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株式が財産分与の対象となるときの方法と、離婚時の注意点

離婚時の財産分与では、株式もまた、分与の対象になります。

株式が財産分与の対象となるケースには、

  1. 配偶者が会社経営者で、自社株が財産分与の対象となるケース
  2. 投資財産として持っていた株式が財産分与の対象となるケース

の2つがあります。そのほかに、国債などの債券、投資信託、仮想通貨などの投資財産も、分与の対象になります。

株式は、現金・預貯金や不動産と同じく、財産的価値がありますから、夫婦の共有財産であれば分与するのが当然です。しかし、株式は「会社に対する支配権」を意味するため、特に自分の経営する会社の株式は、現物分割するのが難しく、特殊な配慮をしなければなりません。

今回は、株式が財産分与の対象となるケースと、株式を分与する具体的な方法、注意点について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 株式が財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産に株式が含まれているとき
  • 株式を財産分与するときには、その評価の決め方が争いとなる(特に、非上場株式)
  • 株式を現物分割するのが難しいケースに注意が必要(特に、経営する自社の株式)

なお、離婚時の財産分与で、知っておいてほしい知識は、次のまとめ解説をご覧ください。

まとめ 財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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株式が財産分与の対象となるケース

お金

財産分与の対象となる財産とは、夫婦が協力して形成・維持した財産です。これを法律用語で「共有財産」といいます。これに対して、婚姻前から有していた財産や、自己の名において取得した財産(相続・贈与など)は「特有財産」と呼び、財産分与の対象とはなりません。

株式でも同じように、結婚期間中に取得した株式であれば「共有財産」として財産分与の対象となるのが原則ですが、婚姻前から保有していたり、相続によって承継した株式は、財産分与の対象外です。

特有財産とは
特有財産とは

経営者の持つ自社株、投資用の株式のいずれも、「労働の対価」というイメージがなく、配偶者の貢献、寄与が図りづらく、財産として忘れられがちです。しかし、婚姻期間中に取得していたのであれば、共有財産となります。妻が、夫が仕事中に夫名義で購入した株式が値上がりした、というケースを想像していただければ「夫婦の協力によって財産が増えたのだから、分与すべきだ」と理解していただけるでしょう。

【財産分与の対象となる株式】

  • 婚姻期間中に取得した株式
  • 配偶者の協力のもとに取得した株式

【財産分与の対象とならない株式】

  • 結婚前から保有していた株式
  • 相続・贈与によって取得した株式
    (オーナー経営者・同族会社など)

なお、原則として、財産分与の対象となる財産は、夫婦のいずれかの名義のものですが、例外があります。経営している会社の名義になっている株式や、子ども名義で買った株式でも、実際には夫婦の協力のもとに取得されたものであれば、その株式は財産分与の対象となる可能性があります。

株式の財産分与をするための事前準備

ポイント

株式の財産分与を考えるときには、まず事前準備として、お互いの保有する株式を調査し、リストアップして、その評価額を決めておく必要があります。

対象となる株式のリストアップ

まず、財産分与の対象となる株式を調査し、財産目録にリストアップしていきます。

株式の調査をするときは、まずは相手に聞くのがよいですが、対立が激しいときには、相手は保有する株式を隠してくるかおしれません。財産隠しが予想されるケースでは、同居中に、証券会社から送られてくる郵送物などを調べておくことで、株式が財産にあるのかどうかを知ることができます。

相手の保有する株式がわからないときには、弁護士を依頼して弁護士会照会の方法を利用したり、早めに調停を申立てたりといった方法がおすすめです。

株式の評価額の決定

株式の財産分与のときには、「その株式がいくらの財産なのか」、つまり、株式の評価額を決めなければなりません。

財産分与の基準時は、対象財産の「確定」の基準時は「別居時」、「評価」の基準時は「離婚時」とするのが基本です。そのため、株式についても、離婚時の評価額を参考とします。

