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別居の合意書とは?作成するメリットを弁護士が解説【サンプル付き】

別居の合意書は、離婚に向けて別居しようとしている方にとって、戦略上とても有効なものです。
別居時に、夫婦で合意した内容を書面にしておくことには、多くのメリットがあるからです。

離婚前に別居するケースのうち、浮気・不倫、DV・モラハラなど、相手の責任で家を出ざるを得なくなったとき、そのことを証拠に残しておくためにも、別居の合意書を作成しておくべきです。

別居時の生活費である「婚姻費用」を払ってほしいときにも、合意書を作ってから別居する方法が有効です。

今回は、別居を決意した方へ、別居の合意書を作成すべき理由とメリット、合意書の具体的な内容を解説します。

当事務所は、別居の合意書の作成を、弁護士に依頼できるサービスを提供しています。

なお、離婚前の別居における法律知識を詳しく知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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別居の合意書とは

別居の合意書とは

別居の合意書は、離婚に向けて別居するにあたって、別居後のさまざまな条件、今後の流れなどについて、夫婦の合意内容を記載した書面のことです。

わかりやすくいえば、別居後の夫婦のさまざまなルールを定める書面です。
「別居の契約書」、「別居時合意書」などと呼ぶこともあります。

別居の合意書を作る理由

別居せざるを得ないシーンでは、もはや夫婦は、離婚の危機だといえるでしょう。
もはや穏便に話し合って、良い解決を得るのは難しいことも。
DV・モラハラが別居の原因だと、当事者間で悠長に話し合っていては、心身の危険をともなうおそれもあります。

しかし、将来、離婚条件を話し合わねばならないなら、最低限の信頼関係とコミュニケーションは必要です。
交渉が不利に進んでしまわないためにも、一定の合意や約束は、別居する際にしておいたほうがよいでしょう。

家庭内別居でも、合意書を作るべき

「別居の合意書」と紹介していますが、夫婦が同居を続けるケースでも書面化すべきケースがあります。
それが、家庭内別居において合意書を作成する場面です。

家庭内別居は、厳密には別居しておらず同居のままですが、夫婦生活はなくなり、冷え切った状態です。
このとき、まだ完全に別居していないと、法的には「破綻」と認めてもらえないこともあります。

法的に「破綻」と認めてもらえないと、そのうちにした他の異性との肉体関係は、違法な「不貞行為」となり、離婚理由となったり慰謝料請求されたりするリスクがあります。
このような事態を避けるため、家庭内別居であるだけでなく、もはや離婚に向けて歩を進めていることを示すためにも、夫婦間で合意ができるのであれば、そのことを別居の合意書で書面化するのが役立ちます。

別居の合意書を作成する3つのメリット

別居の合意書を作成するメリットについて解説します。

別居の合意書には多くのメリットがあるので、少なくとも夫婦間で合意できる範囲において、別居時に合意書などの書面を作成しておくのがおすすめです。

別居の合意書を作成するメリット
別居の合意書を作成するメリット

別居の合意書は、「家を出ていく側のために作るもの」という意識が強いかもしれません。
しかし、以下のメリットのなかには、夫側・妻側どちらの立場でも、平等に享受できる点も多いもの。

別居する側だけでなく、別居される側でも、合意書作成に協力することに十分なメリットがあります。

【メリット1】相手の非を指摘し、反省をうながせる

「別居せざるを得なくなった理由」を文書しておき、別居時点における離婚の責任について夫婦の共通理解としておける点が、別居の合意書のメリットです。

家を出て別居をする方にとっては、事前の合意もなく急に別居を強行してしまうと、「相手が自分の問題点に気づいてくれないのではないか」という不安があります。

不倫・浮気、DV・モラハラなど、非のある当事者の側では、自分に離婚理由があるということに鈍感なもの。
モラハラ気質な加害者ほど、自分の問題点を意識せずに行動してしまっています。
「別居されてしまって目が冷めた」と反省、謝罪しても、別居を解消し、同居に戻ったらすぐに再燃。同じあやまちを繰り返す人も多いです。

