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財産分与で相手の財産を調べる方法は?調査方法と注意点を弁護士が解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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離婚に伴う財産分与では、財産を正確に把握することが非常に重要です。

財産分与は、婚姻中に協力して築いた財産を公平に分けるのが原則です。しかし、相手名義の資産を見逃すと、本来受け取れた財産分与を受けられず、不利な合意をしてしまうおそれがあります。当事務所にも、次のような疑問や不安が多く寄せられています。

  • 「相手が財産を隠しているのではないか」
  • 「本当はもっと財産を持っているはずだと思う」
  • 「夫婦の財産が実際にどれだけあるのかを知りたい」

ただ、自分で調べるのは限界があります。スマートフォンのロックを解除したり、ネット銀行に無断でログインしたりすれば違法となります。適法な方法で調べるには、弁護士会照会を利用したり、調停や訴訟などの法的手続きを通じて情報の開示を求めたりする方法が有効です。

今回は、財産分与で相手の財産を調べる方法について、自分でできる調査方法と弁護士に依頼した場合に利用できる制度を解説します。

この解説のポイント
  • 財産分与の事前準備として、対象となる財産のリストアップが大切
  • 相手が財産を隠している疑いがあるとき、財産の調査を徹底して行う
  • 弁護士に依頼すれば、弁護士会照会、調査嘱託、財産開示手続などを利用可能

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財産分与では相手の財産を調べることが重要

説明する男性

はじめに、財産分与で相手の財産を調べることが重要な理由を解説します。

財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して築いた共有財産を公平に分けるのが原則です。しかし、前提として、相手が保有する財産を正確に把握できなければ、適正な分配は望めません。相手名義の預貯金や証券口座、不動産などを把握せずに離婚協議を開始すれば、本来であれば受け取れたはずの財産を見落としてしまうおそれがあります。

さらに、財産分与を支払う側が、意図的に財産を隠したり、処分したりするケースもあります。例えば、親名義の口座へ預金を移されたり、まとまった現金を引き出されたりして、実際よりも財産が少ないものとして分与が進めば、不公平な結果を招いてしまいます。

したがって、財産分与を有利に進めるために、相手の財産を調査し、客観的な資料を収集しておくことが非常に重要です。なお、財産分与前の調査は、できる限り早く開始した方がよいでしょう。同居中でなければ入手できない資料も多い上に、離婚を切り出すと相手が警戒し、証拠を得にくくなってしまうからです。

離婚時の財産分与」の解説

自分で相手の財産を調べる方法

次に、相手の財産を調べる方法のうち、まずは自分で実施できるものを解説します。

自分で相手の財産を調べる方法は、対象となる種類ごとに異なります。重要なのは、どのような財産が存在するかを、客観的な証拠となる資料を手がかりに調べることです。この際、離婚時の財産分与の対象となる「共有財産」にどのようなものが含まれるかを理解しましょう。

通帳とキャッシュカードを確認する

預貯金を調べるには、まずは通帳とキャッシュカードの確認が先決です。

通帳やキャッシュカードが見つかった場合、金融機関名、支店名、口座番号をメモしておいてください。残高も把握しておきましょう。入出金の詳細までチェックできれば、定期的な資金移動などから隠し口座を突き止められる場合があります。

銀行から届く郵便物を確認する

通帳やカードが見つからない場合でも、銀行からの郵便物は、口座の存在を示す有力な証拠となります。取引残高報告書や満期の案内、金融商品のダイレクトメールなどが届けば、その金融機関に口座があると推測できます。通帳のないネット銀行では、特に重要な手がかりです。

給与明細・源泉徴収票・確定申告書を確認する

相手の収入を把握するため、給与明細や源泉徴収票、確定申告書などを確認しましょう。収入に比べて開示された資産が著しく少ない場合、財産隠しを疑うことができます。また、婚姻費用や養育費の算定の際にも重要な基礎資料となります。

退職金規程を確認する

将来受け取る退職金も、婚姻期間に対応する部分については財産分与の対象となり得ます。そのため、相手の勤務先の退職金規程を確認し、支給条件や計算方法を把握しておくことが重要です。退職金規程や退職金の試算表は、相手に開示するよう求めるのが一般的です。