株式の評価額を決める方法は、その株式が上場しているか、非上場かによっても変わります。

財産分与における株式の評価
財産分与における株式の評価

上場株式の評価

上場株式は市場価格によって評価します。

  • 離婚日の終値
  • 離婚時点での過去3か月の平均株価

などを参考にするケースが多いです。

財産目録にリストアップした時点と、離婚時とでは、株価が値上がり・値下がりし変わっている可能性もありますので、直近の株価をチェックする必要があります。値動きの激しい株式では、不公平感を生まないためにも、「分与までに評価額が変化したとき、どう分与するか」についても合わせて夫婦間で合意しておく例もあります。

投資として保有している株式で、夫婦の一方が「値上がりするはず」と思って購入しているような場合は、取得して代償金を支払う「代償分割」とするほうがおすすめです。

非上場株式の評価

これに対して非上場株式は市場価値が算定できません。オーナー経営者の自社株、同族経営・家族経営の一族からの相続といったケースでは、非上場株式が財産分与の対象となります。

夫婦間で評価額について合意できないときには、決算書などの財務諸表をもとに公認会計士・税理士などの専門家に評価してもらう必要があります。

また、非上場株式の多くは、譲渡制限株式であることが多く、株式を譲渡するためには会社の承認を要するのがほとんどです。そのため、非上場株式では、一方がそのすべてを保有し代償金を支払う「代償分割」の方法がとられることが多いです。

株式の財産分与をする方法と、具体的な流れ

矢印

株式が財産分与の対象となるときでも、財産分与を行う基本的な流れは変わりません。つまり、リストアップした株式の評価額を定めた後は、夫婦で話し合いを行い、合意できないときは調停を申し立てる(離婚前であれば「離婚調停」、離婚後であれば「財産分与請求調停」)という流れです。

とはいえ、株式が特殊な財産であり、分与が難しい場合もあるため、特に注意すべき点いついて順に解説していきます。

株式の分与割合の決定

株式の財産分与でも、他の財産と同じく「2分の1ルール」が適用されます。財産分与は公平のための手続きですから、夫婦平等のために分与は「5:5」とするのが原則だからです。ただし、例外的にこれとは異なる貢献度を主張する場合には、その主張する側が立証責任を負います。

株式の財産分与で、貢献度が異なると主張すべきケースは、次のような例です。

  • トレーダーとして特殊な才能を活用し、多額の利益を出した。
  • 上場企業の創業者であり、妻の貢献とは比較にならないほど大きな財産を得た。
  • たまたまギャンブル的に購入した株式が急騰し、多額の利益を得た。

このような特別な事情があるときは、むしろ原則どおり「2分の1ルール」を適用して保有株式を折半すると公平に反すると考えられるので、原則の修正が必要です。

特に、会社経営者の離婚のとき、保有する自社株式についてはその人の個人的な手腕や能力によって獲得されたものとして、配偶者の貢献度を低く評価すべきことが少なくありません。

株式の分与方法の決定

分与割合が決定したら、次に、分与方法を決定します。株式などの有価証券を分与する方法には、現物分割、換価分割、代償分割の3種類があります。

財産分与の3つの分け方
財産分与の3つの分け方

現物分割

株式を、現物のまま分与割合にしたがって分ける方法です。投資用に購入した上場株式のように分与しても会社の支配権に影響のないものは、株数に応じて分与するこの方法がおすすめです。他方、会社経営者の自社株の場合、現物分割してしまうと今後の経営に口出しされてしまうおそれがあるため避けるべきです。

代償分割

株式を一方が取得し、他方に分与割合に応じた代償金を支払う方法です。株式を一方が取得するため、会社経営者の自社株などを手元に確保できるというメリットがある反面、非上場株式の場合、その評価額が市場で決まらず、争いの火種となるおそれがあるというデメリットがあります。

