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慰謝料的財産分与とは?法的な性質や考慮要素、請求方法について解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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財産分与は、夫婦の共有財産の分配が基本ですが、慰謝料の側面を併せ持つことがあります。

慰謝料的財産分与とは、離婚に伴う財産分与のうち、有責行為によって婚姻関係を破綻させたことにより、請求者が被った精神的損害を賠償する性質を持つものを指します。実務上、財産分与には「清算的要素」「扶養的要素」に加え、この「慰謝料的要素」を含めることが可能です。

本来、財産分与と慰謝料は別の権利ですが、紛争を一括して解決することを目的とする場合や、一般的な清算的財産分与では精神的苦痛を慰謝するに足りないと考えられる場合に、不貞行為やDVといった責任のある行為を根拠として、慰謝料的財産分与で調整を図ることがあります。

今回は、慰謝料的財産分与の考え方と、有利に進める方法について弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 財産分与には、清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素の3つの性質がある
  • 婚姻関係を破綻させた責任が相手にあるなら、慰謝料的財産分与を検討する
  • 慰謝料的財産分与で有利な解決を実現するには、有責行為の証拠が必要となる

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慰謝料的財産分与とは

ハート

慰謝料的財産分与とは、離婚時の財産分与のうち、慰謝料的な意味合いを持つものです。

財産分与とは、離婚時に夫婦の財産を公平に分ける制度ですが、その中に、配偶者の有責行為によって生じた精神的苦痛を慰謝する意味合いを含むことがあります。

財産分与について定めた民法768条でも、「家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」(同3項)とされており、この「一切の事情」の中に、婚姻関係破綻の責任や、それに伴う精神的損害の程度などが考慮されます。

裁判例でも、裁判所が財産分与の額および方法を定める際、民法768条3項の「一切の事情」として慰謝料支払義務の発生原因たる事情を考慮し、損害賠償の要素を含めて定めることができると判断された事例があります(最高裁昭和46年7月23日判決)。

したがって、不貞行為やDVなど、配偶者の行為によって婚姻関係が破綻したケースでは、共有財産の清算に加え、慰謝料的要素も含めた財産分与を請求することを検討できます。これにより、離婚に伴う財産的な問題を、一挙に解決することが可能となります。

離婚時の財産分与」の解説

慰謝料的財産分与の法的な性質

次に、慰謝料的財産分与について、その法的な性質を解説します。

そもそも、慰謝料と財産分与は別の請求権であるものの、慰謝料的財産分与では、財産分与に慰謝料的な意味合いを含めて考えることとなります。

他の種類の財産分与との違い

財産分与には、清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素の3種類があります。

多くの場合、財産分与は婚姻期間中の夫婦の共有財産を公平に分け与える「清算的財産分与」の性質を有しますが、状況に応じて「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」も行われます。

  • 清算的要素(清算的財産分与)
    婚姻中に夫婦が協力して形成した共有財産について、公平の観点から原則として2分の1ずつ分け与えることを内容とする財産分与。
  • 扶養的要素(扶養的財産分与)
    離婚後の生活に困窮するおそれのある配偶者を保護する必要がある場合に、扶養的な意味合いで認められる財産分与(詳しくは「扶養的財産分与とは?」参照)。
  • 慰謝料的要素(慰謝料的財産分与)
    有責行為によって離婚を余儀なくされた場合に、その精神的損害を賠償する意味合いを含んだ財産分与。

財産分与に慰謝料的要素が含まれる場合、有責行為に対する責任追及という意味合いがあるのに対し、その他の財産分与には、相手の非を責める意味はありません。

財産分与と慰謝料請求の関係

財産分与に慰謝料的要素が考慮されるとき、財産分与と慰謝料の関係の整理が必要です。

財産分与と慰謝料はそもそも別の請求権であるため、財産分与を請求しても、有責行為による精神的損害について慰謝料を別途請求することは妨げられません。故意または過失による権利侵害によって損害を被ったとき、不法行為(民法709条)を根拠に賠償請求が可能です。

