離婚・男女問題

配偶者が近づくことを禁止し、危険から身を守る3つの方法

2021年8月30日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

夫(または妻)が、離婚に向けて別居したにもかかわらず、しつこく電話やLINEで連絡してきたり、別居先の実家や職場などに押しかけてきたりすることがあります。子どもがいるとき、保育園に突然あらわれて子どもに悪影響があるケースもあります。

夫(または妻)によるこのようなつきまとい行為、嫌がらせ行為や危険な接近行為は、離婚を拒否して復縁を求めるための手段として行われることもありますが、離婚後も続くこともあります。あなたの提案する離婚条件に不満があること(特に「離婚と子どもの問題」など)が原因となっていることも多いです。

配偶者が執拗に近づいてきて恐怖や不安を感じるときには、DV保護命令・ストーカー規制法に基づく警告・接近禁止の仮処分といった法的手続きが有効です。相手にDV・モラハラ気質があるとき、自分ひとりで無理に解決しようとすることは危険です。

今回の解説では、

  • 配偶者のつきまとい・嫌がらせへの対策
  • 配偶者が近づくことを禁止する法的手続き
  • ストーカー行為を理由に離婚できるか

といったDV・モラハラ気質の配偶者への対処法について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

配偶者のつきまとい・嫌がらせへの対策

まず、離婚に向けての別居中や、離婚後に、夫(または妻)からの連絡があまりにしつこく、つきまとい・嫌がらせで恐怖や不安を感じるとき、行っておくべき対策を解説します。「連絡がしつこい」など軽度なうちに早めの対応をすることで、実際に近づいてきたりつきまとって監視されたり、危害を加えられたりといった段階に進むことを抑止できます。

なお、既にDV・モラハラがひどいことが判明しており、生命・身体に危険を感じるような状況のときは、次章で解説する法的手続きを速やかにとるようにしてください。

連絡を拒絶する

執拗につきまとい、嫌がらせをする夫(または妻)が、LINEやメール、電話などで繰り返し連絡をしてくるとき、着信拒否やブロックを活用し、連絡があなたのストレスとならないようにしておいてください。ネット上でもつきまとい(いわゆる「ネットストーカー」)をしてくるとき、SNSアカウントも忘れずブロックしておきましょう。

ただし、連絡をブロックされたことに怒り、別居先や職場におしかけるなど更に過激な行為に出る可能性があるときは、ブロックしたことが相手に伝わらない方法(例:Twitterのミュート、LINEの非表示など)を活用するようにしてください。

相手の突発的な危険行動を察知できるという点でも、ストレスは大きいでしょうが、相手からの連絡は見えるようにしておいたほうが、メリットが大きいです。

別居する

同居する夫(または妻)からの嫌がらせ、DV・モラハラに悩むとき、離婚より先にまずは別居することが重要です。別居することを事前に伝えると妨害されるおそれもあるため、こっそり結構するようにし、別居先を知られないようにしておくことが大切です。

実家の助けを得るほか、DV被害の存在するケースでは、シェルターも有力な別居先として検討してください。別居先や実家、職場などに押し掛けてくるなどの被害がないとわかるまでは住民票も移動させないようにします。子の通園・通学の都合などでどうしても住民票を移すときは、DV支援措置により見られなくしておく対策も可能です。

まとめ解説
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警察に相談する

夫(または妻)のDV・モラハラ行為が、ストーカー(いわゆる「家庭内ストーカー」)に発展してしまうとき、警察への相談が有効です。警察に相談するときには、同居中のDV・モラハラ被害について基礎づける証拠などを示すことによって、スピーディに対応してもらいやすくなります。

夫(または妻)のつきまとい・嫌がらせ行為について警察に相談するとき準備したい証拠には、暴力や暴言の録音・録画、壊された家の壁や家具の写真などがあります。まだ軽度の嫌がらせにとどまっているときには、次章に解説するストーカーとしての法的手続きに至らなくても、事実上、警察が仲裁してうまくとりなしてくれることもあります。

弁護士を窓口とする

執拗な連絡やつきまとい、危険な接近行為を禁止したいというときでも、あなたが離婚を求めているときには、離婚時期、離婚方法、離婚条件などについて、配偶者と話し合いを行わなければ離婚を進めていくことができません。

