
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
離婚した後になって、財産分与の請求を希望するケースは少なくありません。
財産分与は、婚姻期間中に築き上げた財産を公平に清算するための手続きですが、離婚前に限定されるわけではありません。当事務所にも、次のような相談が寄せられています。
この場合、離婚後でも財産分与の請求が可能です。ただし、離婚の時から5年以内という期限があり、これを経過すると請求権を失います(2026年3月31日以前の離婚の場合は2年)。なお、財産隠しがあった場合などは例外的に、期限の経過後でも請求が認められるケースもあります。
今回は、離婚後でも財産分与を請求できるケースや請求期限(離婚後5年以内)、具体的な請求方法、注意点について、弁護士が解説します。
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財産分与は、夫婦が婚姻中に築いた財産を公平に分配する制度です。
離婚によって夫婦関係が解消される際、どちらか一方に経済的な不利益が生じないよう、適正な分配を目的としています。婚姻中に夫婦が協力して形成した「共有財産」を2分の1ずつ分けるのが原則で、婚姻前の財産や、相続・贈与で取得した財産は「特有財産」として対象外とされます。
多くの家庭では離婚時の条件として財産分与を決めますが、早期離婚を優先したり、相手との話し合いに負担を感じたりして、財産分与を取り決めずに離婚してしまう人もいます。この場合、離婚後でも、財産分与を請求することができます。財産分与の請求権は民法768条を根拠としますが、次の通り、条文上も離婚前に限定されてはいません。
民法768条(財産分与)
1. 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる
2. 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。
3. 前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。
民法(e-Gov法令検索)
離婚時に財産分与の話し合いがまとまらなくても、一方が財産を独占するのは公平ではありません。離婚の前後は精神的に不安定となり、冷静な協議が難しい家庭も珍しくありません。一方で、財産分与の請求期限は、離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚の場合は2年)とされているため、できる限り早く請求の準備を進めるべきです。
なお、離婚時に「財産分与なし」と合意したり、離婚協議書に清算条項(互いに債権債務がないことを定める条項)を定めたりした場合、離婚後の財産分与請求はできません。
「離婚時の財産分与」の解説


財産分与の請求期限は、離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚の場合は2年)です。
民法768条2項但書では、「ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない」と明確に定められており、この期限を過ぎると、原則として財産分与は請求できません。
なお、2026年4月施行の民法改正で、財産分与の請求期限は2年から5年に延長されたため、離婚の時点がこれより前か後かによって適用される法律が異なる点に注意してください。
財産分与の請求期限は、離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚の場合は2年)とされます。早期離婚を優先して財産分与について取り決めていなかった家庭もありますが、元夫婦間の公平を図るために離婚後の請求も可能とする一方、長期間放置された場合は安定も優先されるべきです。このような請求する側と請求される側のバランスから、5年という期限が設けられています。
したがって、離婚から5年が経過すると、家庭裁判所を通じて財産分与を実現できなくなります。この期限は「除斥期間」とされるため、「時効」と違って「完成猶予」「更新」はなく、請求しても期間の進行を止めることはできない点に注意が必要です。
なお、調停や訴訟などの裁判手続きで権利が実現できる期限であるため、相手が話し合いに応じて任意に支払うなら、期限後でも財産分与は可能です。また、5年以内に申立てをすればよく、審理中に5年が経過しても問題ありません。
「期間経過後でも財産分与を請求できるケース」の解説

財産分与の請求期限である5年は、離婚が成立した日を起算点とします。離婚成立の日は、離婚の方法によって異なるため、正確な起算点を理解しておく必要があります。
協議離婚は、夫婦が話し合いで合意し、離婚届を出すことで成立します。この場合、離婚届の受理日が離婚成立日となります。離婚協議書の締結日や、離婚届に署名押印をした日ではないため注意してください。
調停離婚は、家庭裁判所の調停によって離婚する方法であり、調停成立日が離婚成立日となります。調停成立後に離婚届の提出が必要ですが、これは成立した離婚を戸籍に反映するためであり、届出日が基準となるわけではありません。
審判離婚は、「調停に代わる審判」によって離婚する方法であり、審判確定日が離婚成立日となります。審判に不服がある場合、2週間以内に即時抗告が可能であり、確定して初めて離婚が成立する点に注意してください。
裁判離婚は、離婚裁判(離婚訴訟)における判決で離婚する方法であり、判決確定日が離婚成立日となります。夫婦双方から2週間以内に控訴が可能なので、確定して初めて離婚が成立します。裁判上の和解で離婚した場合、和解成立日が離婚成立日となります。
「離婚までの流れ」の解説

財産分与の請求期限を過ぎると権利が消滅してしまうため、離婚後の請求を忘れないためにも、以下の対策を講じておくことが重要です。
以上の対策を講じて、離婚後の財産分与の請求権を守る必要があります。請求や調停が一人では難しいと感じるときは、早めに弁護士に相談しましょう。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

財産分与の請求期限である5年の間に調停や審判などで権利が確定した場合、10年間の消滅時効が適用されます。ただし、5年の除斥期間とは異なり、消滅時効は強制執行の手続きを行ったり、相手に一部を支払わせたりすることで進行を止めることが可能です。権利が確定しても油断せず、確実な回収に向けて対応を継続する必要があります。

