
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
DVというと、夫から妻に対する暴力をイメージすることが多いかもしれません。
しかし、妻から夫に対する暴力や暴言も、DV・モラハラとして問題になります。これが「逆DV」「逆モラハラ」です。妻から夫に行われても問題なのは当然ですが、一般のイメージとは「逆」であるためこのように呼ばれます。当事務所でも、次のような相談例があります。
妻から夫に対しては、殴る、蹴る、物を投げるといった物理的な行為にとどまりません。
力の差を凶器で補ったり、精神的にモラハラをしたり、小遣い制にして生活費を渡さない経済的モラハラ、性行為の強要などの性的モラハラのような様々な被害が組み合わさることが多いです。
今回は、逆DV・逆モラハラの特徴と離婚を切り出す方法について、弁護士が解説します。
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逆DV・逆モラハラとは、DV・モラハラ行為のうち、妻が夫に対して行う暴力・暴言です。
つまり、逆DVとは妻から夫へのDV、逆モラハラとは妻から夫へのモラハラのことです。「DV」とは「ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)」の略称です。

身体的には男性の方が女性よりも強いことが多いでしょう。しかし、力の差があるからといって、必ずしも夫(男性)が加害者、妻(女性)が被害者になるとは限りません。
DV・モラハラの典型的なイメージは、「夫が妻を殴る」というケースなので、それとは逆の妻からの暴力・暴言を「逆DV」「逆モラハラ」と呼びます。ただし、「逆」とは言ってもDV・モラハラの一種であり、違法な行為であることに変わりはありません。
一般に、夫(男性)の方が身体的に強いことが多いでしょう。
そのため、逆DV・逆モラハラの被害に遭ったことのない方からは、「女性の暴力では男性にダメージを与えられないのではないか」「抵抗すればよいのではないか」といった意見もあります。
しかし実際は、逆DV・逆モラハラで加えられる暴力・暴言は、単純な「殴る」「蹴る」だけでなく、物を投げつけたり包丁を振り回したりといった道具を使った暴力が含まれます。そのため、たとえ非力な女性でも、男性に危害を加えることは十分に可能です。
さらに、たとえ身体的なダメージが小さくても、日常的に繰り返されれば精神的苦痛が増大し、体格や力の差があっても、男性が逆DV・逆モラハラの被害者になり得ます。
なお、離婚で不利になることの多い男性側では、「男性が離婚を有利に進めるの全知識」の解説を参考にしてください。
逆DVや逆モラハラを行う妻は、プライドが高く、自分の非を認められないことが多いです。
自分の思い通りにならないことに激昂したり、夫を支配下に置こうとしたりする傾向が強く、精神的な不安定さが背景にあるといった特徴があります。そして、最大の問題は、加害者である妻自身に「暴力を振るっている」という自覚が乏しい点です。自分の言動は正当な要求であると思いこんでいるため、エスカレートしやすく、夫が疲弊するまで被害が続くおそれがあります。
妻側が、自分の考えを押し付けようとするとき、対抗して議論するよりも、第三者の視点を取り入れて客観的に状況をチェックするのが解決への第一歩となります。
逆DV・逆モラハラの被害者になると、「情けない」と引け目を感じる人もいます。
「男なのに」というプライドが邪魔して打ち明けにくく、一人で抱え込む人もいます。なかなか第三者に相談できないことが、被害を加速させる一因となっています。しかし実際は、逆DV・逆モラハラの問題は多く起こっています。
内閣府の調査によれば、女性の3人に1人が「暴力の被害があった」と回答していますが、男性も5人に1人の割合で暴力被害を受けた経験があると回答しています。さらに、男性被害者の場合、「身体的暴力」が最多であるという結果も興味深いです。

妻から「役立たず」「甲斐性無し」などと中傷されると、心に刺さり、外部への相談をストップしてしまいがちです。上記の調査でも、女性の約4割、男性の約7割が「どこにも相談していない」と回答しており、DV・モラハラを相談せず我慢してしまう傾向は、特に男性に顕著です。
女性の方が「被害を受けた」と回答する割合は多いものの、男性の方が相談せずに我慢する傾向にあります。その背景には、「逆DV・逆モラハラだと相談しても、信じてもらえないのではないか」といった不安があります。
しかし、逆DV・逆モラハラの被害は急増し、社会問題化しています。女性が加害者、男性が被害者となる暴力・暴言は決して珍しくありません。悩んでいるのが自分だけではないことを理解し、被害に遭ったら早めに相談してください。
「離婚に強い弁護士とは?」「男性側の離婚に強い弁護士の選び方」の解説



