夫婦生活では「夜の営み」が大切で、セックスレスは大きな離婚原因の一つです。
円満な夫婦でも、「異性として見れなくなった」「子供の親としては良いのだが」といった理由でセックスレスになると、急速に離婚へ進むケースもあります。
性生活がないと、「魅力を感じてもらえない」「愛情がない」など、相手の自身を失わせることにも繋がります。長期化すると、将来の家族像について価値観が衝突したり、性欲発散のために浮気や不倫に走ったりと、別の夫婦トラブルに発展しかねません。
セックスレスで離婚することができる?
セックスレスだと慰謝料を請求できる?
このようなセックスレスにまつわる不安や疑問は、レスの程度や期間、原因などによっても、最適な解決策が異なります。今回は、セックスレスを理由とする離婚と慰謝料請求のポイントについて、弁護士が解説します。
- セックスレスは重大な離婚理由となる(特に出産適齢期の女性)
- セックスレスが重度、かつ、悪質なとき、相手が拒否しても裁判離婚できる
- セックスレスの慰謝料請求は、違法性を証明する証拠が重要となる
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セックスレスとは
セックスレスとは、夫婦でありながら、性交渉がない状態が長期間続くことを指します。「Sexレス」や、単に「レス」と表現されることもあります。
夫婦の貞操義務とセックスレス
夫婦には「貞操義務」があり、他の異性と性的関係を持つことは原則として禁止されています。この義務に反して異性と肉体関係を持つことは「不貞行為」とされ、違法です。不貞行為があると、法律上離婚が認められる理由(法定離婚事由)になるだけでなく、慰謝料請求の対象にもなります。
夫婦間の性生活は、家庭生活を円満に続ける上で、重要な役割を果たします。他の異性と性交渉することなく一生連れ添うのに、配偶者(夫や妻)と性の不一致がある場合、離婚理由として挙げられることも多く、その深刻さが伺えます。
セックスレスの主な理由
セックスレスの理由は夫婦によっても様々ですが、以下の例があります。
- 長年連れ添った結果、性の対象ではなく家族のように思える
- 加齢によって異性としての魅力が薄れたと感じる
- 出産後、体型の変化により魅力を感じなくなった
- 子育ての負担が大きく性交渉する意欲が湧かない
性生活の不一致は、単純なセックスレスだけでなく、「特殊な性癖がある」「相性が合わない」「生理的に受け付けない」といった理由で、結婚当初から苦痛を感じていたケースもあります。セックスを拒否するのが妻の場合もあれば、夫の場合もあり、相談事例は様々です。
セックスレスが離婚につながるケース
夫婦双方が性交渉をしないことに納得しているなら、セックスレスは直接的な離婚原因にはなりません。しかし、一方が我慢を強いられていたり、不満を抱えた結果として浮気や不倫、風俗通いに走ったり、「子供を望んでいるのにセックスに協力的でない」と悩んでいたりするケースは、セックスレスが離婚のきっかけになることもあります。
セックスレスと離婚の問題には「セックスレスを理由に離婚できるか」「セックスレスで慰謝料を請求できるか」という2つの異なる法律問題があります。
「離婚までの流れ」の解説
セックスレスを理由に離婚できるか
次に「セックスレスを理由に離婚できるか」について解説します。
夫婦なのに性交渉を拒否される状況は、離婚を思い立つ大きなきっかけになります。「浮気しているからセックスしたくないのではないか」「愛情が冷めたのではないか」といった疑念が積み重なると、夫婦の信頼関係も保ちづらくなります。
ただ、夫や妻が離婚を求めても、他方が拒む場合、セックスレスしか理由がないと離婚が認められないおそれがあります。
夫婦の同意があればセックスレスを理由に離婚できる
セックスレスしか理由がなくても、夫婦双方が離婚に同意する場合には離婚できます。
そのため、離婚を思い立ったら、まずは夫婦間で話し合いをします。この話し合いによる離婚を「協議離婚」と呼び、夫婦が互いに性交渉にこだわりがないなど、性生活についての考えに大きな隔たりがないなら、話し合いにより円滑に合意に達する例もあります。
協議離婚が成立したら、将来的なトラブルを防ぐため離婚協議書を作成し、合意内容を書面に残すことが重要です。特に、離婚理由であるセックスレスについて夫または妻が責任を認めて慰謝料を支払うケースは、離婚協議書を公正証書にする方法を検討してください。公正証書があれば、慰謝料の支払いが履行されない場合に、裁判を経ずに強制執行で回収できるからです。
