
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
夫婦関係が悪化して離婚を考えたとき、別居期間が争点となることが少なくありません。
相手が離婚を拒否し、話し合いに応じない場合があります。このとき、別居期間は、離婚裁判(離婚訴訟)で婚姻関係の破綻を示す重要な要素となります。しかし、「◯年以上別居すれば必ず離婚できる」という法律上の決まりはありません。当事務所にも、次のような相談が寄せられます。
裁判所は、別居期間に加え、婚姻期間や夫婦関係が破綻した経緯、不貞行為やDVの有無、未成年の子の存在など、様々な事情を総合考慮して判断します。実務では、通常は3年〜5年、有責配偶者の場合は8年〜10年が別居期間の目安とされますが、状況によって必要な期間は異なります。重要なのは、夫婦関係が客観的に修復不能であることを証拠によって証明することです。
今回は、離婚成立に必要とされる別居期間の目安と、離婚までの期間を早める方法、別居期間を活用するための注意点を、弁護士が解説します。
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まず、離婚成立に必要な別居期間に、法律上の決まりはありません。
つまり、「◯年以上別居すれば必ず離婚が認められる」といった明確な基準はなく、別居期間だけを理由に、当然に離婚が成立するわけではない点に注意が必要です。
離婚協議では、夫婦が合意して離婚届を提出すれば協議離婚が成立し、この際、別居期間は影響しません。円満であれば同居のまま離婚することもありますし、相手が強硬に反対すれば何年別居しても協議離婚をすることはできません。
一方、離婚裁判(離婚訴訟)では民法770条1項に定められた「法定離婚事由」があれば裁判離婚が認められるところ、その一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断で、長期間の別居が、夫婦関係が修復不能であることを示す事情として考慮されます。したがって、夫婦のいずれにも有責行為がないケースでは、別居を継続することで破綻を示す方針となります。
ただし、この場合も、裁判所は別居期間のみで離婚を認めるわけではなく、夫婦関係が破綻に至った経緯、不貞行為やDVなどの有責性の有無、子供の有無や年齢、夫婦の生活状況といった事情も踏まえ、個別のケースに応じて判断します。
前述の通り、別居期間のみで離婚が認められるわけではないものの、家庭裁判所の実務の傾向として、別居期間には一定の目安があります。
夫婦双方に顕著な有責性がない場合、おおむね3年〜5年の別居期間が目安となります。
この期間は、現在の裁判実務において、特段の事情がない場合に婚姻関係の破綻を認める目安とされています。例えば、性格の不一致や価値観の相違など、法定離婚事由に該当するほどの有責性がない場合、3年〜5年程度の別居期間が必要となります。
ただし、この年数はあくまで目安に過ぎません。相手に不貞行為などの有責性がある場合、より短期間で離婚が認められるケースがある一方、婚姻期間が非常に長い場合や、自身が有責配偶者である場合などは、5年以上別居しても離婚が認められないケースもあります。

したがって、「何年別居すれば必ず離婚できる」という考え方ではなく、個別事情に応じて判断されることを理解しておく必要があります。
「離婚前の別居の注意点」の解説

不貞行為など、婚姻関係の破綻の原因を作った配偶者を「有責配偶者」と呼びます。
自ら婚姻関係を破綻させた有責配偶者からの離婚請求は、通常よりも厳しく判断されます。裁判実務では有責配偶者からの離婚請求を制限しており、認められるには、長期間の別居が継続し、未成熟子がいないこと(あるいは、不利益を与えないこと)、離婚によって相手方配偶者が苛酷な状況に置かれないことといった要件が必要とされます(最高裁昭和62年9月2日判決)。
そのため、有責配偶者が離婚を求める場合、通常よりも長い別居期間が必要となる傾向があります。実務上は、8年〜10年の別居期間が目安とされています。

また、必要な別居期間は個別の事情によって異なるため、当事者の年齢や婚姻期間、子供への影響の有無などによって左右されます。長年連れ添ってきた夫婦の熟年離婚、離婚される側が専業主婦(主夫)であって幼い子供の育児のために当面は就労できない事情がある場合などは、より長期の別居期間がなければ離婚が認められないと判断されるおそれもあります。
「有責配偶者でも離婚したいとき」の解説


