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借金を理由に離婚する方法3つ!ケース別の対応方法・注意点も解説

度を越した借金は、離婚を検討せざるをえない大きな理由になります。
借金で離婚したい方から、こんな相談があります。

夫が借金して散財し、遊び歩くので離婚したい

妻が家族カードでブランド品のローンを組んだ

借金は、法律上も離婚を認める、十分な理由になります。
ただし、借金の金額や理由により、離婚できる場合もあれば、できない場合もあるので慎重な検討が必要。

さらに、借金を理由に離婚するとき注意しなければならない点が、夫婦の片方のした借金の責任を、他方が負うおそれがあるということです。
これは、借金などの負債もまた財産分与の対象となることと関係します。

今回は、借金を理由に離婚する方法と、離婚時の借金の取り扱いについて不利にならないため、知っておいてほしいポイントについて、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 借金は、理由や金額によっては離婚理由となり、相手が拒否しても離婚できる
  • 夫婦生活のためにされた借金だと、離婚時の財産分与の対象となる
  • 離婚問題とあわせ、借金問題も解決するため、債務整理する方法がある

なお、借金以外の理由で離婚したいとき、法定離婚原因について知っておいてください。

まとめ 法定離婚原因とは丨相手が離婚を拒否しても裁判で離婚できる理由5つ

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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借金を理由に離婚できる

喧嘩する男女

はじめに、借金が、離婚理由となるケースごとに、離婚するための適切な対処法を解説します。

そもそも配偶者(夫または妻)の借金を理由に離婚ができるでしょうか。
結論からいえば、借金による離婚は可能です。

離婚理由になる借金には、さまざまな種類がある

借金とは、返済する約束をして借りるお金全般です。
そのため、借金にはさまざまな種類があります。

住宅ローン、自動車ローンなども借金です。
なので、借金の理由や種類によっては離婚にならないと理解いただけるでしょう。
次の借金は、常識の範囲内ならまったく問題ない借金で、離婚理由にはなりません。

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 奨学金
  • 銀行融資
  • 経営する会社の借金(個人事業主の事業資金の借入、法人代表者の会社債務の連帯保証)

一方で、クレジットローン、サラ金や闇金なども借金の一種です。
これらの借金が多額だったり、隠れてされたり、何度も繰り返されたりすれば、離婚を検討する方が多いでしょう。
このことは、夫側の借金でも、妻側の借金でも同じことがあてはまります。

離婚理由になる借金・ならない借金
離婚理由になる借金・ならない借金

結婚前の借金を隠していた場合

「結婚前にした多額の借金を、結婚するとき隠していた」というケースは、借金が離婚理由となる典型例。

奨学金や自動車ローンのように一般に利用される借金ならともかく、あまりに高額なクレジットローンや闇金への借金などが判明したとき、「借金があると知っていれば結婚しなかった」という方が多いからです。
隠さなければならない借金があるケースでは、借金だけでなく、ギャンブル依存症、アルコール依存症、浪費癖、ホスト通い、キャバクラ通い、風俗通いなど、借金の原因となった別の事情も隠していたケースも珍しくありません。

なお、財産分与は、プラスの財産だけでなく借金・ローンなどマイナスの財産も対象。
しかし、結婚前に負った借金は「特有財産」なので分与の対象にはなりません。
ですから、隠していた結婚前の借金が判明しても、離婚後、相手の借金の責任を負いはしません。

特有財産について、次の解説もご覧ください。

結婚後も隠れて借金をしていた場合

結婚後の借金でも、家族には隠れてこっそりとお金を借りているケースは少なくありません。
このような場合にも、借金は離婚の理由となります。

特に、「借金をしても、すべて浪費してしまい、家庭に生活費を入れなかった」というケース。
これは、経済的虐待というDV・モラハラの一種にあたる重大な問題です。

配偶者の借金が判明したら確認すること

はじめに、配偶者(夫または妻)の借金が判明したら、すぐに確認すべき事項があります。
今後、離婚するにせよ、しないにせよ、重要なポイントとなるため、必ず確認してください。

借金は離婚の原因となりうる重大な事情。
そのため、たとえ夫婦間であっても、隠れて行われるのが通常です。
相手の借金が判明し、これを理由として離婚に踏み切ろうと考えているなら、事前準備が大切です。