「協議離婚の進め方」の解説
相手がセックスレスによる離婚に同意しないときの対応
一方がセックスレスを理由に離婚したくても、他方は離婚に同意せず、復縁を望むケースは少なくありません。性生活に関する価値観は、男女で大きく異なることもしばしばで、このとき協議離婚は成立せず、離婚調停を経て、最終的には離婚裁判(離婚訴訟)に進みます。
「性交渉を拒否するほど愛情がないなら、離婚に同意してくれるはず」というのは安易な期待です。婚姻期間が長いほど、離婚に伴う財産分与や養育費が高額になったり、子供に情が湧いたりといった複雑な問題が絡み、単なる愛情の問題だけでは片付けられません。
離婚訴訟では、民法770条の定める法定離婚事由がないと離婚は成立しません。
民法770条(裁判上の離婚)
1. 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。2. 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
民法(e-Gov法令検索)
セックスレスは上記1号〜4号のいずれにも該当せず、5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかを検討します(セックスレスの原因が、不貞や悪意の遺棄、精神病にあるとき、1号、2号、4号などを検討します)。セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められるには、他の各号と同程度の重大性があり、夫婦生活が回復困難なほどに破綻している必要があります。
セックスレスの重大性については、例えば以下の事情が考慮されます。
- セックスレスの続いた期間
- セックスレスに至った原因と、改善のための努力の有無
- セックスレスの深刻さ
- 性交渉の誘いを拒否された頻度や理由
- セックスレスに至るまでの夫婦生活の経緯
- 双方の責任の度合い
これらの事情を総合的に考慮して、夫婦関係が破綻していて回復が困難と認められる場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められる可能性があります。
セックスレスを理由に離婚できる場合
セックスレスに悩む方は、離婚できるケースなのかを具体的に理解しておきましょう。次に、実際にセックスレスを理由に離婚が認められた事例について、3つのケースで紹介します。
セックスの拒否に正当な理由がない場合
夫婦の間に性交渉の支障となる正当な理由があるなら、セックスを拒否しても直ちに離婚理由にはなりません。例えば、高齢による性機能の低下や病気は正当な理由になり得ます。しかし、全く支障がないのに夫や妻が性交渉を拒否するとき、正当な理由はありません。正当な理由のない性交渉の拒否が続けば、「婚姻を継続し難い重大な事由」として裁判で離婚が認められる可能性が高いです。
子作りを拒否し続けた場合
結婚の目的の一つに「子供を作ること」を上げる家庭は多いでしょう。特に女性にとって、結婚や妊娠が遅れると、高齢出産のリスクが高まることが懸念材料となります。
一方で、男性の中には子作りをさほど急がない、あるいは、子供を強く望まない人もいて、軽い気持ちで性交渉を拒むケースもあります。例えば、妻が妊娠を希望しているのに夫が性交渉を拒否し続けたとき、「婚姻を継続し難い事由」として離婚が認められることがあります。
結婚当初に「子供を作らない」という合意がない場合、妊娠を望む妻の希望を無視したセックスレスは、離婚理由として認められやすい傾向にあります。妻側が、次の相手との妊娠・出産を望み、早期離婚に向けて進む可能性もあります。
セックスレスの一方で浮気や不倫がある場合
セックスレスの原因が相手の浮気や不倫による場合、セックスレスそのものよりも「不貞行為」(民法770条1項1号)の責任が、離婚理由として強く主張されます。特に男性は、性欲を発散させる必要に駆られ、不貞相手を作ったり風俗通いをしたりする人がいます。
この場合、不貞相手に対しても慰謝料を請求することができます。
ただし、セックスレスが続く中で、夫婦関係を円満に保つ努力をあなたがしないと、「既に夫婦関係が破綻していた」とみなされ、慰謝料が認められないおそれがあります。
裁判例では、セックスレスが続いも夫婦関係の「破綻」を認めず、200万円の慰謝料を認めた例(東京地裁平成29年10月18日判決、東京地裁平成18年9月15日判決)がある一方、「破綻」を認め、慰謝料請求を棄却したもの(東京地裁平成17年4月19日判決)もあります。