ただし、DV・モラハラがひどいとき、あなたや子どもの生命に危険が及ぶケースでは、相手の責任追及に終始していては危険度を高めるおそれがあります。

悪質なDV・モラハラの事例では「別居の合意書を作らない方がよいケース」もあります。
この場合、別居の合意書にこだわらず、すみやかに別居を進めるべきです。

モラハラ・DVを受けたとき、安全に別居を進める方法は、次の解説をご覧ください。

【メリット2】離婚協議がスムーズに進む

別居前に、事前に合意書を作っておくことで、別居後にする離婚協議をスムーズに進められる効果があるのが、別居の合意書を作成するメリットの2つ目です。

相手が、自分の非を認める内容の合意書にサインしていることは、離婚協議はもちろん、離婚調停、離婚訴訟でも、離婚原因を証明するのに役立ち、有利な離婚につながります。
「別居や離婚の原因が自分にある」と、相手が理解してくれれば、話し合いが優位に進むからです。

協議離婚の流れを知り、うまく進めていくために、次の解説もご覧ください。

【メリット3】別居後の生活を守れる

別居したとしても、まだ夫婦であるうちは助け合う義務(相互扶助義務)を負います。
そのため、収入の高い配偶者は、収入の低いほうに別居中の生活費である「婚姻費用」を払う義務があります。

しかし、相手が非協力的だったり、支払額に争いがあったりすると、婚姻費用分担調停で争う必要があります。
婚姻費用が、口約束だけだと、後から守られないおそれもありますから、客観的証拠である合意書を作ることに大きな意味があります。

そのため、別居後に払われるべき婚姻費用について書面で合意しておき、別居後の生活を守ることにつながる点が、別居の合意書を作成するメリットとなります。

別居中の生活費である婚姻費用の請求方法、相場などは、次の解説をご覧ください。

別居の合意書に書くべき内容【書式】

ペン

次に、別居の合意書にどんな内容を書くべきか、条項例(書式・ひな形)をあげながら、別居の合意書の書き方について解説します。

別居の合意書のメリットを活かすため、適切な内容で作成しなければなりませんから、ひな形が参考になります。
内容が適切でなければ、反省をうながしたり責任を明らかにしたり、別居後の生活費である婚姻費用を確実に払ってもらえたりといった効果が薄れるおそれがあります。

トラブル防止の観点から、必要なことは詳しく定めなければなりませんが、一方で、別居の合意書は、あくまでも「離婚前の一時的な合意」に過ぎないもの。
「合意すること」を優先し、夫婦で合意できる範囲の簡潔な内容にとどめておくべき場合も多いです。

【条項1】別居理由を確認する条項

第1条(別居理由)

夫及び妻は、妻が家を出て別居を開始する理由が、夫の不貞行為であることを相互に確認した。

「夫婦生活をこれ以上続けられない」と考え、別居を決意したからには、それ相応の経緯、理由、原因があるはず。
しかし、別居理由について、離婚協議のときに夫婦の主張が食い違うケースは多いものです。

別居した理由について、あなた側には責任がなく、相手に非があると明らかにしておくため、別居時の合意書に明記し、夫婦の共通理解としておくのが大切なポイントです。
相手が認める浮気・不倫、DV・モラハラなどの事実があるとき、できるだけ具体的に書くようにします。
「5W1H」を意識し、日時、場所、行為態様などを特定して書くようにすると効果的です。

5W1H

別居の合意書で相手の非を確認しておければ、別居後のさまざまな支払いや、別居後に離婚するときの離婚条件についても、その責任のある側にしっかりと譲歩を要求できる強い武器となります。

【条項2】別居中の生活費(婚姻費用)

第2条(別居中の生活費)

夫は妻に対して、別居期間中、離婚に至るまでの間、毎月末日限り、月XX円の婚姻費用を、妻名義の口座に振込送金する方法により支払う。なお、子に進学、病気、事故などの特別の事情が生じたときには、妻は夫に対して上記金額に加えて特別の支出を求めることができる。

別居の合意書に書いておくべき最重要の条項が、別居中の生活費である婚姻費用についてです。
婚姻費用の支払いを確実なものとするために、次の条項を、別居の合意書に盛り込んでおいてください。

  • 婚姻費用の金額
  • 婚姻費用の支払日(支払期限)
  • 婚姻費用の支払方法(振込の場合には支払先口座)
  • 特別な事情があったときの費用負担

別居中も、夫婦であるかぎり扶養が必要。「自己と同一程度の生活を保証する義務(生活保持義務)」があります。
その主たる内容が婚姻費用。子どもの養育が必要なとき、婚姻費用のなかに養育費の趣旨も含まれます。

