離婚・男女問題

妻の弁護士から「モラハラ夫」呼ばわりされたときの対策・対応

2021年9月8日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

モラハラ夫

妻(もしくはその弁護士)から、「モラハラ夫」と主張されることがあります。今回は、このようなケースで夫側の立場から解説をしてきます。

突然「モラハラ夫」というレッテルを張られ、心外に感じる方が多いことでしょう。しかし、反論をしたらしたで、「モラハラ夫だから、自分がモラハラをしていることを自覚していないのだ」という再反論を受けることが多いです。モラハラ夫呼ばわりされたからといって、怒って怒鳴ったりすればまさにモラハラ夫であることを自白したかのようであり、冷静に対応する必要があります。

離婚をめぐる争いで、「モラハラ夫かどうか」が争点となるのは、「離婚原因が相手にあると主張したほうが、離婚の戦いで有利に立つことができるから」です。

暴力などのDVの証拠があるケースはさておき、そのような明確な責任が証明できないとき、モラハラの定義はとても幅広いため、妻側が夫の非を指摘するときに「モラハラ夫」という言葉が利用されがちです。

今回の解説では、

  • モラハラをめぐる夫婦間の主張・反論について
  • モラハラ夫といわれたときの夫側の適切な対応方法

といったモラハラの法律知識について、妻側の弁護士から「モラハラ夫」という認定を受けてお怒りの夫側に向けて、弁護士が解説します。

まとめ解説
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モラハラをめぐる夫婦間の主張・反論について

モラハラ夫

これまでは夫婦の当事者間で離婚の話し合いをしていたけれども、突然妻側についた弁護士から「モラハラ夫だ」と言われたことがきっかけでご相談に来る方がいます。

一般的に「モラハラ」というと、暴言を吐いたり、妻に怒鳴り散らしたり、最悪のケースでは殴ったり蹴ったりという家庭内暴力(DV)を伴ったりといったケースを想像することが多いため、「自分はモラハラではない」と思うことでしょう。

はじめに、モラハラをめぐる夫婦間の主張・反論について、基本的な考え方を解説します。

夫側の反論

妻(もしくはその弁護士)から「モラハラ夫だ」と言われたとき、これまで妻自身からは一切モラハラの指摘を受けてもいないのに、弁護士がついた途端に「長年のモラハラに苦しんできた」、「精神的苦痛に相当する慰謝料を請求する」などと主張され、理不尽だと感じる気持ちも理解できます。

  • 妻の弁護士が入れ知恵して、戦略的に「モラハラ」と言っているのではないか
  • 離婚調停・離婚訴訟をうまく進めるために嘘をついているのではないか

といった邪推をしてしまい、離婚に向けたまともな交渉が頓挫してしまうこともあります。

妻側の再反論

しかし、夫側のこのような反論に対しては、更に「モラハラ夫」認定をする妻側の弁護士から、次の再反論をされることがよくあります。

  • 妻自身がこれまで「モラハラ」といわなかったのは、あなたの仕返しが怖かったからだ
  • モラハラという文句も言えないほどに威圧し続けてきたのではないか

「モラハラといえずに我慢してきたのかどうか」という議論になってしまうと、それはもはや妻の内心の問題であるため、夫側としても否定しづらく、また、反論するための証拠が出しづらいものです。

しかし、「モラハラ夫として不利な離婚条件を飲まなければならないのではないか」、「モラハラで高額の慰謝料請求を支払わなければならないのか」というと、そうではありません。

事実と反する「モラハラ夫」認定に対して、夫側の適切な対応方法を解説します。

モラハラの定義はとても広く、抽象的

モラハラといわれた夫側が想像するイメージは、モラハラの中でも、特にひどい一部の類型であることがほとんどです。

実際には、「モラハラ」という用語は、もっと広い意味で使われています。「モラハラ夫だ」と主張する弁護士も、そのような広い意味で「モラハラ」という用語を使っていることが多くあります。

モラハラという単語の過激なイメージに惑わされず、「実際に、どのような行為を行ったと主張されているのか」に目を向けた、冷静な議論をすることが、夫側として適切な対応です。

モラハラという言葉が、「暴力(DV)を除き、言葉や態度などで、夫婦の一方に対して、精神的苦痛を与える行為」というような広い意味でつかわれるとき、次のような類型の行為のうち軽度なものまでがモラハラに含まれることがあります。

