離婚・男女問題

配偶者(パートナー)の精神疾患を理由に離婚するときの注意点

2020年10月21日

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精神疾患を理由に離婚するときの注意点

ひとたびは夫婦として助け合って生きていこうと決断したとしても、その後、配偶者(パートナー)が精神疾患にかかってしまったとき、その気持ちが折れてしまうことがあります。それほどまでに、精神疾患とは大変なものであり、支え合って生きていくことが難しいことも少なくありません。

しかし、夫婦は助け合うべき義務を法律上負っているのであり、夫または妻どちらかの精神疾患を理由として離婚をしようと決断するとき、注意しておいてほしい重要なポイントがあります。

精神病には、統合失調症、うつ病、適応障害、自閉症、パニック障害、痴呆症など多種多様なものがあり、症状も様々です。また、その原因も、夫婦関係のDV、モラハラ、不倫などを理由とするものだけでなく、ブラック企業における長時間労働や親族の死など、夫婦間の問題以外のものが理由となっていることもあり、対処は困難をきわめます。

そこで今回は、配偶者(パートナー)が精神病にかかってしまい「もう続けていくのは無理かもしれない」と感じる方に向けて、精神疾患を理由に別居したり、離婚したりするときの注意点を弁護士が解説します。

「離婚・男女問題」弁護士解説まとめ

精神疾患を理由に離婚できる?

精神疾患を理由に離婚するときの注意点

同居生活中に突然思いもよらない行動を起こしたり、攻撃的になったり怒鳴ったり、感情的になって泣いたり、予想もしないような常識外の言動が目立つようになったとき、「配偶者(パートナー)が精神疾患にかかったのではないか」と疑うことがあります。

昨日まで全く兆候がなかったのに突如別居をされてしまったといった例でも、精神疾患を疑うことがあります。これらの夫または妻の異常と思われる言動は、精神疾患が原因となっている可能性があります。

しかし一方で、ひとたび夫婦として助け合って生きて行こうと決断した以上、生半可な理由で離婚をすることはできません。そこで、まず初めに「精神疾患を理由に離婚できるのか」という点について弁護士が解説します。

法定離婚原因とは

離婚に向けた流れは、離婚協議(話し合い)を経て、離婚調停、離婚訴訟へと至ります。この中で、離婚協議、離婚調停はあくまでも話し合いの手続きであり、相手が同意をしなければ離婚ができませんが、離婚訴訟では「法定離婚原因」があれば、相手方が離婚を拒絶していたとしても裁判によって離婚できます。

民法770条1項に定められた法定離婚原因は、次のとおりです。

法定離婚原因(民法770条1項)

  • 配偶者に不貞行為があったとき
  • 配偶者に悪意で遺棄されたとき
  • 配偶者の生死が3年以上明らかではないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他、婚姻を継続しがたい重大な事由

冒頭の例のように、夫婦のいずれかに、精神疾患を疑わせるような異常行動があり、これを理由として他方が離婚をしたいと考えるようなとき、離婚の同意がとれないことが予想されます。

この中で、精神疾患が疑われる状況で離婚を求めて生きたいと考えるとき、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」にあたるかどうかを検討することとなります。

裁判になれば離婚が認めてもらえるような「強度の精神病」の状況にあるのであれば、離婚の協議においても、相手方が「離婚することは仕方がない」とあきらめてくれやすくなります。逆に、裁判になっても離婚が認めてもらえないような軽度の精神病の場合には、離婚協議においても相手方が譲歩、妥協してくれる可能性が低くなります。

「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」とは

配偶者(パートナー)が精神疾患にかかってしまったことを理由として離婚をする場合に、離婚原因としては、上記の5つのうち「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」となります。

ただし、この要件について、裁判例ではかなり厳格に判断がなされています。精神疾患のように弱っているときこそ夫婦が助け合っていくべきであって、離婚をしてしまっては生活面、経済面の助けを得られなくなってしまいます。離婚をするほどの理由となるのは相当強度のものに限られる、と裁判所では考えられているのです。

