離婚・男女問題

子の引渡しの強制執行に関する民事執行法改正【2020年4月施行】

2021年6月11日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

子の引渡しの強制執行と民事執行法改正

離婚を巡る問題の中で、特に激しい争いとなるのが、子どもを巡る問題です。子どもはかけがえのない存在であり、お金の問題に換えて解決することはできないためです。

離婚協議や離婚調停、離婚訴訟などで親権者、監護権者が決まった後も、相手が子どもの引渡しに協力しないときには、子どもを強制的に引き渡すよう命じる手続きに明確なルールがないことが、これまで問題視されてきました。

というのも、特に、子どもが幼い場合には親なしでの判断ができず、親なしでは行動ができない、その一方で子どもにも感情があり、その情操には配慮しなければならない、という特殊なジレンマがあるからです。

この点について、民事執行法が改正され、子の引渡しの強制執行について新しいルールが定められました(改正法は2019年5月10日に成立し、2020年4月1日に施行されました)。

そこで今回は、

  • 子の引渡しの強制執行が抱える問題意識
  • 子の引渡しの強制執行について、改正民事執行法のポイント

といった点について、離婚問題を多数取り扱う弁護士が解説します。

民事執行法改正前の子の引渡しをめぐる問題

子の引渡しの強制執行と民事執行法改正

2020年4月に施行された民事執行法の改正前は、冒頭で解説したとおり、離婚時に特に問題となりやすい「子どもの問題」について重大な問題がありました。つまり、親権者を裁判所が決めたにもかかわらず円滑に子の引渡しがなされないと、結局、裁判所の判断の実効性が損なわれるおそれがありました。

子どもの情操への配慮も考えれば、無理やり連れ戻すことには限界があり、暴力的な方法ではなく、あくまでも法律にしたがった効果的な執行方法の必要性が叫ばれていました。

2020年4月1日に施行された改正民事執行法より前には、子の引渡しの強制執行について法律に明文の規定がなく、実務上は、次のような方法が活用されていました。

  • 間接強制の方法
    :裁判にしたがって子を引き渡さない親に対して間接強制金の支払を命じることで、引渡しを間接的にうながす方法です。間接強制金を支払わない場合には、財産を差押えることができます。
  • 動産の引渡しの強制執行を類推適用する方法
    :動産の引渡しに見立てて、執行官が、債務者による子の監護を解いて、債権者に子を引き渡す執行方法です。執行官は、子の監護を解く際に、鍵を施錠したり、威力を行使したりすることができます。
  • 人身保護法に基づく人身保護請求による方法
    :不当に奪われた人身の自由を開放することを目的とした人身保護法を活用して、裁判所へ人身保護請求を求める方法です。

しかし、これらのいずれの方法も一長一短であり、子の福祉に配慮しながら引渡しを実現するという目的には不足するものでした。良い方法がない中での流用であるため、当然のことです。

一方で子の心身に配慮し、他方で子の引渡しを命じる裁判の実効性を確保できる適切な制度が必要であったことから、民事執行法の改正によって子の引渡しの強制執行に関する新たなルールが明確化されることとなりました。

「間接強制の方法」では、「お金よりも子どもが大切だ」という当然の価値観から間接強制命令が無視されてしまっていました。また、「動産の引渡しの強制執行を類推適用する方法」では、子どもの感情面への配慮に欠けるという問題点がありました。

また、「人身保護法に基づく人身保護請求」は請求は本来子どもの引渡しを想定して作られた制度ではなく、あくまでも他に手段がない場合に利用される最終手段であるという問題点がありました。

参考解説

子の引渡しの強制執行の手続(改正民事執行法の変更点)

子の引渡しの強制執行と民事執行法改正

2020年4月1日より施行された改正民事執行法では、子の引渡しの強制執行は、直接的な強制執行の方法と、間接強制の方法のいずれかにより行うと定めています。このうち、新たに規定されて活用が期待されているのが、直接強制の方法です。

そこで次に、子の引渡しの強制執行手続について、新たに民事執行法に定められたルールを解説します。

なお、「子の連れ去り」の問題で、強制執行に進む前提として行っておくべき監護者指定・子の引渡しなどの法的手段については、次の解説をご覧ください。

参考解説

直接的な強制執行の方法

直接的な強制執行の方法は、執行裁判所がその決定によって執行官に子の引渡しを実施させる方法として、2020年4月1日より施行された改正民事執行法に新たに定められた制度です。

債権者が執行裁判所に対して直接的な強制執行の申立てを行い、執行裁判所が、直接的な強制執行を実施するための要件を判断した上で、執行官に子の監護を解くために必要な行為をすべきことを命ずる決定をします。

この決定の後、執行官が、債権者の申立てによって執行の場所で債務者による子の監護を解き、債権者に子を引き渡します。

執行官の権限と威力の行使

子の引渡しの直接的な強制執行では、執行官が重要な役割を担っています。そして、強制執行において執行官は、子の監護を解くために必要な行為を行うことができます。

子の監護を解くために必要な行為として、改正民事執行法は次の3つの行為を挙げています。

  • 執行の場所に立ち入り、子を捜索すること(この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすること)
  • 債権者もしくはその代理人と子を面会させ、または債権者もしくはその代理人と債務者を面会させること
  • 執行の場所に債権者またはその代理人を立ち入らせること