セックスレスを理由には離婚ができない場合
次に、セックスレスが離婚理由として認められないケースを解説します。
セックスレスが夫婦関係に深刻な影響を与えても、残念ながらそれだけを理由に離婚が認められないケースもあります。その場合、法律以外の方法、例えば医師の診療やカウンセリングなどで問題解決を試みなければなりません。
セックスレスの原因が自分にある場合
セックスレスを理由に離婚が難しい典型例は、原因が自分自身にあるケースです。原因を作り出した側から離婚を求めるのは困難で、家庭裁判所も離婚請求を認めない可能性が高いとされます。
例えば、浮気や不倫がバレて妻が性交渉に応じてくれなくなった場合、原因はあなた自身にあり、離婚を求めることは許されません。不倫をした側は「有責配偶者」として夫婦関係の破綻について責任を負うので、離婚請求を認めないのが裁判実務です。なお、有責配偶者からの離婚を認められるには、通常8年〜10年の別居期間を要します。
夫婦双方がセックスを望まない場合
夫婦双方が性交渉を特に望まず、自然とセックスレス状態になっている場合も、離婚理由として認められることはありません。納得の上で性交渉のないことは夫婦生活でも大きな問題にならず、セックスレスは「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとは言えないからです。
例えば、あなた自身も普段から性交渉を強く望んでいなかったなら、セックスレスを理由に離婚を主張するのは「こじつけ」と判断され、「他に理由があるのではないか」と疑われます。この場合に、離婚請求が認められないのも当然といえるでしょう。
セックスできない正当な理由がある場合
性交渉ができなくなったことに正当な理由がある場合も、セックスレスだけを理由に離婚が認められる可能性は低いです。正当な理由は、例えば次のものです。
- 夫婦の双方が性交渉しないことに同意している
- 高齢によりセックスがなくても夫婦関係が円満である
- 仕事の忙しさや頻繁な出張、単身赴任で物理的にセックスが困難
- EDや精神疾患など、病気が原因で性交渉できない
これらの理由がある場合「婚姻を継続し難い重大な事由」とまでは言えず、離婚するのは難しいです。ただし、きちんと夫婦間で話し合い、解決に向けた努力をすべきです。夫婦間のコミュニケーションを怠り、改善の努力もないままセックスレス状態を放置した場合は、裁判で離婚が認められているケースもあります。
セックスレスで慰謝料を請求できるか
次に、セックスレスを理由に慰謝料を請求できるかどうか、解説します。
セックスレスになると、異性としての魅力を否定された気持ちにさせられるなど、精神的なダメージがあるため、慰謝料請求できるケースもあります。
違法なら慰謝料請求できる
民法は、不法行為による精神的苦痛があった場合、不法行為者に対して慰謝料を請求できることを定めます(民法709条、710条)。セックスレスが原因で離婚に至り、その責任が相手にあるなら、慰謝料請求が認められる可能性があります。
「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたる悪質かつ重大なセックスレスであれば、離婚とあわせて慰謝料請求を検討すべきです。例えば、次の場合が挙げられます。
- 正当な理由なく性交渉を拒み続けたこ結果、離婚に至った場合
- 浮気や不倫が原因でセックスレスとなり、離婚せざるを得なくなった場合
一方で、セックスレスでも離婚理由として認められない場合や、不法行為と認められるほどの違法性がない場合は、慰謝料の請求は難しいこともあります。また、協議離婚が成立する場合には、話し合いの結果として慰謝料なしで合意する夫婦もいます。
セックスレスによる慰謝料の相場
セックスレスが原因で離婚に至った場合、慰謝料の額は事例によって異なります。
相場の目安は数十万円〜100万円程度ですが、悪質なセックスレスによって離婚に至るケースでは、100万円以上、場合によっては300万円の高額な慰謝料が認められる場合もあります。相場には幅があるので、個別の事情に応じて、適切な慰謝料額を判断しなければなりません。
ただし、単なるセックスレスのみで高額の慰謝料を得るのは難しいです。慰謝料を増額させるには、セックスレスを含む、離婚に至った夫婦間の様々な事情を総合的に考慮して、悪質性を主張する必要があります。
セックスレスの慰謝料が高額になる要因
一言で「セックスレス」といっても内容は様々です。少しでも慰謝料を増額したいときは、その違法性や悪質性が高いことを主張すべきです。考慮される要素は、例えば次のものです。
