被害者の心身に大きな負担となります。モラハラの加害者は外面がいいことも多く、周囲に相談しにくいことも被害を拡大させる要因です。
モラハラで離婚や慰謝料を請求する際、証拠が重要な理由は次の通りです。
以上の通り、モラハラの証拠を集めることには多くのメリットがあるので、弁護士のアドバイスを受けながら、早い段階から準備することが大切です。
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次に、モラハラの証拠にはどのようなものがあるかを解説します。
モラハラを理由に離婚や慰謝料を請求する際、被害を客観的に証明するための証拠をそろえることが欠かせません。言葉や態度で行われるモラハラは、暴力と比べてその被害が目に見えないため、複数の証拠を集めて証明しなければなりません。
モラハラの証拠を集めておくことは、速やかに離婚したい方はもちろん、関係修復やモラハラの防止を求める方にとっても重要です。
暴言や人格否定、罵詈雑言、誹謗中傷といったモラハラを受けたとき、録音が証拠となります。
モラハラに該当する言葉を発した場面を録音してください。具体的な発言はもちろん、舌打ちやため息、咳払いといった威圧的な態度も、詳細に記録しておくべきです。日本の民事訴訟では、相手の同意がない「秘密録音」でも、証拠になるのが原則です。相手に気付かれずに録音するため、ボイスレコーダーやスマートフォンの録音アプリで、いつでも録音できる準備をしてください。
一部の切り取りではなく、前後の会話も録音しておけば、モラハラ発言がされた経緯を説明することができます。暴言部分のみ切り取った短い録音では、編集や改ざんを疑われて証拠価値が下がるおそれがあります。また、経緯について日記やメモで補強することも有効です。
モラハラは言葉だけでなく、物を壊す、無視するといった態度や行動にも表れます。
モラハラに該当する行動は、録画することで証拠にできます。録画もまた、録音と同じく、いつモラハラ行動が起こっても証拠化できるよう日常的に準備しましょう。ただし、モラハラの最中に録画することは危険を伴うため、身の安全を最優先に行動してください。
モラハラの被害について記録した日記やメモも、証拠とすることができます。
突発的なモラハラは録音や録画が難しいことがありますが、後からでも、日記やメモで記録に残すことができます。被害の日時・場所・状況・内容などは、できる限り具体的に記載してください。また、改ざんや記憶違いを疑われないよう、後からまとめて作成するのではなく、被害を受けた都度、こまめに記録しておくことが大切です。
加害者とのやり取りの記録も、モラハラの証拠となります。
例えば、メールやLINE、SNSのメッセージなどでモラハラが行われたケースでは、スクリーンショットで保存することで証拠化できます。このとき、単一のメッセージではなく、文脈や経緯が分かるよう会話全体を保存しておきましょう。データの証拠は削除される危険があるので、バックアップをパソコンに送信したり、クラウド上で保存したりといった対策を講じてください。
なお、執拗な連絡や束縛、長文のLINEや頻繁な電話、着信への応答の強要といった行為も、モラハラに該当します。
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加害者がモラハラの一環として壊した物(家具、食器など)も、写真で記録しましょう。
突然感情的になって物に当たる、投げつけるといった危険な行為も、モラハラに該当します。アルコール依存症で酒に酔って暴れるといった例もあります。壁を叩いて穴を開けたり、皿を床に投げつけたり、配偶者の大切な物を壊したりしたとき、写真を撮影して証拠を集めてください。
周囲の人の証言もまた、モラハラの証拠として活用できます。
モラハラ被害を目撃した家族や友人がいれば、必ず証言を得ておきましょう。特に、利害関係のない第三者の証言は、信用性が高く評価されます。同居する子供の目撃証言も、一定の年齢に達している場合は証拠となります(ただし、モラハラによる子供の心身への影響に注意してください)。
モラハラ被害は一人で抱え込まず、家族や友人に打ち明け、相談するのがおすすめです。早い段階で相談することは、一貫したモラハラがあったことの証拠となるだけでなく、親族から注意してモラハラに歯止めをかけ、反省を促す助けにもなります。
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モラハラが深刻なDVに発展するおそれがあるときは、警察に相談しておきましょう。
モラハラについて警察に相談した際の記録や110番通報記録は、被害の深刻さを証明する有力な証拠となります。通報内容や日時が記録に残っていれば、具体的な状況の説明にも活用できます。したがって、警察に相談する際にも、モラハラの内容は具体的に伝えるべきです。
ただし、警察への通報を要するほどモラハラが悪化したとき、もはや証拠収集の余裕はなく、身を守るために速やかに別居すべきケースも少なくありません。このとき、弁護士に相談するとともに、配偶者暴力相談支援センター、警察、シェルターなどの活用も検討してください。
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モラハラの被害は、ケガやアザのように目に見える形では残りません。
うつ病や適応障害といった精神疾患を発症するなど、モラハラによる精神的苦痛を受けたときは、その被害を証明するために医師の診断書や通院履歴を証拠として入手してください。医師の診察では、症状とともに、その原因が配偶者のモラハラであることを伝えてください。可能な限り、診断書やカルテにも、モラハラが原因となっていることを記載してもらいましょう。
モラハラは暴力と違って目に見えず、被害を受けていることにも気付かないケースもあります。どのような言動がモラハラになり、証拠を残すべきなのか、具体例を知っておいてください。
配偶者の性格や容姿、育った環境などを頭ごなしに否定する発言は、モラハラの典型例です。
モラハラの加害者は「お前は本当にダメな人間だ」「誰のおかげで飯が食えていると思っているんだ」「甲斐性なし」といった言葉を使い、日常的に相手を貶めようとします。また、他の家庭と比較して馬鹿にする言動もモラハラに含まれます。こうした精神的な攻撃が繰り返されると、被害者は次第に自信を失い、自分が悪いと思い込むようになります。
交友関係や外出を極端に制限し、相手を激しく束縛する行為もモラハラに該当します。
スマートフォンの履歴を勝手にチェックしたり、頻繁に連絡をして現在地を細かく報告させたりして、配偶者の行動を常に監視しようとするのはモラハラです。自分が決めた独自のルールを相手に強要し、少しでも違反すると激しく起こるのは、モラハラ加害者によくある特徴です。被害者は常に相手の顔色をうかがうことになり、自由のない日常を強いられてしまいます。
モラハラ被害を証明するには、単発の出来事ではなく被害の継続性を示す必要があります。
そのため、証拠はある程度の期間にわたって収集することが重要です。以下では、具体的な期間の目安について解説します。
相手の暴言を録音した音声や、被害状況を記した日記などの証拠は、できる限り長期間収集しておくのが望ましいです。最低でも数ヶ月から半年程度の期間にわたり、毎日記録し続けることで、モラハラが常習的に起こっていたことを証明しやすくなります。暴力などの被害がないと、1回や2回の録音データでは「ただの夫婦喧嘩だ」「たまたま強く言い過ぎた」といった言い逃れをされるおそれがあるため、日を変えて複数回の証拠を積み重ねる必要があります。
証拠の収集期間は、長いほど有利になる可能性が高いですが、長期間に及ぶ証拠集めは精神的な負担が非常に大きくなるため注意が必要です。
被害者が我慢していることでモラハラが加速し、身の危険を感じた場合、無理をして長期間の証拠集めに固執すべきではありません。モラハラの証拠が十分とは言い難い状況でも、別居をして距離を置き、安全を確保することを最優先にすべきケースも少なくありません。特に、子供に悪影響が及ぶおそれのある場合は、速やかに決断した方がよいでしょう。
別居後は、手元にある証拠をどのように役立てられるかについて、専門家である弁護士に相談してアドバイスを得るのがおすすめです。