婚姻費用とは
婚姻費用とは

婚姻費用の金額は、家庭裁判所において利用されている養育費・婚姻費用算定表(裁判所)を用いて、子どもの年齢・人数、夫婦双方の収入差によって決めるのが一般的です。

上記のひな形のように、子どもの進学、病気、事故など、特別な事情があるときは支出を求めることができる「特別支出条項」も、別居の合意書に定めておくのがおすすめです。

【条項3】別居期間

第3条(別居期間)

別居期間は、XXXX年XX月XX日からXXXX年XX月XX日とし、期間満了日の1か月前から、夫婦は別居の解消が可能であるかについて協議を行うものとする。

夫婦の別居は「必ず離婚する」という意味ではなく、当分は距離をおく「冷却期間」を意味するケースもあります。
どれほどの冷却期間が必要かは、夫婦の事情や、非のある側の反省・改善の状況によっても変わります。
また、期間の長短は、個々人の感覚による部分も大きいです。

当面必要な冷却期間について夫婦が合意できるときは、その期間を別居時の合意書に書いておいてください。
別居される側からの「同居義務違反」、「身勝手な別居」、「悪意の遺棄」といった反論を防げるからです。

とはいえ、定めた期間で別居を解消できるか、はたまた離婚に進むのかは、別居時にすべて予想はできません。
感情的な対立が深いケースでは、「少なくとも○か月以上」や「当面の間」といった柔軟な定め方をしたり、「一定の時期になったら協議をして決めなおす」という定め方にすることもあります。

別居期間を積み重ねるほど、家庭裁判所に離婚を認めてもらいやすくなります。
離婚が認められるのに必要な別居期間は、次の解説もご参照ください。

【条項4】子どもの環境(育児・教育・面会交流)

第4条(面会交流など)

夫は、別居期間中といえども、子どもに対して父としての義務を果たすものとする。そして、夫と妻とは、別居期間中、月に1回、夫と子どもとの面会交流を行うこととする。

別居中の夫婦にとって、金銭面と並ぶ重要な協議事項が、「離婚と子ども」の問題です。
夫婦がすぐに離婚するのではなく、「ひとまず別居して距離をおく」というときには、別居期間後に復縁が考えられる以上、子どもとのきずなを大切にしなければなりません。

このとき、別居しても親としての責任を果たすことを確認した上で、面会交流について定めるのが有効です。
面会交流について、別居の合意書で、次の事項を定めておく例があります。

  • 面会交流の頻度・回数
  • 面会交流の時間
  • 面会交流の方法
  • 面会交流時の注意事項・遵守事項
  • 面会交流時の禁止事項

一方で、あまりに面会交流の頻度・回数が多いと、別居して距離を置く意味が薄れるおそれがあります。
子どもが幼い場合には、面会交流は同居親の協力が不可欠であり、どうしても顔を合わせることになるからです。

面会交流をはじめ、子どものことについて定めるとき大切なのは、親の一方的な思いを押し付けるのでなく、子どもの利益や子どもの気持ちを尊重することです。

子どもを連れて別居するとき、注意したいポイントは次の解説をご覧ください。

【条項5】別居中の共有財産の処分

第5条(別居中の共有財産)

夫及び妻は、下記に定める財産が夫婦の共有財産であり、別居中といえども、相手の同意なく処分してはならないことを確認する。

① 自宅不動産(・・・県・・・市・・・所在の土地・建物)
② 上記不動産内の家具、家電

以上

「夫婦がしばらく距離をとり、冷却期間をおく」趣旨で別居するとき、荷物を運び出して別居するのは難しい場合もあります。
しかし、離婚に向けた思いに夫婦間の差があるときは、残していった荷物を処分されるおそれがあります。
貴重品や思い出の品など、処分されて困るものは、必ず持ち出すようにしてください。

別居の合意書では、そもそも動かすのが困難な家・土地などの不動産、持ち出すことが困難な家具・家電、大きな物品などについて、夫婦共有の財産であることを確認し、勝手な処分を禁止しておくのが有効です。
大切な財産があるときには、特に、具体的に列挙して書いておいてください。

別居期間の経過後に離婚に向けて進むときにも、ここで定めた夫婦共有の財産については財産分与の対象となるべきものであり、少なくとも半分の取分は主張できると考えるべきだからです。

