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セックスレスを理由に離婚するために理解しておきたいポイント

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

セックスレス離婚慰謝料

夫婦生活では「夜の営み」がとても重要であり、セックスレスは離婚を考える大きな理由になります。一見円満な夫婦も、「異性として見れなくなった」、「子どもが生まれてからセックスしなくなった」など様々な理由でセックスレスになります。

セックスレスなど性生活の不一致は、「異性として魅力を感じてもらえてないのでは」と自信を失わせるきっかけとなります。セックスレスが長期化すると、子作りについての意見の相違や、性欲を外で発散する不倫・浮気など、単なるセックスレスにとどまらない家庭問題に発展し、重大な離婚理由になります。

法律の観点からセックスレスの問題をみると、「セックスレスを理由に離婚できるのか」、「セックスレスで慰謝料請求できるのか」といった法律問題を検討しなければなりません。このとき、セックスレスの内容や程度、原因によって法的な結論が異なります。

今回の解説では、

  • セックスレスを理由に離婚することができるか
  • セックスレスを理由に慰謝料請求できるか
  • セックスレスと離婚の問題を有利に解決するためのポイント

といったセックスレスと離婚の法律知識について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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セックスレスと離婚に関する法律問題

セックスレスとは、夫婦であるにもかかわらず性交渉のない状態が続くことです。夫婦は互いに貞操義務を負い、他の異性と性交渉することが禁じられているため、夫婦間の性交渉はとても重要です。

セックスレスの理由は夫婦により様々ですが、

  • 異性ではなく家族としか見られなくなった
  • 加齢により異性としての魅力が薄れてしまった
  • 子どもがいて性交渉する意欲がわかない

など様々な理由があります。また、性生活の不一致の原因の中には、そもそも性癖が受け入れられないなど、元々その人との性交渉が苦痛となっていた例もあります。

夫婦双方が性交渉しないことに心から同意していれば離婚問題に発展しませんが、一方が我慢していたり、実は不倫・浮気をしていたり、子どもがほしいのに協力してくれなかったりといった事情があるとき、セックスレスが理由で離婚問題となります。

このようなとき、セックスレスに絡む法律問題として、次の2点が問題となります。以下で順に解説していきます。

セックスレスを理由に離婚できるか

セックスレス離婚慰謝料

夫婦なのに性交渉を拒否されてしまうと、これを理由に離婚を思い立つことがあります。「不倫・浮気しているのではないか」、「愛情が冷めてしまったのではないか」といった疑念は日々大きくなり、円満な夫婦生活を侵食していきます。

夫(または妻)が離婚を求めるとき、その争いは離婚協議・離婚調停・離婚裁判の順で進みますが、セックスレスを理由とするとき、他方が反対していると離婚ができないおそれがあります。そこで、セックスレスを理由に離婚できるかどうかについて解説していきます。

相手が離婚に同意する場合

セックスレスを理由に離婚を思い立ったときは、まずは夫婦間で話し合いを行い、双方が離婚に同意すれば、理由がセックスレスでも離婚できます。このように夫婦が同意により離婚することを「協議離婚」といいます。

夫婦間の性交渉にお互いあまりこだわりがないケースなど、性生活に関する夫婦の考え方に差がないとき、離婚について話し合いで合意が可能な例があります。

協議離婚が成立したときは、将来にもめごとを残さないよう、離婚協議書を作成することで合意内容を書面に残しておくことが重要です。特に、離婚理由となったセックスレスについて夫(または妻)の責任を認めて一定の慰謝料支払いをするとき、将来支払いがされない場合に備えて、離婚協議書を公正証書化しておいてください。

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相手が離婚に同意しない場合

夫婦間で離婚条件について合意できないときや、そもそも相手が離婚を拒否し復縁を望んでいるとき、協議離婚はできず、離婚調停を経て離婚訴訟に進みます。

セックスレスになるほど愛情がないから離婚に同意してくれるはず」と高を括るべきではありません。婚姻期間が長くなるほど、離婚時には「離婚とお金」の問題「離婚と子ども」の問題について多くの問題を清算しなければならず、単なる愛情の問題だけで片付けることはできないからです。

離婚訴訟では法定離婚原因(民法770条1項)が存在しないと離婚できないため、離婚の理由となったセックスレスが、次の法定離婚原因にあたるかどうかを検討する必要があります。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

セックスレスは明文上、民法770条1項1号〜4号にはあたらないため、5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかを検討することとなります(なお、セックスレスの原因が不貞や悪意の遺棄、精神病にあるとき、5号以外の法定離婚原因で離婚することが可能です)。

「婚姻を継続し難い重大な事由」は、他の各号と同程度の重大性があり、夫婦生活が破綻し、回復困難な程度に達している必要があります。

そのため、一言で「セックスレス」といっても、セックスレスの期間や程度、誘いを拒否された回数、理由、経緯、当事者の責任の度合いなどによって「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められるかどうかの判断は分かれます。

