
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
セックスレスが続くことを理由に、離婚を検討する方は少なくありません。
一見円満な夫婦でも、「異性として見られなくなった」といった理由でセックスレスになり、離婚へ向けて進むケースがあります。夫婦には互いに協力して婚姻生活を営む義務があり、正当な理由なく長期間セックスレスが続く場合、離婚や慰謝料の請求が認められる可能性があります。
一方で、単に「性交渉がない」というだけで直ちに離婚や慰謝料が認められるわけではなく、期間や経緯、拒否の理由など、様々な事情が総合考慮されます。セックスレスが長期化すると、理想の家族像や価値観に影響したり、不貞行為の原因になったりもします。
今回は、セックスレスを理由に離婚できる場合や慰謝料の相場、実際の裁判例について、弁護士がわかりやすく解説します。

セックスレスとは、夫婦でありながら、性交渉がない状態が長期間続くことを指します。
セックスレスに法的な定義はないものの、日本性科学会では「特別な事情がないのに、合意した性交やセクシャル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期化が予想される状態」と整理され、民間調査でも、夫婦のセックスレス率は2024年に64.2%と報告されています。裁判所の司法統計でも、離婚調停の申立て動機として約8%が「性的不調和」を挙げています。
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の者との性的関係は原則として禁止されます。
貞操義務に反する行為は「不貞行為」と呼ばれ、違法となります。裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」に該当するほか、慰謝料請求の対象にもなります。
夫婦間の性生活は、家庭生活を円満に続ける上で、非常に重要な役割を果たします。配偶者以外の者との肉体関係(性交渉)が禁止される一方で、配偶者との性の不一致があるのは非常につらく、実際に離婚の理由となるケースも少なくありません。
セックスレスの理由は夫婦によって様々ですが、例えば次のものがあります。
単純な「レス」「性交拒絶」だけでなく、特殊な性癖がある、相性が合わない、生理的に受け付けなくなった、性的不能(ED)になったなど、様々な問題が絡み合います。性的関係の拒否は、妻側からのことも夫側からのこともあり、相談事例によって状況は多種多様です。
夫婦双方が性交渉しないことに納得しているなら、直接的な離婚原因にはなりません。
しかし、一方が我慢を強いられ、不満を抱えると、結果的に浮気や不倫、モラハラといった夫婦間のトラブルに発展するおそれがあります。さらに、性交渉を拒否されることは、「子供を望んでいるのに、妊娠に協力的ではない」という別の離婚原因につながることもあります。
なお、後述の通り、セックスレスと離婚には「セックスレスを理由に離婚できるか」「セックスレスで慰謝料を請求できるか」という2つの問題があるため、順に解説します。
「離婚までの流れ」の解説

では次に、セックスレスを理由に離婚できるかどうかについて解説します。
配偶者から性交渉を拒否される状況は、離婚を決意する大きなきっかけになります。「不倫しているから性交渉したくないのではないか」「愛情が冷めたのではないか」といった疑念が積み重なると、単なる性的関係だけでなく、夫婦の信頼関係も維持できなくなります。
結論として、セックスレスという事実だけで、当然に離婚が認められるわけではありません。
夫婦の合意による協議離婚なら、理由にかかわらず離婚できます。しかし、一方が離婚を拒否した場合、調停や訴訟に移行します。そして、裁判離婚が認められるには、民法770条1項に定められた「法定離婚事由」が必要です。法定離婚事由には、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由の4つがあるところ、セックスレスによる離婚では、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが争いになります。
夫婦双方が性交渉を望まない場合や、一時的にセックスレスになっているだけである場合、婚姻関係が破綻したとは評価されません。また、病気や高齢など、性交渉を持てないことに正当な理由がある場合にも、離婚理由にはならないことがあります。
一方で、正当な理由なく長期間にわたって性交渉を拒否され、その結果として夫婦関係が修復できないほど悪化した場合には、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
したがって、重要なポイントは、セックスレスかどうかではなく、それによって婚姻関係が破綻したと認められるかどうかという点にあります。
前述の通り、裁判で離婚が認められるには、法定離婚事由が必要となります。
セックスレスは、不貞行為や悪意の遺棄のように法律で明示された離婚理由ではありませんが、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断されれば、裁判離婚が認められます。
婚姻を継続し難い重大な事由とは、夫婦関係が客観的に破綻し、今後も婚姻生活を続けることが困難な状態のことを指します。性交渉は夫婦生活において重要な要素の一つです。そのため、正当な理由なく性交渉を拒否し続け、夫婦間の信頼関係が失われた結果、婚姻関係が修復困難となった場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると評価できます。
ただし、裁判所は性交渉の有無だけではなく、婚姻期間や夫婦の年齢、子供の有無、話し合いの経緯など、様々な事情を総合考慮して判断しています。
セックスレスが離婚理由となる判断基準で、裁判所が考慮するのは次のような事情です。
このように、裁判所は「セックスレス」という一つの事情だけではなく、婚姻関係が客観的に修復困難な状態に至っているかどうかという観点から、夫婦の事情を総合的に判断しています。
「離婚裁判の流れ」の解説