- セックスレスに至る経緯
性交渉に特に支障がなく、理由もないのにセックスレスとなるほど、違法性が高いとされます。逆に、正当な理由があれば、違法性はありません。 - セックスレスの責任の所在
セックスレスの原因となった事情がある人の方が責任が重く、慰謝料が増額されます。 - セックスレスの期間
長期間にわたるセックスレスほど慰謝料が増える傾向にあります。 - 性交渉の誘いに対する態度や解消する努力
無視したり冷たい態度を取ったりするほど慰謝料が高額になります。また、性交渉を試みる努力(病気が原因の場合には治療も含む)がないと、慰謝料が増額されます。 - 婚姻期間の長さや子供の有無
婚姻期間が長いほど、夫婦生活が終了する精神的苦痛は大きく、慰謝料は高額となります。同様に、子供がいるほど、離婚される側のダメージは増大します。 - 慰謝料を支払う側の収入・社会的地位
支払い能力能力がある人ほど、一定程度の慰謝料が認められます。
セックスレスは、夫婦関係の悪化を招くだけでなく、浮気や不倫を助長する原因となります。浮気や不倫は、セックスレスが背景にあったとしても、不貞行為(民法770条1項1号)の離婚理由として主張することができます。慰謝料額も、セックスレス単独よりも高額になるケースが多く、不貞慰謝料の相場は100万円〜300万円程度が目安とされ、より高額の慰謝料が期待できます。
セックスレスが続き、浮気や不倫を疑う事態でも、感情的に問い詰めるのではなく、冷静に証拠を集めることが重要です。すぐに指摘すると警戒され、証拠が入手できなくなってしまいます。探偵や興信所に証拠の確保を依頼して、有責性があることを証明できれば、離婚や慰謝料の交渉で優位に立つことができます。
セックスレスで離婚・慰謝料を認めた裁判例
裁判例でも、実際に、セックスレスを理由に離婚したり、慰謝料を認めたりした例があります。
まず、最高裁昭和62年9月2日判決は、「婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもつて共同生活を営むこと」と示し、セックスレスが、あるべき夫婦像とは反していることが明らかにしています。裁判所もまた、セックスレスが、夫婦において大きな問題となりうると考えているわけです。
セックスレスの問題は、プライバシーに関わる守秘性の高いトラブルなので、判決にならずに和解するケースが多いですが、いくつかの裁判例を紹介します。
協議離婚した元夫婦について、交際開始から同居、離婚に至るまで性交渉が全くなく、キスやハグなど身体的接触もなかったケースで、妻からの500万円の慰謝料を認めました。
本裁判例は、性交渉のなかったことに夫側の原因があるばかりでなく、妻が不安を感じて夫に伝えたのに態度が変わらず、夫婦の精神的結合を深める努力を夫がしなかったなどの事情が重視され、不法行為(民法709条)と判断されています。
新婚の夫が初夜以来セックスレスなのに、何も理由を説明しなかった点も含めて、100万円の慰謝料を認容しました。
夫の性的不能がセックスレスの理由でありながら、それを説明しなかった点も含めて、200万円の慰謝料を認容しました。
いずれの裁判例も、単にセックスレスだというだけで離婚や慰謝料が認められたのではなく、夫婦関係を修復する努力をしなかったこともあわせて重視されているのがポイントです。
セックスレスによる離婚を有利に進めるポイント
最後に、セックスレスを理由とした離婚を有利に進めるため、注意すべきポイントを解説します。セックスレスを理由に離婚を希望するなら、「婚姻を継続し難い事由」を裁判所に認めさせ、かつ、その違法性が強いことを主張して慰謝料を請求するのが適切な方針です。
セックスレスによる離婚の切り出し方
セックスレスを理由に離婚できるケースは少なくないものの、切り出し方を間違えると問題がこじれ、離婚トラブルが複雑化するおそれがあります。セックスレスで離婚を決意した場合は、次のプロセスを踏んで慎重に進めてください。
セックスレスを主張するには、自分が性交渉に積極的であったことを示す必要があります。「あなたの努力が足りないから性交渉ができなかった」という反論を防ぐためにも、自ら歩み寄る姿勢を見せることが重要です。
相手に性交渉を求めて拒否された場合は、理由を丁寧に尋ねてください。この段階で相手の言い分を記録しておくと、後々の証拠として役立ちます。
セックスレスの原因があなた自身にあると指摘された場合、改善の努力をした上で離婚を切り出すようにしましょう。こちら側が改善の努力をしたことで、相手の責任を明確にすることができます。
