
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
財産分与は、原則として離婚後5年以内に請求しなければなりません。
しかし、5年経過後であっても財産分与を請求したいと考える人もいるでしょう。当事務所でも、次のような法律相談を受けることがあります。
相手が財産を隠していたケースでは、例外的に、5年経過した後でも財産分与の請求が認められるケースがあります。財産分与を不当に妨げたり、巧妙に隠したりといった分与する側の行為が悪質な場合、公平の観点から期限後でも請求を認めるべきです。また、財産分与とは別に、不法行為に基づく損害賠償請求が認められるケースもあります。
今回は、財産分与の期間制限の例外が認められるケースや、期限を過ぎた後でも取り得る法的手段について、弁護士が解説します。

財産分与は、離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚の場合は2年)という期限があります。
これは、財産分与について規定する民法768条2項但書で、「ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない」と定められています。
請求する側と請求される側の公平性を保つため、離婚成立から5年が経過すると、原則として財産分与を請求することができなくなります。期限が過ぎると請求権が消滅するため、その後は裁判所に調停や審判を申し立てても認められません。この期限は「時効」ではなく「除斥期間」とされるため、「完成猶予」「更新」などはなく、請求しても期間の進行は止められません。
ただし、全ての場合に、財産分与の期間制限が適用されるわけではなく、例外的に、5年経過後であっても請求が認められるケースもあります(「2年経過後でも財産分与を請求できる例外ケース」参照)。請求できる財産に気付いたら、できる限り早く弁護士に相談するのがおすすめです。
なお、2026年4月施行の民法改正により、財産分与の期限が2年から5年に延長されたため、離婚時点がこれより前か後かによって適用される法律が異なる点には注意が必要です。
「離婚後の財産分与請求」の解説


次に、期限後でも財産分与を請求できる例外的なケースを解説します。
離婚から5年というのは、家庭裁判所の調停・審判で財産分与を請求できる期限です。
したがって、5年を経過した後でも、相手に分与を請求し、話し合いをすることは可能です。相手が協議に応じた結果、元配偶者間で合意ができるなら、期限後でも財産分与を実現できます。一方で、分与をする側にとって「支払いたくない」という気持ちは当然で、話し合いに応じたり資料開示に協力的になってくれたりするとは限りません。
そのため、応じてもらいやすくするため、相手にもメリットを提示する必要があります。例えば、次のような提案が交渉材料として利用できます。
特に、子供を含めた関係性は、将来も長期間続くため、「子供のために」という働きかけには応じてもらえる可能性があります。
「協議離婚の進め方」の解説

当事者間で合意がある場合、離婚から5年経過後でも財産分与を請求できる可能性があります。
具体的には、早期離婚を優先させるために、離婚協議書で「財産分与については離婚後に話し合う」と約束したケースが該当します。ただし、前述の通り、財産分与の期限は「時効」ではなく「除斥期間」であり、経過すると自動的に権利が消滅するため、約束があっても相手が任意に応じてくれなければ強制することは難しいという性質があります。
口頭の約束も有効ではあるものの、証拠がないと「言った・言わない」の水掛け論となります。特に、期限後の請求では、相手が応じなければ実現が難しいため、元配偶者を説得するためにも書面での約束(離婚協議書や公正証書など)があった方がよいでしょう。
どうしても口約束しかできない場合にも、メールやLINEのやり取りを残したり、会話を録音したりする方法で記録を残しておいてください。
「離婚協議書の書き方」の解説

離婚から5年を過ぎても、相手が財産を不当に隠していたことが明らかになったときは、例外的にその後も財産分与を請求することができます。
財産隠しがあった場合、離婚時に適正な財産分与ができておらず、元配偶者の問題行為によって権利行使が不当に妨げられたことを意味します。そのため、期限を過ぎた後であっても、例外的に財産分与の請求が認められ、救済を受けられる可能性があります。悪質な財産隠しを許せば、「財産を隠したまま5年逃げ切った方が得である」といった公平感を損なう結果となりかねません。
例えば、財産隠しの具体例には、次のものがあります。
元配偶者が意図的に財産を隠していたケースは、話し合いで解決するのは難しいでしょう。裁判所に速やかに調停の申立てを行い、隠していた財産の分与を強く請求してください。
元配偶者が、暴力や脅迫によって財産分与を妨げた場合、離婚から5年を経過した後でも、例外的に救済を受けられる可能性があります。例えば、次のような不当な圧力を加えた場合、時効や除斥期間の主張をするのは信義に反すると考えられます。
これらの圧力の結果として、離婚時に財産分与を放棄していたとしても、その放棄の意思は、錯誤(民法95条)や詐欺・強迫(民法96条)によって取消し可能です。
除斥期間は、時効と違って中断することはなく、援用も不要であるのが原則ですが、裁判例でも、除斥期間の援用を必要とした上で、その援用が信義則に反すると判断したケースもあります(最高裁令和6年7月3日判決)。
「離婚時の財産分与の放棄」の解説