次に、よくある逆DV・逆モラハラの例について解説します。
殴る、蹴る、物を投げるといった物理的な暴力はもちろん、精神的暴力、性的暴力などもDVになります。身体的に夫(男性)が強くても、身体的な接触を伴わない加害行為もあります。
逆DV・逆モラハラがなくならない背景に「男は強くあるべき、女は家庭を守るべき」といった古い価値観があります。こうした誤った考え方があると、男性側の被害が隠されてしまいます。逆DV・逆モラハラは新しい問題で、被害者側ですら判断しにくいこともあるため、その種類やよくある被害内容を知っておく必要があります。
逆DV・逆モラハラの1つ目が、身体的な暴行によるものです。
殴る、蹴るはもちろん、非力な女性でも、道具を使用した逆DV・逆モラハラであれば大きな被害を与えられます。夫婦喧嘩のときの、ひっかく、かきむしる、叩くといった行為は、女性の力でも軽視できません。妻からの暴力でケガをして警察沙汰になるケースもしばしばあります。
例えば、次のような行為は、身体的な逆DV・逆モラハラにあたります。
「夫婦喧嘩で暴力があった際の対処法」の解説

逆DV・逆モラハラの2つ目は、精神的なダメージを増幅させる行為です。
相手を無視したり、夫婦として必要なコミュニケーションを取らなかったりといった行為は、精神的な加害に該当します。暴力がなくても、暴言や罵声、誹謗中傷、侮辱、人格否定による精神的な苦痛も見逃せません。特に、日常的、継続的に繰り返されると、大きなダメージとなります。
例えば、次の行為は、精神的な逆DV・逆モラハラにあたります。
「稼ぎが少ないくせに文句を言うな」などと罵られても我慢している夫は多くいます。特に、精神的な逆DV・逆モラハラを子供の前で行うことで、夫としての威厳を失わせ、家に居づらくさせる被害は非常に深刻です(面前DVとして虐待に当たるおそれもあります)。
逆DV・逆モラハラの3つ目は、経済的な虐待行為です。
将来の貯金や子供の教育資金のため、「小遣い制」とする家庭は多くあります。しかし、必要な生活費を与えず、昼食代にも事欠くような状況は、経済的な逆DV・逆モラハラと言えます。
例えば、次のような行為は、経済的な逆DV・逆モラハラに該当します。
「借金を理由とした離婚」の解説

逆DV・逆モラハラの4つ目は、社会的な隔離などの問題行為です。
人は、社会との絆やつながりをもって生きています。家庭は大切ですが、外部とのつながりがなくては精神的な充足を得られません。社会的な逆DV・逆モラハラは、夫の社会生活に支障を生じさせることで、精神的な苦痛を与えます。
例えば、次のような行為は、社会的な逆DV・逆モラハラにあたります。
逆DV・逆モラハラの5つ目が、性的な虐待行為です。
夫が妻に対して性行為を強要することはDV・モラハラと評価されますが、その逆に妻が夫に対して性行為を強要することもまた、DV・モラハラに該当します。
例えば、次のような行為は、性的な逆DV・逆モラハラにあたります。
「セックスレスを理由とする離婚」の解説


次に、逆DV・逆モラハラの被害に遭ったときの対応方法を解説します。
逆DV・逆モラハラを受けたら、最もおすすめの対応は「離婚を切り出すこと」です。強度の違法性がある場合には、あわせて慰謝料請求も行うべきです。男性であっても女性であっても、DV・モラハラ事案には毅然とした対応が必要となります。
自分の状況を客観的に見るのは難しく、第三者に打ち明け、評価してもらうのが効果的です。
特に、逆DV・逆モラハラは、一般のDV・モラハラのイメージとは異なるため、被害に遭っているという自覚がない人もいます。妻から罵倒され、繰り返し人格を否定されると、感覚が麻痺してしまうこともあります。問題に早く気付き、一人で抱え込まないようにしましょう。
周囲に適切な相談相手がいない場合、公的機関を活用することも有効です。逆DV・逆モラハラを相談できる公的機関には、DV相談ナビ(男女共同参画局)、配偶者暴力相談支援センター(男女共同参画局)、インターネット人権相談受付窓口(法務省)などがあります。
将来の離婚を検討している場合、早い段階で弁護士に相談するのが賢明です。
逆DV・逆モラハラでも、十分に離婚の原因になり得るため、経験豊富な弁護士であれば、離婚に向けて動く方法についてアドバイスを受けることができます。離婚の際は、慰謝料や親権、財産分与などが問題になりますが、早い段階で弁護士に相談しておけば、逆DV・逆モラハラの被害者が不利にならないよう配慮することができます。
「離婚を弁護士に相談する前の準備」の解説

