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離婚時の財産分与をしない方法は?財産分与をしたくないとき拒否できる?

財産分与をする側から「財産を分けたくない」「できるだけ自分の資産を守りたい」という相談を受けることがあります。減額交渉するだけでなく、財産分与をしたくないからといって財産を隠そうとする人もいます。

相談者

少しでも財産分与を減らしたい

相談者

財産分与を拒否できないか……

このような考えを分与する側(例えば夫側)が持つとき、財産分与は拒否できるでしょうか。可能なら財産を渡したくない、請求には応じたくないという気持ちはもっともですが、財産分与は法律に定められた権利なので、低額に抑えたいなら事前準備が必要です。

今回は、離婚時の財産分与をしない方法、拒否できるケースや、財産分与をしたくないときの注意点について、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 財産分与は民法の定める権利なので、拒否するには正当な理由が必要
  • 財産隠しや浪費など、財産分与を避けるための不正はリスクを伴う
  • 財産分与したくないなら、分与額を抑えるため減額交渉を有利に進める

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

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財産分与をしたくないとき拒否できる?

まず、財産分与を拒否し、全く無しにするのは難しいです。

財産分与は、離婚時の夫婦の公平を保つために、法律で認められた権利です(民法768条)。そのため、一方的な拒否はできません。夫婦で築いた財産を適正に分配することを目的としているので、たとえ専業主婦(主夫)で収入がなくても、家事や育児の貢献を評価し、夫婦の「共有財産」を2分の1ずつ分けるのが原則です。

一方、財産を分け与える側の「できるだけ財産分与はしたくない」という気持ちも理解できます。財産分与を完全に無くすのは難しいですが、相手の請求が過大だったり、不当な要求だったりする場合は、減額交渉や拒否が可能なケースもあります。

例えば、以下のケースは、財産分与の額を抑えるために戦うべきです。

  • 財産分与の対象とならない財産を請求された場合
    結婚前の財産や、相続・贈与で取得した財産は「特有財産」であり、財産分与の対象外です。夫婦間で「何が特有財産か」という認識が異なると、争いになります。
  • 相手の請求額があまりに高額である場合
    財産分与の請求が、法律や裁判例などに照らして不当に高額なら、減額交渉をして争う余地があります。
  • 相手に財産分与の権利がないと主張できる場合
    相手が婚姻関係を破綻させた側(有責配偶者)で、財産分与を制限すべきほど悪質なケースや、婚姻期間が極端に短く、財産形成への貢献がほとんどないケースなど。

財産分与の話し合いが決裂したら、離婚前なら、離婚調停を申し立て、調停不成立のときは離婚裁判(離婚訴訟)を起こします。一方、離婚後なら、財産分与請求調停を申し立て、不成立のときは審判に移行します。裁判手続きでは、財産分与の対象財産や割合について証拠をもとに詳細に検討されるので、相手の請求が不当なら、減額や拒否も認められる可能性があります。

離婚時の財産分与」の解説

離婚時の財産分与をしない方法

次に、離婚時の財産分与をしない方法について解説します。

財産分与を完全に拒否することはできないものの、できるだけ支払額を減らす努力は可能です。財産分与をしたくないからといって、応じないで拒否するだけでは相手も納得しません。調停や裁判で争われれば一定の財産を渡さざるを得なくなります。したがって、法的にも認められる有効な方法で、できるだけ財産分与を減らす工夫をすべきです。

夫婦財産契約を結ぶ

夫婦財産契約とは、婚姻前に、夫婦間の財産関係を取り決めておく契約です。

夫婦財産契約では、婚姻中に生じた生活費の負担のほか、離婚時の財産分与について定める例が多く見られます。あらかじめ「財産分与をしない」と取り決めておけば、裁判所も家庭の事情に合った解決を認めてくれるので、離婚時の財産分与をしないことができます。

夫婦財産契約について、民法は次のように定めています。

民法755条(夫婦の財産関係)

夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

民法756条(夫婦財産契約の対抗要件)

夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない

民法(e-Gov法令検索)

ただし、夫婦財産契約は結婚前に作成しなければならず、一度結んだら、結婚後に変更や修正はできません。また、第三者や承継人に対抗するには、婚姻届の提出前に登記する必要があるなど、複雑な手続きとなります。

実務的には、婚前契約の一内容として、夫婦財産契約を交わす例が多いです。

婚前契約書」の解説

財産を隠す

財産分与をしたくない多くの人が考えるのが、財産を隠す方法です。

確かに、財産を相手に知られなければ、財産分与の対象から外すことができます。例えば、現金を「タンス預金」としたり、預金を親族名義の口座に移したりといった方法です。ただ、相手が財産開示請求を行うなどして隠した財産が発覚すると、以下のように大きなリスクがあります。

  • 調停委員や裁判官のイメージが悪くなる。
  • 隠した財産について不利な割合で分与されてしまう。
  • 相手から損害賠償を請求される。
  • 「他にも隠し財産があるのでは」と疑われ、協議が円滑に進まなくなる。

したがって、違法な手段で財産を隠すのはお勧めしません。任意の財産開示は拒否できても、弁護士会照会や調査嘱託、財産開示手続きなど、財産を突き止める手は多くあります。

相手の財産を調べる方法」の解説

財産の名義を変えておく

財産分与の対象は、原則として夫婦の共有財産です。この際、その財産の「名義」ではなく「実質」で判断されるので、共有名義のものだけでなく、夫や妻の個人名義の財産、子供名義の財産や、法人名義の資産なども含まれます。

ただ、自分の名義で持ち続けるよりは、例えば、不動産や株式を法人名義に変更しておくなどすれば、財産分与の対象外であると主張できる可能性は上がります。なお、法人名義の資産も、実質的に個人の財産と同視できるときは分与の対象となる点に注意してください。

個人と法人の財産をしっかりと区別し、「会社名義の財産は対象外である」と裁判所に認めてもらえれば、その財産については分与せずに済みます。

会社名義の資産は財産分与の対象?」「子供名義の預貯金の財産分与」の解説

財産を使ってしまう

「分与するくらいなら全部使ってしまおう」という方もいます。

離婚前に財産を使い切ってしまえば、財産分与するものがなくなります。個人的な趣味、事業投資に充当したり、生活を派手にしたりと、その方法は人によって様々です。

確かに相手に分け与える財産を少なくできる一方、自分の手元に残る財産も減ってしまいます。離婚直前の突発的な支払いは、「財産分与を逃れるための不当な浪費」と判断され、使った財産を差し引いて分与すべきと判断されるリスクもあるので注意が必要です。

また、激しい浪費や借金などは、それ自体が「法定離婚事由」となり、夫婦関係を破綻させたことについての責任を追及されるおそれもあります。

借金を理由とする離婚」の解説

特有財産の主張をする

財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が共同で築いた「共有財産」です。一方で、以下のような「特有財産」は財産分与の対象とはなりません。

  • 婚姻前に所有していた財産
  • 相続や贈与で得た財産
  • 個人の名義で管理していた預貯金

特有財産として認められれば、分与対象にならないので、財産分与をしない方法として有効です。ある財産が共有財産か特有財産か、区別がはっきりしないときは、特有財産であると主張する側が証明責任を負います。つまり、財産分与をしたくないなら、相手の求める財産が「特有財産であること」の証拠を揃えておく必要があります。

例えば、「婚姻前から所有していた」証拠として婚姻前の預金通帳、不動産登記簿など、「相続や贈与で得た」証拠として贈与契約書、遺言書、遺産分割協議書などが役立ちます。

共有財産」「特有財産」の解説

相手の財産を調査する

財産分与の対象には、あなたの財産だけでなく、相手の財産も含まれます。

あなたの方が収入や資産が多く、分与する側だったとしても、相手の財産を調査し、正確に把握しておくことが大切です。財産分与をしたくないとき、配偶者側にも一定の財産があることを主張できれば、それぞれ合計した上で折半することとなり、支払額を減らせます。

