離婚・男女問題

借金を理由に離婚できる?離婚するときの借金の取扱いと注意点

2021年6月24日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

借金で離婚できる?

「夫が借金をして遊び歩いていて困っている」、「妻が家族カードのローンでブランド品に浪費している」といったご相談があります。度を越した借金は離婚を検討せざるを得ない大きな理由となります。

結論から申し上げると、借金は、法律上も離婚を認める理由になり得ます。ただし、借金の金額や理由によっては例外もあるため、離婚できるかどうかを慎重に検討しなければなりません。

借金で離婚を考えるようになったとき、もう1つ注意しておいてほしいことは、夫婦の片方の行った借金について、他方の配偶者が責任を負ってしまうことがあるという点です。この点は借金などの負債が財産分与の対象となることとも関係してきます。

今回の解説では、

  • 借金を理由に離婚する方法
  • 離婚時の借金の取り扱いについて不利にならない方法
  • 相手が借金を理由とした離婚に応じないときの対応

といった借金と離婚の問題について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

借金を理由に離婚できる?

借金で離婚できる?

そもそも配偶者(夫または妻)の借金を理由に離婚ができるのでしょうか。

借金とは、返済する約束をしてお金を借りることです。

住宅ローン、自動車ローンなども借金であることからもわかるとおり、借金の理由や種類によっては到底離婚原因とはなりません。これ以外にも、奨学金や銀行融資、経営する会社の借金(個人事業主の場合、事業資金の借入、会社代表者の場合には会社債務の連帯保証)なども、常識の範囲内であれば問題のない借金といえます。

一方で、クレジットローン、サラ金や闇金なども借金の一種です。これらの借金が多額であったり、何回も繰り返されていたりすると、離婚を検討する方が多いことでしょう。

そこで初めに、借金が離婚理由として問題になるケースに応じて、適切な対応を解説していきます。

結婚前の借金を隠していた場合

「結婚前に多額の借金を負っていたが、結婚するときには隠していた」というケースでは、借金が離婚理由となることがあります。

奨学金や自動車ローンのように一般的に利用されることの多い借金であればともかく、あまりに高額なクレジットローンや闇金への借金などが判明したときには、「借金があることを知っていれば結婚しなかった」という方が多いからです。

このような問題を隠していたケースでは、借金だけでなく、ギャンブル依存症、アルコール依存症、浪費癖、ホスト通い、キャバクラ通い、風俗通いなど、借金の原因となった別の事情も明らかになることがあります。

なお、財産分与ではプラスの財産だけでなく借金・ローンなどマイナスの財産も対象ですが、結婚前に負った借金は「特有財産」であり、財産分与の対象とはなりません。

そのため、結婚前の借金を隠していた場合、離婚後は、相手の借金の責任を負うことにはなりません。

結婚後も隠れて借金をしていた場合

結婚後の借金でも、家族には隠れてこっそりとお金を借りているケースは少なくありません。このような場合にも、借金は離婚の原因となります。

特に、「借金をしていてもそれを全て浪費に使ってしまい、家庭には生活費を入れていなかった」というケースは、経済的虐待というDV・モラハラの一種にあたる重大な問題です。

借金を理由に離婚する方法と、具体的な流れ

借金で離婚できる?

夫婦が離婚する方法には、大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。

協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚する方法で、話し合いでうまくいかない場合には離婚調停を申し立てます。それでもなお相手が離婚に応じないときには、離婚訴訟を申し立てます。

そこで次に、相手の借金が発覚したときに、借金を理由に離婚する方法と、具体的な流れについて弁護士が解説します。

借金が判明したときの確認すべきこと

まず初めに、借金が判明したらすぐに重要な事項について確認をしておくようにしてください。

借金は離婚原因となりうる重大な事情のため、たとえ夫婦間でも隠れて行われます。相手の借金が判明し、これを理由として離婚に踏み切ろうと考えているとき、離婚に向けて進めるための事前準備として、借金についての真実を把握しておかなければなりません。