離婚を進めるための事前準備として、借金について次の事実を把握しておいてください。

  • 借金の理由
  • 借金の金額(元金・利息)
  • 借金の返済期限
  • 借金の常習性(頻度・回数)
  • 借金の借入先
  • 借金の担保として提供した財産(抵当権、連帯保証人など)

これらの事情は、配偶者が反省しているなら、直接質問して確認できます。
しかし、反省していないとか、相手もまた離婚を考えていると、真実を確認するのは容易ではありません。
このときは、次に解説するとおり、離婚調停を早めに申し立てるのがおすすめです。

一方、配偶者が反省しており、かつ、突発的な借金で、やり直しができそうなときも確認が必要。
上記の重要な事情を知らなければ、夫婦で協力して返済したり、今後の計画を立てたりできないからです。

しかし、借金の理由がギャンブルや風俗通い、不倫など個人的な事情だったり、常習的に借金していたり、すでに自宅が担保に入っていたりといった深刻なケースは、離婚を考えざるをえません。

借金を理由に離婚する方法

悩む女性

次に、相手の借金が発覚したとき、借金を理由に離婚する方法について、具体的な流れを解説します。

夫婦が離婚する方法は、大きく分けて、次の3種類。

離婚の種類

協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚する方法。
しかし、話し合いでうまくいかない場合には離婚調停を申し立てます。
それでもなお相手が離婚に応じないときには、離婚訴訟を申し立てるという流れです。

それぞれの段階ごとに、借金を理由に離婚する方法について解説します。

協議離婚

協議離婚は、夫婦が話し合い(離婚協議)をし、その結果、合意によって離婚する方法です。

協議離婚では、夫婦の合意ができるならば、離婚理由はどんなものでも構いません。
そのため、借金も当然ながら離婚理由となります。
配偶者が借金について反省しているうちに早急に進めるのが、協議離婚するための大切なポイントです。

離婚になってしまうような借金をする人は、お金にだらしない人です。
そのため、離婚時のその他のお金の問題にも注意が必要。
財産分与、慰謝料、養育費、婚姻費用など、離婚時に問題となるお金は、きちんと決めなければなりません。

借金を理由に離婚してしまったなら、その責任は借金した人にあります。
離婚条件ができるだけ有利になるよう、請求すべき金銭を漏らさないよう注意してください。

借金を理由に協議離婚するときには、将来、離婚条件のとおりにお金が支払われないおそれがあります。
このとき、すぐに強制執行できるようにするため、離婚協議書を公正証書化しておくのがおすすめです。
公正証書にしておけば、約束どおり払われなかったとき、裁判しなくてもすぐに強制執行できます。

公正証書のメリット
公正証書のメリット

離婚協議書を公正証書にする方法は、次の解説をご覧ください。

なお、多額の借金がある一方で、めぼしい財産がないこともあります。
このとき、離婚時の財産分与を放棄したほうがようかどうかも、あわせて検討が必要です。

離婚調停

調停離婚とは、家庭裁判所で行われる離婚調停で離婚をする方法です。
離婚調停では、調停委員をまじえて夫婦間の話し合いが行われます。

調停離婚もまた協議離婚と同じく、話し合いの結果、夫婦が合意できるなら、離婚理由に制限がありません。
そのため、借金は調停においても離婚理由となります。

なお、日本の裁判では「調停前置主義」がとられています。
そのため、訴訟を提起する前に、調停を起こして話し合いを進めなければなりません。

離婚調停の流れは、次の解説をご覧ください。

離婚訴訟

裁判離婚は、協議離婚、調停離婚のいずれの離婚にも相手が応じてくれないとき、裁判所の判断によって、強制的に離婚する方法です。

離婚訴訟で勝訴すれば、裁判官が強制的に離婚を認めてくれます。
離婚訴訟で勝訴をするために必要なのが、民法770条1項に定められた「法定離婚原因」です。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

民法(e-Gov法令検索)

夫婦生活を破壊しかねないほどの常識はずれの借金は、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)の可能性あり。
「悪意の遺棄」とは、夫婦としての相互扶助義務を果たさない生活態度のこと。
ギャンブルやブランド品に浪費し、借金を繰り返し、生活費を払わないといった借金が該当します。

借金が「悪意の遺棄」の程度には至らなくても、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたると主張することもできます。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、DV・モラハラのように1号から4号にあてはまらないが同程度に重大だと考えられる事情のこと。
そのため、借金もまた、程度が悪質ならばこれにあたります。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、相当程度の重大性がなければ認められません。
少なくとも、1号から4号の事情と同程度の重大性が必要です。