モラハラの被害は目に見えにくい上に、悪質な加害者ほど、隠れてこっそりと、証拠に残らないようにして行います。以下では、モラハラの証拠がない場合の対処法を解説します。
まだ同居中であれば、これからでもモラハラの証拠を集める努力をしましょう。「モラハラの証拠となるものとは?」を参考に、録音や録画、日記やメモなど、自身の努力や工夫によって集められるものも証拠として活用できることを理解して、できる限り多くの資料を集めてください。
モラハラの証拠が十分でなくても、話し合いで合意すれば離婚は可能です。
相手が同意しなければ、裁判離婚をするには民法770条1項の定める「法定離婚事由」が必要であり、そのためには強度のモラハラを証拠に残さなければなりません。一方で、協議や調停で離婚するのであれば、その理由は問われず、相手が同意するかどうかがポイントとなります。
ただし、モラハラ加害者と直接対峙し、当事者間で話し合いを行うのは容易ではありません。相手が「モラハラではない」と否定してくることも多いため、協議が難しい場合には調停を申し立て、調停委員や裁判官の関与のもとに話し合いを行う方がよいでしょう。離婚調停では、中立的な立場の調停委員を通じて調整することができ、証拠が乏しくても、双方の言い分を丁寧に聴取してもらえます。調停委員の理解が得られれば、離婚に向けた説得が期待できます。
「調停委員を味方につけるには?」の解説

モラハラを早期に止めるために、問題点の指摘が有効なケースがあります。
モラハラの加害者の中には、自分の言動が相手を傷つけていることに自覚がない人も多く、軽度なうちに問題を認識させることが、夫婦関係の改善につながることもあります。
指摘する際は、「あなたはモラハラだ」と感情的に非難するのではなく、「この発言で傷ついた」「このような言動をやめてほしい」と、具体的な事実を挙げて冷静に伝えることが大切です。加えて、この際に証拠があれば、具体的に示して自覚を促すことができます。
相手が反省し、改善する意思を示すのであれば、夫婦カウセリングなどの支援を受けながら関係修復を目指すのも選択肢の一つです。また、一時的に別居してお互いに冷静になる期間を設け、加害者が自らの言動を振り返るきっかけを作ることができます。
ただし、指摘を受けた相手が逆上する危険がある場合、無理に面と向かって指摘すべきではなく、別居してから弁護士から通知するなどの対応が適切です。
「離婚前の別居の注意点」の解説