証券会社・保険会社の書類を確認する

相手が投資している金融商品は、証券口座の履歴を確認することで調べます。

株式や投資信託については、証券会社から取引報告書や残高証明書などが郵送されることが多いため、定期的にポストを確認しておくとよいでしょう。

生命保険や医療保険など、保険契約が存在するときは、保険契約書と約款を入手し、契約内容や解約返戻金の有無をチェックしておいてください。

株式の財産分与」「投資信託の財産分与」の解説

不動産登記事項証明書を取得する

建物や土地などの不動産の権利関係は、登記簿で調査することができます。

法務局で不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、権利関係を明らかにしましょう。権利証や不動産売買契約書なども参考になります。また、不動産の評価額を調べるため、固定資産税評価証明書やローンの残債なども把握してください。評価が争いになりそうなときは、複数社の不動産会社に見積もりを依頼したり、不動産鑑定士に評価を依頼したりすることが役立ちます。

車検証を確認する

婚姻中に購入した自動車も財産分与の対象となるため、車検証で所有者を確認してください。

ただし、ローン返済中で所有権が留保されている車両は、財産分与の対象外です。その場合、ローンの契約書や返済予定表で残債額を把握しておきましょう。自動車の価値は、中古車買取業者のオンライン査定などを利用して、おおよその時価を調べることができます。

クレジットカード利用明細を確認する

クレジットカードの利用明細は、相手の支出を知り、隠れた資産の手がかりとなります。

例えば、保険会社への継続的な支払い、証券会社への入金から、保険契約や投資を知ることができます。また、高価な品物の購入履歴から新たな財産を突き止められることもありますし、不貞行為が発覚するケースもあります。逆に、キャッシングの利用履歴は借金の証拠となります。

昨今ではWeb明細を発行している会社が多いため、共有パソコンの閲覧履歴やブックマークなどに手がかりがあることもあります。

家計簿・家計アプリを確認する

夫婦で共有している家計簿や家計アプリは、財産の全体像を把握できる重要な情報源です。

日々の収入と支出が記録され、使途不明金や不自然な資金の動きを発見しやすくなります。特に、銀行口座やクレジットカードと連携している場合、隠し口座や開示されていない資産を突き止めるきっかけとなることがあるため、過去データも見逃さずに確認しましょう。

スマートフォン・メール・カレンダーなどから手掛かりを探す

スマートフォンやPC上の情報も、財産調査の重要な手がかりです。

例えば、金融機関からの取引通知メール、ネット証券の口座開設完了のお知らせ、不動産会社とのやり取りなどが残っている可能性があります。カレンダーアプリに、銀行や保険の担当者とのアポイントが記録されていることもあります。ただし、「財産調査の際にやってはいけないこと」に注意し、あくまで夫婦共有のPCや相手の許可がある範囲にとどめてください。

探偵や調査会社へ依頼して調べる

自身での調査に限界がある場合、探偵や調査会社へ依頼する選択肢もあります。この場合、聞き込みや尾行などを通じ、隠された財産の手がかりが掴める可能性があります(勤務先、取引銀行など)。ただし、口座などの個人情報の調査は困難です。また、依頼には費用がかかるため、費用対効果を見極めた上で利用することが大切です。

相手の財産を調べるために利用できる法的な手段

矢印

次に、弁護士に依頼して、法的手段で財産を調べる方法について解説します。

手元の資料や情報だけでは相手の財産が十分に特定できない場合、裁判所を通じて法的手段を講じることを検討してください。特に、相手が財産を巧妙に隠そうとする場合、法律や裁判所の力を借りなければ、財産の特定が困難なことも少なくありません。

弁護士会照会

弁護士会照会は、弁護士法23条の2の定める制度で「23条照会」とも呼ばれます。

具体的には、弁護士が受任している事件について、所属する弁護士会を通じて公私の団体に照会を行い、必要な事項について報告を求める手続きです。民事執行法上の制度と異なり、照会先や情報に限定がないため、第三者からの情報取得手続では得られない情報を取得できるメリットがあります。一方で、弁護士への依頼が前提となること、法的手続きを行うためにしか利用できないこと、罰則が存在せず非協力的な団体もあることといったデメリットがあります。

調査嘱託

調査嘱託とは、裁判所が必要と認めた場合に、銀行や証券会社、勤務先などの第三者に対し、事件の審理に要する事項について回答を求める手続きです。財産分与をめぐる調停や訴訟では、相手の財産の内容を明らかにするために利用されます。

