離婚・男女問題

離婚時の財産分与の種類【弁護士解説】

2021年6月14日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

離婚時の財産分与の種類

離婚時の財産分与は、その性質から3種類に分けることができます。

財産分与では、婚姻期間中に得られた財産を、夫婦間の公平の観点から清算するという性質をもつ「清算的財産分与」が最もよく争いになりますが、これ以外に、離婚後の困窮から救うための「扶養的財産分与」、離婚原因に対する責任の補償という意味を持つ「慰謝料的財産分与」というものがあります。

特に離婚調停、離婚訴訟などの裁判所において財産分与を争うときには、「どのような性質の財産分与が問題になっているのか」を意識して主張立証を行うことが、有利な解決を得るためには不可欠です。

そこで今回は、

  • 財産分与の種類
  • 清算的財産分与・扶養的財産分与・慰謝料的財産分与の意味と違い
  • それぞれの財産分与を有利に進める方法

といった離婚と財産分与に関する諸問題について解説していきます。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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財産分与の3種類

離婚時の財産分与の種類

財産分与は、離婚した夫婦の一方が、他方に対して財産を分与する手続きです。財産分与については次のように民法の定めがあり、この基本については次に解説する3種類のいずれの財産分与でも変わりはありません。

民法768条(財産分与)

1. 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2. 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3. 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

この財産分与には、3つの種類があります。これらの種類は、財産分与を複数回行うということではなく、離婚時に行う1回の財産分与には異なった複数の意味があるということであり、そのため、財産分与の3つの意味合いといってもよいでしょう。

  • 清算的財産分与
    :夫婦が婚姻中に協力してつくりあげた財産を清算する財産分与
  • 扶養的財産分与
    :専業主婦など、離婚後の経済的弱者を救済するための財産分与
  • 慰謝料的財産分与
    :離婚原因を作った有責配偶者から相手方に対して請求できる財産分与

実務的には、財産分与のほとんどは清算的財産分与の意味を持っており、それ以外の意味を持つことは例外的です。

また、慰謝料的財産分与が問題となるような、いずれかの当事者に離婚原因に関する有責性が存在するようなケース(DVや不貞のケース)では、財産分与に加えて別途慰謝料請求をすることが通常で、結局「総額でいくら支払うのか」という点が重要です。

財産分与額を少しでも増やしたいという請求側では、財産のリストアップと隠された財産の調査も重要となります。

上記に解説した民法768条を見て頂ければわかるとおり、財産分与を家庭裁判所で争うとき、裁判所は「その協力によって得た財産の額」と「その他一切の事情」を考慮して分与の額や方法を決めます。

このうち「その協力によって得た財産の額」は特に清算的財産分与において大きな争点となり、扶養的な側面、慰謝料的な側面はいずれも「その他一切の事情」として考慮されることとなります。

清算的財産分与とは

離婚時の財産分与の種類

清算的財産分与は、夫婦が結婚している間に協力して形成・維持した財産(夫婦の共有財産)について、離婚時にその貢献度に応じて分配するという手続きです。財産分与が問題となるほとんどのケースが、清算的財産分与の性質を持ちます。

清算的財産分与は、夫婦間の公平の観点から、夫婦の共有財産を2分の1ずつにするというのが原則です。

清算的財産分与の対象財産

清算的財産分与では、婚姻期間中につくりあげられたり、増加したりした財産がその分与対象となります。このような財産のことを法律の専門用語で「共有財産」といいます。

対象財産の種類は問わず、現金・預貯金、不動産(土地・建物)などはもちろん、貴重な動産(宝石・絵画・骨董品など)、家財道具、生命保険、退職金、株式・債権といった財産も清算の対象となります。

参考解説

これに対して、婚姻前に一方の配偶者が有していた財産や、婚姻期間中であっても一方の努力や才能のみで獲得し、他方の貢献度がないような財産については、分与の対象とはなりません。このような分与対象とはならない財産を、法律の専門用語で「特有財産」といいます。

参考解説

清算的財産分与の分与割合

清算的財産分与では、その分与割合は「5:5」とすることが家庭裁判所の実務です。このことを財産分与の2分の1ルールと呼ぶことがあります。

2分の1ルールは、夫婦間の貢献度を公平に考えた結果、実務で行われているものです。そのため、「2分の1ルールを適用してはかえって不公平だ」というような個別具体的なケースによっては2分の1ルールを修正すべき場合もありますが、その際には、修正を主張する側が証拠によって立証しなければなりません。

