離婚・男女問題

児童虐待から子どもを守る「親権制限制度」とは?メリットと注意点

2021年7月1日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

児童虐待と親権制限制度

児童虐待は、子どもの健全な発育を阻害し、将来に深刻な影響を残す一方で、家庭内という密室で行われるため防止が難しいという問題点があります。

児童虐待の主な原因は、親が子どもに対する親権を正しく行使しないことにあります。そのため、親権者が行う児童虐待を防ぐために、親権者を児童から引き離す必要があり、そのために設けられた法的な制度が、「親権制限制度」です。

民法に定められた親権制限制度には、親権喪失、親権停止、管理権喪失の3つがあります。親権制限制度の利用は年々増加していますが、その半数以上が親権停止の手続きです。

今回の解説では、

  • 親権制限制度の3種類の手続き
  • 虐待から子どもの生命・身体の安全を守る方法
  • 虐待親の関与を排除し、子どもの引渡しを求める方法

といった児童虐待を防止する方法について、弁護士が解説します。

「親権制限」の解説一覧

親権制限制度とは

児童虐待と親権制限制度

親権とは、親子関係から生じる、未成年の子どもを監護養育するために親に認められる権利義務の総称です。その主要な内容は、子どもを監護養育する権利義務(身上監護権)と、子どもの財産を管理する権利義務(財産管理権)に分けられます。

親権には「権利」だけでなく「義務」が含まれます。虐待を繰り返すということは、子どもを監護教育するという親の義務を果たしていないことを意味しており、その親権を制限する必要がでてきます。

そのために設けられた法的な制度が「親権制限制度」です。親権制限制度には、次のとおり、親権喪失、親権停止、管理権喪失の3つがあります。

児童虐待を防止するためには、虐待を行う親権者を子どもから引き離し、子どもへの不当な関与を排除することが必要です。児童虐待防止法でも、虐待の防止および虐待を受けた子どもの保護のために、親権制限制度を適切に運用することが要請されています。

元々は、親権を全面的に奪う親権喪失、子どもの財産管理権を奪う管理権喪失しかありませんでしたが、要件が厳格であり、かつ、親権を全面的に奪うという効果が強すぎ、使いづらい制度でした。平成23年民法改正により、期間を限定して親権行使を一時的に制限する親権停止が創設されたことで、親権制限制度の利用は増加しています。

親権喪失

親権喪失とは、期間を定めることなく、親権のすべてを親から奪う制度です。親権喪失について、民法の定めは次のとおりです。

民法834条(親権喪失の審判)

父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

次に解説する親権停止が、2年を超えない期間を定めて親権を停止する制度であることから、親権喪失は、2年では虐待などの原因が消滅する見込みがないときに審判が下されることとなります。

親権制限をすることによって、かえって子どもに強い影響を与えてしまわないよう、虐待の程度や悪質性に応じて、親権喪失・親権停止のうち適切な制度を選択することが必要となります。

参考解説

親権停止

親権停止とは、2年を超えない範囲で期間を定めて親権を停止する制度です。親権停止について民法の定めは次のとおりです。

民法834条の2(親権停止の審判)

1. 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2. 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

親権停止の審判は、親権喪失の審判に比べて、「著しい」という文言がなくなって要件が緩和されており、また、審判についても2年未満の期限付きであるため、より軽度な虐待事案にも利用しやすくなっています。

親権を一旦停止することによって、子どもを親から離し、親からの不当な干渉を回避することができます。また、裁判所が親権を停止するという決断を示すことによって、虐待を受けた児童が「自分が悪いのではないか」と自分を責めてしまうことを防止することにつながります。

参考解説

管理権喪失

管理権喪失とは、親権のうち財産管理権のみを制限する制度です。親権には、子どもを監護養育する権利義務(身上監護権)と、財産を管理する権利義務(財産管理権)が含まれるところ、このうち財産管理権のみを制限するのが管理権喪失の審判です。

管理権喪失について、民法の定めは次のとおりです。

民法835条(管理権喪失の審判)

父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。

管理権喪失は、親権喪失・親権停止に比べて効果が限定的であり、身体的虐待などの行動をともなうときには効果的ではないことから、冒頭の表を見て頂ければわかるとおり、他の2つの手続きに比べて利用件数は少ないです。

