
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
夫婦喧嘩が激化して暴力に発展した場合、単なる家庭内のトラブルでは済まされません。
たとえ夫婦間でも、暴行罪や傷害罪といった犯罪になる可能性があり、被害の程度によっては逮捕や刑事処分に進むケースもあります。当事務所でも実際に次のような相談例があります。
深刻なトラブルに発展しないよう、感情的な対応は避けなければなりません。暴力がある場合、関係修復は難しいでしょうし、子供への影響も心配になることでしょう。一方だけでなく双方が暴力を振るい、責任の判断が難しいケースもあります。
今回は、夫婦喧嘩で暴力があった場合の対処法、互いに暴力がある場合の考え方、証拠の残し方や逮捕されたときの注意点などについて、弁護士が解説します。
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はじめに、夫婦喧嘩で暴力があった場合の対処法について、具体的に解説します。
配偶者から暴力を振るわれると、身体的にはもちろん精神的にも大きなダメージでしょう。感情的に対応すると、かえって事態が悪化するおそれがあるため注意して行動してください。
真っ先に考えるべきなのが、身の安全の確保です。
暴力を振るう配偶者から速やかに距離を置き、被害の拡大を防いでください。暴力を振るう人は再度繰り返す危険もあるため、直ちに避難しましょう。
実家や信頼できる友人宅に避難できれば、配偶者が押しかけてきても一人で対応せずに済みます。実家などが知られている場合、配偶者暴力相談支援センターやシェルターの活用も検討してください。特に、子供がいる場合にはその安全確保を考えなければならず、妊娠中の妻に対する暴力なども深刻なトラブルに発展します。
「勝手に別居すると不利?」の解説