例えば、次のケースで、財産分与しないための有効な方法となります。

  • 相手が専業主婦(主夫)だがへそくりを貯めている
  • 妻のバイトの収入は家族のために貯金している
  • 投資で増やしていた
  • 給料の管理を相手に一任していた

借金の負担があることを主張する

財産分与の対象には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。

マイナスの財産とは、例えば住宅や車両のローン、教育ローンといった借金(負債)です。夫婦生活や子供のための借金は分与の対象であり、離婚後も夫婦で負担するのが基本です。また、オーバーローン(債務超過)の不動産は、財産分与の対象としないのが裁判実務です。

したがって、財産分与を少しでも減らしたいなら、借金も財産分与の対象とすることを忘れないよう主張してください。

有利な分与割合を主張する

財産分与の割合は「2分の1」が原則とされますが、裁判例でも、事情によっては例外的に、分与割合を調整しているケースもあります。例えば、以下の主張をすることで、分与割合を調整して、財産分与を減らすことができる可能性があります。

  • 財産形成に対する貢献度が高い
  • 相手の不貞行為や浪費が財産形成に悪影響を与えた
  • 特殊な能力や資格で財産を形成した(医師・芸能人・スポーツ選手など)

「2分の1に分けるのは公平でない」と裁判所を説得できれば、あなたにとって有利な分与割合を主張して、相手の請求する財産分与を拒否できます。財産分与は、夫婦の公平のためにあるので、貢献度に応じた分与割合を定めるべきだからです。

財産分与の割合」の解説

離婚時に「財産分与なし」と合意する

夫婦間で合意すれば、財産分与を行わないことも可能です。

離婚協議書に「財産分与をしない」と明記しておけば、財産分与をなしにすることができます。つまり、請求側に、あらかじめ財産分与を放棄してもらう方法です。全部を放棄させる場合のほか、ある財産についてのみ財産分与の対象から外す合意も可能です。

ただし、一方的に合意を強要すると無効になる可能性があります。まずは話し合いをして相手の理解を求め、お互いに納得できる条件を提示するのが重要なポイントです。例えば、財産分与の代わりに慰謝料や養育費を増額して譲歩を促す手があります。

離婚時の財産分与は放棄できる?」の解説

財産分与の期限を主張する

財産分与は、離婚から2年を経過すると請求できなくなります(民法768条2項但書)。この期間は「時効」ではなく「除斥期間」とされ、期間の経過によって自動的に権利が消滅します。

したがって、離婚後にしばらく経ってから財産分与を請求されたときは、この期限を主張することによって分与をなしにできないか検討してください。期限が既に経過しているなら、財産分与を拒否して構いません。また「期限まであと少し」というときにも、相手が調停や審判を申し立ててくるまでは放置しておくのも戦略の一つです。

離婚後の財産分与請求」の解説

離婚の責任を追及して譲歩を求める

相手の不貞行為やDVなどを理由で離婚に至った場合、その責任を追及することで財産分与を減額または無くすことができる可能性があります。具体的には、離婚時の慰謝料を請求することで財産分与と相殺するよう主張する方法が考えられます。

財産分与は、離婚原因によらず発生しますが、慰謝料をはじめとした他の離婚条件を交渉材料に使うことで、財産分与をしないよう求めることができます。相手が責任を感じ、後ろめたい気持ちになるなら、「財産分与は求めない」と譲歩してくれることもあります。

離婚に伴うお金の問題」の解説

「財産分与したくないから離婚しない」という選択肢もある

「財産分与したくないから離婚しない」というのも一つの選択肢です。

財産分与は離婚時にのみ発生するので、離婚しないなら夫婦関係は継続し、財産分与を求められることもありません。

相手の請求が不当に高額だったり不利な内容だったりするなら、一旦離婚は止め、冷静になるべきです。

あなたが離婚を拒否すると、相手は調停を申し立て、それでも解決しなければ裁判を提起しますが、裁判で離婚するには「法定離婚事由」(①不貞行為、②悪意の遺棄、③三年以上の生死不明、④強度の精神病、⑤婚姻を継続し難い重大な事由の5つ)が必要です。