逆DV・逆モラハラの中でも、暴力を伴う悪質性、危険性の高い事案は、警察に相談しておくべきです。事前に相談すれば、見回りを強化し、通報したらすぐに動いてくれます。たとえ女性からの暴力でも、生命に危険を生じさせることがあり、身の安全を最優先にして行動すべきです。
逆DV・逆モラハラが強度である場合、もはや同居を続けることは難しいでしょう。
一方で、軽度であれば、婚姻関係を継続し、やり直そうと考えている家庭もあります。このとき、逆DV・逆モラハラに当たる相手の言動を指摘し、理解してもらう必要があります。加害者は、時間が経つと都合の悪いことを忘れてしまったり、一時的な感情で暴力を振るっても怒りが過ぎると優しくなったりするケースがあります。解離性人格障害などの病気の可能性もあります。
そのため、相手が逆DV・逆モラハラを認めて反省し、今後行わないと誓ったなら、そのことを誓約書に書くことで証拠化しておきましょう。特に、逆DV・逆モラハラを理由として別居する際は、責任の所在が明らかになるよう「別居の合意書」を作るのがおすすめです。
逆DV・逆モラハラの被害に苦しむとき、裁判所に離婚を認めてもらったり、慰謝料の支払いを命じてもらったりするには「証拠」が必要です。
身体的な暴力を伴わないことも多い逆DV・逆モラハラは証拠が集めにくいですが、限界が来て逃げるように別居せざるを得なくなる前に、しっかりと確保しておいてください。
逆DV・逆モラハラの証拠には、次のものがあります。
逆DV・逆モラハラでも、通常のDV・モラハラと同じく証拠の重要性に変わりはありません。ただし、証拠に残りづらい陰湿な逆DV・逆モラハラでは、被害状況を裁判で認めてもらうため、被害者側の証拠収集は一層徹底しなければなりません。
「モラハラの証拠」の解説

逆DV・逆モラハラが強度なケースでは、「一時的なストレス」「ヒステリー」「男が我慢すればよい」といった考えは禁物です。我慢すれば増長し、被害を拡大させかねず、男性側の我慢が、逆DV・逆モラハラを増長させる要因となっている事例は多いのです。
離婚するかどうかはすぐ決断できなくても、逆DV・逆モラハラから距離を置かなければ、冷静な判断ができなくなってしまいます。このようなケースでは、速やかに別居するのが適切な対処法です。逆DV・逆モラハラだけでなく、子供の虐待を伴うなら、「子連れ別居」も検討します。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

次に、逆DV・逆モラハラで離婚を切り出す方法について解説します。
妻の暴力・暴言に耐えきれない方は、逆DV・逆モラハラを理由に離婚を検討してください。逆DV・逆モラハラをする妻は、夫から離婚を言い出しても拒絶することが少なくありません。離婚に同意が得られない場合、協議や調停は難しく、裁判離婚しかありません。

裁判で離婚が認められるには、民法770条1項の定める「法定離婚事由」(不貞行為、悪意の遺棄、三年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由)が必要です。
逆DVで身体的な暴行がある場合、法定離婚事由に該当します。
具体的には「悪意の遺棄」もしくは「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たります。したがって、暴行を受けた証拠があれば、妻の同意がなくても裁判離婚を勝ち取れます。裁判で離婚できる場合、前段階の協議や調停でも、逆DVの明らかな証拠を示せば、妻の同意を得やすくなります。
このような逆DV・逆モラハラの事例では、夫から妻に対しても暴力・暴言があるケースもあります。この場合、たとえ妻が暴力を振るっても、男性の方が女性よりも肉体的に強いと評価され、離婚事由に該当することを裁判所に認めてもらえないリスクがあります。
「お互いにモラハラを主張するときの対応」の解説

