借金を理由に離婚できる?離婚時の借金の取扱いと注意点5つ

「夫が借金をして遊び歩いていて困っている。」、「妻が、家族カードでローンを組んでブランド品に浪費している。」など、度を越した借金は、離婚を検討せざるを得ない大きな理由となります。

しかし、借金を理由に離婚ができるのでしょうか。結論から申し上げると、借金の金額、理由などによって、離婚の理由にできる場合、できない場合があります。

また、夫婦である間に行った借金について、借金の理由によっては、離婚時に、借金の名義人以外の配偶者もまた、一定の負担を負う可能性があります。

そこで今回は、相手の借金を原因として離婚を検討するとき、離婚時の借金の取扱いなど、注意点を弁護士が解説します。

1. 借金を理由に離婚できる?

そもそも、配偶者(夫または妻)の借金を理由として、離婚することができるのでしょうか。例えば、夫婦になった後、家を買うために住宅ローンを組む場合をイメージしていただければわかるとおり、借金の理由によっては、離婚理由とはならない場合もります。

「借金」とは、後ほど返済する約束をしてお金を借りることです。法律の専門用語で「金銭消費貸借契約」といいます。

住宅ローン、車のローンなども借金ですし、それ以外に、奨学金、銀行融資、経営する事業上の借金(個人事業主の事業資金、会社代表者の連帯保証債務)、クレジットローン、サラ金、闇金、親族・知人からの借金など、一口に「借金」といっても様々な種類があります。

そこで、どのような借金であるかによって、離婚理由となるのかどうかを、弁護士が解説します。

1.1. 結婚前の借金を隠していた場合

結婚前に多額の借金を負っていたけれども、結婚時にはこれを隠していたという場合に、借金が離婚理由となる場合があります。

奨学金や車のローンなど、一般的に利用されることの多い借金であればともかくも、金額があまりに多額な場合など、「借金を知っていれば、結婚しなかった。」という可能性が高いからです。

借金とともに、ギャンブル依存症、アルコール依存症、浪費癖、ホスト通い、キャバクラ通い、風俗通いなど、ギャンブルの原因となった別の事情も明らかになることがあります。

1.2. 結婚後の借金

結婚後の借金であっても、家族には隠れてお金を借りていたケースも少なくありません。この場合にも、借金が離婚の原因となります。

特に、借金をしている一方で、家庭には生活費をあまり入れていなかったという場合、「経済的虐待」という問題にもなります。

1.3. 借金が判明したら確認しておくこと

以上の通り、借金は、離婚原因ともなりうる重大な事情であり、たとえ夫婦間であっても、ひた隠しにされていることも多いものです。

しかし、借金が判明したことにより、「離婚もやむなし」と考えて今後の対策を検討するのであれば、借金に関する次のことを、配偶者に確認しなければなりません。

  • 借金の理由
  • 借金の金額(元金・利息)
  • 借金の返済期限
  • 借金の常習性(頻度・回数)
  • 借金の借入先
  • 借金の担保として提供した財産(抵当権、連帯保証人など)

借金が突発的なものであって、やむを得ない理由があるのであれば、夫婦で協力して返済し、今後の計画を立て直すことも可能です。

しかし、借金の理由がギャンブルや風俗通い、不倫などの個人的な事情であって、常習的に借金を繰り返しており、既に自宅を担保に入れてしまっていた、といったケースでは、離婚を考えて動かざるを得ない場合もあります。

2. 借金を理由に離婚する方法は?

夫婦が離婚する方法には、大きく分けて、次の3種類の方法があります。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
  • 裁判離婚

協議離婚は、夫婦が話し合い(協議)を行い、その結果、合意によって離婚する方法のことです。協議離婚の場合、話し合いが合意に達するなら、離婚理由はどのようなものでも構いませんから、借金も当然、離婚理由となります。

調停離婚は、家庭裁判所で行われる、調停委員をまじえた話し合いによって離婚する方法です。調停離婚の場合も、協議離婚と同様、調停による話し合いで合意できる限り、離婚理由に制限はありません。

裁判離婚は、協議離婚、調停離婚によっても、配偶者(夫または妻)が離婚に応じてくれないときに提起する、強制的に離婚するための方法です。強制的に離婚できる理由は「法定離婚原因」として民法に限定的に定められており、借金がこれにあたるかが問題となります。

3. 借金を理由とした離婚に、相手が応じない場合は?