このことを示す最高裁判例(最高裁昭和33年7月25日判決)は、「強度の精神病」の離婚原因について、次のように判断しています。

最高裁昭和33年7月25日判決

たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない。

なお、離婚訴訟で勝てるほど重度の精神病とは認められないようなケースであっても、別居期間が長期間になっているといった理由がある場合、法定離婚原因の5つ目「その他、婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると評価できる場合があります。

精神疾患で離婚が認められるケース

精神疾患にかかったとき離婚が認められるケースとは、精神病の程度が「強度」であり、かつ、回復の見込みがないことが必要です。このような精神疾患であれば、夫婦生活を続けていくことが難しく、民法770条1号に定める法定離婚原因に当たると考えられるからです。

精神疾患の程度が、この法定離婚原因の程度に至っているかどうかについては、次のような判断要素によって決まります。

医学的な判断

第一に重要視されるのが、医学的な判断です。つまり、主治医が「強度の精神病であり、回復が困難である」という診断をすることが重要な事情の1つとなり、離婚が認められやすくなります。

ただし、医学的な判断はあくまでも参考であり、最終的には、ここに紹介した様々な事情を総合考慮して、法定離婚原因にあたるかどうかが決まります。

夫婦関係の破綻の有無

第二に、その精神疾患が、夫婦関係を破綻させる程度のものであることが、法定離婚原因と認められるために必要です。

夫婦の精神的繋がりが残っており、協力して乗り越えていこうという気持ちがあるとき、精神病の程度がある程度強度であっても、法定離婚原因にはあたらないと判断されることがあります。

夫婦それぞれの意思

第三に、夫婦関係においては、夫婦それぞれの意思が重視されます。夫婦のいずれか片方でも(特に精神疾患にり患してしまった側)離婚を望まない場合には、法定離婚原因にあたらないと判断される可能性があります。

精神疾患にかかったとしても夫婦のいずれか一方でも、夫婦生活を継続する意思がある場合には、支え合ってやり直せる可能性があると判断されやすく、離婚が難しくなる傾向にあります。

従前の経過

精神病が強度であるかどうかについて、従前にどの程度精神病の症状が継続したかや、配偶者を含む家族が治療にどれほど協力したかといった経過も考慮要素となります。

これまで十分に世話をし、看病をして治療を継続してきたけれども、長期間にわたってどうしても回復せず、これ以上は限界だという段階に至って、初めて離婚が認められます。

離婚後の展望

精神疾患にかかってしまった上に離婚することとなり、その後の生活が立ち行かないようになってしまうおそれがあるような場合には、裁判所は離婚を認めないことが多いです。精神疾患になってしまい離婚するのはしかたないとしても、見捨てるのではなく、その後の生活基盤もしっかり計画して支えていかなければ、離婚裁判に勝つことは難しいといえます。

例えば、離婚後も一定金額の生活費を定期的に支払ったり、精神病の治療のための施設に入居させたり、実家に戻って生活を安定させたりといった手伝いをすることを提案することが、早期離婚を実現するために重要なポイントとなります

措置入院について

精神疾患にかかった人に対する法律制度に、「措置入院」というものがあります。措置入院は、精神保健福祉法29条に定められる精神障害者に対して入院を強制する行政(都道府県知事もしくは政令指定都市の市長)の制度です。措置入院となると、本人の意思にかかわらず、精神科に入院することとなります。

配偶者(パートナー)が精神疾患にかかった可能性が高いとき、その程度がかなり強度であると、措置入院の対象となることがあり、この場合には、医師の診断を受けさせることができます。

ただし、措置入院の対象となる精神疾患とは、その病状が自傷、他害のおそれが強い場合に限られています。そのため、配偶者(パートナー)が精神疾患にかかり、現に自殺をしようとしているとか、子どもに危害を加えようとしているといった現実的な危険がないと、この制度の適用を受けることはできません。

そのため、夫または妻の精神疾患に対して、措置入院の制度で対応することができるのは、例外的なケースに限られます。

精神疾患を理由に離婚するためのポイント

精神疾患を理由に離婚するときの注意点

精神疾患を理由に離婚をするハードルが相当高いことを理解していただいた上で、なお早期に離婚を求める方にとって、理解しておいていただきたい重要なポイントを解説していきます。