以上の通り、別居期間の長さは、裁判で婚姻関係の破綻を示す重要な事情の一つです。
しかし、離婚ができるかどうかは、別居期間だけでは決まりません。別居期間が1年未満などのように短くても、離婚が認められる場合もあります。互いに離婚に合意できれば、別居期間は不要です。相手に法定離婚事由がある場合、別居期間が短くても裁判で離婚が認められます。
夫婦双方が離婚に合意している場合は、別居期間を気にする必要はありません。
日本では、離婚の約9割が協議離婚によって成立しています。協議離婚は、夫婦が合意し、離婚届を提出すれば成立するため、「何年間別居しなければならない」といった要件はありません。別居開始から間もない場合や同居中でも、離婚やその条件について合意できるケースがあります。長期間争うより、新たな人生をスタートさせたいと考え、離婚に応じる方も少なくありません。
ただし、口約束で離婚条件を決めると、後から養育費や財産分与の未払いをめぐってトラブルになるおそれがあるため、離婚協議書を作成することは必須となります。また、相手に協議離婚に応じてもらいやすくするには、十分な証拠を準備し、切り出し方に注意すべきです。
実際、「令和4年度『離婚に関する統計』の概況」(厚生労働省)でも、別居期間が1年未満で離婚する夫婦が159,966組となっており、全離婚193,253組の82.8%を占めて最多となっています。これは、協議離婚が多いことが理由であると考えられます。
「協議離婚の進め方」の解説

相手に民法770条1項に定められた「法定離婚事由」がある場合、離婚が可能です。
具体的には、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由の4つであり、これらの事情があれば、長期間の別居を待たなくても、夫婦関係が既に修復不能な状態であると判断される可能性があります。
ただし、裁判で認められるには、法定離婚事由に該当する事情について証拠が必要となります。不貞行為であれば不倫相手のメッセージや写真、探偵の調査報告書、DVであれば録音や録画、医師の診断書、警察への相談記録などが重要な証拠となります。相手が離婚を拒否している場合、早い段階で弁護士に相談し、証拠を収集しておくことが大切です。
「離婚裁判で証拠がないときの対処法」の解説

次に、別居開始日の考え方について解説します。
裁判で離婚を認めてもらうには一定の別居期間が必要だとして、「いつから別居期間が始まるのか」、つまり、別居開始日が重要なポイントとなります。
別居期間は、夫婦が共同生活を解消し、別々に生活を始めた日から数えます。同じ家に住むのをやめた時点が基本ですが、旅行や単身赴任、出産などで一時的に離れて暮らしただけでは「別居」にならず、離婚を前提として夫婦関係を修復する見込みのない状態であることが必要です。
別居開始日について、明確に証明するための証拠を確保しておきましょう。
別居期間が長く続くことによって離婚を求めるなら、住民票を移した記録、新居の賃貸借契約書、転居費用や引越し業者の領収書、夫婦間のやり取りなどが証拠として役立ちます。証拠がないと、夫婦間で別居開始時期が争いとなるおそれがあるので必ず保管しておいてください。
同じ家で暮らしながら生活を完全に分ける「家庭内別居」は、完全別居とは異なります。
家庭内別居でも、寝室を分け、食事や家計を別にし、夫婦としての交流が断絶されている場合、その期間が長くなれば婚姻関係が破綻していると評価されることがあります。しかし、夫婦関係が外部から確認しにくく、客観的な証明が難しいという問題があります。そのため、相手が「破綻していなかった」と主張して争った場合、裁判所から「別居」と評価されないおそれがあります。
「家庭内別居から離婚する方法」の解説

一度別居を開始しても、再同居をする家庭もあります。
この場合の別居期間の評価は、状況によって異なります。双方が関係修復の意思をもって本格的に同居を再開し、共同生活を営んでいた場合、それまでの別居期間について婚姻関係の破綻を示す事情としての意味が薄れ、新たに別居した時点から数え直すこととなるでしょう。
一方、「子供のために一時的に同居した」「荷物を取りに戻った」など、短期間同居しただけで実質的な夫婦生活は回復していない場合、それまでの別居期間が無意味になるとは限りません。とはいえ、離婚を見据えて別居したなら、安易に戻らないことがリスク回避のために重要です。

次に、少しでも早く離婚を成立させたい方に向け、必要な別居期間を短縮して、できる限り離婚を早める方法について解説します。
できるだけ早く離婚を成立させるために、早い段階で別居することが重要です。
前述の通り、離婚に必要な別居期間は一律には決まらないものの、少なくとも一定期間必要となるのであれば、別居の開始をできるだけ早めることで離婚までの期間を短縮できます。少なくとも、同居中の協議がうまくいかないと感じる場合、別居をすべきタイミングと言えるでしょう。早めの別居は、期間を積み上げるだけでなく、離婚への覚悟を強く示し、反対する相手に関係修復をあきらめさせるという点でも重要な意味があります。
「勝手に別居すると不利?」の解説

