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不倫・浮気の慰謝料が払えない時、分割払いにしてもらうためのポイント

不倫・浮気をして慰謝料を請求されてしまったとき、収入や財産が少なく、生活に余裕がないと、請求された慰謝料を「一括払い」するのはなかなか難しいケースがあります。

このとき、まずは話し合い(協議)で慰謝料の減額交渉をしますが、「いよいよこれ以上の減額が難しい」という段階になったら、最後に検討したいのが、支払方法を「分割払い」にしてもらう交渉です。

不貞慰謝料の相場は100万円〜300万円が目安で、相場を超える請求があれば、積極的に減額交渉すべきですが、それでもなお数十万円、数百万円の支払いすら困難なとき、一括払いでなく分割払いを希望して交渉します。慰謝料を請求する側でも、支払いを拒絶されるよりは「分割でも支払ってほしい」といって応じてくれるケースも多いです。

他方で、不貞慰謝料の分割払いを約束することは、支払う側にとって将来の生活不安につながったり、未払いになって強制執行(財産の差押え)されてしまったりといったリスクもあります。

今回は、不倫・浮気の慰謝料を分割払いにする方法と注意点について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 不倫・浮気の慰謝料を分割払いにするためには、相手にメリットある支払い計画を提案する
  • 慰謝料を分割払いにすると、違約金、連帯保証などの条件付きとなるおそれあり
  • 分割払いの履行が難しくなったときは、誠意をもって交渉し、支払い計画の変更を求める
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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不倫・浮気の慰謝料を分割払いにする方法

不倫・浮気の慰謝料とは

不倫の慰謝料の相場
不倫の慰謝料の相場

不倫・浮気は法律用語で「不貞行為」といい、民法上の不法行為(民法709条)にあたるため、これによって不倫相手の夫(または妻)などが負った精神的苦痛について慰謝料を支払わなければなりません。

夫婦は互いに貞操義務を負い、他の異性と肉体関係(性交渉)をもつことが禁じられています。貞操義務に違反すると「不貞行為」となり相手(夫または妻)に対して慰謝料を支払わなければなりません。また、このとき不倫相手もまた、相手の配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負います。

慰謝料額の相場は、100万円〜300万円が相場とされていることから、高額な請求に対しては減額請求をすべきですが、それでもなお、まとまったお金が手元にないとき、分割払いにしてもらえるよう交渉することとなります。

分割払いにする方法

不貞慰謝料の請求は、通知書・請求書などによる請求から交渉を開始し、交渉がまとまれば合意書を作って終了します。交渉がまとまらないときは訴訟で請求されることとなります(夫婦間の請求で、離婚と同時に慰謝料請求がされるときは、離婚調停・離婚訴訟で争われることもあります)。

不貞慰謝料を分割払いとしてもらうためには、慰謝料を請求してきた人と合意して、分割払いの約束をする必要があります。合意が成立すれば、どのような支払期限、支払回数、支払条件の分割払いでも構いませんが、合意が成立しなければ分割払いとしてもらうことはできず、一括払いが原則です(裁判の判決によるときも一括払いとなる)。

したがって、不貞慰謝料を分割払いにしてもらうためには、次の2つのいずれかの場合でなければなりません。

  • 交渉の段階で分割払いの約束をし、合意書に記載する
  • 訴訟になってしまったときも、訴訟中に和解ことで分割払いの約束をする

いずれの場合も、分割払いに応じてもらいやすくするためには、次の3点を伝え、誠実に交渉をすることが大切です。

  1. 一括払いするほどの資力がないことと
  2. 将来の支払いは確実にすること
  3. 請求側の希望する支払条件にはできるだけ応じること

将来確実に支払うということが理解してもらえれば、一括払いを無理に強行するよりも、分割払いに応じてくれるという人も少なくありませんから、粘り強く交渉するようにします。

分割払いの交渉は、当事者が自身で行うと、感情的な対立が先行して受け入れてもらえないおそれがあります。このようなとき、弁護士が窓口となって、誠意を示して交渉することがおすすめです。

不倫・浮気の慰謝料の分割払いで、よくある支払条件

弁護士

不貞慰謝料の分割払いは、慰謝料を受けとる側にとって「将来の支払いが確実に行われるが保障されていない」というデメリットがあるため、支払いを確保するための次のような条件がつけられます。

交渉時、相手からこのような条件が提案されたとしても、現実的に手元にお金がなく分割払いとせざるを得ないとき、飲まざるをえないことがあります。

なお、不貞慰謝料を支払う側では、分割払いをするとき、これ以上の追加請求を受けないよう、必ず清算条項(書面に記載した以外の債権債務が存在しないことを確認する条項)を定めるようにしてください。

支払期限

不貞慰謝料を分割払いとするときには、支払期限が設けられます。通常は、1ヶ月に1回、毎月定期的に払うように約束するのが通常です。給料日などを考慮し、月末もしくは25日などを支払日として約束するケースが多いです。

