インターネット問題

誹謗中傷をネット上で匿名ですることの重い責任とは?【弁護士解説】

2020年6月2日

誹謗中傷した責任

インターネット上の誹謗中傷行為が、その対象となった人に与える被害はとても大きいものです。顔の見えない多くの第三者から中傷を受けているように感じることによるダメージは計り知れません。

しかし一方、誹謗中傷をする人にとっては軽い気持ちでおこなったということも少なくありません。特に、5ちゃんねる、爆サイなどの匿名掲示板や、Facebook、TwitterなどのSNSを利用した情報発信が手軽になるにつれ、このような軽い気持ちによる誹謗中傷が急増しています。

インターネット上の表現の自由、議論の自由が守られなければならない一方、たとえ匿名であっても、情報発信には責任がつきものであることを理解しなければなりません。

そこで今回は、SNSや匿名掲示板など、インターネット上で誹謗中傷をしたことの重い責任について、弁護士が解説します。

浅野総合法律事務所のアドバイス

ネット上の言葉の暴力は、発した人の想像を超えて、被害者を傷つけることとなります。

当事務所では、インターネット上の情報発信に関する問題についての法律相談を多くお取り扱いしております。

誹謗中傷の刑事責任

誹謗中傷した責任

まず、インターネット上で誹謗中傷することにより負うこととなる最も重い責任が、刑事責任です。刑事責任とは、刑法に定められた違反行為を行うことによって負う責任であり、罰金や懲役などの刑事罰を科せられることとなります。

インターネット上で誹謗中傷を行うことで生じる刑事責任には、主に「名誉棄損罪」「侮辱罪」があります。

名誉棄損罪

名誉棄損罪とは、不特定多数の第三者に対して、事実を摘示して、人の社会的な名誉を低下させるおそれのある行為をしたことで成立する犯罪行為です。

名誉棄損罪について定める刑法の規定は、次のとおりです。

刑法230条(名誉棄損)

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

この条文を読めばわかるとおり、名誉棄損罪は、その摘示された内容が事実であったとしても成立します。「本当のことだから言ってもよいだろう」ということにはならないわけです。

ただし、名誉棄損罪は、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあり、かつ、摘示した事実が真実である場合には、犯罪にはならないものとされています。また、仮に事実が真実ではなかったとしても、真実であると信じることについて相当の理由があるときは名誉棄損罪は成立しないことが最高裁判例(最高裁昭和44年6月25日判決)によって明らかにされています。

名誉棄損罪が成立しない場合について定める刑法の規定は、次のとおりです。

刑法230条の2(公共の利害に関する場合の特例)

1. 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2. 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3. 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

侮辱罪

侮辱罪とは、事実を摘示することなく、他人の社会的評価を低下させるおそれのある行為をしたことで成立する犯罪行為です。

「バカ」「アホ」「ブラック企業」など、事実をとくに指摘せずに評価を加え、誹謗中傷をおこなう行為が侮辱罪にあたります。

侮辱罪について定める刑法の規定は、次のとおりです。

刑法231条(侮辱)

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する

誹謗中傷の民事責任(不法行為責任)

誹謗中傷した責任

人を誹謗中傷する行為は、民事上は不法行為(民法709条)にあたる可能性があります。不法行為にあたることとなると、誹謗中傷の対象となった人から損害賠償請求を受けることとなります。

請求される損害の内容には、誹謗中傷の対象者が被った精神的苦痛に相当する慰謝料に加えて、発信者情報開示請求(仮処分・訴訟)の方法によって情報発信者を特定するのにかかった弁護士費用などが含まれることが一般的です。

なお、民法には名誉棄損についての免責の条項はありませんが、刑法230条の2の考え方が援用され、同様に、公共の利害に係る事実について、専ら公益を図る目的で、摘示した事実が真実である場合、もしくは、真実であると信ずるにつき相当な理由がある場合には、不法行為もまた成立しないものと判断した最高裁判例(最高裁昭和41年6月23日)があります。

インターネット上の誹謗中傷行為によって不法行為が成立するためには、帰責性(故意または過失)が必要となるからです。

誹謗中傷のプロバイダの責任は限定的

誹謗中傷した責任

誹謗中傷行為をおこなった情報発信者だけでなく、その情報発信を担ったプロバイダもまた、責任を負うことがあります。このことから、不適切、悪質な情報発信を抑制するためプラットフォーマーへの規制を強化しようという議論もなされています。

ただし、インターネット上の表現の自由を守るため、プロバイダが責任を負う場合とは「プロバイダ責任制限法(いわゆる「プロ責法」)」という法律に定められた次の場合に限定されるものとされています。

プロバイダ責任制限法3条1項の要件

  • 権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信の防止措置を講ずることが技術的に可能であること
  • 当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたか、当該特定電気通信による情報の流通を知っており、かつ、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認める相当の理由があるとき

誹謗中傷の重い責任を負わないための対応策は?