離婚時の財産分与では、別居時のタイミングでの財産額が問題となります。
そのため、「ひとまず別居」という進め方をしても、いざ離婚となったときは「財産分与の基準時はいつか」という争点があります。

また、財産の存在や金額・価値は、財産分与を求める側が立証しなければなりません。
この点でも、別居の合意書を書くことで、事後に、どんな財産が存在したかを証明する助けとなります。

財産を勝手に持って別居しても、財産分与のなかで調整されるのが通常です。
別居時に持ち出した財産の分与については、次の解説を参考にしてください。

【条項6】別居中の不貞(不倫・浮気)

第6条(別居中の不貞)

夫及び妻は、本書面に定める別居が夫婦関係の破綻を意味するものではなく、別居期間中に他の異性と肉体関係を持つことが、民法にいう「不貞」にあたることを確認する。

あなたがやむを得ず別居をする理由が、相手の浮気・不倫にあるときは、別居したことをいいことに、相手が好き勝手に浮気・不倫に走ったり、再発させたりする危険があります。

法律にいう「不貞行為」(民法770条1項1号)は、婚姻中に他の異性と肉体関係を持つことですが、夫婦関係が破綻した後には「不貞行為」とはならず、離婚原因にもならず、慰謝料も請求できません。

「別居したのだから夫婦は破綻している(そのため「不貞」にはあたらない)」という主張は、裁判で認めてもらうのが難しいもので、少なくとも別居して一定期間は経たないと、裁判所は「破綻」を認めない傾向にあります。
別居の合意書でもこのことを確認し、別居中でも「不貞行為」が成立しうると指摘しておくのがおすすめ。

こうしておけば、別居中に浮気・不倫が再燃したとき、有利な離婚へと進めたり、慰謝料を請求したりするための証拠として、別居の合意書を活用できるからです。

既に浮気・不倫したと明らかになっているとき、浮気・不倫の誓約書を作っておくのも有効です。

【条項7】別居中の誓約事項

第7条(別居中の誓約事項)

夫及び妻は、別居期間中、次の各項目を遵守することを誓約する。
・別居中に、やむを得ず連絡先を変更する場合には事前に報告する。
・別居中に、子どもに重要なことがあった場合には、必ず報告する。
・別居中の過度な飲酒、賭博、借金は控える。

合意書を作った後でする別居は、「離婚原因ともなりかねない相手の行為の非を指摘する」という意味を含みます。
そのため、別居期間中だからといって自由に羽をのばしてよいわけではないことを明らかにし、問題行為の改善を求めるため、別居の合意書には、別居中に遵守すべき事項を定めておくのがおすすめです。

別居理由が浮気・不倫やDV・モラハラなど、相手の非にあり、それを認めて改善を誓ってもらえたときには、そのことを書面化し、関係修復に向けて誠実に努力することを、別居の合意書に記しておきましょう。

あなたが離婚を求め、相手が復縁を求めるケースならば、今が一番、あなたにとって有利なタイミング。
これを機に、夫婦生活で気になったこと、直してもらいたいことを別居の合意書に漏らさず指摘しておきます。

復縁に向けて進むときの注意点は、次の解説もあわせてご覧ください。

【条項8】合意書違反のペナルティ

第8条(違反のペナルティ)

夫もしくは妻が、本合意書の条項に違反した場合には、離婚に同意するものとし、その場合の離婚条件は相手の要望に従うものとする。

別居の合意書を作成し、互いにサインするからには、夫婦ともども、合意書の内容を守らなければなりません。
別居時に作った合意書の拘束力を強め、守ってもらえるようにするためには、合意書に違反したときのペナルティを定めておくのが効果的です。

合意書の内容のうち、別居中の生活費である婚姻費用、養育費、不貞の慰謝料といった「お金」に関する条項では、違反の制裁(ペナルティ)もまた、金銭の増額や制裁金の追加など、「お金」を内容とするのがおすすめです。

これに対して、必ずしも「お金」の問題だけでは解決できない場合や、相手が夫婦生活の継続、復縁を求め続けているときは、上記のひな形のように「違反した場合には、離婚に同意する。その場合の離婚条件は、相手に従う」と定めると、大きな抑止力となります。