そのため、離婚訴訟では、その借金の理由がギャンブルやブランド品、風俗通いなどの自分の利益や楽しみになるといった、相手の悪質性、借金の重大性を主張することで、離婚できる可能性を高めることができます。

離婚後の借金への対応┃相手の借金の返済義務がある?【ケース別】

考える女性

借金を理由とした離婚相談でよくあるのが、「離婚後も相手の借金を返済する義務があるか」という質問。
そこで次に、離婚後の借金への対応と、返済義務についてケース別に解説します。

離婚時の財産分与は、夫婦が協力して作りあげた財産を公平の観点から分配します。
このとき、プラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も分けられます。

注意しなければ、離婚後にも、相手の借金を返済しなければならないケースがあります。

日常の家事に関する借金の場合

夫婦という密接な関係だと、日常生活についての少額な債務についてまで「夫または妻のいずれが責任を負うのか」と、都度確認するのは煩雑になってしまいます。

これを回避するため、民法では日常の家事に関する借金は、夫婦が連帯して責任を負うと定めています。
この夫婦の日常生活のための債務を、法律用語で「日常家事債務」といいます。

日常家事債務とは
日常家事債務とは

民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

民法(e-Gov法令検索)

日常家事債務の例としては、食費、家賃、光熱費などがあげられます。

離婚の理由となった借金の種類が、日常の家事に関する借金で少額だと「日常家事債務」にあたります。
このとき、離婚した後でも、元夫婦で連帯して返済するべきと評価されることがあります。

夫婦生活のために借り入れた場合

夫婦生活のために借り入れをしたなら、その借金は、離婚時の財産分与の対象なります。
前述のとおり、財産分与は離婚時の清算であり、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も対象だからです。

例えば、夫婦生活のためした次の借り入れは、離婚後も返済義務を負い続けると考えられます。

  • 結婚式費用・ハネムーン費用
  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 子どもの教育資金のための借り入れ(教育ローン)
  • 生活費のための借り入れ

これらの負債についての財産分与は、現金・預貯金・不動産など、プラスの財産があればそこから控除しますが、借金を生活できなかった家庭だと、プラスの財産が足りないことが想定されます。
その場合、離婚後も、元夫婦で返していかなければなりません。

一方、私的な浪費目的で借り入れをした借金は、当然ながら財産分与の対象になりません。

子どもが借金を相続する場合

離婚をすれば夫婦関係はなくなり「赤の他人」となりますが、親子関係はなくなりません。
離婚した後、親権を得なかった人も、親ではあり続けるのです。

あなたが借金を理由に離婚して縁を切っても、借金をした親が死んだ後は、子どもが親の借金を相続します。
離婚前は、配偶者は相続人となります。
どれだけ不仲だったとしても、離婚前に死なれてしまえば、借金も含めて財産を相続してしまいます。

相続による借金の負担を回避するには、次の2つの方法があります。

  • 相続放棄
    被相続人の財産を一切相続しないことを選択するという家庭裁判所の手続き
  • 限定承認
    相続によって得た財産の範囲内でしか債務を弁済しないという家庭裁判所の手続き

相続放棄・限定承認の申述はいずれも、相続開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。

自分名義で勝手に借金された場合

借金を理由に離婚するケースには、「自分の名義で勝手に借金されていた」と判明する例もあります。
勝手にした借金はとても悪質で、離婚するに十分な理由ですが、心配なのは、自分名義の借金が残ってしまうという点でしょう。

夫婦の財産の区別は曖昧で、代わりに用事を頼んだり、実印を預けたりといった家庭は多いもの。
そのため、配偶者名義で借金をするのは意外なほど簡単です。
このとき「借金する」という代理権を与えていないのは当然ですが、借金の貸し手保護のため、「表見代理」が成立するおそれがあります。

表見代理とは
表見代理とは

「表見代理」は、外観を信じた人を保護する法律ルール。

信じるに値する外観を作った点について非があるとき、第三者(この場合、借金の貸し手)を保護するため、有効な代理権を与えたのと同じ効果を生むという法制度です。
本来、代理権がなければ無権代理で無効ですが、第三者の保護が必要となるとき、例外的に表見代理となり、有効な代理と同じく、本人に効果が帰属することとなるのです。