換価分割

株式を売却して現金化し、売却代金を分与する方法です。3つの分割方法の中で最も分割が楽ですが、非上場株式の場合には評価に争いがあることはもちろん、そもそも買い手がつかず換価が難しいことが多いです。

離婚協議書の作成・公正証書化

ここまでの夫婦間の話し合いによって株式の財産分与についての重要事項が決まったら、これを離婚協議書に記載しておきます。後のトラブルを避けるため、書面で証拠化する必要があるためです。

あわせて、株式の財産分与について金銭支払いによる解決とするときには、支払われなかったときに強制執行(財産の差押え)ができるよう、離婚協議書を公正証書にしておくのがおすすめです。公正証書があれば、裁判をすることなく財産を差押えられるからです。

公正証書とは
公正証書とは

調停・審判の申立て

夫婦の話し合いでは株式の財産分与を拒まれてしまったときには、家庭裁判所に調停の申立てをします。離婚前であれば離婚調停を申立て、その中で財産分与についても争うことができますが、離婚後であれば財産分与請求調停を申し立てます。

特に、配偶者(夫または妻)が会社経営者であって、その自社株の分与が争いになるときには、半分の割合を分与してしまうと会社の経営権に影響が出てしまうため、話し合いではなかなか株式の分与が決まりません。

調停では、家庭裁判所の調査官が夫婦双方の事情・意見を聞き、円満な解決に向けた調整をしてくれます。

離婚前の離婚調停を行っても合意できないときには、財産分与も含めて調停内では決まらず、離婚訴訟で継続して争います。これに対し、離婚後の財産分与請求調停の場合には、調停内で合意ができなかったときは審判に移行し、家庭裁判所の判断を得ることができます。

株式の名義書換え手続き

最後に、株式の財産分与が決まったときには、株式を移転するために必要となる手続きを行わなければなりません。

株式の名義書換え
株式の名義書換え

上場株式の財産分与では、証券会社に対して株式の名義変更手続きを申請します。証券会社は、証券保管振替機構における株式移転の手続きと、会社に対する株主名簿の書換え手続きを、株主に代わって行ってくれます。

これに対して、財産分与の対象が非上場株式の場合には、自分で会社に対して株主名簿の書換えを請求します。また、非上場株式の多くは譲渡制限付株式であるため、譲渡について会社の承認を得る必要があります。

まとめ

株式の財産分与では、適正な分与方法、分与割合によって分けなければ、配偶者の不満を招き、離婚協議がストップしてしまうおそれがあります。トラブル回避のためにも、株式特有の問題点をしっかり理解して進める必要があります。

会社経営者の離婚問題で、保有する自社株式が財産分与の対象として争われる場合、会社経営に支障が出ないよう、「代償分割」などの方法を提案し、円満な解決を目指さなければなりません。非上場株式を「現物分割」により譲り受ける場合には、会社法の知識もあわせて必要となります。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
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弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題について、多くの知識と経験を蓄積しています。

離婚と財産分与の問題についてお困りの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

財産分与のよくある質問

株式は、財産分与の対象になりますか?

株式は、財産的価値がありますから、夫婦の共有財産に含まれるのであれば、当然に財産分与の対象となります。共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に築き上げた財産のことをいうため、結婚してから取得した株式が、おもに財産分与の対象となります。もっと詳しく知りたい方は「株式が財産分与の対象となるケース」をご覧ください。

株式の財産分与をするとき、注意点はありますか?

株式の財産分与では、他の財産分与にも増して特殊な配慮が必要となるケースがあります。それは、経営する自社株が対象となってしまう場合です。このとき、株式を現物で分け与えてしまうと、会社の経営に支障が生じるおそれがあるため、代わりにお金を与える「代償分割」がおすすめです。その他、株価の変動が激しい株式では、その評価額がよく争われます。詳しくは「株式の財産分与をする方法と、具体的な流れ」をご覧ください。

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