必要以上に刺激しない

夫または妻が精神疾患にかかってしまった場合でも、判断力には問題がなく、かつ、相手の同意が得られるのであれば、協議離婚することができます。

そのため、最初から必要以上に刺激してしまうことは避けた方がよいでしょう。特に、配偶者(パートナー)が自身の精神疾患について自覚がない場合には、あえて精神疾患のことについて指摘をすることなく離婚についての話し合いを進めた方が結果的にうまくいく場合もあります。

医師の診断を受けてもらう

精神疾患を理由とした夫婦の問題の解決のためには、まずは、精神疾患にり患してしまったことが疑われる配偶者(パートナー)に医師の診断を受けてもらうことが必要となります。ただし、措置入院の適用が例外的であることから、病院にいくことを強要することは難しいです。

精神疾患を理由として離婚を求めていく場合には、夫婦間が対立していることから、病院にいって医師の診断を受けさせることはかなりハードルが高いといえるでしょう。また、医師に精神疾患であると診断されたとしても、既に対立が明らかになった夫婦間でその情報が開示、共有される可能性は低いです。

その原因は夫婦間のストレスにある、と主張してくる可能性もあります。

そのため、離婚に向けた話し合いを進めていく場合には、精神疾患を疑わせるような以上な行動の証拠を収集し、医師の診断を受けるよう、可能な限り求め続けるということとなります。

医師の診断を拒否されたときの対応

精神疾患を疑わせる症状が出ているものの、相手が精神科や心療内科への受診を拒否した場合、どのように対応したらよいのでしょうか。特に、本人がその自覚がない場合「あなたが医者にいったほうがいい」などと強い反発を受けてしまうこともあります。

精神疾患といっても軽度のものであったり、夫婦関係がうまくいかない理由や離婚の原因となる理由が他にも存在する場合には、精神的に弱っている人は自分以外の他人のせいにしがちです。

また、このような場合に、無理にでも医師にみてもらえば必ずうまくいくかというと、そういうわけでもありません。軽度の精神疾患の場合、精神科や心療内科の医師によっては診断名をつけないこともありますし、経過観察として積極的な治療を行わない方針を示したりすることもあります。

そのため、精神疾患を理由に離婚を求めたい場合であっても、本人が医師の診断を拒否するときは無理強いすることなく、証拠収集を継続的に行うことがお勧めです。

離婚の条件面で譲歩する

配偶者(パートナー)の精神疾患を理由とした離婚の争いを、できる限り早期に解決するためには、離婚の条件面で譲歩をするということを検討してください。

例えば、離婚の条件面における譲歩とは、次のような離婚条件を提示して交渉をすることをいいます。

  • 本来であれば慰謝料請求の根拠が存在しなくても、一定の慰謝料を支払うことを提案する。
  • 本来であれば子どもの親権を獲得できる状況であるけれども、相手に親権があることを認める。
  • 共有財産の半分を超える財産分与を提案する。
  • 離婚後も、生活費として一定期間の定期給付を行うことを提案する。

特に、財産面における提案は、精神疾患にかかってしまった人の離婚後の生活を支えることになりますので、裁判において離婚を認めてもらいやすい事情としてはたらくことが期待できます。

ただ、精神疾患を理由として離婚を求めるケースでは、スピード解決を求めるほど、金銭的には相応の負担に応じなければならないおそれがあります。離婚をそれほど急いでいない場合には、一旦別居をして、腰を据えて離婚協議、離婚調停を進めていくという方法もあります。

妻側の精神疾患と子の親権

子どもの親権は、妻側(母親側)に有利とされています。特に、子どもが幼いうちは「母性優先の原則」が強くはたらき、裁判所においては母方を親権者と認められやすいのが現状です。

しかし一方で、妻側の強度の精神疾患や、これを原因とした家庭内暴力(DV)、子どもに対する危害、犯罪行為などがあった場合には、夫側に親権が認められる可能性も十分にあります。

配偶者(パートナー)の精神疾患に対する対応の注意点

配偶者(パートナー)が精神疾患にかかってしまったとき、離婚を進めるにしても、円満に復縁を目指す場合にも、対応には細心の注意が必要となります。

そこで、精神疾患と夫婦間の問題の絡みあう難しい問題に対処するにあたって理解しておいていただきたい注意点を解説します。

円満な復縁を目指すときはの対応は?