定期的に支払期限を設けるという支払計画は、習慣化して将来の支払いを確実にするとともに、滞納があったときにただちに対策を打つことができるといった支払いを受ける側のメリットから、よく利用されます。

支払額

支払期限とともに、支払額を定めるのが一般的です。毎月定額の分割払いのほか、まとまったお金を頭金として最初に払うよう要求されることもよくあります。

慰謝料の分割払いの提案額
慰謝料の分割払いの提案額

相手が分割払いに応じてくれたとしても、あまりに長期の支払期限、少額の支払額では応じてもらえないおそれが強いため、可能なかぎりの提案をするのが大切なポイントです。

ただし、無理な支払計画になっては元も子もありません。月々の支払額の上限は、月収から家賃などの固定費を控除した金額の3分の1程度が無難です。

期限の利益の喪失条項

不貞慰謝料を分割払いとするとき、「期限の利益の喪失条項」がつけられるケースがよくあります。「期限の利益の喪失条項」とは、支払期限どおりに払われなかったときには、その後は分割払いを待ってもらうことができず、残額を一括払いしなければならなくなるという条項です。

期限の利益の喪失条項の例は、次のとおりです。

「上記支払期限の支払いを二度遅滞し、未払い額が○○円に達したときは、期限の利益を喪失し、残額及び未払日からの遅延損害金を一括払いする。」

上記の例のように、期限の利益の喪失条項は、未払いとなった回数、未払いとなった金額などによって条件が決められることが通常です。約束を破ってしまうと、その後は一括払いをしなければならなくなります。

遅延損害金

不貞慰謝料の分割払いのを怠ったときは遅延損害金が発生することが条件とされるケースもよくあります。

遅延損害金は、分割払いが未払いとなってしまった期間に応じて一定の割合で定められ(民事法定利率は3%)、前章で解説した期限の利益の喪失条項によって一括払いが必要となったときには、元本と同時に一括で払わなければなりません。

連帯保証人

不貞慰謝料を分割払いとしてもらえるよう交渉するということは、あなたの資力・収入・財産が乏しいことを意味します。そのため、将来の支払いを確実にするために、連帯保証人をつけることを条件とされてしまうことがあります。

親などを連帯保証人とするとき、債務者であるあなたと同等の重い責任を負います。

公正証書の作成

不貞慰謝料の分割払いを交渉するとき、慰謝料を請求した側から、公正証書の作成を条件とされることがあります。公正証書を作成し、その書面に「強制執行認諾文言」をつけると、未払いとなったときには強制執行(財産の差押え)ができ、支払いをより確実にすることが期待できるからです。

公正証書とは
公正証書とは

公正証書によって分割払いの約束をしたときは、未払いとなると給与債権の差押えなどを受けてしまうため、注意が必要です。

一度決めた分割払いが難しくなってしまったときの対応

ポイント

次に、約束した分割払いの慰謝料を支払っていくことが困難になってしまったときの対応方法について解説します。

ひとたび合意によって不貞の慰謝料を分割払いとすることを約束すると、その後は、あなたの一方的な意思では合意内容を変更できないのが原則です。そのため、分割払いの合意時には、「将来、本当に無理なく払っていける、現実的な支払計画かどうか」、慎重に検討してください。

それでもなお、退職や病気、親族の世話、交通事故などの予想外の事情によって収入が減少してしまうなど、事情変更に見舞われてしまうケースもあります。

支払計画の変更を申し出る

どうしても一度決めた分割払いが難しいとき、支払計画の変更を申し出る必要があります。支払計画の変更は、相手に受け入れてもらい、再度合意してもらう必要があるため、自分の希望の押し付けではなく、相手にとってメリットのある内容にしなければなりません。

相手に受け入れてもらえる可能性のある支払計画の変更には、例えば次のものがあります。

  • 支払額を減額する代わりに、支払期間を伸ばす(慰謝料の総額は変更しない)
  • 支払額・支払期間を変更する代わりに、今手元にあるまとまったお金を頭金として支払う
  • 支払額・支払期間を変更する代わりに、未払いとなったときのペナルティを強くする
  • 分割払いから一括払いに変更する代わりに、総額を減額してもらう

現実的に分割払いが難しいとき、その理由がやむをえないといえるときは、正直に相手に伝えて減額交渉することが功を奏するケースもあります。

例えば、親族の介護、病気や死亡など、理由が同情を引くものであるとき、誠意をもって交渉をすれば、支払額の減額をしてもらえることがあります。このような理由では、隠し事をせず、理解してもらえるようきちんと証拠などを示してつたえるのが大切です。

分割払いを受ける側でも、強制執行するにも、財産調査をしたり裁判手続きを行ったりといった手間がかかりますし、かならずしも満額回収できるとは限りませんから、「減額してくれれば支払う」というのであれば減額に応じてくれる可能性もあります。

ただし、不貞慰謝料の支払額が判決で決まったときには、不服があるときは控訴・上告などを一定期間内に行うべきであり、確定した後では、事情変更があったとしても金額を変更することはできません。