つまり、実印の管理が甘いなど、あなたに責任があるときには、勝手にされてしまったあなた名義の借金を、離婚後も返し続けなければならないおそれがあります。

連帯保証人としての責任を負う場合

夫婦の一方の借金に、他方が連帯保証人となっていると、離婚後でも借金の負担から逃げられません。

法律的には、連帯保証人の責任は、借金自体の責任(主債務)ではなく保証契約からくる責任(保証債務)です。
とはいえ、連帯保証人の責任は、主債務者と同等の重い責任です。

たとえ夫婦でも、連帯保証人になるのは、将来に離婚する可能性も見据えた慎重な判断が求められます。

住宅ローンを借り入れた場合

夫婦の離婚のとき、他方の返済義務が残るか大きな問題になるのが「住宅ローン」。

住宅ローンは、夫婦が共同債務者や連帯保証人になることが多いです。
このとき、離婚後でも、夫婦がともに返済義務を負うこととなります。
住宅ローンは自宅のためのものなので、その実質としても、夫婦生活のための借金です。

離婚後に、一方が自宅に住み続けるときには、金融機関と交渉して、離婚を理由として契約者変更、連帯保証契約の解除をするケースもあります。
ただ、金融機関の承諾が必要となります。
そのため、配偶者に十分な資力・信用がなければ、交渉は困難です。
次のケースは、住宅ローンをめぐって、争いが複雑化します。

  • 夫婦に十分な預貯金がないケース
  • 共有財産の大半が住宅のケース
  • 住宅ローンを払えない側が、自宅に住み続けたいと希望するケース

このようなトラブルに明確な法的ルールはありませんが、実務上は、次の解決がよくあります。

  • 自宅を売却して住宅ローンを返済し、残余財産を分配する
  • 自宅に住み続ける人が、住宅ローンを組み換えて一旦清算する
  • 自宅に住み続ける人が、相手方支払分の住宅ローンも支払い続ける
  • 自宅に住まない人が、財産分与・慰謝料分として、離婚後も住宅ローンを負担し続ける

どんな方法が、解決に適しているかは、夫婦の状況によってケースバイケース。

夫婦共有の財産、夫婦各自の固有財産の金額、ローンの借り換えが可能な程度の収入があるか、代替の連帯保証人が準備できるかといった事情によって異なる判断が必要です。

離婚時の財産分与と住宅ローンの扱いは、次の解説をご覧ください。

借金問題を解決する方法

積み木

ここまで解説したとおり、借金を理由に離婚をすることはできます。
しかし、せっかく離婚できても、やはり離婚後であっても配偶者(夫または妻)が借金に困っているのを見捨ててはおけない方も少なくありません。

借金にまみれ、あなたに捨てられてどん底なのかもしれません。
立ち直りのきっかけに、借金問題の法的な解決方法があることを、あなたからも伝えてあげてください。

離婚後も、お互いにすっきりした気持ちで生活したいでしょう。
離婚問題とは別に、借金問題も解決しておくに越したことはありません。

借金問題の解決方法には、大きく分けて任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。

  • 任意整理
    裁判所を利用せず、債権者との間で借金の減額や分割支払いを交渉する方法
  • 個人再生
    裁判所の再生手続を利用して、減額した借金の残額を分割で支払う方法
  • 自己破産
    裁判所の破産手続を利用して、今ある財産で支払いきれるだけの借金を返済し、残額を免責してもらう方法

その他に、簡易裁判所で行われる特定調停を利用する方法もあります。
ただ、この方法は、任意整理で債権者と交渉するのと同じ結果となることが多く、それほど使われません。

離婚に前後して破産しても、慰謝料や養育費は「非免責債権」になります。
そのため、破産しても支払義務はなくならないので安心です。

むしろ、多重債務で苦しむ方なら、自己破産して他の借金を整理したほうが、慰謝料や養育費を払ってもらいやすいです。

借金を理由に離婚する際の注意点

次に、借金を理由に離婚するときの注意点について解説します。

借金は、お金の問題として深刻ですが、たとえ相手に借金があっても、夫婦であったこと、親であることの責任は果たしてもらわなければなりません。

慰謝料を請求できる

離婚の理由が相手の借金にあるなら、相手に責任があるわけで、慰謝料をもらえるケースもあります。

借金だけが離婚理由だと、慰謝料はそれほど高額にならないことも。
借金を理由とした離婚の慰謝料の相場は、10万円〜100万円程度です。
ただ、借金が悪質であるほど、もらえる慰謝料の金額はあがります。
また、借金がひどい原因に、不倫などその他の理由があると、あわせて慰謝料を請求できます。