  • 借金の理由
  • 借金の金額(元金・利息)
  • 借金の返済期限
  • 借金の常習性(頻度・回数)
  • 借金の借入先
  • 借金の担保として提供した財産(抵当権、連帯保証人など)

これらの事情は、配偶者が反省しているときには、直接質問することで確認できますが、そうでない場合には次に解説するとおり離婚調停を早めに申し立てることがおすすめです。

配偶者が反省し、かつ、借金が突発的なものでやり直しできるような場合には、夫婦で協力して返済し、今後の計画を立て直すこともできます。

しかし、借金の理由がギャンブルや風俗通い、不倫など個人的な事情だったり、常習的に借金を繰り返していたり、既に自宅を担保に入れてしまっていたりといった重大なケースでは、離婚を考えざるを得ません。

協議離婚で、借金を理由に離婚する

協議離婚は、夫婦が話し合い(協議)を行い、その結果、合意によって離婚する方法です。

協議離婚の場合、夫婦の合意ができるのであれば、離婚理由はどのようなものでも構いません。そのため、借金も当然ながら離婚理由となります。配偶者が借金について反省しているうちに話し合いを進めることがポイントです。

借金をしてしまうようなお金にだらしない相手のとき、財産分与、慰謝料、養育費、婚姻費用といったその他のお金の問題についても、離婚時にきちんと決めておく必要があります。借金を理由に離婚することとなった責任は借金をした人にあります。そのため、離婚条件ができるだけ有利になるよう、請求しておくべき金銭を漏らさないよう請求しておきましょう。

借金を理由に協議離婚するときには、将来、離婚条件のとおりにお金が支払われないおそれがあります。このようなときにすぐ強制執行ができるようにするため、離婚協議書を公正証書化しておくことがおすすめです。

参考解説

なお、借金が多額となっている一方で、めぼしい財産がないようなとき、離婚時の財産分与を放棄したほうがよいかどうかを、あわせて検討する必要があります。

参考解説

離婚調停で、借金を理由に離婚する

調停離婚とは、家庭裁判所で行われる離婚調停で離婚をする方法です。離婚調停では、調停委員をまじえて夫婦間の話し合いが行われます。

調停離婚もまた、協議離婚と同様、調停による話し合いの結果として夫婦間が合意できるときは、離婚理由には特に制限がありません。そのため、借金は調停においても離婚理由となります。

なお、日本の裁判では「調停前置主義」というルールがとられているため、訴訟を提起する前に、調停を起こして話し合いを進めておかなければなりません。

離婚訴訟で、借金を理由に離婚する方法

裁判離婚は、協議離婚、調停離婚のいずれの離婚にも相手が応じてくれないとき、裁判所の判断によって強制的に離婚する方法です。

離婚訴訟では、勝訴すれば裁判官が強制的に離婚を認めてくれます。このように離婚訴訟で勝訴をするために必要となるのが、民法770条1項に定められた「法定離婚原因」です。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

夫婦生活を破壊しかねないほどの常識はずれの借金であれば、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)にあたる可能性があります。「悪意の遺棄」とは、夫婦としての相互扶助義務を果たさない生活態度のことをいい、ギャンブルやブランド品に浪費して借金を繰り返し、生活費を払わないような借金は、これにあたります。

また、借金が「悪意の遺棄」にあたらない程度だとしても、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたると主張できます。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、DV・モラハラのように1号から4号にあてはまらないが同程度に重大だと考えられるものがこれにあたります。そのため、借金もまた、程度が悪質であれば「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、相当程度の重大性がなければ認めてもらうことができません。少なくとも、1号から4号の事情と同程度の重大性が必要となります。

そのため、離婚訴訟では、その借金の理由がギャンブルやブランド品、風俗通いなどの自分の利益や楽しみになるといった、相手の悪質性、借金の重大性を主張することで、離婚できる可能性を高めることができます。