さきほど解説した離婚の3つの方法(協議、調停、裁判)のうち、相手が、離婚に応じてくれなく場合には、裁判離婚による方法しか残されていません。つまり、離婚訴訟を起こすということです。

離婚訴訟では、勝訴すれば、裁判官が強制的な離婚を認めてくれますが、そのためには、次の「法定離婚原因」が必要とされています。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

つまり、相手が離婚を拒絶しているとき、強制的に離婚できるのは、不貞行為、悪意の遺棄、生死不明、強度の精神病、その他婚姻を継続し難い重大な事由の5つのいずれかにあたる必要があります。

夫婦生活を破壊しかねないほどの常識はずれの借金は、「悪意の遺棄」にあたる可能性があります。「悪意の遺棄」とは、夫婦としての同居義務、相互扶助義務などを果たさない生活態度のことをいい、ギャンブルやブランド品に浪費して借金を繰り返し、生活費を払わないような借金のケースでは、これにあたります。

合わせて、借金が「悪意の遺棄」にあたらないとしても「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があります。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、家庭内暴力(DV)、モラハラなど、1~4項にあてはまらないものの、同程度に重大な事実のことをいい、借金があまりにもひどい場合には、これにあたります。

借金の理由が、ギャンブル、ブランド品、風俗店通いなど、自分の利益や楽しみのためであれば、相手が離婚に反対していても、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、離婚できる可能性が高いです。

4. 離婚しても、相手の借金を返さなければならない?

夫婦として生活を共にしていた場合、配偶者(夫または妻)が、離婚後も借金を返済しなければならないのではないか、という法律相談があります。

実際、夫婦で増加させた財産について、離婚時に清算をする「財産分与」という考え方があるのと同様に、場合によっては、夫婦である期間中に行った借金について、たとえ借金を理由として離婚したとしても負担しなければならないことがあります。

借金は、返す約束をした当事者が返済するのが当然ですが、次の場合には、例えば「夫が借りた借金を、別れた妻が返さなければならない」といった事態が発生する可能性があります。そこで次に、離婚した際の借金の取扱いを、弁護士が解説します。

4.1. 日常家事債務の場合

「日常家事債務」とは、夫婦の日常生活のために夫婦の一方が負う債権債務関係のことをいいます。日常家事債務については、夫婦が連帯して責任を負うこととされています。

これは、夫婦という密接な関係にある者が、日常生活に関する、一般的には少額の債務について、「夫または妻のいずれが責任を負うのか」を都度確認することが煩雑であるためです。

日常家事債務の例には、食費、家賃、光熱費などがあげられます。借金の理由や金額によっては、その借金が日常家事債務として、夫婦が連帯して返済義務を負うべき場合もあります。

4.2. 夫婦生活のための借入の場合

夫婦生活のために借金をした場合には、その借金について、離婚時の財産分与の対象となる場合があります。財産分与とは、夫婦の財産を離婚時に清算する考え方ですが、このとき分ける「財産」は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。

例えば、夫婦生活を継続するために行った、住宅購入資金、自動車ローン、教育資金、結婚式資金、生活費などを目的とした借入は、夫婦生活のための借入であるといってよいでしょう。

プラスの財産(預貯金、現金、不動産など)があれば、財産分与の際に、そこからマイナスの財産(借金)を控除するのみで済みますが、借金をしている場合、プラスの財産も存在しないことが想定され、その場合には、マイナス部分の負担を分け合うこととなります。

これに対して、私的な浪費目的で借り入れた借金は、当然ながら、財産分与の対象にはなりません。

4.3. 子が借金を相続する場合

離婚をすれば、夫婦の関係はなくなり、「赤の他人」となりますが、親子関係はなくなりません。離婚をし、親権を得なかった元配偶者も、「親」ではあり続けるのです。

そのため、夫婦の一方が多額の借金をし、これを原因として離婚に至ったとしても、その後に、借金をした人がお亡くなりになった場合に、子が親の借金を相続する可能性があります。

また、どれほどうまくいっていない夫婦であっても、婚姻期間中に一報がお亡くなりになった場合には、他方の配偶者は、借金を相続することとなります。

配偶者もしくは親の借金を相続してしまう可能性がある場合には、家庭裁判所に相続放棄の手続を行うことで、相続人ではなくなることができます。この相続放棄の申述手続は、相続開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。

4.4. 自分名義で勝手にされた借金

離婚をするとき、自分の名義で勝手に借金をされていたことが判明した、というケースがあります。

さきほど、日常家事債務の解説をした通り、夫婦である時期には、夫婦の財産の境界が不明確であったり、実印の管理が雑であったりして、夫婦の一方が、他方の名義を利用して借金をすることは、容易に可能な家庭も少なくないためです。