「違反したら離婚をすること」を別居の合意書に定めておくことはとても効果的ですが、あくまでも抑止力となるだけで、違反したからといってただちに離婚できるわけではありません。

別居の合意書に「離婚に同意する」と書かれていても、実際に、合意書違反の相手が離婚を拒否してきたときは、離婚調停、離婚訴訟などの法的手続きが必要となります。

別居の合意書を作らない方がよいケース

ポイント

ここまでの解説のとおり、離婚を決意した場合はもちろんのこと、ひとまず冷却期間をおきたい別居のケースでも、別居時に適切な内容の合意書を交わしておくことが役立つシーンは多いです。

しかし、別居の合意書のメリットよりも、デメリットのほうが大きいときは、別居の合意書を作成することにこだわりすぎないほうがよい場合もあります。
別居の合意書を作らない方がよいケースは、例えば次のものです。

離婚の決意が固いケース

「別居をすると事前に伝え、合意書を作る」というプロセスは、少なくとも、まだ夫婦生活を続ける可能性が少しは残っていることを意味します。
別居の合意書には、婚姻費用をもらって別居後の生活を守るとともに、不倫・浮気やDV・モラハラなどの非を指摘し、反省を求められるという期待が込められているからです。

離婚の決意が固いときは、反省と改善をうながす意味はありません。
むしろ、厳しく責任追及したいときは、別居の合意書を作るまでもなく早く別居して、離婚協議を進めるべきです。

別居合意書か、離婚協議書か
別居合意書か、離婚協議書か

別居時の合意書は、あくまでも離婚に向かう前の一時的な合意です。
早急に離婚の話し合いを進めたいのなら、離婚協議をし、離婚時に「離婚協議書」において、離婚条件を合意するようにしてください。

協議離婚のとき作成する離婚協議書の書き方について、次の解説をご覧ください。

むしろ、離婚の決意が固いにもかかわらず別居の合意書を作ってしまうと、「相手の反省と改善次第では許すこともありうる」と評価されるおそれがあります。

そのため、合意書の内容によっては、相手の問題点を離婚原因と主張して有利に離婚しようとしたり、慰謝料を請求したりといった行動とは矛盾しているのではないかと見られてしまいます。

相手のモラハラが危険なケース

別居せざるをえなくない理由が、夫(または妻)からの激しい暴力、暴言にあるといったDV・モラハラのケースでは、身の安全を守るため、いち早く別居を急ぐべき。
このような場合まで、別居の合意書を作ることに固執していては、身の危険があります。

DV・モラハラの加害者に、別居の合意書を作ろうと提案してみても、相手の怒りに火をつけてしまい、さらに被害が拡大するデメリットもあります。

悪質なDV・モラハラをする人は、一度は謝罪してみせてもすぐ同じことを繰り返す例が多く、復縁は困難。
この観点からも、DV・モラハラがひどいケースでは、別居の合意書作ったからといって根っから反省してもらえるわけもなく、作成する意味はありません。

別居について承諾が得られないケース

「別居したい」とあらたまって伝え、合意をとるのは心理的ハードルが高いもの。
「承諾が得られないと別居できないのでは」と相談を受けることもありますが、承諾を得なくても別居を進められます。

ただ、別居の合意書を作るなら、当然ながら、別居について承諾を得ることとなります。

しかし、悪質なDV・モラハラの被害にあったり、ましてや子どもが虐待されて生命が危うかったりといったケースではすぐ逃げるべきで、承諾を得ている余裕はありません。
日常的なDV・モラハラにあうと「同意を得ずに別居したら、怒られる」、「自分が悪いのだから我慢しよう」と自分を責め、別居できない方もいます。

このようなとき弁護士は、置き手紙を残して、なにもいわずに別居するようアドバイスします。
同意のない別居も、相手に責任があるなら全く問題ありませんし、不利にもなりません。
別居が事後報告になるときも、置き手紙の内容を工夫すれば、別居の合意書と同等の効果を生めます。

相手がどうしても納得せず、一方的に別居せざるを得ないとき、「別居前」の準備段階から弁護士に相談し、アドバイスをもらうのが有益です。

先に自分から別居すると離婚で不利にならないか心配な方へ、こちらの解説もご覧ください。

別居の合意書に関する注意点

別居の合意書に関する注意点

最後に、別居の合意書を有効活用するために知っておいてほしい注意点を解説します。

別居の合意書は手書きでも有効

別居の合意書は、手書きでも有効です。
十分な準備時間があるときは、今回解説したサンプルを参考にして作ったひな形を印刷し、準備したほうがよいですから、自分が別居する側ならば、事前に入念な用意をしましょう。

