別居の合意書とは??別居時に合意書が必要なケースと8つの条項

夫の不倫・浮気、DV・モラハラなどが原因で離婚を決意し、もしくは、離婚の決断はまだつかないけれども、ひとまず別居をしよう、と考えている妻側の女性に向けた、弁護士の解説です。

別居をするとき、「別居の合意書」、「別居時合意書」などという用語を、インターネット上などで見かけたことがある方もいるのではないでしょうか。

別居をするとき、不倫・浮気などが原因で家を出ていく妻側で、合意書を作成、締結しておいたほうがよいケースがあります。別居時の生活費(婚姻費用)を確保しておきたい、というケースが典型例です。

そこで今回は、夫の不倫・浮気、DV・モラハラなどが原因で、別居をせざるをえなくなった妻側の女性に向けて、別居時に合意書が必要なケースと、別居の合意書の書き方について、離婚問題を得意とする弁護士が解説します。

1. 別居前に、夫の合意をとるべき?

「別居をしよう。」と思い立った理由が、夫側の不倫・浮気・DV・モラハラなどの問題にあるとき、夫に対して「別居をする。」とあらためて伝えて、合意をとることは、心理的ハードルを感じる方も多いのではないでしょうか。

特に、夫によるDVやモラハラで、あなたや子供の生命が危うかったり、これ以上耐え切れず、精神的負担が大きすぎたりといったケースでは、置手紙を残して、夫にはいわずに別居することをお勧めするケースもあります。

ただ、このようなケースでは、今回解説する「別居の合意書(別居時合意書)」を作成、締結することはそもそも不可能です。

別居の合意書を作成し、締結することができるようなケースでは、つまり、夫との間で離婚を検討中であるとしても話し合いは可能である、というケースでは、別居前に、事前に別居をすることを夫に伝えておいたほうがよいでしょう。

夫に対して事前に別居を伝え、別居の合意書案を作成して示すことによって、次のようなメリットが期待できるからです。

【別居合意書のメリット①】意思を明確に伝える

あなたが急に、事前の合意なく別居をしてしまうと、夫側でも、自分の問題点に気づいてもらえないおそれがあります。

特に、不倫・浮気はともかく、DVやモラハラは、加害者となった夫は、自分の行為が問題であることに気づいていないおそれもあるからです。

「夫側の問題で、別居を選択せざるをえなくなった。」という意思を明確に伝えることができるのが、別居前に、夫に合意を得ておくことの1つ目のメリットです。

ただし、繰り返しになりますが、DVやモラハラの程度がひどく、悪質である場合であって、あなたやお子様の生命に危険が及ぶような場合には、別居前の合意にこだわることなく、速やかに別居を進めたほうがよいでしょう。

【別居合意書のメリット②】協議を進められる

別居の合意を、別居前に事前にとっておくことによって、その後の協議を円滑に、かつ、速やかに進めることができるという効果が期待できます。

この別居合意書のメリットは、離婚を決断して、離婚に向けた協議を進めるにしても、とりあえずは別居して、夫婦円満に継続するための協議をするにしても、同様です。

ただし、離婚の意思が固く、今後は離婚が成立するまで、戻ることは全く考えていない、というケースでは、別居時の合意書を書いてもらうことにこだわらず、別居をして協議を進めた方がよいケースもあります。

【別居合意書のメリット③】反省を促す

別居前に、事前に合意書案を作成し、夫に示すことによって、夫の反省を促すことができます。

というのも、別居合意書を作成せずに別居して冷却期間をおき、しばらくたったら、また同居を再開する、というのでは、不倫・浮気などの問題行為を行った夫にとって、制裁が形に残らなくなってしまうからです。

夫側の行った、離婚原因ともなりかねない問題行為を、別居の合意書で証拠化しておくことによって、夫側の反省を促すというメリットが期待できます。

【別居合意書のメリット④】別居後の生活を守る

別居をしたとしても、夫婦である間は、夫婦は互いに扶助する義務があることから、夫のほうが収入が多かったり、あなたがお子さんを養育している場合には、夫に対して「婚姻費用」を請求することができます。

しかし、婚姻費用の合意ができないと、婚姻費用分担調停、という裁判所における調停手続によって婚姻費用の金額を決めてもらう必要があり、手間となります。

そこで、別居後の生活を守るためにも、別居時の合意書によって、別居後にもらえる婚姻費用を決めておくことが、夫側からも協力的に別居後の生活費を支払ってもらうために重要となります。

約束は、「相手はわかっているはず。」「当然理解している。」と思っても、口約束だけでは足元をすくわれるおそれがあります。調停や裁判になったとき、証拠となるよう書面によって約束を証拠化しましょう。

2. 別居の合意書を作らないほうがよいケースは?