ただし、当事者が希望すれば必ず認められるわけではありません。家庭裁判所が利用を認めることが条件となり、調査の必要性や相当性がある場合に限って行われます。したがって、調査嘱託の利用を検討する場合、財産が存在することを示す程度の資料は事前に収集すべきです。

文書提出命令

文書提出命令とは、裁判所が、相手方や第三者に対し、文書の提出を命じる制度です。

例えば、財産分与の審理で、預金通帳や取引履歴、契約書などが重要と考えられる場合、文書提出命令が認められることがあります。ただし、法律上の提出義務がない文書もあるため、全ての資料について命令が出されるとは限りません。

一方で、相手方が従わない場合、裁判所は提出されなかった文書に関する当事者の主張を真実であると認めることができ、第三者が従わない場合は「20万円以下の過料」の対象になるといった制裁が定められているため、一定の強制力があります。

離婚までの流れ」の解説

財産開示手続

財産開示手続とは、執行力のある債務名義の正本などを有する債権者の申立てに基づいて、裁判所が債務者を呼び出して財産状況を陳述させ、財産を特定する民事執行法上の制度です。

申立ての要件として、強制執行や担保権実行において完全な弁済を得られなかったこと、あるいは知れている財産への強制執行を実施しても完全な弁済を得られないことを疎明しなければなりません。法改正によって仮執行宣言付判決や強制執行認諾文言付きの公正証書(執行証書)などの債務名義でも申立てが可能となり、利便性が向上しました。

この手続きでは、開示義務者は、裁判所が指定した期日に出頭し、宣誓の上で財産を陳述する義務を負います。陳述においては、強制執行の申立てに必要な事項を具体的に明示しなければならず、期日前に財産目録を提出することも求められます。申立人も期日に出頭し、裁判所の許可を得て開示義務者に質問をすることが可能です。

なお、債務者が正当な理由なく出頭しなかったり虚偽の陳述をしたりした場合、「6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

財産開示手続と第三者からの情報取得手続」の解説

第三者からの情報取得手続

第三者からの情報取得手続は、裁判所が第三者(金融機関、法務局、市町村など)に対し、債務者の財産に関する情報の提供を命じる民事執行法上の制度です。取得できる情報には、預貯金債権に関する情報、不動産に関する情報、給与債権に関する情報などがあります。

  • 預貯金・振替社債などに関する情報
    銀行などの金融機関から預貯金債権などの情報を取得できます。財産開示手続を事前に実施する必要がなく、直接申し立てることが可能です。
  • 不動産に関する情報
    法務局に対し、債務者が所有権者となっている土地・建物などの情報提供を命じます。原則として申立て日前3年以内に財産開示手続を実施する必要があります。
  • 給与債権に関する情報
    市町村や日本年金機構などから債務者の勤務先情報を取得できます。ただし、利用できるのは「養育費等の扶養義務に係る請求権」または「人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権」を有する者に限定され、不動産と同じく財産開示手続の前置が必要です。

したがって、財産分与について、既に判決や調停、公正証書などの債務名義を得ているときは、第三者からの情報取得手続で不動産や預貯金の情報を調べることができます。また、養育費もあわせて定めたケースでは、給与債権の情報(勤務先など)も取得できます。

離婚に伴うお金の問題」の解説

家事事件における情報開示命令

2026年4月施行の民法改正により、家事事件における情報開示命令が新設されました。

この手続きでは、人事訴訟や家事審判で、養育費や婚姻費用、財産分与などを請求する場合に、裁判所が当事者に対し、収入や資産、財産の状況に関する情報を開示するよう命じることができます(家事事件手続法152条の2、人事訴訟法34条の3)。

命令に正当な理由なく従わない場合や虚偽の情報を開示した場合には、「10万円以下の過料」の対象となります。

財産を隠されている場合の対処法

財産隠しが疑われる場合、よくある手口やサインを知り、早期に察知することが重要です。

典型的な手口としては、離婚を意識し始めた時期に預金口座からまとまった金額を引き出したり、親族名義の口座へ送金して資産を分散させたりするケースが挙げられます。口座を解約して存在そのものを隠蔽したり、生命保険を解約して返戻金を受け取ったりする動きにも要注意です。

財産分与を請求する前に証拠を集めることが重要で、同居中に可能な限り、通帳の不自然な引き出し履歴や、見慣れない金融機関からの郵便物をチェックしておきましょう。後の弁護士会照会や調査嘱託といった法的手続きでも、調査対象を特定する有力な手がかりとなります。そして、相手が任意に情報を開示しないときは、家庭裁判所での調停や訴訟の段階に進みます。