配偶者(パートナー)が精神疾患にかかってしまったけれども、今後も夫婦円満を目指すという場合には、一緒に精神疾患を乗り越えていく必要があります。このような場合には、病院にいって医師の診断を受け、治療をしていく努力を夫婦双方がしなければなりません。

夫婦円満を目指す場合に、相手の精神病を直接的に指摘しても、相手がその自覚がない場合には、さらに攻撃的になったり感情的になったりして、うまくいかないことがあります。特に、夫婦間のストレスやあなたの不倫、DV、モラハラなどが原因だと言われている場合には、不用意な行動は離婚を早めてしまうおそれがあります。

このような場合にお勧めなことは、「自分も心療内科、精神科を受診する」と伝えて、夫婦の双方がカウンセリングを受けるような形で提案をすることです。

夫婦間の精神的な問題について専門的に取り扱う専門家の中には、夫婦の双方に対してカウンセリングを行い、問題解決に導いてくれる方もいます。

相手が自分で離婚手続きできないときの対応は?

配偶者(パートナー)の精神疾患の程度によっては、自力では離婚手続きが進められないという場合があります。例えば、うつ病や統合失調症によって入院し、精神病があまりに酷くて寝たきりとなってしまっているようなケースです。

本来、離婚の意思表示は当事者のお気持ちが尊重されるべきものですから、たとえ成年後見人がついている場合でも成年後見人の同意は不要とされており(民法738条)、本人を相手にして離婚協議、離婚調停、離婚訴訟を行うことができます。

ただし、強度の精神病により、離婚の意味と効果すら理解することのできない状態である場合には、成年後見の申立てを行い、成年後見人を相手に離婚訴訟を起こすこととなります(人事訴訟法14条1項)。なお、夫婦間で、自分が成年後見人となってしまっている場合には、成年後見監督人が相手方となります(人事訴訟法14条2項)。

精神疾患の責任が自分にあるときの対応は?

配偶者(パートナー)の精神疾患の責任、原因が自分にあるような場合には、離婚は相当困難であると考えられます。例えば、不倫をしたことをきっかけに精神病にかかってしまったというようなケースです。このような場合、たとえその精神病が強度であり、回復が困難であったとしても、離婚は難しいです。

その理由は、まず、離婚理由について責任のある配偶者(有責配偶者)の離婚請求は、裁判上で認められづらい、離婚訴訟を起こしても請求棄却に終わってしまうことが多いことです。自分から離婚原因を作っておきながら離婚を積極的に求めるのは無責任だ、というわけです。

これに加えて更に、精神疾患が離婚原因となる場合に、十分な介護やお世話をして、それでも回復が難しく、夫婦生活をこれ以上続けてはいけない状態にあることが必要となりますが、不倫が原因にある場合にはこのような経過も難しい場合が多いでしょう。

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精神疾患を理由に離婚するときの注意点

今回は、配偶者(パートナー)に精神疾患を疑わせるような症状があるときのご夫婦間の問題について弁護士が解説しました。

精神疾患の疑いのある夫または妻と接するときには、通常の場合と比べても特に注意が必要です。まずは、なるべく相手を刺激せず、精神科の医師の診断や心療内科のカウンセリングを受ける方向で、治療を進めることが最善です。

ただし、片方が離婚を求めているような場合、医師の治療を受けるという最善の方法がとれないこともあります。夫婦間の問題がストレスの根源となっていることもあり、方針によっては対立が激化し思う通りには進まないことも予想されます。

配偶者(パートナー)の精神疾患を理由とした離婚問題をはじめ、夫婦間の問題でお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

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