更に、民事執行法では、執行官は、職務の執行に際して抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために威力を用いることができるとしています。

ただし、例外的に、子に対して威力を用いることはできず、かつ、威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるときは、その子以外にも威力を用いることができません。

このように、執行官は、子の引渡しの直接的な強制執行の場面で、強い権限を持ち、重要な役割を担っていることから、その裏返しとして責任を負っています。民事執行法では、執行裁判所、執行官の責務として、強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならないことを定めています。

執行条件の緩和(「同時存在」の不要)

改正前の民事執行法下での運用では、子の引渡しの直接強制をするためには、執行の場所に子と債務者が一緒にいなければならないとされていました(これを「同時存在」の要件といいます)。

「同時存在」の要件は、強制執行が子の心身に悪影響とならないことを目的としていますが、一方で、裁判に従わず子を引き渡さない親の中には、この要件を悪用して、子どもと一緒にいないことによって強制執行を不能な状態にしようとする対策をとることがありました。また、DV加害者が執行を防ぐために激しく抵抗し、子の身に危険が及ぶという問題点もあります。

改正民事執行法では、同時存在の要件を不要とし、子と親が一緒にいない状態でも強制執行をすることができるようにし、一方で、強制執行により子の不安が増幅しないよう、債権者本人が出頭することを原則としました。

つまり、いずれかの親が執行の場所にいなければ強制執行ができないようにして、執行官や弁護士など知らない人ばかりの中で手続が進んで子が不安がらないようにという配慮がなされています。

例外的に、債権者の代理人と子の関係、代理人の知識及び経験などの事情に照らして子の利益の保護のために相当と認められるときは、債権者本人の出頭がなくても、債権者代理人が代わって出頭することで足りるものとしています。

例えば、子と良好な関係を築いている祖父母が代理人になるケースなどがこれにあたります。

執行場所の範囲の拡大

子の引渡しの直接的な強制執行について、その執行場所は、基本的には債務者の住居など、債務者の占有する場所において実施することとされています。しかし、子の引渡しを考えるとき、子が常に家にいるわけではなく、学校、幼稚園、保育園や学童にいったり、祖父母の家に遊びに行ったり、習い事にいったりと移動するのが当然です。

また、住居でないと強制執行できないとすると、親が仕事をしていると早朝や深夜にしか強制執行ができないという問題もありました。

そこで、2020年4月1日より施行された改正民事執行法では、執行官がそれ以外の場所でも強制執行をすることができることとしました。ただし、子の心身に配慮するため、次の要件を満たす必要があるものと定められています。

  • 執行官が、子の心身に及ぼす影響、当該場所及びその周囲の状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき
  • 当該場所の占有者の同意またはこの同意に代わる執行裁判所の許可を得ること

直接的な強制執行と間接強制の関係

2020年4月1日より施行された改正民事執行法によれば、子の引渡しの直接的な強制執行の申立ては、まずは間接強制を先に検討してから実施すべきものとしながら、必ずしも間接強制を先行させなくても直接強制ができるように定められています。

つまり、民事執行法において、子の引渡しの直接的な強制執行の申立てができる場合とは、次の場合とされています。

  • 間接強制の決定が確定した日から2週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合にあっては、その期間を経過したとき)
  • 間接強制を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき
  • 子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき

国際的な子の引渡しの問題とハーグ条約

最後に、子の引渡しの問題は、国内だけにとどまらず、国際的な問題となることがあります。国際離婚にともなう外国への子の連れ去り問題が典型例です。

国際的な子の返還に関する強制執行については、ハーグ条約がそのルールを定めています。民事執行法における子の引渡しルールの改正は、ハーグ条約における日本国内の子の引渡しの実効性を向上させる意味もあります。

民事執行法の改正により、国内の子の引渡しの強制執行に関するルールが明確化されたこととあわせて、国際的な子の返還の強制執行に関するルールを見直すため、ハーグ条約実施法(正式名称「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」)も改正され、同内容の定めが置かれました。

「子の引渡し」は浅野総合法律事務所にお任せください!

子の引渡しの強制執行と民事執行法改正

2020年4月1日より施行された民事執行法では、これまで問題視されていた子の引渡しの強制について、直接強制の手続きという新しいルールが明確化されました。

離婚にともなう子どもの問題はとてもセンシティブな問題であり、慎重な配慮が必要です。特に、子どもはかけがえない存在であることから、子どもの引渡しが問題となるような、いわゆる「子連れ別居」、「子の連れ去り」といった場面では、両親の感情がぶつかり合い激しい争いとなりがちです。

民事執行法の改正で、子の引渡しに関するルールは明確化され、より実効性が増すことが期待されています。その一方、新しいルールをよく理解し活用しなければ、有利な解決は望めません。

離婚にともなう子どもの問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へ法律相談ください。

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

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