離婚後に隠し財産が発覚した場合、離婚から5年以内であれば追加の請求が可能であり、あきらめる必要はありません。ただし、時間が経つほど資産が減ったり、隠蔽工作が進んだりするおそれがあるため、不審な点を見つけたら速やかに弁護士に相談してください。

財産調査の際にやってはいけないこと

次に、財産調査の際にやってはいけない禁止事項についても解説します。財産を特定しようとして無理をすると、違法行為に踏み込んでしまうおそれがあります。

IDやパスワードを無断で使用する

許可なく他人のアカウントにアクセスする行為は、不正アクセス禁止法違反となります。

夫婦間であっても犯罪であり、「3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。IDやパスワードを推測したり、メモから入手したりして、ネット銀行や証券会社の口座に無断でログインする行為は絶対に行ってはいけません。民事裁判では、刑事裁判ほど厳格ではないものの、違法な手段で収集した資料は証拠として認められないリスクがあります。

勤務先へ勝手に問い合わせる

相手の給与や退職金を知るためでも、勤務先へ勝手に問い合わせることは避けるべきです。

企業は個人情報保護の観点から、たとえ配偶者であっても本人の同意なく教えることはありません。また、会社から本人には連絡されるでしょう。会社に執拗に連絡すれば迷惑であり、相手との信頼関係を損ない、離婚協議をさらに複雑化させる要因にもなります。

給与や退職金に関する情報は、給与明細などの書類を探すか、「相手の財産を調べるために利用できる法的な手段」を活用するのが適切です。

GPSや盗聴器を設置する

相手の行動を監視して財産の手がかりを得るため、自動車にGPSを設置したり、自宅内に盗聴器を仕掛けたりする行為は、プライバシー侵害に当たります。別居後に、機器を設置するために相手の住居に立ち入れば、住居侵入罪となるおそれもあります。

前述の通り、違法な手段で得た資料は、証拠として採用されないおそれがある上に、違法性が強いと、相手から慰謝料を請求されて不利な立場に追い込まれてしまいます。

浅野総合法律事務所の弁護士に財産調査を依頼するメリット

弁護士法人浅野総合法律事務所

財産分与で、相手が資産を隠した疑いがある場合、個人での調査には限界があります。

このようなケースで弁護士に依頼する最大のメリットは、弁護士会照会や調査嘱託などの法的手続きを用いた調査が可能になる点です。自身では開示が困難であった金融機関や勤務先の情報なども、適法に特定できる可能性が高まります。また、法的手続きに進むことを弁護士名義で通知すれば、心理的なプレッシャーを与え、自主的な開示を促す効果も期待できます。

婚姻期間が長く、資産が多い家庭では、財産分与を支払う側は複雑な資金移動を繰り返すなどして財産を不透明にしようと工夫をこらしてきます。どのような資料に着目し、どの手段で調査すべきかといったノウハウがなければ、対抗は困難です。

当事務所には家庭裁判所長を歴任した経験豊かな弁護士が在籍しており、裁判所側の視点も踏まえた戦略的な財産調査を得意としています。離婚問題に注力し、財産分与の解決実績も豊富にあります。その中には、相手が巧妙に隠した財産を徹底的に調査し、明らかにした事例もあります。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

【まとめ】相手の財産を調べる方法

今回は、離婚の財産分与において、相手の財産を調べる方法を解説しました。

財産分与では、夫婦の共有財産を公平に分けるために、相手が保有する財産を正確に把握することが重要となります。そのために、通帳や給与明細、不動産の登記簿など、自分で調査できる資料から手がかりを探すのが先決です。相手が警戒しないうちに、早めに着手しましょう。

一方で、財産隠しが疑われるケースでは、任意に開示を求めることには限界があるため、弁護士会照会や調査嘱託、文書提出命令、財産開示手続、第三者からの情報取得手続、家事事件における情報開示命令といった法的な手段を講じることが不可欠となります。

婚姻期間が長かったり相手の収入が多かったりするケースでは、相当高額の財産分与を請求すべきケースもあります。離婚を考えたら、早めに弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 財産分与の事前準備として、対象となる財産のリストアップが大切
  • 相手が財産を隠している疑いがあるとき、財産の調査を徹底して行う
  • 弁護士に依頼すれば、弁護士会照会、調査嘱託、財産開示手続などを利用可能

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