次に、実際にセックスレスを理由に離婚が認められやすいケースを解説します。
夫婦間に性交渉の支障となる正当な理由がない場合、性交拒絶は離婚理由になりやすいです。例えば、病気やケガ、高齢による性機能の低下などが挙げられます。このような支障もなく、性交渉の拒否が長期間続けば、婚姻を継続し難い重大な事由と認められる可能性が高いです。
結婚の目的の一つに「子供を作ること」を挙げる家庭は多いでしょう。
女性にとっては高齢出産のリスクもあるため、適齢期に結婚や妊娠をしたいという気持ちが男性よりも強い傾向があります。一方で、男性側が協力的でなかったり、子供を強く望んでいなかったりして性交渉を拒否すると、大きな対立が生まれることとなります。
結婚当初から「子供を作らない」という合意がある場合でない限り、妊娠を望む妻の希望を一方的に無視したセックスレスは、離婚理由として認められやすい傾向にあります。
セックスレスの真の原因が、相手の不貞行為にあることがあります。
家庭内で処理できなくなった性的欲求を、家庭の外で発散しているケースです。この場合、セックスレスそのものよりも、「不貞行為」(民法770条1項1号)を、離婚理由として強く主張できます。不貞行為がある場合は、配偶者はもちろん、不貞相手に対しても慰謝料を請求できます。
ただし、夫婦関係を円満に保つ努力はお互いに怠ってはならず、破綻の責任があると反論されてしまうことは避けなければなりません。
裁判例でも、セックスレスであっても夫婦関係は「破綻」しておらず、その間の不貞行為について200万円の慰謝料を認めた事例(東京地裁平成29年10月18日判決)がある一方、「破綻」を認め、慰謝料請求を棄却した事例(東京地裁平成17年4月19日判決)もあります。
次に、セックスレスを理由に離婚することが認められにくいケースを解説します。
セックスレスの原因が一方にある場合、原因を作り出した側からの離婚請求は困難です。
裁判実務では、婚姻関係を破綻させる主な原因を作り出した「有責配偶者」からの離婚請求は、信義則上、認められない傾向にあります。特に、自身に不貞行為のあるケースでは、8年〜10年程度の長期の別居期間を要すると判断されることが多いです。