身体的暴力に至らずとも、罵詈雑言や誹謗中傷、性的行為の強要といった「逆モラハラ」がある場合は、法定離婚事由に該当するかどうかが微妙な判断となります。逆モラハラのケースで、裁判で離婚することが認められるかどうかは、次のような事情によって左右されます。
逆モラハラを受けている夫側の立場では、妻の言動の悪質性を証明するために、証拠収集が重要です。十分な証拠を集め、婚姻関係を継続できないほどの被害があると示すべきです。
相手がDV・モラハラ気質である場合、離婚の切り出し方に注意が必要です。
身の安全、心の健康を守る必要があるため、早めに同居を中止して別居を始めましょう。特に、継続的に繰り返される逆DV・逆モラハラからは、速やかに逃れるべきです。あわせて、事前に両親や親族、友人など周囲に相談して理解を得ておきましょう。世間的なイメージとは「逆」であるため、単に別居するだけだと、周囲が妻の話を信じ、夫が悪者にされるおそれがあるからです。
妻が逆DV・逆モラハラの事実を隠している場合、周囲に理解されづらいという問題点を避けるため、証拠を収集するとともに、頻繁に相談して被害状況を伝え続けるのが重要なポイントです。
「離婚前の別居の注意点」の解説


次に、逆DV・逆モラハラへの対応で、注意すべきポイントを解説します。
逆DV・逆モラハラの被害者には、「男性から離婚を切り出すと不利だ」という誤解もありますが、実際はそうではありません。妻側から、そのように言われているケースもあるでしょう。
確かに、夫(男性)から離婚を切り出した結果として、不利な流れで進むことがあります。しかしその中には、夫側にDVやモラハラ、不倫・浮気といった原因があって、どちらから切り出しても不利にならざるを得なかったケースもあります。
一般には、夫から妻への不倫や暴力の被害件数の方が多いため、「男性が離婚を切り出すと不利」という誤解を抱きがちです。しかし、男性側が被害者のとき、この理屈はあてはまりません。もちろん、夫(男性)から家を出て別居をスタートすることも問題ありません。
「勝手に別居すると不利?」の解説

逆DV・逆モラハラがあると、「問題ある妻には子育ては無理だ」と感じることがあります。
しかし、逆DV・逆モラハラがあることが、離婚時の親権判断に必ず影響するとは限りません。夫に暴力を振るう妻でも、母の役割は適切に果たしていて、親権を取得するケースもあります。父親が親権を獲得するのに重要なのは、「妻から子供への虐待があるかどうか」という点です。夫への加害に加え、子供にも虐待をしているなら、妻は親権者として不適格であると主張できます。
親権に影響する事情があるなら、子供を守るためにも証拠収集をしておきましょう。どのような暴力や虐待があったかは、証拠で証明しなければなりません。また、通常の離婚と同じく、これまでの監護実績、適切な養育環境の整備といった点も親権を得るために重要な事情となります。
「父親が親権を取る方法」の解説

妻から暴力を受けたとしても、感情的になってやり返すことは絶対に避けるべきです。
夫が反撃してしまうと、相手のケガを理由に警察沙汰になったり、離婚協議において「夫からのDVがあった」として有責配偶者扱いされたりするリスクがあります。どれほど理不尽な暴力を振るわれても、やり返すのではなく、冷静にその場を離れ、身の安全を確保することが最優先です。被害を裏付けるための証拠集めや、弁護士などへの相談を心がけてください。

逆DV・逆モラハラの問題は、経験豊富な弁護士にアドバイスを求めるのが有効です。
本来、男性でも女性でも、DV・モラハラが違法であることに変わりはないはずです。しかし、世間体やイメージ、行為の特殊性から、逆DV・逆モラハラに特有の注意点があります。そのため、男性が被害者となるケースの相談の経験が少ない弁護士だと、「男性なのに」「女性からの暴力の被害は小さいだろう」といった偏見や誤解を生み、適切な対処ができないおそれがあります。
当事務所では男性側の離婚問題についても数多くの解決実績があります。その中には、包丁を振り回したり階段から突き落としたりなど、強度の逆DV・逆モラハラのあるケースもあります。家庭裁判所長を歴任した弁護士を中心に、複雑な離婚問題に対処するための十分な体制があります。
今回は、逆DV・逆モラハラについて、男性側の立場から解説しました。
逆DV・逆モラハラは、妻の夫に対する強い支配欲の表れです。家庭内の暴力や暴言は、夫婦のどちらが加害者・被害者なのかを、性別のみによって決め付けるのは不適切です。
逆DV・逆モラハラは、法定離婚事由に該当し、妻が拒否しても裁判で離婚できるケースもあります。とはいえ、一般的なDV・モラハラのイメージと「逆」であるため、離婚や慰謝料を請求する場合、周囲や裁判所の理解を得るため、証拠収集をはじめとした事前準備が不可欠です。
逆DV・逆モラハラが争いになるケースでは、弁護士を間に入れて交渉するのがおすすめです。特に、男性側の離婚相談を多く受けている弁護士に相談してみてください。
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