以上のとおり、別居をするときは、今後の離婚を決意している場合であっても、離婚までは考えておらずひとまず冷却期間をおいて反省してもらうための別居である場合であっても、夫に対して、別居することを伝えておくことが重要です。

しかし一方で、別居の合意書を作成する目的は、特に別居時の生活費(婚姻費用)の確保などにあることから、ケースによっては別居の合意書は作らないほうがよい場合もあります。

そこで次に、別居の合意書を作成しなくてもよいケース、作成しないほうがよいケースについて、弁護士が解説します。

2.1. 離婚の決意が固いケース

別居時に、「別居をする。」と夫に伝えておくことを越えて、別居の合意書を作成することは、別居の後、再度夫婦生活を続ける可能性があることを前提としています。

というのも、別居合意書によって、別居時の生活費(婚姻費用)を確保するとともに、夫側の行った不倫・浮気・DV・モラハラなどの問題行為について反省を求め、その反省、対応次第で、夫を許すことを前提としたものだからです。

そのため、離婚の決意が固く、また、不倫や浮気、DVやモラハラなどの問題点については厳しく責任追及をしたい、という場合には、別居時に合意書を作成しないほうがよいでしょう。

むしろ、別居時に合意書を作成し、反省と謝罪次第では許す可能性があるようにとられてしまうと、夫側の問題行為を離婚原因としたり、慰謝料などの損害賠償請求をすることと矛盾してしまうおそれがあるからです。

2.2. 生命・身体に危険があるケース

別居をせざるをえなくなった理由が、夫からの激しい暴力、暴言などである場合には、いち早く別居をしたほうがよいでしょう。

そして、この場合には、別居の合意書を作成、提案していては、生命、身体への危険が顕在化するリスクがありますし、別居の合意書の案を提案したことが、更なる怒りに火をつけるおそれもあります。

また、さきほど解説しましたとおり、別居の合意書は、別居後に、反省の状況によっては再度復縁することを前提としたものであり、復縁は困難であるという点からも、DV・モラハラがひどい場合には、別居の合意書は不要であるといえるでしょう。

モラハラを繰り返し受けていることにより「夫の同意を得ずに別居したら怒られるのでは・・・。」と不安を感じる女性もいるようですが、別居の合意書を作成、締結することは、「別居を許してもらうこと。」ではありません。

3. 別居の合意書に書くべき内容は?

妻側から家を出て別居をするときには、別居後の生活費(婚姻費用)の支払を確実にすることのほか、夫の反省を促し、責任を明らかにするために、別居の合意書を作成すべきであることをご理解いただけたことでしょう。

そこで、以上の解説をもとに、別居の合意書が必要なケースである場合には、別居の合意書にどのような内容を書いたらよいのかについて、弁護士が解説していきます。

別居の合意書に、合意しておくべきことをできるだけ明確に、かつ、具体的に記載しておくことによって、別居後や、再同居後の生活で、トラブルが起こることを事前に防止することができます。

【条項1】別居の経緯を確認する

夫婦生活をこれ以上続けていけないと考え、別居を思い立つからには、なにかしらの経緯、理由、原因があるはずです。

別居をする原因、理由が、あなた側(妻側)にはなく、夫側にあることを明らかにするために、別居時の合意書には、別居の経緯、別居の原因、理由を書いておき、夫婦間の共通理解として確認しておく必要があります。

例えば、夫側の不倫・浮気が明らかになったり、DV・モラハラが過激化したときは、そのことを、できる限り具体的に、日時・場所・態様などを特定して記載しておきましょう。

別居の合意書において、別居の経緯、原因・理由を相互に確認し、共通認識としておくことによって、この後に解説するとおり、別居後の条件について、夫側にしっかりと譲歩をしてもらう理由となります。

【条項2】別居中の生活費(婚姻費用)

別居の合意書に書いておくべき、最も重要な条項が、別居中の生活費(婚姻費用)についての条項です。別居中の生活費(婚姻費用)の支払を確実にすることが、別居合意書の主な理由の1つといったも過言ではないでしょう。