専業主婦の場合、自分でお金を稼いだり貯めたりはしていないものの、家事労働を行っていたことの価値として、夫婦がともにつくった財産の半分を分けてもらう権利があります。

参考解説

離婚原因は影響しない

清算的財産分与の際には、「どのような離婚原因で離婚するのか」ということや、「その離婚原因についてどちらの配偶者に責任があるのか」ということは影響しません。あくまでも、公平の観点から、2人で貯めた財産を分けるという手続きだからです。

そのため、不倫や浮気などの不貞行為、DV(家庭内暴力)、モラハラなどが存在する側の配偶者も、財産分与を請求することができます。逆に、これらの事情が相手にあることを強く主張しても、財産分与の金額を減らすことはできません。

なお、これらの有責性のある行為については、財産分与には影響しないものの慰謝料請求の根拠となり、「総額で、離婚時にいくらの金銭を支払うか」という点には大きく影響する事情です。

参考解説

扶養的財産分与とは

離婚時の財産分与の種類

扶養的財産分与とは、離婚をした後に一方の配偶者が経済的に困窮してしまうような場合に、その生活の安定を守るために行われる財産分与のことです。

扶養的財産分与は、将来の扶養を目的としていることから、実務的には、毎月ないし毎年定期的に支払うという方法で合意をすることが多いです。

参考解説

夫婦の相互扶助義務

夫婦である間は「相互扶助義務」がはたらき、「たとえ別居していたとしても生活費として婚姻費用を支払わなければならない」など、収入の多い側が収入の少ない側を扶養する義務がありましたが、離婚後はこのことはあてはまりません。

しかし、扶養義務がなくなったからといって一切の金銭支払いを行わないとすると片方が困窮してしまうような事例では、扶養的な意味合いでの財産分与が認められることがあります。

なお、夫婦が離婚をしたとしても親子関係はなくならないため、子どもがいる場合には離婚後は養育費を支払う必要があります。

扶養的財産分与が認められるケース

以上のように、扶養的財産分与は、本来であれば離婚後は扶養義務を負わないところ、例外的に認められるものです。扶養的財産分与が認められるケースとは、例えば次のような事例です。

  • 収入や貯蓄の少ない側の配偶者が、離婚後はしばらく働くことができない病気にかかっている。
  • 高齢になってからの離婚であり、離婚後は働くことはできず年金生活になる。

実務的には、一括払いだと相当高額になることもあるため、毎月ないし毎年の一定額の支払いの合意をすることが多く、おおむね1~3年程度の支払いが認められることが多いです。

扶養的財産分与は、経済的な弱者の保護を目的としてはいますが、片方にかたよった収入、貯蓄があることが前提となります。そのため、いずれにも十分な収入、貯蓄が存在しないという場合には、たとえ生活が困窮するような状況であっても現実的には扶養的財産分与が難しいこともある点に注意が必要です。

妻側の扶養的財産分与が認められやすい理由

「妻が専業主婦であり、夫の収入と貯蓄で生活してきた」という事例では女性側が扶養的財産分与の請求側となります。

一般的に、日本では女性が幼い子どもの育児を担当することが多く、そのためにこれまで積み上げてきたキャリアを失ってしまうことがあります。離婚をした後、就労が可能な健康体であったとしても、失ったキャリアを取り戻すことは「年功序列」の文化が根強く残る日本ではなかなか難しいものです。

収入を少しでも補うためにパート、アルバイトをしたとしても、離婚後の生活は夫の比ではないほど困窮することとなります。まして、就労が不可能な病気にかかっていたり、高齢で働くことが難しかったりといった場合には、なおさら扶養的財産分与の必要性が高まります。

最近では女性でも結婚中も育休・産休などを活用しながら働き続ける人も多く、「年功序列」の文化も薄れてきて中途採用でも高収入を得ることも可能となりました。

また、逆に男性側が専業主夫となり育児・家事を担当する家庭もあります。このような観点から、最近では例外的なケースを除いては、扶養的財産分与が認められる事例はそれほど多くはありません。