セックスレスを理由に離婚できるケース

夫婦間で性交渉するのに何ら支障がないのに、正当な理由なく夫(または妻)が性交渉を拒んでいるとき、そのような状態が長く続くと、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、裁判で離婚を認めてもらうことができます。

特に「妻が子どもを望むが、夫が性交渉してくれない」というケースでは、女性の結婚理由が「子ども」であったのに子作りをしてくれず、早く離婚しないと高齢出産となってしまうリスクもあることから、離婚に向けて進む可能性が高くなります。結婚当初から「子どもをつくらない」と合意していない限り、妊娠を望む女性の性交渉を断わり続けてセックスレスとなると、離婚理由として認められやすくなります。

加えて、セックスレスの原因について相手の責任を追及できる場合、例えば、不倫・浮気にのめり込んで夫婦間の性交渉はしないというケースでは、「不貞行為」(民法770条1項1号)も加わり、より離婚を認めてもらいやすくなります。

セックスレスを理由に離婚できないケース

セックスレスを理由に離婚できないケースの典型例は、セックスレスの原因が自分側にあるケースです。自分の不倫が原因で妻に性的魅力を感じなくてセックスレスになってしまったとき、その原因はあなたにありますから、セックスレスを理由に離婚することはできません。

むしろ、自分が不倫をしているときは有責配偶者(夫婦の破綻について責任ある配偶者)となるため、原則として離婚請求は裁判で認めてもらえず、認めてもらうためには8年〜10年の別居期間を要するとするのが実務です(参考:「離婚に必要となる別居期間」)。

また、性交渉をしなくなったことについて正当な理由がある場合にも、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるほどの重大性がないため、セックスレスで離婚することはできません。正当な理由には次のようなものがあります。

  • 夫婦双方が、性交渉しないことに同意している
  • 高齢であるため、性交渉をしなくても夫婦が円満である
  • 出張や単身赴任で、頻繁に性交渉をすることができない
  • 仕事が忙しくて性交渉をしている時間的余裕がない
  • EDや精神疾患など、病気が原因で性交渉できない

なお、これらの理由は、セックスレスが重大かどうか、という点に影響してきます。そのため、一律に考えるのではなく、まずは夫婦間で話し合い、解決できないかを模索すべきです。上記のような理由があったとしても、夫婦間のコミュニケーションも全くない状態だと、セックスレスが長く続けば、裁判で離婚が認められることもあり得ます。

セックスレスを理由に慰謝料請求できるか

セックスレス離婚慰謝料

セックスレスは、異性としての魅力を否定された気持ちになるなど精神的苦痛を伴うため、慰謝料請求できるケースがあります。

民法は、不法行為(民法709条)により精神的苦痛を被ったとき、不法行為者に対し、財産以外の損害の賠償として、慰謝料請求できることを定めています(民法709条)。

セックスレスで離婚するときの慰謝料請求

セックスレスで離婚するとき、離婚の責任が相手にあるといえるときは慰謝料請求することができます。この点で、前章で解説した「婚姻を継続し難い重大な事由」にセックスレスがあたるような悪質性・重大性があると考えられるときには、離婚請求とあわせて慰謝料請求することができます。

例えば、正当な理由なく性交渉を拒み続けたことが理由で離婚に至ったときや、不倫・浮気が原因で性交渉しなくなり離婚に至ったとき、慰謝料請求が可能です。

なお、セックスレスで離婚したからといって必ず慰謝料請求できるわけではなく、協議離婚に至ったときなど、きっかけはセックスレスだったとしても特に慰謝料は定めないケースも多くあります。

セックスレスでも離婚しないときの慰謝料請求

セックスレスでも離婚までは至らないときには、そのセックスレスには不法行為(民法709条)と認められるほどの違法性はないものと考えられることが多いでしょうから、慰謝料請求することは難しいです。

慰謝料額の相場

セックスレスで離婚に至ったときの慰謝料額は10万円程度の低い事例から、300万円など高額な事例まで様々です。これは、セックスレスだけで離婚の慰謝料を決めているというよりは、セックスレスを含む多くの離婚の理由を総合して慰謝料額を決定しているためです。

むしろ、セックスレスだけでは、それほど高額な慰謝料を得ることは難しいです。一言で「セックスレス」といってもその内容は多種多様なため、少しでも慰謝料額を増額したいときは、その違法性・悪質性が高いことを主張するようにしてください。

慰謝料額の算定で考慮される事情には、次のものがあります。

  • セックスレスに至る経緯
    性交渉に特に支障がないのにセックスレスになったとき、その違法性が高く評価される
  • セックスレスとなった理由・責任
    相手にセックスレスの責任があるといえるほど、慰謝料が高額となる
  • セックスレスの期間
    長期間セックスレスが続くほど、慰謝料が高額となる
  • 性交渉を求めたときの相手の態度
    無視したり冷たい態度をとったりするほど、慰謝料が高額となる
  • セックスレスを解消するための努力
    性交渉を試みる努力が足りないほど慰謝料が高額となる(病気が理由の場合は治療も必要)
  • 婚姻期間の長さ、子どもの有無
    夫婦生活が終了するときのダメージが大きいほど、慰謝料が高額となる
  • 慰謝料を支払う側の収入・社会的地位
    支払能力が高いほど、慰謝料が高額となる