別居中の生活費(婚姻費用)を、夫側に確実に支払ってもらうためにも、婚姻費用の金額だけでなく、支払日(支払期限)、支払方法、支払先口座などについても、具体的に定めておくようにしてください。

別居中であったとしても、夫婦である以上扶養義務があり、その内容として「自己と同一程度の生活を保証する義務(生活保持義務)」があるものとされています。婚姻費用を支払うことがその内容です。

特に、子供がいて、養育が必要であるという場合には、婚姻費用は養育費も含んでいることとなります。婚姻費用の金額は、お子さんの年齢・人数や、夫婦双方の収入などによって決まります。

進学、病気、事故などの特別な事情があるときは、特別に支出を求めることができるという、いわゆる「特別支出条項」も、別居の合意書に記載しておくとよいでしょう。

【条項3】別居期間

別居期間は、夫婦が同居をやめてしばらく距離を置く期間、すなわち、「冷却期間」を意味しています。どの程度の冷却期間が必要であると考えるかは、人によって、事案によってさまざまです。

例えば、あなたが「少なくとも1年程度の冷却期間が必要だ。」と考えたとしても、夫側としては「別居期間が長すぎる。」と考え、「同居義務違反だ。」、「勝手な別居だ。」、「悪意の遺棄だ。」という反論をしてくることを防ぐ必要があります。

男女関係、夫婦関係はさまざまであり、感覚は人によって異なるものです。どの程度の別居期間が「長い」「短い」とするのかについて、共通認識を、別居の合意書に記載して明らかにしておきましょう。

感情的な問題が大きいなど、別居開始時には、別居期間を決めることができない場合には、「少なくとも○か月以上」とか、「当分の間」などといった定め方をして柔軟性を残す別居の合意書もあります。

【条項4】子との面会交流

夫婦にとって、「お金の問題」と並んで重要な協議事項となるのが、「子供の問題」です。

そして、夫婦が離婚をするのではなく、ひとまず別居をして距離をおく、という場合、別居期間中の反省の様子によっては復縁が考えられる以上、夫にとっても妻にとっても、お子さんと継続的に会うことは非常に大切なことです。

ただし、あまりに頻度が多すぎると、別居をして距離を置いている意味がありません。そこで、どの程度の頻度で面会交流するかという点についても、別居時の合意書に定めておきます。

面会交流は、夫婦それぞれ意見、考えがあることでしょうが、最終的には、お子さんの利益になるように決めてください。お子さんのお気持ちも、尊重して決めるとよいでしょう。

別居の合意書を書くときには、面会交流の日時とあわせて、面会交流の具体的な方法、場所、注意事項などについても記載しておきましょう。

【条項5】別居中の共有財産の処分

別居をするにあたって、夫婦がしばらく距離をとり、冷却期間をおく、という趣旨で別居をする場合には、荷物を全部運び出す、といった作業は難しい場合が多いでしょう。

しかし、自分の身の回りのものを残しておけば、処分をされるおそれもありますから、対策が必要です。貴重品、思い出の品などは、必ず持ち出しておくようにしましょう。

これに対して、持ち出すことが困難な、家具、家電などは、夫婦共有の財産である以上、夫が勝手に処分をしないよう、別居時の合意書において約束しておいてください。

もし別居期間の経過後に、離婚に向けて進む場合には、夫婦共有の財産は、財産分与の手続によって分けるべきものであって、少なくとも半分程度は、あなたのものとなる可能性もあるのです。

財産分与の話し合いを行うタイミングになって、「そのような財産は存在しない。」、「処分してしまったから分与することはできない。」と夫側からの反論を受けて泣き寝入りしてしまわないためにも、別居時にどのような財産があったかを証明するため、別居時の合意書が重要となります。

【条項6】別居中の不貞(不倫・浮気)

あなたがやむを得ず別居をする理由が、夫側の不倫・浮気にある場合、あなたが別居を開始したことをいいことに、不倫・浮気を再発させたり、繰り返したりするおそれがあります。

離婚原因となる「不貞行為」とは、結婚をしているにもかかわらず他の異性と肉体関係を持つことをいうわけですが、夫婦関係が既に破綻している場合には、離婚原因となる「不貞行為」とはならず、慰謝料も請求できないこととされています。

別居をしているからといって、すぐに「夫婦生活は破綻している。」という夫側の主張がとおるわけではないですが、別居中の不倫・浮気が許されないことであることを、別居時の合意書において確認しておくのがよいでしょう。