相手がどうしても離婚しようと働きかけをしてくる場合は、「婚姻関係は破綻していない」と反論して争うこととなります。

相手が強く「離婚したい」と考え、早期の離婚を優先するなら、財産分与について一定の譲歩が提案される可能性もあります。また、「財産分与をしたくない」という「建前」だけでなく、「本音」で復縁を求めるなら、自身の改善点を伝えるなど、夫婦関係の修復を試みてもよいでしょう。

ただ、このような戦いは、あなたにとっても大きな精神的負担になるおそれがあります。婚姻期間が長引くほど共有財産が増え、離婚する際の分与額が更に多くなるなど、リスクを伴うことも覚悟しなければなりません。

したがって、あくまで駆け引きの一環であって、長期的に見れば、財産分与の交渉をうまく進めて離婚する方が望ましいです。

復縁したい人が理解すべき全知識」の解説

離婚時の財産分与を拒否する際の注意点

はてな

最後に、離婚時の財産分与を拒否する際の注意点について解説します。

違法な拒否はリスクがある

財産分与をしたくないからといって、一方的に拒否することにはリスクもあります。

財産分与を請求している人は、拒否されたからといって引くとは限りません。相手が家庭裁判所に調停を申し立てれば、最終的には裁判所の判断で、強制的に分与させられる可能性もあります(離婚前なら、調停不成立後は訴訟を提起し、離婚後なら、調停不成立後は審判に移行し、いずれにしても裁判所による判断を仰ぐ機会があります)。

したがって、理由もなく、ただ「したくない」「応じたくない」「貯金を渡したくない」といった身勝手な理由で無視したり放置したり、拒否したりするのは得策ではありません。

財産隠しや不正な手段は使わない

財産分与を避けるために財産を隠すことは、非常に大きなリスクを伴います。

財産分与を逃れるための不当な財産隠しであると判断されると、調停や訴訟で不利になります。隠した財産の分与が認められるのは当然、悪意があると判断されて慰謝料を追加されたり、調停委員や裁判官からの信頼が失われ、財産分与以外の主張でも不利に扱われるおそれがあります。

離婚時の夫婦の公平のために設けられた「財産分与」の制度を免れようとする人に対しては、裁判所も厳しい目で見る可能性が高いので、慎重に対応しなければなりません。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、離婚時の財産分与をしない方法、拒否する方法を解説しました。

できるだけ財産を渡したくないという気持ちは誰にでもあります。夫婦間の収入格差が大きい家庭や、一方の努力で財産が形成されたと考えている人にとって、財産分与をしたくないのは当然です。しかし、財産分与は法的な権利のため、ただ拒否するだけでは認められません。

財産分与で渡すものを少なくしたいなら、相手の請求に対して、法的に有効な反論を理解しなければなりなせん。法律や裁判例に照らして、相手の請求が過大であったり、不当な要求だったりするなら、正しく反論することで、不当な財産分与を回避することができます。

少しでも財産分与を減らしたいなら、弁護士のアドバイスを受けるのが有効です。当事者同士の話し合いで解決できないときは、ぜひ一度ご相談ください。

この解説のポイント
  • 財産分与は民法の定める権利なので、拒否するには正当な理由が必要
  • 財産隠しや浪費など、財産分与を避けるための不正はリスクを伴う
  • 財産分与したくないなら、分与額を抑えるため減額交渉を有利に進める

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参考解説

財産分与は、結婚期間中に形成された資産を整理し、公平に分割するための重要な手続きです。財産の評価方法や分割の割合などが争われると、法律知識に基づいた解決が必要となります。

トラブルを未然に防ぐために、以下の「財産分与」に関する詳しい解説を参考に対応してください。

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