親権制限が認容される児童虐待のケース

児童虐待とは、「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)2条に定められる、保護者が児童(18歳に満たない者)に対して行う身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待などの行為をいいます。

児童虐待防止法2条(児童虐待の定義)

この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。第十六条において同じ。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

以上の児童虐待防止法に定められた4つの虐待類型の中でも、次のとおり、裁判所における認容事例(令和元年)ではネグレクトのケースが多い傾向にあります。特に、親権停止が認められた事例では、その半数近くがネグレクトの見られる事例です。

ここでは、親権制限の申立てをすべき児童虐待のケースについて弁護士が解説します。

なお、同法では、児童虐待を主体を「親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を厳に監護するもの」としており、両親のほか、児童を育てる祖父母や親族はあたるものの、親権者の交際相手などの第三者からの虐待はこれに含まれません。ただし、子どもの安全を守るために、児童虐待防止法の「児童虐待」にあたらないとしても、親権者に問題があると考えられるとき親権制限が認容されることがあります。

身体的虐待

身体的虐待は、児童虐待防止法2条1号に定める「児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること」をいいます。

具体的には、次のような行為です。

  • 殴る、蹴る、平手打ちする
  • 首を絞めて窒息させる
  • 物を投げつける
  • 熱湯をかける
  • タバコを押し付ける
  • 布団蒸しにする
  • 風呂に沈める、冷たいシャワーをかけ続ける

身体的虐待の多くは、「しつけ」と称されて行われます。確かに、しつけは、親権の一内容である懲戒権の行使として認められます。

しかし、たとえ目的がしつけだったとしても、その程度が目的にそぐわない暴力的なものであるときには、虐待であると評価されます。

このように、親権者が「しつけ」と称して自身の行為を正当化するときには、説得によって身体的虐待を止めることが難しいと考えられるため、親権制限の制度を利用することを検討すべきケースです。

性的虐待

性的虐待は、児童虐待防止法2条2号に定める「児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること」をいいます。

具体的には、次のような行為です。

  • 性交を強要する
  • 性的行為を強要する
  • 親権者が、性器や性交を子どもに見せつける
  • 性的な写真を撮影する

性的虐待は、家庭という密室の中で行われる虐待行為の中でも、特に隠れておこなわれる上、子どもからも言い出しづらい性質のため、防止が困難です。その兆候がみられるときには、親権制限の制度を利用することを検討すべきケースです。

ネグレクト

ネグレクトは、児童虐待防止法2条3号に定める「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること」をいいます。

  • 食事を与えない
  • 衣服を与えない
  • 十分な家事をおこなわず、家が不衛生な状態である
  • 学校に登校させない

仕事で疲れているなどの理由から子どもの面倒を見ず、子どもにまかせっきりにしていることは、ネグレクトにあたります。

乳幼児のように親の助けがなければなにもできない時期に、家や車の中に放置するなど重大な結果につながるおそれある行為もあります。ネグレクトは、身体的虐待などに比べて軽視されがちですが、継続的にネグレクトが行われているようなケースでは、親権制限の制度を利用することを検討すべきです。

心理的虐待

心理的虐待とは、児童虐待防止法2条4号に定める「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。第十六条において同じ。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」です。

心理的虐待には、上記3つの類型には含まれないものの、子どもの精神に大きな影響を与える虐待行為が含まれます。例えば、次のような例です。

  • 子どもを脅す、怒鳴る
  • 子どもを無視する
  • 子どもの心を傷つける発言をする
  • 子どもの前で配偶者に暴力をふるう

心理的虐待の影響は見えづらいですが、子どもが将来、対人関係をうまく築くことができなくなってしまったり、自己評価が低くなってしまったり、PTSDや記憶障害、解離性同一性障害などの精神症状を生じてしまったりすることがある重大な虐待です。

代理によるミュンヒハウゼン症候群

ミュンヒハウゼン症候群とは、病院で検査・治療を受けることを目的として病気をねつ造することです。そして、子どもの病気を「代理」でねつ造し、「病気になってしまったかわいそうな子どもの看護を献身的に行う親」を自演する行為が、代理によるミュンヒハウゼン症候群です。