次に、離婚後に財産分与を請求する方法について解説します。
具体的には、協議による請求、家庭裁判所での調停、調停不成立時の審判という3つの手続きを順に進めます。離婚と同時に取り決める場合とは手続きが異なるため、注意してください。
離婚後でも、元夫婦間の合意によって財産分与を取り決めることができます。
協議で解決できれば、裁判所の手続きを介さずに分与を受けられます。協議による分与は、裁判よりも時間や費用が少なくて済むメリットがある一方、感情的な対立があったりDVやモラハラの被害を受けていたりすると進まないデメリットがあります。
離婚後の財産分与でも、話し合いで合意したら、その内容は書面に残しましょう。離婚時なら離婚協議書ですが、離婚後は財産分与契約書や合意書といった書面にする例が多いです。公正証書にしておけば、約束通りに履行されなかったとき、裁判を経ずに強制執行手続きを行い、財産を差し押さえることが可能です。
「離婚協議書を公正証書にする方法」の解説

話し合いで合意できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。
離婚と同時に争う場合には離婚調停を利用しますが、離婚後の財産分与の請求では、財産分与請求調停という手続きを申し立てます。
調停では、調停委員が間に入って双方の意見を調整し、合意を目指します。当事者同士よりも冷静な話し合いが可能であり、協議が難航した場合も適正な分与が期待できます。財産分与請求調停の申立先は、元配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所が原則ですが、双方の合意があれば他の裁判所に申し立てることもできます。
必要書類や費用については、次の通りです。
【申立てに必要な書類】
【申立てに必要な費用】
なお、詳しくは「財産分与の調停」をご参照ください。
調停不成立の場合は審判に移行し、裁判官が証拠や双方の主張をもとに財産分与の決定を下します。離婚と同時に決める場合、調停が不成立だと訴訟提起するかどうかを検討するのに対し、離婚後の場合は、自動的に審判に移行する点が異なります。
審判による分与は、裁判官が適正であると判断したもので、相手の同意は不要です。審判の結果に不服がある場合、2週間以内に異議申立て(即時抗告)が可能です。

最後に、離婚後に財産分与を請求する際の注意点を解説します。
離婚後でも請求は可能ではあるものの、離婚前に請求しておくに越したことはありません。離婚前(特に同居中)の方が、対象となる財産の証拠が得やすく、相手が早期離婚を強く願っているほど交換条件として財産分与について譲歩を得やすいからです。一方で、離婚から長期間経過していると、相手が再婚していたり態度が硬化していたりして、協力を得づらいケースが多いです。
したがって、離婚後に請求することとなった場合は、離婚後の財産分与請求に特有の注意点を理解し、有利に立ち回らなければなりません。
離婚後に財産分与を請求する場合でも、そのときになって初めて証拠収集に着手したのでは、入手できない資料も少なくありません。請求が離婚後になるとしても、どのような財産があるかを明確にするため、証拠は早めに(できれば離婚前や同居中に)確保すべきです。
証拠がないと、相手から財産の存在そのものを否定され、適正な分与が難しくなります。特に、離婚後に預金を引き出したり名義を変えたり、不動産を売却したりなど、財産隠しや使い込みが生じるおそれのあるときは、早めに弁護士に相談して、調査を実施しなければなりません。
「相手の財産を調べる方法」の解説

財産分与の請求には5年の期限があり、これを過ぎると裁判所を通じた請求はできません。
この期限までに調停を申し立てる必要があるところ、実際には、調停前に元夫婦間で協議をしたり、証拠を準備したり、調停の申立書を作成したりといった時間もかかります。そのため、「5年の余裕がある」と甘く見ていると、交渉に時間がかかるなどして間に合わなかったり、気付かないうちに期限を過ぎてしまっていたりするおそれがあります。
請求される側では、できる限り対応を遅らせることで期限切れを狙う戦略もあり得ますし、財産資料の開示についても協力的ではないことも多いものです。したがって、期限の直前になって焦ることのないよう、十分な余裕をもって準備を進めるようにしてください。
離婚後の財産分与請求では、離婚前にも増して「財産の評価額」が争いになりやすいです。
実務では、対象財産の確定の基準時は「別居時」とされ、評価の基準時は「分与時」とされるのが原則です。離婚後の請求では、時間の経過によって財産の価値が大幅に変動することがあります。預貯金が増減し、住宅ローンや借金が返済され、不動産の価値が増減し、退職金が既に支払われるといったように、期間の経過によって財産状況は離婚時とは異なっていることが多いでしょう。
特に、不動産や株式など、市場変動の影響を受けやすい財産ほど、別居時より価値が上昇していると分与額が増え、分与する側に不利となります。このような基準時の決め方が、時間の経過によって不利に働く側の不公平感を招いた結果、離婚後は元配偶者が財産開示に協力せず、財産隠しをされるリスクが高まってしまいます。
争いを防ぐには、離婚時点の財産状況を記録し、証拠に残した上で、離婚した後になってしまっても速やかに財産分与を請求することが重要です。
「財産分与の基準時」の解説


今回は、離婚後の財産分与請求について解説しました。
離婚後であっても、財産分与を請求することが可能です。離婚時に財産分与について話し合わなかった場合や、後から財産が発覚した場合などは、請求を認めるのが公平だからです。
もっとも、財産分与の請求には離婚の時から5年という期限があり、これを過ぎると原則として請求できなくなります(2026年3月31日以前の離婚の場合は2年)。また、離婚から期間が経過した後で争う場合、共有財産の範囲や評価額、分与割合などをめぐって争いが激化することが多いため、証拠を早めに収集しておかなければなりません。
相手方との交渉がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判によって解決を図ることになります。有利な財産分与を実現するには、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
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