離婚・男女問題

親権停止の審判とは?審判までの流れと、親権停止された時の対応

2021年6月28日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

親権停止の審判

親権停止の審判は、家庭裁判所の審判によって、2年以内の期間に限って、親権者の親権行使を停止するという手続きです。

親権停止の制度ができるまで、児童虐待やネグレクト、DVなど問題のある親の親権を制限する方法には親権喪失しかありませんでした。しかし、親権喪失は、審判の要件が厳格で、かつ、親権を喪失させるという強い効果を生むものであったため、利用しづらいとされ敬遠されていきました。

親権停止は、親権喪失の程度には至らないような虐待事例や一定期間の経過によって回復が見込まれる事例に対しても柔軟に対応することができ、活用が進んでいます。

今回の解説では、

  • 親権停止の制度と、手続きの具体的な流れ
  • 親権停止の審判を受けた後の適切な対応(養育費・面会など)
  • 親権喪失との関係

といった子どもと家族の問題について、弁護士が解説します。

まとめ解説
児童虐待から子どもを守る「親権制限制度」とは?メリットと注意点

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親権停止の審判とは

親権停止の審判

親権停止の審判は、家庭裁判所の審判で、2年位以内の期間に限って親権者が親権を行うことができないようにする制度です。親権停止について、民法では次のように定められています。

民法834条の2(親権停止の審判)

1. 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2. 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

親権停止の審判は、親権を完全になくしてしまう親権喪失に比べて、期間を限定して一時的に制限するにとどまるものです。そのため、手続的な要件をある程度下げ、親権喪失手続きよりも認められやすく、児童虐待を防止したい側にとって活用しやすく作られています。

親権停止の審判を活用すべきケース

親権停止の審判は、親権喪失の審判に比べて、要件をある程度下げ、効果も一定期間に限定されていることから、親権喪失よりも柔軟で、使い勝手のよい制度となり、活用が進んでいます。

親権停止の制度では、父母による親権の行使が困難または不適当ではあるものの、親権喪失をさせるほどではないような比較的軽度な事案や、医療ネグレクトや進学禁止のように一定期間だけ親権を停止しておけば支障をとりはらうことができるような事案で活用されます。

親権喪失・管理権喪失の審判との関係

親権停止と親権喪失では、要件は似通っていますが、その程度の軽重によって区別されています。親権喪失、親権停止の要件を比較すると、次のようになっています。

親権停止親権喪失
-虐待
-悪意の遺棄
親権の行使が困難親権の行使が著しく困難
親権の行使が不適当親権の行使が著しく不適当
-2年以内に原因となる状況が消滅する見込みがない

親権停止の審判の申立ては、「父または母による親権の行使が困難または不適当」であり「子の利益を害する」といえればよく、親権喪失の要件のように「『著しく』困難または不適当」である必要はなく、「2年以内に原因となる状況が消滅する見込みがあってもよいものとされています。

親権停止の審判は、親権喪失の審判の請求の中に含まれているものと考えられています。

そのため、家庭裁判所の実務では、親権喪失の審判の申立てがあったときにも、親権喪失の程度にまでは至っていない(もしくは、一定期間の親権停止により解決可能である)と考えるときには、親権停止の審判を下すことがあります。

同様に、管理権喪失の審判もまた、親権喪失の審判の中に含まれているものと考えられています。一方で、親権停止と管理権喪失は包含関係にはありません。

以上のことから、親権停止の審判の申立てをしたときには、家庭裁判所が親権喪失や管理権喪失の判断をすることはできません。

参考解説

親権停止の手続きの流れ

親権停止の審判

次に、親権停止の手続きについて、親権停止の申立てから審判に至るまでの具体的な手続きの流れを解説します。

審判の申立て

親権停止の審判の申立権者は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官、児童相談所長であり、親権喪失の審判の申立権者と同じです。

子どもを保護するための手続きであるため、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

保全処分の申立て

審判が確定するのを待っていては目的の達成が難しい場合には、審判を申し立てるのとともに、保全処分の申立てを行います。これは、児童虐待、ネグレクトやDVなど、親権を停止すべき原因となる状況に緊急性があることを想定しているためです。