合意の無効・取り消しを主張する

不貞慰謝料の分割払いを、当事者間の合意によって約束していたとき、その合意が無効である、もしくは、取り消し可能であると事後的に主張すべき場合があります。

不貞慰謝料では、不貞行為にあたる肉体関係(性交渉)が存在し、証拠によって明らかであるとき、交渉において立場上、あなたのほうが不利になってしまう構造にあります。このことに乗じて、交渉であまりに不利な条件を押し付けられたり、だまされたり脅されたりしていたとき、下記のような理由によって合意の無効や取り消しを主張できます。

  • 公序良俗違反による無効(民法90条)
    合意内容が、相場からかけはなれてあまりに高額、合意内容があまりに不利で一方的などのケース
  • 錯誤による取消(民法95条)
    合意内容についての理解が十分ではなかった
  • 詐欺による取消(民法96条)
    合意時に相手からだまされた
    (有責行為や証拠がないにもかかわらず、これらを主張されるなど)
  • 強迫による取消(民法96条)
    合意時に相手からおどされた
    (DVや虐待があったケース、モラハラ気質のケースなど)

これらの合意の無効・取り消しについては、合意がすべて白紙に戻ってしまうため、慰謝料の請求側としては受け入れがたく、話し合いで解決できないことが多いです。話し合いで合意できないときは、「合意が無効であるため支払い義務がないことを確認する」という訴訟をあなたの側から起こすこととなります。

なお、合意の無効・取り消しを主張しながら、他方で、少し減額した提案額を提示することによって、訴訟に至らなくても再度の合意をするよう目指すという方法も有効です。

分割払いを踏み倒せるか

一度は分割払いが可能だと思って合意した不貞慰謝料について、現実的にどうしても払えなくなってしまったケースで、支払を踏み倒そうと考える方がいます。支払を踏み倒そうとしたとき、合意の方法によって、次のようなリスクがあります。

第1に、合意について離婚協議書、合意書などの書面で定めており、公正証書化していないときには、分割払いを滞納すると、あらためて、それらの書面通りの支払い義務があることについて、請求側から不貞慰謝料請求の訴訟を起こされることが予想されます。

この訴訟では、請求側にとって有利な証拠として、既に合意をした離婚協議書、合意書などの書面が提出され、そのとおりの判決が下される可能性が高いですが、一方で、必ずそうなるわけではありません。そのため、一度定めた合意が相場からして高すぎるなどの事情があるときは、訴訟において慰謝料減額の主張をすることが有効です。

第2に、すでに訴訟による判決を受けていたり、公正証書を作っていたりすると、これらの債務名義によって強制執行(財産の差押え)が予想されます。強制執行では、不動産(土地・建物)や預貯金の差押えのほか、給与債権の差押えがよく利用されます。そのため、どうしても約束どおりの分割払いが難しく、支払を止めざるを得ないとき、

  • 強制執行を受ける可能性なる財産が存在するかどうか
  • 強制執行によってあなたが受けるダメージがどの程度か

について慎重に判断しなければなりません。

まとめ

今回は、不倫・浮気の慰謝料をどうしても一括払いができないときに検討しておくべき、分割払いにしてもらうための交渉と、一旦決めた分割払いの支払いが困難なときの対応について弁護士が解説しました。

一括払いが難しいとき、分割払いとしてもらわざるを得ませんが、分割払いは慰謝料を受けとる側にとってリスクとなります。そのため、期限の利益喪失、遅延損害金、公正証書作成など、あなたにとって不利になる多くの支払条件を受け入れなければならないリスクがあります。

分割払いとしてもらうためのさまざまな支払い条件を受け入れていたとき、一度決めた分割払いを怠ると、支払額が増額されてしまったり、強制執行(財産の差押え)を受けてしまったりと、不利益が拡大することとなってしまいます。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
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弁護士法人浅野総合法律事務所では、不倫・浮気の慰謝料に関する多数のケースを解決してきました。

将来のトラブルを拡大してしまわないためにも、不貞慰謝料の交渉段階から弁護士に依頼していただく方法が有効です。ぜひ一度、当事務所へご相談ください。

不貞慰謝料のよくある質問

不倫・浮気の慰謝料を分割払いにできますか?

不倫・浮気の慰謝料は、一括で払うのが基本のため、支払いが難しくて分割にしてほしいときには、相手と合意して分割払いを受け入れてもらわなければなりません。そのため、相手に合意してもらえるような分割案を提案し、交渉する必要があります。もっと詳しく知りたい方は「不倫・浮気の慰謝料を分割払いにする方法」をご覧ください。

一度決めた慰謝料の分割払いが、約束通り払えないときはどうしたらよいですか?

一度決めた慰謝料の分割案が、そのとおりに払うのが難しいとき、再度交渉して、支払い計画を変更してもらうようにしてください。支払いをしないまま無視、放置していると、訴訟提起されたり強制執行されたりする危険があります。もっと詳しく知りたい方は「一度決めた分割払いが難しくなってしまったときの対応」をご覧ください。

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