「有責配偶者からの離婚請求」の解説

夫婦双方が性交渉を望まず、自然とセックスレス状態になっている家庭もあります。
納得の上で性交渉がないことは夫婦生活でも大きな問題にはならず、婚姻を継続し難い重大な事由に該当しません。したがって、一方が強く望んでいたにもかかわらず拒否され、夫婦生活が立ち行かなくなるといった状況でない限り、離婚は認められにくいでしょう。このようなケースでは、セックスレス以外にも離婚を考え出すきっかけがあることが疑われます。
性交渉がないことに正当な理由がある場合、セックスレスだけを理由には離婚は認められません。正当な理由となる事情には、例えば次のようなものがあります。
理由がある場合、性交渉がなかったというだけの理由で婚姻を継続し難い重大な事由とまではいえず、離婚を認めてもらうのは難しいです。ただし、夫婦間で話し合い、解決に向けた努力をしていることが前提であり、真摯に向き合わず改善の努力もせずに放置した場合には、セックスレスと相まって、裁判離婚が認められる可能性もあります。
裁判例でも、セックスレスと離婚に関して判断した事例があります。
実際に、以下のような裁判例の判断が参考になります。いずれも、セックスレスのみではなく、夫婦関係を修復する努力がなかったことも合わせて考慮されている点がポイントです。
夫が性的不能であることを自覚しながら、それを隠して婚姻し、約1年半の同居中も性交渉ができなかった事案で、夫婦の性生活は婚姻の基本となる重要事項であり、妻が離婚を決意したのも無理はないことであるとして、離婚請求を認容しました。
結婚後しばらくは正常な性交渉があったものの、その後夫が性交渉を求めなくなり、他の男性と同性愛関係になった事案です。妻が数年間にわたり正常な性生活から遠ざけられ、受けた衝撃も大きいことから、夫婦関係の修復は不可能であるとして「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めました。
単に一方が同性愛者であることのみで直ちに離婚が認められるわけではなく、それにより婚姻関係の維持が具体的にどのように困難となったかが検討されています。
夫が性的不能であり、約3年半の同居中に一度も性交渉がなかった事案です。
裁判所は、病気や老齢などの特段の事情がない限り、婚姻後長年にわたり性交渉がないことは原則として「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判示して、離婚請求を認めました。また、事前に告知しなかったことについて、慰謝料の請求も認められています。
次に、実際にセックスレスを理由に離婚を進める場合の具体的な流れについて解説します。
相手が話し合いに応じれば協議離婚が可能ですが、離婚に反対された場合には調停・訴訟に進みます。この場合、裁判手続きでは証拠が重視されるため、早めに準備しておきましょう。
セックスレスと離婚の問題を有利に解決するには、証拠の収集が重要です。
相手が離婚に応じない場合、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを証拠によって証明する必要があるからです。また、その背景に不貞行為がある場合は、その事実についても証拠を集めておきましょう。裁判所では証拠が重視されるため、十分な証拠がないと離婚や慰謝料の請求が認められないおそれがあります。
例えば、次のようなものが証拠になります。
セックスレスを理由に離婚する場合、切り出し方には慎重さが求められます。
相手が離婚に応じれば、話し合って協議離婚を成立させることが可能です。一方で、セックスレスというセンシティブな問題の扱いを誤ると、態度を硬化させるおそれがあります。夫婦の話し合いでは、次のような点に注意してください。
以上の手順を踏んだ上で、関係修復が困難なときは、セックスレスを理由に離婚を切り出します。直接伝えにくいときは、弁護士を介して伝えることも可能です。
相手が離婚を拒否する場合や、協議に応じない場合、早い段階での別居がおすすめです。
セックスレスだけでは裁判で離婚が認められる理由とはならないおそれがあります。そのため、それ以外の事情も合わせて夫婦関係が破綻していることを示す必要があり、そのために重要な事情となるのが、長期間別居しているという事実です。
したがって、セックスレスが離婚を考える一つのきっかけとなっていても、それだけでは「婚姻を継続し難い重大な事由」とは言い切れないとき、早い段階で別居を開始しておくことが、早期離婚を実現するために重要です。
「離婚前の別居の注意点」の解説

夫婦間の協議が決裂する場合、離婚を強く希望する場合には調停を申し立て、調停委員の調整のもとに離婚に向けた話し合いを行います。調停での解決が困難であると判断されると不成立として終了し、その後は離婚裁判(離婚訴訟)の提起に進みます。
次に、セックスレスを理由とした慰謝料の請求について解説します。
望んでも性交渉をしてもらえない状態で精神的苦痛を感じるのは当然であり、違法性が認められる場合には、不法行為を理由とする慰謝料請求が認められることがあります。
配偶者の一方が他方からの性交渉の求めを正当な理由なく拒絶した場合、権利または法律上保護される利益(性交渉への期待)の侵害として、不法行為に基づく慰謝料請求が認められます。ただし、拒否が違法であり、かつ、正当な理由がないことが必要となります。
一方で、病気などの身体的事情がある、子供の養育に手がかかり余裕が持てない状況である、性交渉に変わる夫婦円満に向けた努力をしているといった正当な理由が存在する場合には、慰謝料の請求が認められないことがあります。また、話し合いによって協議離婚が成立する場合は、慰謝料なしで合意する夫婦も少なくありません。
セックスレスが原因で離婚に至った場合、慰謝料の額は個別の事情により異なります。
相場の目安は数十万円〜100万円程度ですが、悪質なケースでは100万円を超え、不貞行為を伴うケースなどは200万円〜300万円程度の慰謝料が認められる例もあります。