ただ、自分が別居される側のとき(相手が別居するとき)には、突然に別居を切り出されることも。
このときにも、別居の合意書を活用したいなら、手書きで別居の合意書を書き、印鑑がないときは指で拇印することでも法的には有効な書面になると覚えておいてください。

別居の合意書を公正証書にできる

別居の合意書のなかで、金銭の支払いを約束するときは、公正証書にしておくのも有効です。

公正証書は、公証役場で作成する公的書類で、そこに書かれた金銭の支払いについて、裁判所の判決がなくても強制執行(財産の差押え)ができるという強い効果があるからです。
特に、別居中の生活費である婚姻費用は、約束どおり払ってもらえないと生活が困窮し、離婚や復縁などの交渉が安心して進められなくなってしまいます。

公正証書とは
公正証書とは

夫婦の合意は取り消せるのが原則だが、取り消せないこともある

結婚している夫婦がした契約は、取り消せるのが民法上の原則です(民法754条)。
別居の合意書もまた、夫婦間でした一種の契約ですから、離婚するまでの間、取り消すことができます。

ただし、夫婦関係が破綻したときは、この民法の条文は適用されなくなるという重要な裁判例があります(最高裁昭和33年3月6日、最高裁昭和42年2月2日)。
そのため、別居の合意書もまた、いつでも必ず取り消せるわけではありません。

むしろ、夫婦が円満ではないからこそ別居するのであり、別居の合意書を簡単に取り消せるのではせっかく作った意味がありません。
さきほどの裁判例からしても、合意書を交わした上で別居し、その後に夫婦関係が破綻して離婚に至るときは、別居時にした約束を一方的に取り消すことはできず、離婚時の重要な参考となるものと考えられます。

まとめ

今回は、別居を決意した方に向けて、別居時に作るべき合意書のメリット、条項の書き方などを解説しました。
相手の問題点(不倫・浮気・DV・モラハラなど)を理由に、離婚前に別居したい方は、ぜひ参考にしてください。

別居の合意書は、婚姻費用を確保したり、子の環境を整えたりなど、メリットの多いもの。
ひとたび別居を決めたならば、もはや夫婦間の信頼関係は弱いでしょうから、約束事は、破られないためにもきちんと書面にしなければなりません。

適切な内容で結ばないと、狙った効果を得られないおそれがあります。
離婚調停、離婚訴訟といった法的手続きで有利に立ち回りたいなら、法的に有効な書面でなければなりません。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、別居の合意書の作成について弁護士に依頼できるサービスを提供しています。

別居の合意書のメリットを最大限に活かすため、自分で作成するのが不安なとき、離婚問題に強い弁護士に、作成を依頼するのが有効です。
DV・モラハラのあるケースでは当事者の話し合いも難しく、弁護士を窓口にして協議するのが効果的です。

当事務所へ、別居の合意書の作成を依頼いただくとき、サービス内容、費用は次のとおりです。

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サービス内容弁護士費用
法律相談別居の合意書を作成するかどうかについての法律相談1万円/1時間
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(対面)
2時間の面談で事情をお聞きし、別居の合意書を作成2万5000円
作成
(リモート)
アンケートにて事情聴取し、別居の合意書を作成(修正1回まで)2万5000円
その他別居前後から、弁護士が窓口となって相手と交渉別途見積もり

離婚前の別居のよくある質問

別居の合意書を作成しておくべき理由はどんなものですか?

別居の合意書を作成しておくことで、別居理由が相手の非にあることを明らかにするとともに、別居後の生活費(婚姻費用)を確実に払わせる効果が期待できます。もっと詳しく知りたい方は「別居の合意書を作成する3つのメリット」ご覧ください。

別居時につくる合意書にはどんな内容を書いておくのがよいですか?

別居の合意書で重要なことは、別居理由をできるだけ具体的に特定しておくこと、別居後の生活費(婚姻費用)について合意することです。その他、お金や子どものこと、誓約事項、違反時のペナルティも定めておきましょう。詳しくは「別居の合意書に書くべき内容【書式】」をご覧ください。

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