直接連絡をとると、嫌がらせを加速させる危険があると感じるときには、話し合いの窓口を弁護士にすることで、夫からの接近を回避しながら、離婚の協議を進めることができます。弁護士を窓口としたときは、直接あなたに連絡することは禁止されています。

ただし、弁護士を窓口にし、直接連絡しないよう通知してもなお、夫(または妻)が直接執拗に連絡してきたり、家に押しかけてしまったりといった問題行為を繰り返すときは、これ以上離婚協議で続けても解決が難しく、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟の順で、離婚についての法的手続きを進めていくことが、早期離婚への近道です。

なお、離婚問題に精通した弁護士のアドバイスは、前述した相手からの連絡の拒絶、警察への相談や告訴などの方法をとるときにも役立ちます。法律の専門知識を与えてくれるとともに、豊富な経験をもとに将来の見込みを伝えてくれ、不安感を解消してくれます。

参考解説

配偶者が近づくことを禁止するための法的手続き

夫(または妻)の嫌がらせが、執拗な連絡といった軽度のものにとどまらず、実際に別居先や実家、職場などにおしかけてきて、危険が高まったときには、より強力な手段を検討する必要があります。

前章に解説したとおり、別居先を知られないようにする対策はありますが、勤務先や実家、子の保育園や学校は、すぐに変更することが難しい場合があります。

このような夫婦間(元夫婦間)で起こるつきまとい、嫌がらせ、接近行為といった問題を解決するためには、配偶者が不当に近づいてくることを禁止するための法的手続きを利用する方法が有効です。

DV防止法の保護命令(接近禁止命令・退去命令など)

被害者から裁判所への申立てにより、暴力・脅迫によって生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいなどの要件のあるとき、配偶者に、接近禁止、電話などの禁止、同居の子どもへの接近禁止、親族などへの接近禁止、共に生活していた住居からの退去などを命令がなされる手続きです。接近禁止は6ヶ月、退去命令は2ヶ月を期間とします。

なかでも、DV・モラハラの実務では、接近禁止命令、退去命令がよく利用されています。

DV防止法の保護命令は、夫(または妻)が、つきまといや不当な接近などを行い、危険があるときに、管轄の地方裁判所に申し立てることで利用することができます。DV防止法の保護命令が出されると、その内容が警察にも共有されるため、警察に相談したときにも動いてもらいやすくなるメリットもあります。

相手が保護命令に違反したときは、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の刑事罰が科されます。

ストーカー規制法の警告・禁止命令など

ストーカー規制法では、夫(または妻)の行為が「つきまとい等」、「ストーカー行為」に該当するときに、警察に申請をすることによって、警察から警告などの措置をとってもらう手続きが定められています。

ストーカー規制法に定める「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で行う次のような行為です(ストーカー規制法2条1項)。

  • つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、付近の見張り、押し掛け、付近のうろつき
  • 行動を監視していると告げる行為
  • 面会や交際などの要求
  • 著しく粗野、乱暴な言動
  • 無言電話、執拗な電話、メールなどの連絡
  • 汚物、動物の死体などの送付
  • 名誉を傷つける行為
  • 性的羞恥心を害する行為

そして、これらのつきまとい等にあたる行為を反復して行うことをストーカー行為と定めています(同法2条3項)。

警察が、夫(または妻)の執拗な連絡や接近行為について「ストーカー行為」と認定すると、ストーカー規制法に基づく警告が相手に対して通知されます。警告に従わないときには公安委員会から禁止命令が発出され、禁止命令にも従わずストーカー行為をしたときは「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」(同法19条)、禁止命令に違反するその他の者には「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(同法20条)という刑事罰が科されます。

また、緊急性の高いときには、警告や禁止命令を待たずに警察に告訴することも可能です(この場合、ストーカー行為をした者には「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(同法18条)が科されます」。

接近禁止の仮処分

接近禁止の仮処分は、裁判所で行われる保全処分の一種であり、平穏な生活が侵害されようとしている危険のあるときに、仮にその危険を排除するための措置を求める手続きです。