  • 妻を傷つける暴言を吐くモラハラ
  • 身体的な危害を予想させる暴言を吐くモラハラ
  • 家事・育児の不手際について過剰に攻め立てるモラハラ
  • 妻の容姿、肉体的な特徴について悪口をいうモラハラ
  • 金銭感覚の違いについて過剰に指摘するモラハラ
  • 妻の交友関係を悪く評価するモラハラ
  • 妻の家族・親族をおとしめるモラハラ
  • 一時の感情でカッとなって怒鳴りつけるモラハラ
  • 過度の性交渉を求める、もしくは、逆に性交渉を拒否するモラハラ
  • 近隣住民、共通の友人、知人に妻の悪口を広めるモラハラ

このように類型化して列挙していくと、この中のいくつかは、一時的な感情でつい言ってしまったかもしれない、該当する発言があったかもしれない、と感じる人も多いのではないでしょうか。

つまり、「モラハラ」と言われる行為のうち、特に軽度なものは、夫婦関係を長く続けていく中で、一度二度は、誰しもがやってしまったことがあるかもしれない行為も含まれるほど、広い概念なのです。

しかし、「モラハラ」に当たる類型的な行為のうち、軽度な発言、言動に心当たりがあるとしても、それだけで、妻側の離婚条件をすべて受け入れたり、慰謝料を支払ったりする義務がただちに生じるわけではありません。

「モラハラ夫」認定されたときの、夫側の適切な対応

モラハラ夫

ここまでお読みいただければわかる通り、「モラハラ」はとても広い定義であり、長く夫婦生活を続けていれば、誰しもが、心当たりがあるほどの軽度な言動も含まれます。

そのため、「モラハラ夫」という言われ方は心外であり、釈然としない気持ちは理解できるものの、だからといって、夫側が完全に不利な立場に立たされるかというと、そうではありません。

しかし、「モラハラ」という言葉が、暴力・暴言を伴う重度の言動を指すイメージで用いられていることも事実であり、「モラハラ夫」呼ばわりに対しては、事実と証拠に照らした適切な反論が必要となります。

そこで次に、妻やその弁護士から、「モラハラ夫」と主張されてしまったときの、夫側の適切な対応について、弁護士が解説します。

弁護士に法律相談する

妻や、その弁護士から「モラハラ夫」と主張されているときは、まずは、離婚問題の経験豊富な弁護士に、法律相談してください。

特に、妻から「モラハラだ」と強く主張されている場合、妻が「モラハラ」の定義、概念について、正しく理解しておらず、「モラハラ」と主張すれば、自分に有利に離婚を決めることができると確信している可能性があります。また、妻側に弁護士がついた上で、これまで主張されてこなかった「長年我慢し続けてきたモラハラ」が論点となっているとき、弁護士が、戦略的な考え方に沿って「モラハラ夫」のレッテルを貼ろうとしている可能性もあります。

いずれの場合も、夫側としては、「モラハラ」の正しい理解のもとに、事実と証拠に基づいた反論方針を練る必要があります。

法律相談の結果、弁護士にご依頼を頂くかどうかは、別途検討して頂くことが可能ですが、妻側に既に弁護士がついて、戦略的に「モラハラ」の主張をしている場合には、反論のために、夫側の弁護士を立てることをご検討ください。

この先の離婚調停、離婚訴訟へ進めたとき、妻側が主張している「モラハラ」の程度がどの程度重度のものかによって、夫側が不利になる主張なのかを理解しておかなければなりません。

参考解説

「離婚したいかどうか」の方針を検討する

「モラハラ」を過去に行ってしまったことについて、その回数や程度によっては、夫側がそれほど不利にならない可能性も十分にあります。

むしろ、重要なことは、「モラハラを行ったことがあるかどうか」よりも、そのモラハラが問題となっている夫婦関係について、将来的にどのようにしたいと考えているか、という点にあります。つまり離婚についての方針決定です。

「モラハラ夫」のレッテルを外し、汚名返上したい気持ちはやまやまですが、離婚問題が円満かつ迅速に解決できることを一番に考えるべきです。

「弁護士にそそのかされて、『モラハラ』と言っているだけ」という可能性が少なからずある場合もあるでしょうが、いずれにせよ「モラハラ」と主張してくる妻との離婚をスムーズに、かつ、夫側にとって納得できる条件でまとめるほうが先決な場合もあります。