以上のプロセスを踏んだ上で、セックスレスを理由に離婚を切り出すようにします。
離婚を切り出すときも、セックスレスが理由だと、恥ずかしくて面と向かってうまく話せない方もいます。その場合は、別居を先行させ、弁護士から離婚請求してもらう方法がお勧めです。
セックスレスの証拠を収集する
セックスレスと離婚の問題を有利に解決するには、証拠の収集が重要です。
用意すべき証拠は、1つには、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを示すもの、2つ目に、セックスレスに慰謝料を請求できるほどの違法性があると証明する資料です。
裁判所では証拠が重視されるので、十分な証拠がないと、離婚が認められなかったり、慰謝料が低額になったりするおそれがあります。夫婦生活というプライベートな場のことは証拠に残しづらいですが、次のものを活用できます。
- 日記(特に性交渉の有無に関する記録)
「性交渉があったかどうか」を毎日記録することで、セックスレスであった期間を証明することができます。求めたが拒否されたときは、相手の反応や言動についても詳細に記録してください。日常の出来事も書いておけば、改ざんや記憶違いを疑われるのを防ぐことができ、信頼性を上げることができます。 - 夫婦間のメール・LINEなどのやりとり
当事者間のやりとりを保存することで、セックスレスの理由や経緯、責任の度合いを証明できます。 - 会話の録音
会話をボイスレコーダーやスマートフォンで録音します。会話の流れがわかるよう、一部を切り取るのではなく全体を録音することが大切です。
早い段階で別居する
セックスレスのみでは離婚が難しい場合でも、長期間の別居を経ることで、夫婦関係の破綻を示し、離婚を成功させるケースがあります。このとき、セックスレスはあくまで夫婦の破綻のきっかけであり、別居期間が長いほど、裁判所に「破綻」を認めてもらいやすくなります。
したがって、セックスレスが軽度であったり、それだけで「離婚を継続し難い重大な事由」といえるかどうか自信がなかったりする場合、早めに別居をスタートさせるのが離婚への近道です。セックスレスに関する証拠は守秘性が高く、同居中にしか入手できないものも多いため、別居を開始する前に十分な証拠を収集しておくことが重要です。
弁護士に相談する
セックスレスは夫婦のプライベートな問題なので、親しい友人や家族にも相談しづらいケースが多く、一人で抱え込む人も少なくありません。その結果、離婚や慰謝料請求の準備が整わないまま、問題が深刻化することがあります。
弁護士に相談すれば、セックスレスと離婚に関する法的な問題について、専門的で的確なアドバイスが得られます。弁護士は法律上の守秘義務を負うので、相談内容が外部に漏れる心配もありません。なお、弁護士は法律の専門家なので、医師やカウンセラーなどの連携が必要なケースもあります(参照「岡野あつこの離婚相談救急隊」)。
「離婚に強い弁護士とは」の解説
まとめ
今回は、セックスレスと離婚に関する問題について解説しました。
性交渉に関する夫婦の考え方に差があると、最終的には離婚せざるを得ないことがあります。セックスレスは「その他婚姻を継続し難い事由」(民法770条1項5号)として離婚理由に該当する場合があるほか、慰謝料請求の対象ともなります。ただし、その内容や程度、原因によって対応方法が異なり、夫婦の状況に合わせてケースバイケースで判断しなければなりません。
セックスレスで離婚や慰謝料を請求するとき、セックスレスの責任が相手にあること、そして、夫婦間で重大な問題であることを証明するため、証拠の準備が欠かせません。
セックスレスや性生活の不一致は、不妊やEDなど、センシティブな問題を含みます。デリケートな離婚問題に悩む方こそ、法律上の守秘義務を負う弁護士への相談がお勧めです。
- セックスレスは重大な離婚理由となる(特に出産適齢期の女性)
- セックスレスが重度、かつ、悪質なとき、相手が拒否しても裁判離婚できる
- セックスレスの慰謝料請求は、違法性を証明する証拠が重要となる
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離婚問題を迅速に解決するには、離婚理由(離婚原因)についての知識が重要です。裁判では不貞やDV、悪意の遺棄などの一定の事情がなければ離婚が認められないところ、交渉や協議でもこれらの事情が重視されます。
「離婚理由」の詳しい解説を理解し、戦略的に進める参考にしてください。