離婚・男女問題

子ども名義の預貯金・学資保険は、財産分与の対象になりますか?

2021年6月22日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

離婚時の財産分与を考えるとき、「子ども名義の財産についてどのように分ければよいのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。

子ども名義の財産と一言でいっても、子どものために貯めた預貯金であったり、子どもがお小遣いやお年玉を貯めたものであったり、もしくは、夫婦のお金だけれど将来のために子ども名義にしてあったりなど、さまざまな種類があります。一方、学資保険のように「子どものために使う」という用途が明らかなものもあります。

そして、子ども名義の財産を「財産分与のときどう分けるか」、「夫婦のどちらがもらうことができるか」という点は、その財産の種類、性質や原資の内容、利用目的などの事情によってケースバイケースでの対応が必要であり、一律に解決することはできません。

今回の解説では、

  • 子ども名義の預貯金を財産分与で誰が取得できるか
  • 子ども名義の財産が財産分与の対象となるか
  • 学資保険は誰が取得することができるか

といった子どもと財産分与の双方が絡む難しい問題について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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子ども名義の財産と財産分与の問題

子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力してつくりあげた財産を、公平の観点から分配するための手続きです。財産分与の対象となる財産を「共有財産」といい、原則として、結婚から別居に至るまでに夫婦で協力してつくった財産が対象となります。

婚姻前から有していた財産、自己の名において取得した財産(贈与・相続など)は「特有財産」として分与の対象から外れますが、「子ども名義の財産がどちらにあたるのか」という相談を受けることがよくあります。

というのも、夫婦生活を続けていく中で、夫婦の財産を子ども名義としておくことがよくあるからです。将来は相続によって財産は子どもに承継されるわけですから、円満なうちは夫婦の同意のもとに将来のために子ども名義としている糧も多いです。

そのため「名目上は子どもの財産でも、実質は家庭の預貯金であり、実質は夫婦共有財産である」ということも多いです。このようなものについて財産分与の対象となることは当然です。

今回の解説の結論として、子ども名義の預貯金・学資保険などについて、その実質が夫婦の共有財産といえるかどうかによって判断します。名義による区別ではないということです。

そのため、名義が子ども名義でも実質は共有財産であれば財産分与の対象となりますし、名義も実質もともに子どものものである場合(お年玉・お小遣いなど)であれば、子どもに帰属する財産と判断され、夫婦の財産分与の対象からははずれることとなります。

参考解説

【種類別】財産分与で争いとなる子ども名義の財産の扱い

子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

「名義が子どもであっても実質が夫婦の共有財産であれば、財産分与の対象となる」と解説しました。逆に、実質的にも子どもの財産そのものであれば、夫婦の財産分与の対象とはなりません。

民法では次のとおり、夫婦の財産は共有財産と推定されることになっているので、「実質も子どもに帰属する財産だ」という主張をするのであれば、主張する側が立証責任を負うこととなります。

民法762条(夫婦間における財産の帰属)

1. 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2. 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

そこで次に、夫婦間で帰属が争いとなる子ども名義の財産にどのようなものがあるかについて、その種類ごとに取扱いを解説します。なお、子ども名義の財産についても、隠し財産やへそくりとなってしまわないよう事前の調査が重要です。

参考解説

子どもが自分で稼いだお金

子ども名義の財産のうち、子どもが自分で稼いだお金は子ども固有の財産とされます。つまり、夫婦の共有財産ではなく、財産分与の対象とはなりません。

例えば、子どもがアルバイトで稼いだお金がこれにあたります。

子どもに自由な処分を許して贈与されたお金

子どもに自由な処分を許して贈与されたお金は、子どもの固有の財産となり、夫婦の財産分与の対象とはなりません。このことは、その原資が夫婦の財産から出されていたとしても同様です。