夫婦喧嘩における暴力で危険を感じたら、警察への通報を検討しましょう。
家庭内暴力(DV)は社会問題化しており、夫婦喧嘩の延長だと軽く見ていると、暴行罪・傷害罪といった犯罪行為に発展するおそれがあります。緊急性が高いケースでは、ためらわず110番通報しましょう。通報時に伝える事項は、次の通りです。
警察官が到着すると、初動対応として加害者を静止し、夫婦それぞれの事情を聴取します。被害の状況によっては逮捕や刑事処分に進むこともあります。過去の暴力行為について刑事処罰を求めるため、被害届や告訴状を提出することも可能です。
暴力でケガをした場合、すぐに病院を受診し、診断書を入手しましょう。
外傷だけでなく、精神的な被害(PTSDなど)についての診断書も有効です。暴力を振るわれた直後に受診することは、因果関係を証明する役に立ちます。
暴力を振るわれた事実を証明するため、証拠の確保も重要です。
夫婦喧嘩における暴力について相手の責任を追及するには、被害者側で事実関係を立証する必要があります。有効な証拠には、次のものがあります。
以上の対応を取ると、相手から感情的な報復を受けるおそれもあります。
暴力を振るわれたら、その後は直接接触することは控える必要があります。離婚に関する協議を進める場合、弁護士を依頼して窓口とするのが適切です。
DV防止法に基づく保護命令の申立ても可能です。保護命令は、DVを防止するため、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者やその子、親族への接近や自宅からの退去を禁じる命令です。加害者が命令に違反する行動を取った場合、「2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります(DV防止法29条)。
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夫婦喧嘩での暴力でも、犯罪になる可能性は十分にあります。
実際に当事務所で扱ったケースでも、暴力を振るわれた被害者や騒ぎに気付いた近隣が通報した結果、警察沙汰になった事例は少なくありません。以下では、夫婦喧嘩での暴力が犯罪になるケースとその理由について解説します。
配偶者に有形力を行使した場合、暴行罪に該当し、「2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金もしくは拘留・科料」という刑事罰の対象となります(刑法208条)。殴る、蹴るといった典型的なケースだけでなく、軽く小突いたり体が当たったりしただけでも、思わぬケガにつながるおそれがあります。特に、夫は妻よりも身体が大きく、力が強いことが多いため注意が必要です。
夫婦喧嘩で暴行を加えた結果、相手にケガを負わせた場合、傷害罪に該当し、「15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります(刑法204条)。
配偶者を脅した場合、脅迫罪に該当し、「2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」という刑事罰の対象となります(刑法222条)。また、土下座の強要など、義務のない行為を要求した場合には強要罪に該当し、「3年以下の拘禁刑」という刑事罰の対象となります(刑法223条)。
夫婦喧嘩の中で物を投げるなどして、相手の物を壊した場合、器物損壊罪が成立する可能性があります。また、言い争いの内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪などが成立することもあります。
「夫婦だから」という理由で特別扱いはされておらず、暴力を振るえば犯罪となります。
古い価値観の人から、「家庭内の問題は外に出すべきではない」「多少は我慢すべきだ」などと主張されることがあります。しかし、家庭内暴力(DV)が社会問題化している昨今では、見えにくい家庭内の問題こそ、注意しなければ被害が深刻化すると考えるべきです。
単純な暴力は夫から妻への被害事例が多いですが、妻から夫に対しても、包丁やハサミなどの凶器を用いたり、ひっかいたり噛みついたりする例は珍しくありません。
前述の通り、夫婦間でも犯罪となり得るため、警察が介入することもあります。夫婦喧嘩における暴力で警察が介入するケースには、次のような例があります。
被害者からの110番通報で警察が駆けつけ、配偶者の一方が逮捕されるケースがあります。
被害を受けた当事者が我慢していても、近隣住民や通行人が騒ぎを聞いて通報するケースもあります。前述の通り、家庭内であっても犯罪であるため、被害の程度や緊急性によっては、その場で配偶者の一方が逮捕されることもあります。また、警察に通報した事実は記録に残るため、後の被害届の提出や告訴、保護命令の申立てにおいても重要な判断材料となります。
あざや出血、骨折といった外傷がある場合、病院や周囲の指摘からDVを疑われて警察が介入するケースもあります。夫婦間に強い支配関係が認められればDV支援措置の対象となり、保護命令や接近禁止命令の申立てを検討される場合もあります。
特に、過去の相談記録や通報履歴が残っていると、警察も事態を深刻に捉え、より迅速かつ厳格に対応する傾向があります。
警察官の目の前で暴行があった場合、現行犯逮捕されることがあります。
この場合、令状がなくても身柄拘束が可能です。夫婦喧嘩が激化して殴り合いになった状況では、被害者や近隣の通報で駆けつけた警察官により即座に逮捕される可能性が高いです。子供の目の前で暴力を振るった場合、「面前DV」として非常に重く受け止められ、子供の安全を確保するために児童相談所が介入し、一時保護の対象となることもあります。
被害者が被害届や告訴状を提出したことで、後日逮捕される場合もあります。
捜査を進めた結果、暴行や傷害の事実が裏付けられ、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると、逮捕状に基づいて身柄を拘束されます。
その場では収まったように見えても、相手が後から医師の診断書を取得したり、当時の録音やLINEの履歴を証拠として提出したりすることで、刑事事件化するケースは珍しくありません。逮捕されると、長期間の身柄拘束によって仕事や私生活に支障を与えるため、早期に弁護士へ相談し、示談交渉をはじめとした適切な弁護活動を開始することが重要です。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

夫婦喧嘩での暴力によって逮捕された場合、その後の流れについても理解しておきましょう。
逮捕による身柄拘束は、対象者に著しい不利益となるため、法律上の時間制限があります。また、夫婦間で冷静になって話し合える場合、示談が成立すれば早期に釈放されることもあります。逮捕後の流れは、次のように進みます。