誹謗中傷した責任

誹謗中傷をおこなって責任追及されてしまわないように、また、すでに過去に誹謗中傷をしてしまった人がこれ以上に責任を拡大してしまわないように、誹謗中傷の情報発信をしてしまった側の立場での対応策について弁護士が解説します。

悪質な誹謗中傷行為は、いかなる人を対象としたとしても許される行為ではありません。「批評」や「意見」ではなく「悪口」は、たとえテレビに出ている芸能人などであっても「有名税だから」と許される行為ではないのです。

安易に賛同しない

インターネット上の情報発信のルールでは、次のような行為が、特定の書込みや投稿に対する賛同の意思表示と解釈されることがあります。

  • LINEのタイムライン上の投稿にスタンプを押す行為
  • Facebookのタイムライン上の投稿に「いいね」をする行為
  • Facebookのタイムライン上の投稿をシェアする行為
  • Twitterにおける特定の投稿をお気に入りに入れる行為
  • Twitterにおける特定の投稿をリツイートする行為
  • SNS上の投稿を引用したり、まとめサイトを作成して拡散したりする行為

常識的、道徳的な議論はさておくとして、法的には、これらの行為だけで、第一次的な情報発信をおこなった投稿者と同等の重い責任を負うこととはならないことが多いといえます。

ただし、たとえ法的な責任を負わないとしても、情報拡散の一端を担ったり、賛意を表するかのようなイメージを作出したり、他の人が増長し加担しやすい空気を作ったりしたことについて、道徳的な非難を受けることがあります。あらたな誹謗中傷のターゲットとなり、炎上をまねいてしまう可能性もあります。

また、程度が著しい場合や、違法性、悪質性の強い場合には法的な責任を負うおそれもあります。たとえば次のようなケースです。

  • 繰り返しリツイートをしてことさらに情報を拡散する行為
  • スパム的に何度もスタンプを押して嫌がらせをおこなう行為
  • 新たな誹謗中傷を生む目的でまとめサイトを立ち上げる行為

したがって、インターネット上の情報発信は、何らかのコメントを発表する場合だけでなく、「いいね」やスタンプを押したり、リツイートによって拡散したりといった行為であっても慎重におこなう必要があります。

誹謗中傷の対象者に謝罪し、示談する

インターネット上の情報発信は、たとえ5ちゃんねるや爆サイなどの匿名掲示板や、Twitterのように匿名性の高いSNSであっても、完全な匿名ではありません。インターネット法分野に詳しい弁護士のおこなう発信者情報開示請求(仮処分・訴訟)という手法により、IPアドレスやタイムスタンプをもとに、個人情報を特定できる場合が少なくありません。

そのため、匿名だからという甘い気持ちで誹謗中傷をおこなった結果、誹謗中傷の対象者から特定され、損害賠償請求を受けたり、告訴・告発され、警察・検察などの捜査機関による捜査の結果、逮捕されてしまったりすることがあります。

軽い気持ちで誹謗中傷をしてしまって後悔することもあるでしょう。このような場合に、対象者が明確になっている場合には、謝罪をし、示談をすることで問題解決をする方法があります。

この場合、誹謗中傷の対象者が損害賠償請求をしてきた場合に支払うこととなるであろう金額、すなわち、慰謝料に加えて発信者の特定にかかる弁護士費用程度が、示談金の相場となると考えられます。示談により解決したことを証拠化するため、示談書・合意書などの書面を作成しておきましょう。

示談書・合意書の記載例は、例えば次のとおりです。

示談書

A(以下「甲」という)とB(以下「乙」という)は、乙の甲に対するインターネット上の投稿(http://・・・・)による誹謗中傷行為について、以下のとおり示談した。

第1条
乙は、甲に対して、本件誹謗中傷行為を認め、自らの行為について深く反省し、謝罪する。

第2条
乙は、甲に対して、本件誹謗中傷行為の示談金として金XX円の支払義務を負うことを認め、同金員を20XX年XX月XX日限り、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。

第3条
乙は、甲に対して、今後、本件誹謗中傷行為と同種、類似の行為を含み、一切の誹謗中傷甲いを行わないことを確約する。

第4条
甲は、本件事件について、乙の犯行を許し、乙に対する刑事処罰を望まない。

第5条
甲及び乙は、本件誹謗中傷行為、本件示談書に至る経緯及び内容について、正当な理由なく第三者に漏洩、口外しない。

第6条
本契約に定めのない事項、または、本契約の各条項の解釈に疑義が生じたときは、甲及び乙は誠意をもって協議をする。

第7条
本契約に関する一切の紛争は、XX地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

甲及び乙は、本書面の通り示談が成立した証として、本書面を2通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。

20XX年XX月XX日

甲   (住所)       
    (名前)      ㊞
乙   (住所)       
    (名前)      ㊞

誹謗中傷の対象者が自殺してしまったら?

テラスハウス出演者であり、女子プロレスラーである木村花さんが2020年5月29日に自死し、その原因がインターネット上の誹謗中傷にあったのではないかと話題になりました。このようにインターネット上の誹謗中傷の影響力はとても大きく、繰り返される悪質な嫌がらせに心をむしばまれ、誹謗中傷の対象者が自殺してしまうことがあります。

誹謗中傷の対象者が自殺してしまったとき、誹謗中傷をした人が社会的、道義的責任を負うことは当然です。そして、死に至らしめるほど苛烈な誹謗中傷は、名誉棄損罪・侮辱罪などの刑事責任や、慰謝料などの民事責任を負うこととなります。

ただし、自殺の原因が特定の投稿にあったことが立証されるのでない限り、行為と死との因果関係が証明できないため、自殺という結果の責任までを誹謗中傷行為をおこなった人が負うことはないものと考えられます。

「誹謗中傷問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

誹謗中傷した責任

今回は、軽い気持ちでおこなわれがちなインターネット上の誹謗中傷が、刑事上・民事上の重い責任の対象となることについて弁護士が解説しました。場合によっては犯罪になり、逮捕されることもあります。

誹謗中傷の対象となってしまった方は、弁護士に相談・依頼することで、誹謗中傷をした発信者を特定し、慰謝料請求をすることにより被害を軽減することができます。一方で、このようにインターネット上の情報発信は完全な匿名ではないことから、誹謗中傷をおこなってしまったときは、その責任追及を受けてしまったときには適切な対応が必要となります。

誹謗中傷問題でお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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