家庭裁判所は、子どもの利益のために必要があると認めるときには、申立てに対して、親権停止の審判が効力を生ずるまでの間、親権者の職務の執行を停止し、またはその職務代行者を選任することができます。

家庭裁判所の審理手続き

審判申立てがなされると、家庭裁判所での審理が行われ、子ども(15歳以上の場合)と親権者の陳述を聴取します。

親権停止の手続きでは、家庭裁判所がその停止の期間を決めますが、その際には、次の2点を考慮するものとされています(民法834条の2第2項)。

  • その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間
  • 子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情

したがって、親権停止の手続きでは、親権喪失の手続きでも行われる「親権制限の必要性があるかどうか」という観点の審理に加えて、「親権停止をどの程度の期間継続すべきか」という視点でも、子どもの養育状況、家族の状況を調査することとなります。

子どもに対する事情の聴取は、家庭裁判所の調査官による調査が実施されることが通常です。

このような流れとなる趣旨は、親権停止の制度が子どもの利益から判断されていることを考慮して、その期間についても子どもの心身や生活の状況を考慮要素とすべきだからです。

審判の確定

審判を受領してから2週間以内に即時抗告を行わないと、審判が確定します。親権停止の審判が確定すると、親権者は、審判で決定した親権停止期間中に限って、親権の行使ができなくなります。

具体的には、親権停止期間中は、夫婦の共同親権であったときにはもう一方が単独で親権を行使することとなり、父母の双方が親権停止の審判を受けたときには、未成年後見が開始されます。

なお、親権停止の審判が下ると、そのことは子どもの戸籍に記載されます。

親権停止中の適切な対応

親権停止の審判

次に、親権停止中の適切な対応について解説します。

残念ながら、児童虐待やネグレクト、DVなどを認定されて親権停止の審判を受けてしまったとしても、親権停止はあくまでも期限付きであるため、この期間内に問題を改善しておく努力をしなければなりません。

親権停止中の面会交流

親権停止の審判は、親権喪失よりも比較的軽度なケースを想定していることから、一定の停止期間が過ぎた後は、再度親子として生活していくことが予定されています。

そのため、親権停止期間中にも、今後の交流を継続させるために面会交流が行われることも少なくありません。また、親権が停止されている期間中も扶養義務は発生します。親権停止期間が終了したら一緒に暮らすためにも、一緒に住んでいない間でも養育にかかる費用を負担すべきです。

親権停止期間中の面会交流を希望する親が行うべき進め方は、次のとおりです。

  • 面会交流の実施を求める

    親権停止の審判により、一方の親の単独親権となっているときはその親権者である親に、父母双方の親権が停止されているときには未成年後見人に対して、面会交流の実施を求めるよう連絡をします。

    この際、残念ながら親権停止の審判を受けてしまったことを踏まえ、児童虐待、ネグレクトやDVなどの問題点の指摘を受けているときには、その問題点を将来改善していく旨もあわせて伝えましょう。

  • 面会交流調停を申し立てる

    親権者や未成年後見人が、親権停止に至った問題ある状況に改善が見られないと考えるときなど、話し合いで面会交流の実施を決めることができないときには、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。

    この際にも、面会交流調停においては、親の気持ちを一方的に押し付けることなく、子どもの利益という観点から面会交流をすべきことを訴えていきます。

親権停止期間の満了

親権停止の審判は、2年を超えない範囲で停止期間が定められます。そして、停止期間が満了すると、審判の効果は自動的に失われ、停止されていた親権が回復します。そのため、期間が満了した後は、通常どおりに親権者としてふるまうことができます。

親権喪失では一度失ってしまったら取り消し以外で親権を元に戻すことができないこととの最大の違いです。

なお、親権停止期間が満了して審判の効果が失われても、子どもの戸籍への記載は消えることはありません。

親権停止中の再度の申立て

親権停止の審判には期限がつけられていますが、その延長の制度は設けられていません。そのため、停止期間が終わってもなお、親権停止をしておくべきと考えられる場合には、停止期間中に再度の申立てをする必要があります。

例えば、親権停止期間中にも子どもに不適切な接触をしようとする、審判の原因となったアルコール中毒、薬物中毒やひどい精神状態などが治っていないなど、今後も児童虐待が継続するおそれが強いケースです。