婚姻生活を継続するときの注意点

配偶者が反省していて、かつ、借金の常習性がそれほど高くない場合には、今度のやり直しを誓わせて、離婚はしないという結論になることもあります。

このように、離婚に向けた話し合いを行ったが、結果的に離婚には至らなかったという場合には、次の点をきちんと決めておくようにしてください。

  • 今後は二度と借金をしないことを誓わせる
  • 一定以上の金額が必要となるときは、夫婦の同意を得るようにする
  • お金の管理を任せてもらう(給与口座を預かるなど)
  • 小遣い制にする

以上の各点は、配偶者が反省しているうちに誓約書などに記載させ、必ず守らせるようにします。ただし、あまりに追い詰めすぎて、手元のお金が枯渇する状況となると、更に危ない借金をするようになってしまうおそれもあるため、バランスが大切です。

相手の借金の返済義務がある?借金の種類別の対応方法

借金で離婚できる?

借金を理由とする離婚相談でよくある質問に、「離婚後も相手の借金を返済しなければならないのでしょうか」という相談があります。

離婚時の財産分与では、夫婦が協力してつくりあげた財産を公平の観点から分配しますが、この際、プラスの財産だけでなく借金のようなマイナスの財産も分けられます。そのため、離婚後にも、相手の借金を返済しなければならないケースが存在します。

そこで、離婚後の返済義務について、借金の種類別に、適切な対応方法を弁護士が解説します。

日常家事債務

夫婦という密接に関係あるとき、日常生活についての少額な債務について「夫または妻のいずれが責任を負うのか」を都度確認することは煩雑です。

そのため、民法では次のとおり、このような夫婦の日常生活のための債務を「日常家事債務」と呼び、夫婦が連帯して責任を負うことと定めています。

民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

日常家事債務の例としては、食費、家賃、光熱費などがあげられます。

離婚の理由となった借金の種類や金額によっては、その借金が「日常家事債務」として夫婦で連帯して返済すべきものと評価されることがあります。

夫婦生活のための借り入れ

夫婦生活のために借り入れをしたときには、その借金について離婚時の財産分与の対象となることがあります。

先ほど解説したとおり、財産分与は夫婦の財産を離婚時に清算する手続きですが、このときプラスの財産だけでなくマイナスの財産も分配の対象とするからです。

例えば、夫婦生活のために行った次のような借り入れは、財産分与の対象となり、離婚後も返済義務を負い続けると考えられます。

  • 結婚式費用・ハネムーン費用
  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 子どもの教育資金のための借り入れ(教育ローン)
  • 生活費のための借り入れ

これらの負債についての財産分与は、現金・預貯金・不動産などのプラスの財産があればそこから控除することが通常ですが、借金をしなければならない家庭ではプラスの財産が存在しないことも想定されます。

一方で、私的な浪費目的で借り入れをした借金は、当然ながら財産分与の対象とはなりません。

子どもが借金を相続する場合

離婚をすれば夫婦関係はなくなり「赤の他人」となりますが、親子関係はなくなりません。離婚をし、親権を得なかったとしても、親ではあり続けるのです。

そのため、あなたが借金を理由に離婚をしたとしても、借金をした親が死んだ後は、子どもが親の借金を相続することとなります。また、離婚前であればどれほど不仲だったとしても、夫婦の一方が死んだ際には他方が借金も含めて財産を相続することとなります。

このような相続による借金の負担を回避するためには、次の2つの方法があります。

  • 相続放棄
    :相続放棄とは、被相続人の財産を一切相続しないことを選択するという家庭裁判所の手続きです。
  • 限定承認
    :限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内でしか債務を弁済しないという家庭裁判所の手続きです。

なお、相続放棄・限定承認の申述はいずれも、相続開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。

自分名義で勝手に借金された場合

借金を理由に離婚するとき、「実は自分の名義でも勝手に借金されていた」ということが判明するケースがあります。

夫婦とは、財産の境界が不明確なものであり、代わりにさまざまなことを頼んだり、実印を預けてしまっていたりなど、配偶者名義で借金をすることが意外と容易な家庭も少なくありません。

しかし、有効な代理権を与えていないのは当然だとしても、借金の貸し手の保護のため「表見代理」が成立するおそれがあります。「表見代理」は、外観を信じた人を保護する法律ルールで、そのような外観を作ったことについて非があるときには、貸し手を保護するため有効な代理権を与えたのと同じ効果を生むものです。