このようなお金には、例えば次のようなものがあります。

  • お年玉
  • お小遣い
  • 入学祝い・進級祝い

とはいえ、お年玉や入学祝いが多額になり、子どもが幼いといった場合には、現実的にはその管理は夫婦で行っており、離婚後は親権者に委ねられることが多いです。

既にかなり前にもらって子ども名義の預貯金口座に入れていて、その内訳が不明な場合には、「正月に預け入れた」、「入学のタイミングで大きな入金があった」というように時期を明らかにして説明するようにしてください。

子どもに対して贈与されたお金でも、実質的には夫婦に対する贈与と評価できる場合には、夫婦の共有財産とされることがあります。このような判断は、贈与の金額、贈与の時期、子どもの年齢、用途などの事情を総合考慮して判断すべきです。

例えば、親せきから祝い金の贈与を受けたが、子どもの年齢に比して高額であるといったケースでは、子どもに対する贈与というよりも今後の育児や教育に宛てるために夫婦に贈与されたものと考えるべきです。

子どものために使うことを夫婦が合意した財産

子ども名義の預貯金が実質は夫婦の共有財産であったとしても、夫婦がともにそのお金を子どものために使うことに争いがない場合には財産分与の対象とはしないこともできます。

離婚するとしても親子関係はなくなりませんから、親権者とならない親の側でも子どもに愛情が残っていれば、このような解決策がとられることも実務上は多くあります。

この場合、財産分与の対象としないときには、子ども固有の財産として子どもが取得します(実際は、離婚後の親権者が管理することもあります)。

出産祝い金

出産祝いは、出産に際して子どもに対して贈与されることが多いですが、実際には育児に充てるお金として夫婦に贈与されたものと考えられます。

そのため、出産祝いを使わずに子どもの名義の預貯金口座に貯めていたとき、夫婦の共有財産として財産分与の対象とすることが原則です。

なお、出産・育児には相当なお金がかかるため、子どもが幼いうちに離婚してしまうといったケースでは、夫婦の合意のもと、出産祝い金は子ども固有の財産として、離婚後の親権者が管理するという解決がとられることが多いです。

公的な給付(出産一時金・児童手当・補助金など)

出産一時金、児童手当その他の補助金といった公的な給付が、子ども名義の預貯金口座に貯められることがあります。このようなお金もまた、子どもの養育・教育に充てるためのお金と考えられるため、夫婦の共有財産として分与することが多いです。

なお、離婚後に受領できる児童手当などの公的な給付については、受取人変更手続きを行い、実際に子どもを養育する側の親が受け取るようにします。

毎月定期・賞与時の入金などの家庭の余剰金

子どもの預貯金に、毎月定期的に一定額の入金がある場合や、一方配偶者の賞与時にまとまった入金があるといった場合には、その実質は、家庭の余剰金が貯金されているものと考えられます。

このような場合、預貯金口座の名義は子どもであっても、実質は夫婦の共有財産であり、分与の対象とすべきです。

内訳不明の預貯金の扱いは?

子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

子ども名義の財産や預貯金でも、子ども固有の財産となる場合(財産分与の対象外)もあれば、夫婦共有の財産となる場合(財産分与の対象)もあり、事案に応じた対応が必要であることを解説しました。

長期の婚姻期間がある夫婦からよくあるご相談が「子ども名義の預貯金口座の中にさまざまな種類の入金があり、内訳が不明なためどのように分けてよいかわからない」というものです。「お年玉口座」、「貯蓄口座」と明確に区分されていればよいですが、多くの夫婦は、子ども名義の1つの預貯金口座にいろいろなお金を貯めているためです。

長年貯めてきた子ども名義の預貯金の内訳が判別不能なとき、夫婦間の話し合いで解決できない場合には、証拠によって証明する必要があります。

特に、財産分与について離婚調停(離婚時の財産分与)、財産分与請求調停(離婚後の財産分与)などで争う場合、裁判所は特に証拠を重視します。次のような点に意識して、証拠収集をするようにしてください。