警察に逮捕され、48時間以内に検察に送致されます。軽微な事案であって検察に送致しない場合は、「微罪処分」として手続きが終了します。
送致を受けた検察は、24時間以内に裁判所に対して勾留請求を行います(請求しない場合は釈放します)。裁判所が勾留決定を下した場合、勾留請求から10日間の間勾留され、最大10日間延長されるおそれがあります。
勾留中に検察官が起訴・不起訴の処分を決定します。起訴する場合、通常起訴(公判請求)により刑事裁判に進む場合のほか、略式起訴をして罰金刑となる場合があります。
刑事裁判で刑罰が決定されると「前科」となります。
いずれの段階でも、被害者となった一方の配偶者と示談が成立すれば、身柄拘束の早期釈放や不起訴処分といった有利な結果につながりやすくなります。特に、夫婦喧嘩における暴力の場合、通報した側も「逮捕されるとは思わなかった」というケースもあり、今後冷静に話し合うことができそうなのであれば、示談を受け入れてもよいでしょう。
次に、夫婦喧嘩で互いに暴力があった場合の扱いについて解説します。双方が暴力を振るった場合、どちらが被害者・加害者なのか、正当防衛が成立するかといった点が争点となります。
互いに暴力を振るっていると、双方が被害者にも加害者にもなります。
こうしたケースでは、「どちらが先に手を出したか」「どちらの暴力の方が強かったか」といった点で、夫婦の言い分が食い違うことがあります。当事務所の相談例でも、次のようなケースでは、夫婦が分かり合うことは難しいと考えます。
警察でも裁判所でも、証拠をもとに判断します。録音や録画といった証拠がない場合、互いの証言の信用性、診断書などをもとに判断することもあります。そのため、自身の主張を基礎づける客観的な証拠を集めておくことが極めて重要です。
相手からの暴力に反撃した場合、正当防衛が成立するかどうかが争いになります。
刑法36条では、正当防衛が成立するためには、急迫不正の侵害があり、自己または他人の権利を守るためにやむを得ずした行為であることが必要となります。
例えば、「包丁を振り回す妻を羽交い締めにした」という場合には正当防衛が成立する可能性がありますが、「夫が殴ってきたので包丁で刺した」「暴れる妻を制圧した後に殴った」という例では成立しません。反撃が行き過ぎると、過剰防衛として違法行為となるおそれがあります。
たとえ相手が先に暴力を振るったとしても、正当防衛が認められるのはあくまで「自衛」であり、「報復」は許されません。また、男女の体格差や凶器の有無なども考慮されます。
「モラハラと言われたときの対応」の解説

夫婦のいずれが悪いかの問題とは別に、子供の前での喧嘩は控えましょう。
両親が争う光景は、子供の精神に深刻な影響を与えます。子供の前での喧嘩や暴力は「面前DV」と呼ばれる心理的虐待にも該当します。これは、相手に非があっても同じことです。深刻化すると、精神的トラウマやPTSDの原因となったり、「自分のせいで夫婦仲が悪化している」という罪悪感を抱いたり、不安定な家庭環境によって発育が遅れたりといった影響があります。
子供の生活環境が害されていると判断されると、児童相談所が介入して一時保護の措置が取られることもあり、将来の親権や面会交流においても不利に扱われるおそれがあります。
「子供がいる夫婦の離婚」の解説

次に、被害者・加害者それぞれの立場で、どのように対処したらよいかについて解説します。
被害者側の発言が相手を刺激すると、問題が深刻化するおそれがあります。
相手を追い詰めるような言葉でエスカレートさせたり、相手の人間性や能力、人格の否定、過去の過ちの蒸し返しをしたりすると、火に油を注ぐ結果となりかねません。相手に非があると考えていても、「離婚だ」「出ていけ」といった極端な表現は、対話を終わらせてしまいますし、相手の感情を逆撫でして暴力的な行動を誘発しやすくなってしまいます。
感情に任せた一言が取り返しのつかない亀裂を生むこともあります。冷静さを失いそうなときは、別居して距離を置くなど、被害者側であっても自ら被害を拡大させない努力が必要です。
夫婦喧嘩で加害者になってしまった場合は、さらなるトラブルを防ぐ必要があります。
どうしても伝えたいことがあるとしても、被害者への直接の連絡は控えましょう。謝罪のつもりでも、相手を怖がらせたり、証拠隠滅を疑われたりする危険があります。特に、暴力を振るってしまったケースでは直接の接触は不適切であり、弁護士などの第三者を介すべきです。
刑事事件に発展した場合は、警察の取調べに対して事実を正確に説明し、誠実に対応することが重要です。また、離婚するかどうかはともかく、早期に示談を成立させておきましょう。加害者側こそ、これ以上不利な立場にならないために、対応は弁護士に任せるべきです。