前述の通り「相手に離婚に同意している場合」には、協議離婚が可能です。
そのため、できるだけ協議離婚を目指すことが、離婚を早めるために重要です。離婚に向けた協議では、親権や養育費、財産分与、慰謝料といった様々な条件が話し合われますが、有利な条件に固執しすぎると相手が同意せず、調停や訴訟に発展し、離婚が遅れる原因となります。特に、婚姻費用を支払う側にとって、別居期間が長引いた分だけ経済的な負担が増すおそれがあるため、離婚条件について小さな差であれば、むしろ譲歩して速やかに離婚するのが合理的なこともあります。
ただし、親権争いのように譲歩が困難な争点もあり、その場合、離婚裁判(離婚訴訟)にまで発展することも少なくないため、離婚や別居が長引く要因となります。なお、離婚時に検討すべき条件は、「離婚に伴うお金の問題」「子供がいる夫婦の離婚」の解説を参照してください。
別居を開始する前に、配偶者の財産や収入に関する情報を調査しておくことが重要です。
別居を開始すると、相手の預金通帳や給与明細、源泉徴収票などを直接確認するのは難しくなります。財産分与や養育費、婚姻費用の金額を適正に決めるには、正確な収入や資産の状況を把握しなければなりません。同居中にこれらの資料のコピーを取ったり、写真に残したりして準備を整えることで、別居後の交渉を有利に進められます。
離婚を早めるには、協議がまとまらなければ早めに調停を申し立てることが重要です。
「もう少しでまとまるかもしれない」と期待して何ヶ月協議を続けても、結果的に状況が変わらず期間だけが過ぎてしまうことは少なくありません。
相手が離婚を拒否している場合や、連絡を無視された場合などは、協議を続けても進展は期待できません。協議による円満解決は理想ですが、決裂しそうな状況で漫然と話し合いを続けても、離婚成立を遅らせる原因になりかねません。
離婚交渉は、専門家である弁護士に任せることで大幅に短縮できます。
弁護士が代理人として相手と交渉すれば、感情的な衝突を防ぐことができます。また、自身がストレスを感じることもなくなるため、別居後、落ち着いて離婚の準備を進めることができます。「早く離婚したい」と考える方ほど、弁護士への依頼には大きなメリットがあります。
相手が離婚に応じず、調停や訴訟に発展するケースでも、法律や裁判手続きの知識に基づいてアドバイスを受け、不利にならないように進めることができます。
当事務所では、離婚問題を数多く扱っており、相談時には「相手が強硬に反対している」と悩んでいた方でも、早期に離婚を成立させた解決実績があります。当事務所には、元家庭裁判所長の経験豊富な弁護士が在籍しており、裁判実務を踏まえて戦略的に方針を決めることが可能です。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

最後に、離婚成立までの別居期間に注意すべきポイントを解説します。
離婚までに一定の別居期間が必要だと分かると、先の見えない不安を感じる方も多いものです。しかし、別居中の対応を誤ると、無用なトラブルを招き、かえって必要な別居期間が長くなってしまうおそれがあります。
別居中でも、婚姻関係が継続する間は、生活費(婚姻費用)を分担する義務があります。婚姻費用には、住居費や食費などの生活費のほか、子供の養育にかかる費用が含まれます。
収入の多い側が義務者となるため、自分の方が相手より収入が少ない場合、請求が可能です。別居後に支払いがないときは、婚姻費用の分担請求調停を利用することができます。一方、婚姻費用を支払う側も、正当な理由なく支払いを拒むと、後からまとめて請求されるおそれがあり、夫婦としての義務を果たさなかったとして離婚でも不利に考慮されるおそれがあります。
「別居中の生活費の相場」の解説

夫婦が婚姻中に形成した財産は、離婚時の財産分与の対象となります。
そのため、別居中でも、預貯金を使い切ったり、不動産や自動車を無断で売却したりすると、離婚時の紛争が深刻化するおそれがあります。また、意図的に財産を隠したり処分したりした場合、財産分与の場面で不利に評価されてしまいます。逆に、相手が財産隠しを行うおそれがあるとき、預貯金通帳や不動産登記簿などの資料を精査し、調査を徹底する必要があります。
「離婚時の財産分与」の解説

離婚を目指して別居していても、すぐに新しい交際を始めるのはリスクがあります。
別居中であっても婚姻関係は継続しており、その間に配偶者以外の者と性的関係を持つと、不貞行為に該当するおそれがあるからです。不貞行為があると、慰謝料を請求される上に、前述の通り、有責配偶者とされ、必要となる別居期間が長くなるおそれがあります。
既に長期間別居しており、婚姻関係が破綻していたと認められる場合は「不貞行為」になりませんが、「破綻」については裁判でも争いになりやすいため、自己判断は危険です。

今回は、離婚成立に必要な別居期間と、できる限り早める方法について解説しました。
別居期間が長くなるほど、婚姻関係が破綻していることを認められやすくなるため、相手が離婚に応じないケースでは別居期間を積み重ねることが重要なポイントとなります。
実務では、裁判で離婚を認めてもらうには、通常は3年〜5年、有責配偶者の場合は8年〜10年という別居期間が目安とされます。ただし、別居して一定期間経過したとしても必ず離婚できるわけではありません。裁判所は別居期間に加え、婚姻期間や夫婦関係が破綻した経緯、有責性、子供の有無などの事情を総合考慮しており、ケースによっても異なります。
相手に不貞行為などの有責行為があれば、1年未満の別居であっても離婚が成立するケースもあります。別居期間中を無駄にせず、調停や訴訟を見据えた証拠収集などの準備をしっかりと進めるため、早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。
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