別居時の合意書に、別居中も不貞行為(不倫・浮気)を行ってはいけないこと、別居中に不貞行為(不倫・浮気)を行った場合には慰謝料請求をすることを、確認しておきましょう。

【条項7】別居中の誓約事項

別居合意書を作成、締結して行う別居には、離婚原因ともなりかねない行為をしている夫側に対して、反省をうながすという意味があります。

そのため、別居をしているからといって自由に羽を伸ばしてよいわけではないことを明らかにするために、別居時の合意書において、別居中に守るべき事項を定め、事前に約束しておくのがよいでしょう。

別居をする理由が、不倫・浮気の場合には、さきほど解説したとおり別居中の不倫・浮気を禁止することはもちろん、それ以外の場合にも、しっかりと夫婦関係を再開するために誠実な生活をしてもらえるよう、次のようなことを定めておきます。

別居をするにあたって、あなたが相手方に対して責任追及をするわけですから、これまでの夫婦生活で気になったこと、直してもらいたいことは、合意書で証拠化できるこのタイミングで記載しておくとよいでしょう。

 別居中の誓約事項の例

  • 別居中に、妻に無断で夫が連絡先を変更しないようにし、やむを得ない理由で携帯を変更する場合には事前に報告する。
  • 別居中に、重要なことがあったら必ず報告するようにする。
  • 別居中に、子に変化があった場合には必ず報告するようにする。
  • 別居中の過度な飲酒、賭博、借金は控える。

【条項8】合意書違反に対するペナルティ(制裁)

別居時の合意書を作成し、お互いに署名押印したときは、あなたも夫も、その合意書を守らなければなりません。

しかし、別居時の合意書に違反してもペナルティがない場合などには、夫があなたとの夫婦生活の再開をあきらめ、離婚を決意した場合には、合意書に違反してしまう気持ちに歯止めをかけることが難しくなってしまいます。

したがって、別居時の合意書に違反した場合のペナルティ(制裁)を記載しておく必要があります。

別居中の生活費(婚姻費用)、子の養育費、不倫・浮気の慰謝料など、金銭を支払うという内容の合意事項については、違反に対する制裁(ペナルティ)もまた、金銭の増額など、金銭によるペナルティとするのがよいでしょう。

相手が婚姻生活の継続を求めている場合には、「違反した場合には、離婚に同意する。その場合の離婚条件は、妻に従う。」というのも、大きな制裁(ペナルティ)となります。

ただし、離婚はあくまでも、重要な身分行為であって両者の合意が必要ですから、別居時の合意書にさきほどのように「離婚に同意する。」という記載があり、合意書に違反したとしても、ただちに、必ず離婚できるわけではないことに注意が必要です。

4. 別居合意書の作成を弁護士に依頼するメリット

別居の理由がどのようなものであれ、ひとたび別居を開始する決断をしたということは、相手方配偶者を、完全に信頼することはもはやできない状態にあるといってよいでしょう。

別居期間における冷却期間のあと、同居を再開して、夫婦関係を復活できる場合があったとしても、別居時点において作成する合意書においては、夫婦の信頼関係を前提とすることはできません。「当然理解しているはずだ。」という考えは甘いといえます。

そこで、別居時の合意書を弁護士に依頼することによって、離婚調停、離婚訴訟などとなったときに、あなたにとって有利な内容となるような文書を作成してもらっておくメリットがあります。

離婚問題を多く取り扱っている弁護士であれば、別居の時点から、その後離婚をするまでに起こり得る問題点をあらかじめ予測し、別居時の合意書に、できるだけリスクを回避できるように記載しておくことができます。

また、実際に別居時の合意書に違反したり、別居期間をおいても離婚に進んだりする場合には、あなたの代理人となって、離婚の協議、離婚調停、離婚訴訟を弁護士に進めてもらうことができます。

5. まとめ

今回は、夫側の問題点(不倫・浮気・DV・モラハラなど)によって、別居を決意した妻側の女性の方に向けて、別居時に作成しておくべき合意書の内容、書き方などについて、弁護士が解説しました。

別居の合意書を書いておいたほうがよいケース、書かないほうがよいケースは、事案によって判断する必要がありますが、別居中の生活費を確実に支払ってもらい、別居中にしっかり反省、謝罪をしてほしい場合、別居時の合意書は有用です。

別居にあたって合意書を作成することをお考えの方、別居中の生活費(婚姻費用)、子との面会交流などについてしっかりと決めておきたい方は、離婚問題を得意とする弁護士に、お気軽に法律相談ください。