  • 入金された時期
    (例えば、お年玉と主張するのであれば「年始に入金があった」など
  • 入金の金額
  • 入金した者
  • 金銭の使用用途、使用目的

この証明については、前章で解説したとおり原則として「共有財産」であるという推定を受けるため、「子どもの固有の財産である」と主張したい側が証明を行うこととなります。

重要な証拠として、まずは金融機関の取引履歴を取り寄せて検討することからはじめてください。金融機関の取引履歴を検討するにあたり、次の2点の注意点があります。

  • 金融機関により、取引履歴の保存期間は10年程度とされていることが多いため、早めに着手してください。
  • 現金預け入れなどで、預入をした人や名目が通帳などではわからないとき、通帳に書き込んでおくなどの工夫が重要です。

参考解説

財産分与における学資保険の扱い

子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

子どもの名義の財産の中でも、学資保険は特殊性があります。学資保険は、預貯金と同様の「お金を貯める」という機能だけでなく、「保険」という機能があるからです。

つまり、学資保険の場合には、離婚時に解約して分けてしまうのではなく、子どものために保険料支払いを継続しておいたほうが有益な場合も多く、この点を考慮した解決が希望されます。

そのため、学資保険の財産分与における扱いでは、次の3つのいずれかの方法が選択されることが実務では多いです。

  • 離婚時に解約し、解約返戻金を財産分与の対象とする方法
  • 学資保険の契約を変更し、離婚後の親権者に引き継がせる方法
  • 学資保険を子ども固有の財産とし、子どもに取得させる方法

財産分与の対象とする場合の分け方

学資保険を財産分与の対象とするときには、その財産価値を折半するようにします。具体的には、財産分与の基準時(別居時が原則)に解約したとき生じる解約返戻金を折半するという方法をとります。

ただし、学資保険を存続させたほうが将来戻ってくるお金が多くなる場合も多いです。

そのため、学資保険については親権者が引き続き保険料を支払い、「(財産分与の基準時に)解約したとしたら生じる解約返戻金」の半額を相手に支払う、という分与の方法をとることがあります。

学資保険を親権者が引き継ぐときの注意点

以上のとおり、学資保険は「子どもの学費」という用途が明確で、かつ、存続する方が有利なことが多いため、離婚後は親権者に引き継ぐという解決策がよくとられます。

また、子ども固有の財産として財産分与の対象外とするときでも、子どもが幼いときは、事実上は離婚後の親権者が管理します。

このように学資保険を親権者が引き継ぐときには、将来の不安を絶つため、次の3点に注意が必要です。

  • 学資保険を取得した分について財産分与で調整を主張される可能性がある
    :学資保険は、財産分与において、財産分与の基準時において生じるはずの解約返戻金程度の価値があります。そのため、財産分与について争いがあるケースでは、学資保険はやむを得ず親権者が取得するとしても、「その分の預貯金を渡す」などの調整を主張される可能性があります。
  • 学資保険の保険料の負担者について
    :学資保険を親権者が取得しても、非親権者が子どもへの愛情を示すことを名目に保険料の負担者であり続けることがあります。しかし、このような場合に、夫婦間の愛情が消えることによって、将来保険料が支払われなくなってしまうリスクがあります。
  • 学資保険の保険料の受取人変更について
    :学資保険の財産分与をするにあたり、離婚時に学資保険の受取人を変更することが多いです。ただし、受取人変更には相手の同意が必要となるため、話し合いで協力が得られない場合には、離婚調停や離婚訴訟などの手続きの中で争うこととなります。

子ども名義の財産に関する裁判例

子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

最後に、子ども名義の財産について判断した裁判例について解説します。

裁判例では、子ども固有の財産とした事例(財産分与の対象外とした事例)、夫婦の共有財産とした事例(財産分与の対象とした事例)のいずれもが存在するため、それぞれ紹介します。