つまり、実印の管理が甘いなど、あなたに責任があるときには、勝手にされてしまったあなた名義の借金を、離婚後も返し続けなければならなくなるおそれがあります。

連帯保証人としての責任を負うケース

夫婦の一方の借金について、他方が連帯保証人となってしまっていたときは、離婚後であっても借金の負担から逃げることができません。

法律的にいうと、連帯保証人の責任は、借金自体の責任(主債務)ではなく、保証契約からくる責任(保証債務)です。とはいえ、連帯保証人の責任は、主債務者と同等の重い責任です。

たとえ夫婦間であっても、連帯保証人になるときには、将来に離婚する可能性も見据えた慎重な判断が求められます。

住宅ローンの取扱い

夫婦の離婚のとき、他方の支払義務が特に問題となるのが「住宅ローン」です。

住宅ローンは、共同債務者となっていたり連帯保証人となっていたりすることで、たとえ離婚後でも夫婦がともに返済義務を負うことが多いです。実質としても、夫婦の協働生活のための借金といえます。

離婚後に一方が居住するときなどには、金融機関と交渉し、離婚を理由として契約者変更、連帯保証契約の解除をするケースもありますが、配偶者に十分な資力・信用がないと交渉は困難です。そのため、夫婦に十分な預貯金がなかったり、共有財産の大半が住宅であったり、住宅ローンを支払わない側が自宅に住むことを希望するときなど、問題が複雑化します。

この点については明確な法的ルールはありませんが、実務上よくある解決は次のようなものです。

  • 自宅を売却して住宅ローンを返済し、残余財産を分配する
  • 自宅に居住し続ける人が、住宅ローンを組み換えて一旦清算する
  • 自宅に居住し続ける人が、相手方支払分の住宅ローンも支払い続ける
  • 自宅に居住しない人が、財産分与・慰謝料分として、離婚後も住宅ローンを負担し続ける

どのような方法が、解決に適しているかは、夫婦の状況、夫婦共有の財産、夫婦各自の固有財産の金額、ローンの借り換えが可能な程度の収入があるか、代替の連帯保証人が準備できるかといった事情によって異なる判断が必要です。

参考解説

借金問題を解決する方法

借金で離婚できる?

ここまで解説したとおり、借金を理由に離婚をすることができたとしても、やはり離婚後であっても相手の配偶者が借金に困るのは見捨ててはおけないことでしょう。

離婚後も、お互いにすっきりした気持ちで生活するためにも、離婚問題とは別に、借金問題についても解決しておくことがおすすめです。借金問題の解決方法には、大きく分けて任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。

  • 任意整理
    :裁判所を利用せず、債権者との間で借金の減額や分割支払いを交渉する方法
  • 個人再生
    :裁判所の再生手続を利用して、減額した借金の残額を分割で支払う方法
  • 自己破産
    :裁判所の破産手続を利用して、今ある財産で支払いきれるだけの借金を返済し、残額を免責してもらう方法

その他に、簡易裁判所で行われる特定調停を利用する方法もありますが、任意整理で債権者と交渉するのと同じ結果となることが多いです。

離婚に前後して破産をしたとしても、慰謝料や養育費などは「非免責債権」とされており、破産をしたとしても支払義務はなくなりませんので安心です。

むしろ、多重債務で苦しんでいるときは、自己破産によって他の借金を整理したほうが、慰謝料や養育費などを支払ってもらいやすくなります。

離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

借金で離婚できる?

今回は、借金を理由に離婚を考える方に向けて、借金が離婚理由になるのかどうか、また、借金を原因として離婚するための方法や注意点について、弁護士が解説しました。

借金は、直接的には民法上の法定離婚原因にはなっていませんが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚原因になる可能性があります。離婚後は、借金に関わりたくないのであれば、相手の借金の理由、借金の金額などを調査し、正確に把握しておかなければなりません。

相手の借金が止まらないなど、経済的理由によって離婚をお考えの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

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