期限が経過し、財産分与の請求ができなくても、不法行為に基づく損害賠償請求が可能な場合もあります。この場合、他の法的根拠によって金銭を請求して救済を受けることができます。
悪質な財産隠しがあった場合、これによって財産分与請求権が侵害されたことを不法行為とし、民法709条に基づいて損害賠償請求が認められる可能性があります。裁判例においても、不法行為を理由とした損害賠償の請求を認めることで救済した事例(浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決)も存在しており、次のように判断されています。
…(略)…国債中金200万円分については夫婦の共有財産に属しており、したがって、離婚に際しては財産分与の協議対象とすべき財産であったことになる。しかるに原告は被告に対しそれを秘していたことから、被告は原告に対する共有持分権ないしは財産分与請求権の行使をする機会を失ってしまったことになる。そうすると、原告の右行為は、被告に対する共有持分権侵害の不法行為ということになる。
三 右認定の事実からすると、被告の反訴請求は、原告に対し金200万円の2分の1である100万円の支払を求める限度で正当ということになる。
同様に、相手の悪質な行為によって財産を把握できなかったり、財産について誤った認識をもったりした結果、財産分与請求権の放棄に同意してしまった場合や、脅されて財産分与の放棄を強要された場合にも、期限を過ぎた後でも救済される余地があります。
浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決
なお、不法行為の時効は、「損害および加害者を知った時から3年(生命・身体の侵害の場合は5年)」「不法行為の時から20年」とされるため、財産の所在を知らなかった場合は前者の時効期間は進行しませんが、こちらの期限も過ぎないよう注意してください。
「離婚時の財産分与」の解説


最後に、期限後の財産分与について弁護士に相談・依頼するメリットを解説します。
財産分与は5年の期限内に請求するのが原則であるため、これを超えて請求する場合、例外的な対応が必要となります。法的な主張を整理しなければならず、専門家のサポートは不可欠です。
当事務所では、離婚後であっても財産分与を請求したいという方からの相談を数多く受けています。その中には、相当期間が経過した後でも、財産分与の獲得に成功した事例もあります。当事務所には、家庭裁判所長を務めた経験豊富な弁護士が在籍しており、裁判実務を踏まえた戦略的な提案をすることができます。
弁護士に相談すれば、期限後であっても財産分与が認められるケースに該当するかを、裁判例や法律に基づいて見通しを立てることができます。財産隠しや脅迫、不当な圧力といったものについて、その悪質性の程度によって、裁判所で救済を受けられるかどうかが変わります。
本来は期限前に請求すべきであり、あくまで例外的な救済であるため、非常に困難な事案であると考え、弁護士のサポートを受けることを検討してください。
離婚から5年を経過しても、相手が交渉に応じてくれるなら財産分与を請求できます。
しかし、離婚後の元夫婦には大きな感情的な対立があったり、不貞行為やDVなどが離婚原因になっていたりして、当事者間での話し合いは困難なことが多いでしょう。弁護士が代理人として交渉することで互いの精神的な負担を和らげるとともに、少しでも有利に駆け引きを行い、期限後でも話し合いに応じてもらえるよう促すことができます。
離婚から5年を経過した後の請求でも、証拠の重要性に変わりはありません。
相手が財産を隠匿したり、不当な圧力を加えたりした場合、その証拠を集めておく必要があります。また、離婚から期間が経過しているほど、財産を特定するための証拠も集めにくくなります。特に、悪意をもって財産を巧妙に隠そうとする相手には、徹底した調査で対抗しなければなりません。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

今回は、離婚の時から5年という財産分与の期限の例外について解説しました。
財産分与は、離婚後5年以内に請求しなければ権利を失うのが原則ですが、例外的に、5年経過した後でも請求できる場合があります。元配偶者が財産を隠していた場合や、不当な圧力を受けて請求できなかった場合などは、期限後の請求を認めなければ公平に反するからです。
また、財産分与が期限経過によって認められなくても、不法行為に基づく損害賠償請求など、他の手段で救済を図ることができるケースもあります。したがって、5年を経過していても、あきらめるのは時期尚早であり、できる限り早く行動を起こすことが大切です。
裁判手続きで救済を受けられる可能性を高めるには、既に期限を過ぎていても、早いに越したことはありません。例外的な対応を要する複雑な事案こそ、弁護士に相談するのが適切です。