しかし、悪質な借金をする相手ほど、慰謝料の支払い能力は乏しいと考えられます。
このとき、できるだけ損しないため、財産のあるところからとるためにも、慰謝料の代わりに財産分与を多めにもらっておく解決策も検討してください。

慰謝料の分割払いも提案できる

借金をしてしまうほどお金がない相手だと、すぐに払ってもらうのは困難なことも。
取りっぱぐれないよう、慰謝料の分割支払いも提案しておきましょう。

借金で自己破産しても、慰謝料の支払い義務はなくなりません。
しかし、借金するような性格だと、追い詰めすぎると逃げて払わなくなるケースも多いためです。

このときも、協議離婚の例のように、離婚協議書で支払い計画を定め、公正証書にしておきましょう。

養育費は必ず請求する

養育費は、親であることによって払うべきお金なので、離婚の理由が借金でも、当然にもらえます。
養育費の金額は、養育費・婚姻費用算定表で決められるのが通例です。

算定表のとおり、養育費で大切なのは、月々の収入です。
そのため、借金があっても、収入があるならば、それに応じた適正な金額を分担しなければなりません。

養育費もまた、必ず離婚協議書に定めておかなければなりません。

なお、養育費が支払われないときの対応は、次の解説をご覧ください。

借金が判明した後に婚姻生活を継続するときの注意点

配偶者(夫または妻)が借金を反省し、借金の常習性もさほど高くないなら、離婚しないこともあります。
夫婦関係を継続するなら、「離婚はしないが、きちんとやり直す」と誓わせなければなりません。

このように、離婚に向けた話し合いになったとしても、結果的に離婚に至らないとき、次の点をきちんと決め、夫婦のルールとしておくべきです。
借金が再発し、また離婚話になるのを避けるためです。

  • 二度と借金しないと誓わせる
  • お金が必要なときは、その都度渡す
  • 一定額以上の買い物は、夫婦の同意で行う
  • お金の管理を任せてもらう(給与口座を預かるなど)
  • 小遣い制にする
  • 家族カードは渡さない

以上のルールが決まったら、配偶者が反省しているうちに誓約書に記載してもらいましょう。
誓約書に書かせることで、必ず守ると約束させ、証拠に残せるからです。

ただ、あまりに追い詰めすぎると逆効果なこともあります。
手元のお金が枯渇すると、サラ金や闇金など、さらに危ない借金に走るおそれもあります。
離婚の危機となってしまったら、夫婦関係の引き締めが必要ですが、バランスも大切です。

まとめ

今回は、借金を理由に離婚を考える方に向けての解説でした。
借金が離婚理由になるのかどうか、そして、借金を原因として離婚するための具体的な方法や注意点について、弁護士が解説してきました。

借金は、直接的には民法上の法定離婚原因にはなっていません。
しかし、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性は十分あります。
悪質な借金ほど、離婚できるのは当然です。

そして、離婚できるというだけでなく、離婚後に相手の借金には関わりたくないなら、借金の理由、借金の金額などを調査し、適切な対応が必要となります。

この解説のポイント
  • 借金は、理由や金額によっては離婚理由となり、相手が拒否しても離婚できる
  • 夫婦生活のためにされた借金だと、離婚時の財産分与の対象となる
  • 離婚問題とあわせ、借金問題も解決するため、債務整理する方法がある

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題を精力的にサポートし、多数の解決実績があります。

相手の借金が止まらないなど、経済的理由で離婚をお考えの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

離婚問題のよくある質問

借金を理由に離婚できますか?

離婚の方法のうち、協議離婚、調停離婚は話し合いによる離婚なので、どんな理由でも離婚できます。一方、裁判離婚は、民法に定められた法定離婚原因が必要ですが、借金の理由が自分勝手だったり、金額が大きかったりするとき、離婚を認めてもらえます。もっと詳しく知りたい方は「借金を理由に離婚できる」をご覧ください。

借金を理由に離婚したとき、相手の借金を返済しなければなりませんか?

借金を理由に離婚しても、財産分与の対象には借金などのマイナスの財産も含まれるため、相手の借金でも返さなければならないことがあります。借金の理由が、夫婦のためのだったときなど、公平の観点から財産分与の対象となり、離婚後も返済義務を負うおそれがあります。詳しくは「離婚後の借金への対応┃相手の借金の返済義務がある?【ケース別】」をご覧ください。

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