「モラハラ」と主張された事実についてどのように戦うかは、「離婚するかどうか」について決定した方針に従って有利になるよう、戦略的に行うべきなのです。

「モラハラ」と評価される「事実」自体を検討する

妻側からの「モラハラ」の責任追及について、「モラハラに当たるかどうか」という観点で議論を進めることは、無駄が多いと言わざるを得ません。

というのも、先ほど解説したとおり「モラハラ」はとても広い概念であり、「モラハラに当たるかどうか」という観点で議論をすると、「確かにモラハラに当たるかもしれない」という結論になってしまう可能性が十分にあるからです。

問題は、「モラハラに当たるかどうか」ではなく、妻側が「モラハラ」と主張する「具体的な事実」がどのような態様、程度のものであるか、という点にあり、夫側としての反論も「事実」自体に着目して行わなければなりません。

妻側が「モラハラ」と評価する具体的な事実が、実は些細な夫婦喧嘩や、一時的な感情に基づく言い争いに過ぎない場合、それが「モラハラ」に当たるかどうかは、あまり大きな問題ではありません。

その「事実」自体が「モラハラ」にあたるとしても、「離婚原因」としては十分ではなく、慰謝料請求の根拠としても薄弱だからです。

虚偽・誇張があれば証拠に基づいて反論する

妻や、その弁護士から、「モラハラ夫」といわれるとき、その事実に着目すべきことを説明しました。事実に着目して精査すると、「そのような行為は行っていない。」という場合や、「事実をあまりに誇張しすぎている。」という場合があります。

この場合にも、その具体的な行為が「モラハラにあたるかどうか。」という観点から、「虚偽・誇張だから、モラハラに当たらないのではないか」と反論するのではなく、その具体的な行為自体が、虚偽・誇張であることを、証拠に基づいてわかりやすく反論していくことがお勧めです。

特に、離婚調停や離婚訴訟など、裁判所で行われる手続では、証拠が重要となります。

いかに裁判上の書面などで誇張をして、「モラハラ夫」のイメージを作出しようとしても、証拠に基づいて正しく行う事実の主張に打ち勝つことはできません。

参考解説

「モラハラ」が行われた理由を主張する

暴力(DV)を行う理由に、「やむを得ない理由」はありません。殴る、蹴るといった暴力をふるうことは、刑法上の「暴行罪」、「傷害罪」にあたる犯罪行為であり、「やむを得ない場合」など存在しないからです。

しかし、これに対して、モラハラは、その程度にもよりますが、犯罪行為にはなりません。妻側からモラハラと主張される行為を行ってしまった前後の事情やシチュエーション、状況によっては、「モラハラと評価される行為を行っても、夫側としては仕方がなかった」と反論できるケースも少なくありません。

モラハラに当たる行為を行ったからといって、直ちに不利になるわけではないことはもちろん、モラハラを行ってしまった理由を主張することが必要となります。

特に、夫婦喧嘩中の「売り言葉に買い言葉」であり、妻側も暴言あるいは暴力などを行っていた場合には、「モラハラ夫」呼ばわりをする妻側の主張には、徹底的に争うべきです。

「モラハラと離婚」は浅野総合法律事務所にお任せください!

モラハラ夫

今回は、良い条件で離婚をしようとする妻側からよく主張されがちな「モラハラ夫」との主張について、夫側の適切な対応を、弁護士が解説しました。

モラハラはとても広い概念であり、誰しも当てはまり得る行為をしている可能性があるため、離婚の争いの中で、よく主張されます。しかし、モラハラの定義の広さを考えると、「モラハラ」だからといって、すぐに裁判で離婚が認められたり、高額な慰謝料を受け入れなければならなかったりといった、夫側にとって不利な事態となるわけではありません。

むしろ、モラハラだと妻側から主張されている具体的な事実に着目して、冷静な反論を行った上で、離婚の交渉を有利に進めていくことが、夫側として行うべき対策です。

妻側が既に弁護士を立て、「モラハラ夫」のレッテルのもとに離婚を有利に進めようと画策しているときは、夫側でも弁護士を立てて、的確な反論をすることが大切です。

まとめ解説
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

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専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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