慰謝料的財産分与とは

離婚時の財産分与の種類

慰謝料的財産分与とは、離婚原因について一方当事者に有責性があるときに、慰謝料的な意味合いで支払われる財産分与です。

しかし、本来的には財産分与は慰謝料とは性質が異なります。離婚原因をつくってしまった側(有責配偶者)からも財産分与は請求できますし、逆に、相手の有責性を指摘しても財産分与は減らないのが原則です。このような場合には慰謝料請求を別途起こすことが多いため、慰謝料的な財産分与が問題となることはそれほど多くありません。

一方で、財産分与が相当な金額となる場合、慰謝料をはるかに超える財産分与が必要となることもあるため、このようなケースで「財産分与には、慰謝料的な意味合いも含むものとする」という合意がなされることがあります。このような場合、支払われた財産分与には、一部慰謝料的な意味合いが含まれることとなります。

財産分与時に行われるその他の調整的な支払い

離婚時の財産分与の種類

財産分与は、財産の金額によっては相当高額となることもあるため、本来であれば財産分与の枠組みの中で議論することが予定されていないその他のお金の問題についても、財産分与の中で調整されることがあります。

これらの問題は、本来は財産分与の問題ではないものの、実際には離婚協議、離婚調停、離婚訴訟の現場では財産分与という言葉を用いて議論されることがよくあるため、損な財産分与となってしまわないよう理解しておく必要があります。重要なことは、財産分与だけを見るのではなく、その他のお金の問題も含めた総額の損得を検討することです。

未払の婚姻費用の支払い

離婚時の財産分与の中で、婚姻費用の清算が問題となることがあります。婚姻費用をもらう側(権利者)の側から、未払婚姻費用の清算を要求されるケースがその1つです。

婚姻費用は、夫婦である期間の生活費として支払われるものですが、離婚協議や離婚調停で問題となるとき、その支払義務や金額に争いがあり、定期的に支払われてこなかったという場合があります。

このような場合でも、離婚調停・婚姻費用分担請求調停の実務では、調停の申立て時までさかのぼって支払うことを命じられるのが通常です。

なお、別居時に財産を持ち出されてしまったとき、その調整は財産分与で行うことが原則であり、婚姻費用での調整は行われないのが通常です。詳しくは次の解説も参考にしてください。

参考解説

払い過ぎた婚姻費用の控除

もう1つのケースが、払い過ぎていた婚姻費用を財産分与から控除するという調整がなされる場合です。

婚姻費用については、養育費・婚姻費用算定表によって、子の人数と年齢、夫婦の収入差によって決めるというのが家庭裁判所の実務ですが、実際には、同居中の慣習にしたがって一定額を支払い続けていたり、算定表よりも高額が必要であるような場合には、婚姻費用を支払いすぎている場合があります。

夫婦が仲良く円満な状態であれば、多少生活費を支払いすぎていてもその清算が問題となることはありません。しかし、財産分与に関する争いが激しいようなケースでは、財産分与の請求に対して「払い過ぎた婚姻費用を財産分与から控除してほしい」という反論がなされることがあります。

将来の養育費の支払い

最後に、将来の養育費の支払いについて財産分与の枠組みの中で調整することを合意するケースもあります。

養育費もまた、さきほど紹介した養育費・婚姻費用算定表によって、子の人数と年齢、夫婦の収入差によって決まりますが、その金額は、子が幼い場合には将来長期にわたって続くため高額になります。

残念ながら、日本では決まった養育費が最後まで支払われる可能性は相当低く、誠意ある支払が期待できないようなときに、財産分与の中で、養育費に関する議論をしておくことは有効です。

離婚と財産分与の問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

離婚時の財産分与の種類

離婚時に問題となる財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類の性質があり、このうちほとんどが清算的財産分与です。

しかし、財産の金額にもよりますが、一般的に、財産分与は離婚時に問題となるお金の中でも相当な割合を占めるほど高額になることもしばしばであり、その中にさまざまな意味合いをつけることで、夫婦間の公平についての調整が図られてきたのが実情です。

そのため、特に、離婚後に経済的に困窮する可能性の高い方、相手の有責性について言及したい方にとって、「財産分与で動く金銭の中で調整してほしい」という主張をすることが有効にはたらくケースが多くあります。損をしてしまわないためにも、財産分与の性質をきちんと理解して交渉することが大切です。

財産分与のともなう離婚についてお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

まとめ解説
財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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