仮の手続きであることから、認めてもらうためには、危険が切迫していること(「保全の必要性」といいます)が必要となります。例えば、夫(または妻)が執拗に連絡して会うよう強く求めているとか、過去に暴行していて、また強硬手段に出る可能性が高いといった事情を裁判所に説明するようにします。

別居後のつきまとい・嫌がらせなどを理由に離婚できるか

離婚を求めてあなたが別居したとき、既に離婚したいだけの理由があるのが通常でしょうが、これに加えて、別居後のつきまとい・嫌がらせ行為を理由として離婚することができるかについて解説します。

特に、別居した際の理由が性格の不一致、価値観の相違のようにそれだけで離婚を認めてもらうことが必ずしも容易ではない、軽微な理由であったときなどには、別居後のDV・モラハラといえるような問題行為についても、証拠化し、離婚理由として主張しておくことが大切です。

離婚が認められるケース

離婚に向けた別居中に、執拗に連絡をとった、ストーカーした、不当に近づいた、束縛したといった事情は、その程度が強度でなければ、それだけで離婚を認めてもらうことが難しいおそれがあります。離婚後も、特に子どもがいるときには養育費や面会交流など、どうしても連絡をとらなければならないタイミングは多いです。

また、夫(または妻)がこのような危険な行為をする理由は、離婚条件への不満や復縁の要望などにあることが多く、離婚を拒否してくることが予想されるため、特に離婚問題が難航する事例といえます。

離婚裁判で離婚を認めてもらうことができる事情は、民法770条1項の法定離婚原因に定められていますが、このうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかが問題となります。離婚が認められるケースは程度が重度であり、あなたに対するストレスが大きいときや、暴力をともなうといった事例です。

【執拗な連絡行為の例】

  • 1日100回の長文LINEを送るなど、常識を超えて執拗に連絡する
  • 電話をかけ続け、常に電話に出ることを要求する
  • LINEへの返信が少しでも遅れると強く問い詰める

【不当な接近などの例】

  • 保育園で待ち伏せし、子どもを連れ去ろうとする
  • 別居先の実家に押しかけ、夜中に大声で怒鳴る
  • 職場に何度も電話をかけ、電話を取り次ぐよう求める

特に、これらの行為がひどいとき、前章で解説したDV防止法の保護命令、ストーカー規制法の警告、接近禁止の仮処分など、夫(または妻)があなたに近づいてきて危険を加えることを防止する手続きをとったにもかかわらず、なおこれらを破って近づいてくるときには、その重大性が認められやすく、離婚を認めてもらいやすくなります。

そのため、心身の危険を防止するという点ではもちろん、早く離婚するという目的でも、法的手続きをとって、つきまとい、嫌がらせ、接近行為に対して対策をしておくことはとても重要です。

慰謝料請求が可能なケース

上記のようなつきまとい、嫌がらせ、不当な接近行為が続くときには、大きな精神的苦痛を受けることとなります。このようなとき、精神的苦痛について夫(または妻)に慰謝料請求することができます(離婚するときはもちろん、離婚せず慰謝料請求することもできます)。

なお、あなたが離婚に向けた別居をしたのに、不当な接近行為、執拗な連絡を繰り返す夫は、自分が悪いとは思っておらず、慰謝料を協力的に払ってくれるとは考えがたいです。また、慰謝料請求したことに逆上し、さらに重度のストーカー行為に発展するおそれもあります。

そのため、慰謝料請求するときには、弁護士を通じて請求を通知することがおすすめです。

離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、離婚を求めて別居をするなどして話し合いをしているときに起こりがちな、夫(または妻)からのつきまといやストーカー、嫌がらせ、不当な接近行為といった身の危険を感じるケースについて、対応方法を解説しました。

まずは、連絡を拒絶したり弁護士に相談したりといった対策を速やかにとることが重要ですが、実際に家や職場に押しかけてきたり、暴行を受けたりといった危険が発生してしまう前に、DV防止法の保護命令、ストーカー規制法の警告、接近禁止の仮処分など法的手続きをとることも早めに検討しておくようにしてください。

配偶者の行為によってあなたや子どもの平穏な生活が脅かされるとき、早めの対処が必要となります。離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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