このようなとき、親権停止期間を継続させるためには、期間が満了する前に次の申立てを行っておかなければなりません。また、再度の申立ての結論が出る前に、前の期間が切れてしまいそうなときには、あわせて保全処分の申立てをしておくことが有効です。

親権停止期間中に、児童虐待、ネグレクトなどの可能性がより高くなるなど、状況がより悪化したときには、親権停止期間中に、親権喪失の審判を申し立てることができます。

審判の取消し

親権停止の審判が下った後でも、その原因が消滅したときには、家庭裁判所は、本人または親族の請求によって審判を取り消すことができます。

したがって、親権停止は、停止期間が経過した後は自動的に親権が回復するものの、期間満了を待つことなく、審判の原因となった事情をなくすことによって親権を回復してもらうことができます。

親権停止の審判を進めるときの注意点

親権停止の審判

最後に、親権停止の審判を進めるときの注意点について、親権停止の審判を申し立てる親族の側、親権停止の審判を申し立てられてしまった親権者の側のそれぞれの立場から解説していきます。

申し立てる側の注意点

児童虐待が増加し社会問題化しています。

親権停止の審判は、親権喪失に比べて認められるための要件が緩和され、審判が認められやすくなっており、軽度な事案に対しても使いやすくなっています。また、親権者と子どもを一時的に引き離すことで、児童虐待やネグレクトなどの問題のある親権者に反省を促すことにもつなげられます。

これまで、「親に反省はしてほしいけど、一生親に会えないのは子どもがかわいそうだ」と親権喪失の手続きをためらっていた方も、親権停止の手続きを利用することにより、児童虐待事例への効果的な対処ができます。

このような観点から、親権停止の審判は、親権喪失を申し立てるのに躊躇しているうちに更なる被害を招いてしまった、ということにならないよう、児童虐待、ネグレクトやDVの兆候を関知したら、できる限り速やかに対処すべきです。

申し立てられる側の注意点

親権停止の審判を申し立てられてしまった親権者の側からしても、親権停止の制度趣旨にしたがって適切な対応をしなければなりません。

残念ながら、親族などからこのような申立てを受けたとき、これまでの養育が親の気持ちの押し付けになっていた可能性があります。申立てをされてしまったときは、むきになって感情的な反論をするのではなく、その理由をきちんと分析し、認めるべきところは認め、反省すべき部分は改善をすべきです。

審判を申し立てられてしまった理由を改善し、対策を練ることにより、親権停止の申立てを却下してもらったり、出てしまった審判の取消しを申し立てたりして、より早く子どもとの生活を回復することができます。

例えば、次のようなことを検討してみてください。

  • 子どもに対して、支配的、威圧的な態度をとっていなかったか
  • 「しつけ」と称して、一般的なしつけを超える行為(例えば暴力など)を行っていなかったか
  • アルコール中毒を理由とされているとき、断酒をする
  • 薬物中毒を理由とされているとき、医師の治療を受ける
  • 夫婦間の精神的ストレス、育児ノイローゼが原因と考えられるとき、カウンセリングを受ける

親権停止の審判は、親権喪失とは異なり、2年未満の期限付きで下されるものであり、将来一定期間の経過後には、再度親子として一緒に暮らすことが予定されています。

しかし、親権停止期間中に児童虐待やネグレクトの危険が消えなかったり、より悪化してしまったりしたときは、再度の申立てがなされたり、親権喪失の手続きに進んだりという更に不利な事態となるおそれがあります。

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親権停止の審判

今回解説した親権停止の審判は、申し立てる親族側、申し立てられる親権者側のいずれにとっても、とても深刻で重い手続きです。とはいえ、児童虐待、ネグレクトという子どもの一緒に大きな傷を残す問題行為を回避するため、適切な活用が望まれます。

親権停止の審判が、親権喪失の審判とは異なり、認められるための要件が緩和されており、かつ、効果についても2年未満の期限付きであるということから、「親と一生切り離すわけではない」と理解し、児童虐待が発覚してしまったようなケースでは申し立てていくべきです。

また、残念ながら申立てを受けてしまった側でも、問題点を真摯に受け止め、改善していく努力が、親権停止期間が満了した後の子どもとの新たな生活の第一歩となります。

まとめ解説
児童虐待から子どもを守る「親権制限制度」とは?メリットと注意点

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

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