夫婦の一方が、他方の名義を勝手に利用したとき、その借金の貸し手の保護として「表見代理」が成立する場合があります。

「表見代理」は、有効な代理権を与えたり、追認したりしたわけではなく、その借金を負担するわけではないのが原則であるものの、外観を信じた人を保護するために、例外的に、有効に代理権を与えたのと同じ効果を生む制度のことです。

したがって、勝手に名義を利用されて借金をされてしまったとしても、そのような外観を作出することに、自分にも責任があるという場合には、離婚した後もその借金を返済し続けなければならないおそれがあります。

4.5. 連帯保証人になっている場合

配偶者の片方の借金について、他方が、連帯保証人となっている場合にも、離婚によって借金の負担から逃れることはできません。

さきほどの例と同様に、名義を勝手に利用されて、連帯保証人にされてしまっているケースもあります。

連帯保証人の地位は、債務者と同等以上の重い責任です。夫婦間で、連帯保証人になる場合には、将来に離婚する可能性も見据えて、慎重な判断が必要となります。

4.6. 住宅ローンの取扱い

以上の通常の借金と比べて、夫婦の離婚の際に、特に問題となるのが、持ち家の住宅ローンの取扱いです。

住宅ローンについて共同で債務者となっていたり、一方が他方の連帯保証人となっていたりするケースでは、たとえ離婚したとしても、夫婦が共に、住宅ローンを返済していく義務を負います。

金融機関と交渉して、離婚を理由として住宅ローンの債務者の変更、連帯保証契約の解除をするケースもありますが、相手方配偶者に十分な資力と信用がない限り、交渉は困難を極めます。

夫婦に十分な預貯金がなかったり、財産分与の際に分ける財産の大半が住宅で、かつ、住宅ローンを支払う債務者ではない方が自宅に住み続けることを希望する場合などには、特に問題が複雑化します。

この点について、明確な法的ルールはなく、最終的には協議離婚、調停離婚の際の話し合いで決めることとなりますが、よくある解決方法は、例えば次の通りです。

  • 自宅を売却して住宅ローンを返済し、残余財産を分配する
  • 自宅に居住し続ける人が、住宅ローンを組み換えて一旦清算する
  • 自宅に居住し続ける人が、相手方支払分の住宅ローンも支払い続ける
  • 自宅に居住しない人が、財産分与・慰謝料分として、離婚後も住宅ローンを負担し続ける

どのような方法が、解決に適しているかは、夫婦の状況、夫婦共有の財産、夫婦各自の固有財産の金額、ローンの借り換えが可能な程度の収入があるか、代替の連帯保証人が準備できるかといった事情によって異なる判断が必要です。

5. 相手方配偶者が自己破産してしまったら?

相手方配偶者(夫または妻)が多額の借金を返しきれずに自己破産してしまったとしても、それだけで離婚原因となるわけではありません。借金問題を解決する方法には、大きく分けて次の3つがあります。

  • 任意整理
    :裁判所を利用せず、借金の減額と分割支払を交渉する方法
  • 個人再生
    :裁判所の再生手続を利用して、減額した借金の残額を分割で支払う制度
  • 自己破産
    :裁判所の破産手続を利用して、今ある財産で支払いきれる借金を払い、残額を免責してもらう制度

ここまで解説した通り、自己破産の原因となった借金の理由や程度が重要なポイントとなります。

一方で、心配なのは、自己破産した夫または妻と離婚した人にとって、「慰謝料、養育費などの金銭が支払われるのだろうか。」という点ではないでしょうか。

破産をすると、通常の債権は、破産によって免責されます(支払わなくてもよくなります。)。しかし、「非免責債権」については、自己破産をしても、支払義務はなくなりません。そして、離婚に関わる次の債権は、非免責債権とされています(破産法238条)。

  • 養育費(破産法238条1項4号)
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(慰謝料など)

借金がかさんで自己破産に至ったとき、養育費については支払い続けてもらうことができ、不貞の慰謝料などは、相手方の悪意の程度によっては、依然支払ってもらうことができるわけです。

6. まとめ

今回は、借金を理由に離婚を考える方に向けて、借金が離婚理由になるのかどうか、また、借金を原因として離婚するための方法や注意点について、弁護士が解説しました。

借金は、直接的に、民法上の離婚原因にはなっていませんが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として、離婚原因になる可能性があります。離婚後は、借金に関わりたくないのであれば、借金の理由や金額などを正確に把握しておくことがお勧めです。

何度も借金を続けるなど、経済的理由によって離婚をお考えの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

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