不倫による離婚でも財産分与は必要」の解説

慰謝料的財産分与と慰謝料の二重取りはできない

慰謝料的財産分与と別途の慰謝料を同時に請求し、二重に受け取ることはできません。

既に財産分与がされており、それが慰謝料的要素を含んでいるときは、それによって精神的苦痛に対する賠償が全て完了したとみなされる場合、重ねて慰謝料を請求することはできなくなります。ただし、受け取った財産分与の額や内容を考慮した結果、被った精神的苦痛の補償として足りないと考えられる場合は、不足する賠償分について、さらに慰謝料を請求できるケースもあります。

慰謝料的財産分与を請求すべきケースとその理由

家族

次に、慰謝料的財産分与を請求すべきケースとその理由について解説します。

慰謝料的財産分与には責任追及の意味合いがあるため、不貞行為やDVといった相手の有責行為が存在することが前提です。ただし、慰謝料請求との違いを意識し、どのような場合に財産分与の中で一括して解決するメリットがあるかを理解してください。

一括して効率的に解決すべき場合

慰謝料的財産分与は、離婚時の金銭請求を、一括して効率的に解決できます。

離婚時の当事者の関心事は、支払いの名目ではなく、「総額でいくら受け取れるか(支払わなければならないか)」という点にあるケースが多く、一括して議論する方が簡便です。離婚の原因が一方にあることに争いがない場合は特に、あえて責任を明確にする必要もありません。

離婚に伴うお金の問題」の解説

共有財産の清算だけでは不公平な場合

清算的財産分与では、夫婦が共同で築いた財産を折半することとなります。

しかし、不貞行為やDVなどがあるとき、財産を二等分するのでは被害を受けた側の精神的苦痛が無視され、公平でないと考えられる場合があります。こうしたケースで、離婚の原因を作った側の責任追及と被害者の救済を兼ね、財産分与で考慮することがあります。通常の清算に加えて、精神的損害を考慮した上乗せを行うことで、不公平を是正することができます。

証拠が不十分でも補償が必要である場合

不貞慰謝料を請求するには、客観的な証拠が重要となります。

しかし、必ずしも十分な証拠があるケースばかりではありません。一方の責任で離婚することは明らかなのに、証拠不足が理由で十分な慰謝料が認められないおそれがある場合、財産分与に慰謝料的要素を加え、一定の増額を図ることで、公平な補償を実現することができます。

慰謝料的財産分与を考慮することで妥当な額を取り決めることができれば、迅速に、実情に即した解決を実現できます。

離婚裁判で証拠がないときの対処法」の解説

早期の離婚を希望する場合

不貞された側が早期離婚を求める場合、徹底抗戦という方針を取りにくくなります。慰謝料を請求して徹底的に争えば、早期離婚は難しくなってしまうからです。このようなケースで、慰謝料的要素を財産分与に組み込んで解決すれば、一定の責任追及が可能となる一方で、争いを長期化させずに速やかに離婚することができます。

協議離婚の進め方」の解説

有責性について争いがある場合

離婚の原因について、当事者間で主張が食い違う場合があります。

一方が不貞行為などを強く主張しても、他方が否定する場合、慰謝料名目での支払いに強い抵抗感を示し、離婚協議が停滞してしまうことは少なくありません。このようなケースの解決のため、折衷案として慰謝料的財産分与が活用されます。

名目上は「慰謝料」ではなく、財産分与の枠組みの中で分与割合を調整する形を取れば、支払う側にとっては心理的なハードルを下げるとともに「非を認めた」という記録を残さずに済み、請求する側にとっては実質的に慰謝料の支払いを確保できるため、妥協点を見出しやすくなります。