子どもの病気をねつ造する際に、「熱がある」などの虚偽の症状を訴え、県線な成長を阻害するというネグレクトの一面があります。加えて、実際に体調が悪くなるよう異物を飲み込ませたり暴行を加えたりといった身体的虐待を伴うこともあります。

医療ネグレクト

医療ネグレクトは、子どもに必要かつ適切な医療を受けさせないことです。

治療を受ければ治る病気なのに適切な治療を受けさせないなどの行為は、子どもの「治療を受ける権利」を侵害するもので、児童虐待にあたります。子どもの治療は事実上、親の同意を要することとなるため、親が治療を拒否することでこのような児童虐待が行われます。

親権制限の制度を利用するメリット・デメリット

児童虐待と親権制限制度

児童虐待は子どもの一生に大きな影響を与える重大な行為ですが、一方で、親権を制限することもまた、親子関係に対する大きな干渉となります。そのため、親権制限の制度を利用するときには、メリット・デメリットを十分に理解し、かえって悪影響を与えてしまわないよう、申立てをするかについて慎重な検討が必要となります。

弁護士などの専門家の関与なく、親権制限の制度を軽々しく利用してしまうことは、子どもに対しての説明が不十分となりかえって悪影響となってしまうおそれもあります。

親権制限のメリット

親権制限のメリットは、子どもに対する親権者の不当な干渉を避けることができる点です。

既に、子どもが親権者のもとを離れて、里親の家や施設で暮らしている場合にも、親権が残っていると、親権行使をすることによる次のような虐待行為を継続することができてしまうからです。

  • 親権者が、治療行為に対する不同意など、親権を行使しないことによって心理的虐待・ネグレクトを継続する
  • 親権者が、子ども名義で代理で契約行為を行うことで子どもに債務を負担させる(子ども名義の借金など)

また、既に親権者とのかかわりあいが薄れていたとしても、家庭裁判所が正式に親権喪失・親権停止などの審判を下すことにより、子どもを「自分のせいかもしれない」という自責から解放することができ、子どもの心の整理につながることもメリットの1つです。

親権制限のデメリット

親権制限は、とても強い効果を生じるものであるため、子どもに対しても悪影響となりうることがデメリットの1つです。

この点で、親権喪失・親権停止の違いはあくまでも親権のなくなる「期間」であり、管理権喪失以外には、その他に権利の内容を柔軟に制限する方法はありません。つまり、軽度な虐待事例などで「この部分だけ制限すればうまくいくはず」と考えたとしても、親権制限制度を利用すれば、親権は(少なくとも停止期間中は)完全になくなってしまい、柔軟な解決はできません。

また、親権喪失・親権停止は、戸籍に記載されます。

親権制限の制度を利用するときの注意点

親権制限の制度は、以上のとおりデメリットもある手続きであり、その利用には慎重な検討が必要です。

軽度な虐待事例では、ただちに親権制限の制度を利用するのではなく、まずは夫婦間や親族をまじえての話し合いを行ったり、親権者がカウンセリングを受けたりといった方法によって改善すべき場合があります。

また、親権制限の制度を利用するときにも、親権喪失ではなく親権停止から利用するといった方法があります。加えて、子どもに対して連絡がとれるときには、親権制限の制度がどのようなものであり、どのような趣旨で申立てが行われたのかということを十分に説明する必要があります。

とはいえ、虐待は家庭内という密室で行われることから、親権制限の制度を利用するかどうか検討している親族などからは、その虐待の実態がすべて知れるわけではなく、手遅れになってしまう危険もあります。

虐待の兆候が見られ、親権制限の申立てをするか検討している方は、ぜひ一度弁護士への相談をおすすめします。

なお、現在まさに児童が虐待にさらされていて、生命・身体の安全をすぐにでも確保する必要があるときには、監護者指定・子の引渡しの審判(及び審判前の保全処分)という、より緊急性の高い制度を利用することを検討しなければなりません。

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児童虐待と親権制限制度

今回は、親権者が子どもを虐待しているのではないかと考えられるときに利用を検討すべき「親権制限」の制度について解説しました。

児童虐待は、家庭という密室で行われるためその実態の把握は難しいですが、子どもの一生に関わる重大な問題です。

子どもの体にアザや傷が見られたり、常に落ち込んだ様子であったりなど、家族や親族に虐待の兆候がみられるとき、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

「親権制限」の解説一覧

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

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