いずれの裁判例も個別ケースへの解決策であり、類似の事例でも同じ結論となるわけではないものの、裁判例でどのような事情を重視されたかを知ることが、あなたのケースの解決策にもつながります。

子ども固有の財産とした裁判例

東京地裁平成16年3月18日判決

この裁判例では、次のように判示して、子ども名義の預貯金について、離婚後の親権者となるものが管理していることなどをを理由として、財産分与の対象とはならないと判断しました。

なお、この裁判例では子どもがダウン症という障害を持っていることが考慮されています。

東京地裁平成16年3月18日判決

子供達の名義の預貯金については、これを一時,本件不動産の返済資金に使用したことがあるなど、実質的には原告と被告との管理のもとにある預貯金ということができるが、子供達の預貯金など、その一部については、その本件不動産のローンの返済資金として使用され、また,平成14年12月など,本件離婚にかかる調停が起こされた後に組まれたものがあることが認められる。
…(略)…以上からすれば、預貯金については、子供名義のものも含めて、原告と被告の収入から形成されてきていることが認められ、現時点では,原告名義と子供名義の預貯金は原告の管理に、被告名義の貯金は被告の管理のもとにあるから、これらは特に分与しないこととするのが相当である。(なお、Cの名義の預貯金については、特に額が大きいが、同人がダウン症であることを考え、そのままにしておくのが相当である。)

高松高裁平成9年3月27日判決

この裁判例では次のように判示して、子ども名義の預貯金については子どもへの贈与の趣旨であると判断し、財産分与の対象財産ではないとの判断をしました。

高松高裁平成9年3月27日判決

控訴人は、右認定の財産のほか、長女名義の預金243万3546円及び三女名義の預金137万3991円も、財産分与の対象に含めるべきであると主張するが、いずれも子に対する贈与の趣旨で預金されたと認めるのが相当であるから、財産分与の対象財産とならない。

また、財産分与の中で婚姻費用が清算される場合はあるものの、夫婦が円満であったときに負担した分については清算すべきではないと判断しました。

夫婦の共有財産とした裁判例

東京地裁平成16年1月28日

この裁判例は次のように判示して、子ども名義の預貯金について、子どもが財産を管理できる年齢ではなく、財産の用途も限定されていなかったなどの理由から、夫婦の共有財産として財産分与の対象となるものと判断しました。

東京地裁平成16年1月28日

被告は、番号17の学資保険が被告の特有財産である旨主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はなく,清算の対象とするべきである。
原告X2は、子供名義の…(略)…預金が子供の特有財産であり清算の対象ではないと主張する。原告らの最年長の長女も現在10歳であり、上記の預金を自ら管理できる状態にないことは明らかである。このような年齢の子供の名義の預金については、用途を限定して他人から譲り受けたような金銭であればともかく、お年玉等の蓄積や、原告X2及び被告夫婦が将来のため子供名義で預金をしたとした場合には、実質的に夫婦の共有の財産とみるのが相当である。したがって、…(略)…預貯金全部が清算の対象となる。

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子ども名義の財産(預貯金・学資保険)と財産分与

財産分与を検討するとき、夫婦それぞれの名義以外に、子ども名義の財産が存在することは多いです。しかし、財産の名義が子どもであっても、実質は家庭の余剰金を貯蓄していたにすぎないようなとき、その名義によらず財産分与の対象となる可能性があります。

財産分与の対象となる財産は「夫婦が協力して形成したかどうか」という公平の観点で決めるべきものであって、財産の名義によって決まるのではありません。

財産分与は、財産の額が多ければ多いほど高額となります。特に夫婦間に子どもがいるときには、将来の養育への不安から、財産分与の金額は大きな争いの種となります。夫側(父親側)・妻側(母親側)のいずれでも、親権を得る側であるかどうかにかかわらず、「子ども名義財産の分与」についての知識を理解しておくことが有益です。

離婚時の財産分与にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

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