実際の裁判例では、次のような事例があります。
いずれの裁判例も、単に性交渉がないという事情のみではなく、セックスレスに至った夫婦の事情や、改善の努力の有無といった事情を総合的に考慮しています。
セックスレスの慰謝料の増額・減額を求めて争うには、その判断においてどのような事情が考慮されるかを知っておく必要があります。裁判実務では、次のような事情が考慮されています。
セックスレスは夫婦関係の悪化を招くのはもちろん、浮気や不倫を助長する原因にもなります。この場合、配偶者以外の者との性的関係は不貞行為となり、法定離婚理由となります。そして、セックスレスの結果として離婚に至った場合、より高額の慰謝料が認容される可能性があります。
セックスレスの慰謝料を請求するには、まずは証拠が重要となります。
特に、相手の不貞行為が疑われる場合、証拠がない状態で問い詰めても、否定されたり言い逃れをされたり、警戒して証拠を隠されたりするおそれがあります。不倫相手とのLINEやメールのやり取りのほか、探偵に依頼してラブホテルへの出入りなどを写真撮影するのが有効です。
証拠を準備したら、夫婦の話し合いで慰謝料を求めます。そして、相手が支払いに応じない場合、訴訟を提起して請求することを検討してください。さらに、セックスレスを理由として離婚を検討しているときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、その中で慰謝料を請求することも可能です。
「セックスレスと浮気」の解説


セックスレスを理由とする離婚は、夫婦間の感情的な対立が大きいことが多いです。
離婚が認められるか、慰謝料を請求できるかといった法的な問題も関わるため、早い段階で弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
セックスレスは夫婦の性生活という極めてプライベートな問題であり、親しい友人や家族でも相談しにくく、一人で抱え込む方が少なくありません。しかし、感情的に話し合いを進めたり、十分な準備もなく離婚を切り出したりすると、後悔が残るおそれがあります。特に、セックスレスを理由とした離婚が認められるかは、裁判実務を踏まえて検討しなければならず、その期間や原因、経緯、夫婦双方の努力などによって結果が左右されます。
弁護士には法律上の守秘義務があるため、夫婦の性生活をはじめとしたデリケートな問題も安心して相談することができます。誰にも打ち明けられずに悩み続け、その場の感情で離婚を決めてしまう前に、専門家に相談することで今後取るべき対応を明確にしてください。
当事務所は、セックスレスを含む離婚について数多くの相談を受けています。家庭裁判所長を歴任した弁護士が在籍し、裁判所がどのような事情を重視するかを踏まえた実践的なアドバイスが可能です。依頼者一人ひとりの事情に寄り添った解決策を提案しますので、セックスレスによる離婚で悩む方は、ぜひお気軽にご相談ください。
「離婚に強い弁護士とは」の解説

今回は、セックスレスを理由とする離婚について、詳しく解説しました。
セックスレスが正当な理由なく長期間続き、夫婦関係が修復困難となった場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。また、相手に責任がある場合には精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。ただし、離婚や慰謝料が認められるかどうかは、セックスレスの期間や原因、夫婦の話し合いの経緯などの事情を踏まえて判断すべきです。
セックスレスを理由に離婚が認められるためには、相手の責任や夫婦関係の破綻について、裏付けとなる証拠を収集しておくことが重要です。セックスレスの問題は、夫婦間でも話し合いが難しく、不妊やED、価値観の違いなど、非常にデリケートな事情を含むことが少なくありません。
一人で悩み続けるのではなく、離婚問題に詳しい弁護士へ早めに相談することで、ご自身の状況に応じた解決策を知るために大切です。