早期離婚のためには、相手のモラハラを証明することだけに固執する必要はありません。
相手がモラハラを否定し、証拠が不十分なケースでは、その他の離婚原因を立証することができないかを検討してください。民法770条1項の定める「法定離婚事由」には、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由の4つがあり、例えば、不貞行為やDVといった、モラハラよりも証拠に残りやすい事情の証拠が入手できる場合もあります。
相手が離婚を拒否したり、復縁を望んだりすると、協議や調停での離婚は困難であり、訴訟に移行するしかありません。モラハラ気質の夫や妻ほど、頑なに離婚を拒んだり、独自の主張に固執したりして、話し合いが進まないことがあります。
また、いずれにも該当しない場合でも、早めに家を出て別居期間を積み上げることで、婚姻関係の破綻を示すのが効果的です。別居期間を理由に離婚するには、通常は3年から5年、婚姻関係を破綻させた責任のある「有責配偶者」は8年から10年程度の期間を要するのが裁判実務です。
「離婚成立に必要な別居期間」の解説

モラハラによる精神的な苦痛について、加害者に慰謝料を請求することができます。
モラハラは、相手の人格や尊厳を傷つける違法な行為であり、不法行為(民法709条)に該当するためです。慰謝料は離婚に伴って請求することが多いものの、離婚しない場合でも、モラハラによる精神的損害に対する賠償として請求できます。
モラハラの慰謝料額の相場は、数十万円から300万円程度です。ただし、この金額は目安であり、実際の慰謝料は事案ごとに異なります。実務では、モラハラの内容や悪質性、暴言や人格否定の頻度、継続した期間、被害者の精神的苦痛の程度、うつ病などの精神疾患を発症したかどうか、加害者が反省しているかなどの事情が総合的に考慮されます。長期間にわたり日常的な暴言や侮辱が繰り返されたケースでは高額の慰謝料が認められるものもありますが、一般的には、不貞行為やDVといった他の事情に比べ、モラハラの慰謝料は低額となる傾向があります。
また、慰謝料請求の際にも、モラハラの事実を証拠により証明できるかどうかが重要です。録音や録画、LINEやメール、日記、診断書といった証拠が充実しているほど、被害の深刻さを裏付けることができ、適正な慰謝料額が認められやすくなります。
そのため、モラハラによる慰謝料を請求したいと考えている場合は、できるだけ早い段階から証拠を収集・保存しておくことが大切です。

モラハラによる離婚では、証拠の有無が、離婚の可否や慰謝料請求の結果を左右します。
しかし、どのような資料が証拠として有効なのか、どのような方法で収集すべきなのかを判断することは、決して容易ではありません。また、モラハラの加害者と被害者の間には支配・従属の関係が形成されることが多く、被害者自身が相手と直接交渉すると、威圧されたり言いくるめられたりし、十分に権利を主張できないおそれがあります。
弁護士に相談すれば、手元にある証拠でどこまで立証できるかを見極めた上で、不足している証拠や今後収集すべき資料について具体的なアドバイスを受けられます。また、相手との交渉を代理してもらえば、精神的な負担を軽減しながら離婚を目指すことが可能です。状況によっては、警察や配偶者暴力相談支援センターなどの専門機関と連携し、安全を確保しながら対応します。
当事務所では、モラハラを理由とする離婚や慰謝料の請求について、豊富な実績があります。相談時には証拠が十分でなくても、今後必要となる証拠集めを提案するとともに、離婚協議・調停・訴訟まで一貫したサポートが可能です。当事務所では、家庭裁判所長を歴任した弁護士が在籍しており、裁判でどのような証拠が重視されるかを踏まえたアドバイスが可能です。
「相手が弁護士に依頼したら直接交渉は禁止?」の解説

今回は、モラハラの証拠になるのはどのようなものかを解説しました。
モラハラは身体的な暴力とは違い、外見から被害が分かりにくいため、離婚や慰謝料請求では証拠の有無が重要なポイントとなります。録音や録画、相手とやり取りしたLINEやメール、日記やメモ、診断書など、日常生活の中で残される様々な資料が、モラハラの証拠として活用できます。
十分な証拠があれば、離婚の協議を有利に進め、場合によっては慰謝料を請求することも可能です。一方で、証拠がない場合でも、適切な方法で証拠を集め、別居をするなどの方法で、早期に離婚を成立させられるケースは少なくありません。一方で、違法な方法で証拠を取得すると、かえって不利になるおそれもあるため注意が必要です。
モラハラによる離婚は精神的な負担が大きい場面も多いでしょう。証拠の集め方や離婚の進め方に不安がある場合、早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。
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