セックスレスと離婚の問題を有利に進めるためのポイント

セックスレス離婚慰謝料

セックスレスを理由に離婚を求めるとき「婚姻を継続し難い事由」を認めてもらい、かつ、その違法性が強いことを主張して慰謝料請求するという方針となります。

このようなセックスレスを理由とした離婚問題を有利に進めるため、注意しておいてほしいポイントを最後に解説しておきます。

専門家に相談する

セックスレスの問題は、夫婦のプライベートな問題であるため、たとえ親しい友人や親であっても、第三者に相談しづらいものです。そのため、一人で抱え込んでしまって我慢してしまい、限界に達したときには離婚や慰謝料請求の準備がまったくできていなかったということもよくあります。

このようなプライベートの難しい問題は、専門家に相談することがおすすめです。弁護士は、セックスレスと離婚についての法的な問題について的確なアドバイスをすることができます。弁護士は法律上の守秘義務を負っており、外に秘密を漏らすことはありません。

なお、セックスレスの心理的側面、身体的側面については、カウンセラーや医師などのアドバイスを聞くことも有益です。

参考解説

証拠収集する

セックスレスと離婚の問題を有利に解決するためには、証拠収集が重要です。証拠は、1つにはセックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるほどの重大性があることを証明し、2つ目に、セックスレスに慰謝料請求を認めるほどの違法性があると示すのに役立ちます。

裁判所では証拠が重視されるため、十分な証拠がないと離婚が認められなかったり、慰謝料が低額になったりするおそれがあります。夫婦生活のプライベートに関する事情は証拠が残しづらいですが、次のようなものが証拠となります。

  • 日記
    日常生活の記録をつけながら性交渉の有無を記録しておいた日記により、性交渉がなかったことを証明する。性交渉を求めたが拒否されたときは、その反応、言動を詳細に記録する。毎日書き続けることで、改ざんや記憶違いを疑われることを防ぎ、証拠としての価値を上げることができる。
  • 当事者間のメール・LINEなどのやりとり
    当事者間のやりとりが記録されていると、セックスレスの理由や経緯、責任の程度が、話の流れなどから証明できることがある。
  • 会話の録音
    当事者間の会話をボイスレコーダーやスマホで録音する。会話の流れがわかるよう、一部を切り取るのではなく全体を録音することが大切。

別居する

セックスレスだけでは離婚が難しいときでも、あくまでもセックスレスは夫婦の破綻のきっかけに過ぎず、その後に長期間の別居をした上で離婚をするというケースもあります。このようなとき、別居期間が長いときは、そのことが夫婦関係の破綻を示すことから、離婚を認めてもらいやすくなります。

そのため、セックスレスで離婚を思い立ったとき、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するかどうか自信がないとき、早めに離婚に向けた別居を開始することがおすすめです。

なお、同居中しかセックスレスやその理由などに関する証拠が入手できないとき、別居に先立って証拠収集を十分に行っておくことが大切です。

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セックスレスの原因が不倫・浮気だったときの対応

セックスレス自体が離婚や慰謝料請求の理由となるのはもちろん、そればかりではく、夫婦関係が冷え切らせ、不倫・浮気に走らせる原因となり、夫婦関係をますます悪化させることもあります。逆に、不倫・浮気がセックスレスの原因であったということもあります。

セックスレスとともに相手の不倫・浮気が発覚したときは、これを離婚理由として離婚することができるほか、慰謝料請求も可能です。不倫・浮気の慰謝料の相場は100万円〜300万円が目安であり、セックスレスしか理由がないときに比べ、高額の慰謝料をもらうことができます。

セックスレスが続き、相手が不倫・浮気しているのではないかと疑うときは、すぐに問い詰めると証拠がとれなくなってしまうおそれがあります。こっそり探偵・興信所に依頼して証拠収集を先行させることが、有利に進めるためには大切なことです。

「離婚問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

セックスレス離婚慰謝料

今回は、セックスレスと離婚の問題について弁護士が解説しました。

セックスレスは「その他婚姻を継続し難い事由」(民法770条1項5号)として離婚理由となるほか、慰謝料請求の対象となる可能性がありますが、その内容や程度、原因などによって、夫婦の状況に合わせたケースバイケースの検討が必要です。性交渉に関する夫婦の考え方に差があると、離婚せざるを得ないことがあります。

また、セックスレスで離婚を求めたり慰謝料請求したりするとき、セックスレスの責任が相手にあることや、夫婦間で重大な問題となることを証明するため証拠を準備する必要があります。

セックスレスをはじめ性生活の不一致の問題には、不妊やEDなどプライバシー性の強い問題を多く含みますが、法律上の守秘義務を負う弁護士であれば、法的観点から夫婦の問題について的確にアドバイスすることができます。

離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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