慰謝料的財産分与の額の算定と考慮要素

では、慰謝料的財産分与について、いくら請求するのが妥当なのでしょうか。

慰謝料的財産分与の額の算定は、通常の慰謝料請求の場合と同様のことが当てはまります。つまり、不貞慰謝料の相場である100万円〜300万円程度が目安として参考にされます。ただし、個別の事情に応じて、責任や被害の程度によって増減するため、次のような要素が考慮されます。

  • 破綻に至る経緯
  • 夫婦双方の言動や責任の程度
  • 婚姻期間
  • 破綻までの婚姻生活の状況
  • 離婚後の経済状況
  • 子供の年齢や影響など

また、通常の慰謝料請求と同様に、不貞行為やDVといった有責行為の存在を裏付ける証拠がどの程度存在するかによっても異なります。そのため、十分な金額を認めてもらうには、不貞行為を推認させる写真や動画、探偵の報告書、DV時の録音、医師の診断書、ケガの写真といった証拠を、早い段階で集めておくようにしてください。

慰謝料的財産分与を請求する方法

最後に、慰謝料的財産分与を請求する方法と、有利に進めるための注意点を解説します。

慰謝料的財産分与の請求の流れ

財産分与の請求は、夫婦間の話し合いで行います。

財産の内容や評価額、分与割合について合意できれば、離婚協議書や公正証書を作成することで、後のトラブルを防げます。協議を有利に進めるには、通帳や残高証明、不動産の登記事項証明書、保険証券など、財産を裏付ける資料の収集が重要です。ただし、慰謝料的財産分与を請求すると、相手の非を指摘することとなるため、協議離婚に向けた話し合いは難航します。

協議が決裂した場合、離婚調停、離婚裁判(離婚訴訟)における付帯処分として財産分与を求めることができます。裁判離婚が成立する場合、裁判所は、双方の主張や提出された証拠を踏まえ、財産分与の対象となる財産や分与割合、支払方法などを判断します。

一方、離婚後であっても、財産分与の合意ができていない場合は、家庭裁判所に財産分与調停を申し立てることができ、合意に至らない場合は審判に移行します。

離婚協議書の書き方」の解説

慰謝料的財産分与の時効や期限

慰謝料的財産分与の請求には、期限が存在します。

財産分与の請求期限について、2026年4月施行の民法改正により、離婚の時から5年とされました(民法768条2項但書)。この期間は「時効」ではなく「除斥期間」とされ、請求によって中断されず、期間が経過すると自動的に権利が消滅します。

これに対し、不法行為に基づく慰謝料請求の消滅時効は「損害及び加害者を知った時から3年間(生命又は身体の侵害は5年間)」「不法行為の時から20年間」です(民法724条)。したがって、財産分与と慰謝料で、請求権の期限が異なる点には注意が必要です。

離婚後でも財産分与は請求できる?」の解説

【まとめ】慰謝料的財産分与について

弁護士法人浅野総合法律事務所
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今回は、慰謝料的財産分与について詳しく解説しました。

離婚時の財産分与には、清算的要素、扶養的要素とともに、慰謝料的要素という性質を有することがあります。財産分与では、「一切の事情」が考慮されることとなっており、その中に、相手方が精神的苦痛を負い、賠償の必要があるという事情も含まれます。

財産分与が相当高額となるケースも多く、紛争の一括解決のため、様々な意味合いを込めることがあります。ただし、後の紛争を防ぐため、財産分与に慰謝料的要素を含めるなら、離婚協議書や調停調書に明記しておくべきです。また、財産分与に慰謝料を含めて考えることは、慰謝料を別途請求するのに比べれば相手に刺激になりにくく、円滑に解決できる可能性があります。

財産分与は、離婚時の金銭面の問題の中でも高額になりやすいため、不利益を被らないためにも、合意する前に弁護士へ相談するのがおすすめです。

この解説のポイント
  • 財産分与には、清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素の3つの性質がある
  • 婚姻関係を破綻させた責任が相手にあるなら、慰謝料的財産分与を検討する
  • 慰謝料的財産分与で有利な解決を実現するには、有責行為の証拠が必要となる

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