最後に、夫婦喧嘩における暴力で離婚する場合に、どのような影響があるかを解説します。
暴力を振るうことは民法770条1項に定める「法定離婚事由」に該当します。
具体的には「悪意の遺棄」(同条2号)、または「婚姻を継続し難い重大な事由」(同条4号)となる可能性があります。継続的である場合はもちろん、一時的でも深刻な被害があれば「重大」であるのは明らかであり、相手の同意がなくても裁判で離婚が認められる理由となります。
むしろ、暴力を振るうような配偶者は離婚に同意しないおそれがあるため、協議や調停で解決できずに離婚裁判(離婚訴訟)に発展する可能性が高いと考えるべきです。
支配的な関係が長年続いて離婚をあきらめていたり、報復を恐れて我慢したりしている人もいますが、婚姻関係を続けるほど、さらに被害が悪化する懸念があります。
「協議離婚の進め方」の解説

夫婦喧嘩における暴力は、不法行為(民法709条)に該当するため、慰謝料や損害賠償を請求することができます。請求できる金額は、暴力の程度や期間、ケガの程度といった被害状況のほか、婚姻期間などの事情を総合考慮して算定されます。
交渉で合意に至らない場合は、離婚調停や訴訟で請求します。適正な賠償を受けるには、医師の診断書や被害状況の写真といった証拠を揃えておくことが不可欠です。
子供がいる場合、親権を指定する必要があります。
暴力を振るった事実がある場合、加害者側に親権が認められにくいのは当然です。直接手を上げていなくても、子供の前で暴力を振るうことも虐待に該当します。2026年4月施行の民法改正によって共同親権制度が導入され、両親の一方または双方を親権者とすることが可能ですが、暴力などの事情を考慮して共同して親権を行うことが困難である場合、共同親権とすることはできません。
夫婦間での暴力は、親子交流(面会交流)にも影響するおそれがあります。
前述の通り、子供の目前での喧嘩が虐待に当たるため、「子の福祉(利益)」の観点から面会交流を制限すべきと判断されることがあります。また、子供が幼く、事実上、配偶者の協力なしには交流を実施できない場合、暴力があって直接対面できない場合には子供との交流も困難です。

夫婦喧嘩が暴力に発展するケースは、離婚と刑事事件が絡む深刻な事態です。
当事務所では、家庭裁判所長を歴任した家事事件の経験豊富な弁護士が在籍しており、DVの絡む複雑な離婚問題についても多数の解決実績があります。一方で、刑事事件についても取り扱っているため、加害者の刑事弁護という側面でもサポートすることができます。
依頼を受けた場合、被害者側ではまず身の安全を確保するため迅速に法的措置を講じます。具体的には、相手に内容証明で警告して窓口となり、裁判所へ保護命令を申し立てます。また、暴力の証拠について、どのような資料が離婚や慰謝料の請求に役立つかをアドバイスします。
一方で、加害者となってしまった方から依頼を受けた場合、事態の沈静化と刑事処分の軽減に向けた弁護活動を行います。逮捕された場合には早期釈放や不起訴処分の獲得を目指し、被害者との示談交渉を行います。離婚を求めない場合、仲直りや復縁を支援することも可能です。
当事務所は、単に離婚を成立させるだけでなく、親権や慰謝料、さらには刑事事件化への対応まで、多角的な視点から一貫してサポートします。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

今回は、夫婦喧嘩で暴力があった場合の対処法について解説しました。
夫婦喧嘩の延長であっても、たとえ一方に非があったとしても、暴力は許されません。被害の程度によっては犯罪となり、逮捕や刑事処分に進むおそれもあります。「夫婦だから」という理由で暴力が正当化されるわけではないため、感情的な行動は慎むべきです。
暴力がある場合、まずは自分の身を守ることを優先し、次に証拠を集めることに注力してください。「やり直したい」という気持ちがあっても、暴力を振るう相手との関係修復には慎重になるべきです。また、離婚に向けて進む場合、弁護士を窓口として直接の交渉は控えるのが適切です。
夫婦喧嘩における暴力は、離婚を決意する大きなきっかけとなります。今後の離婚を検討している場合、適切な判断をするためにも弁護士のアドバイスを受けるのが有益です。
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