妻の弁護士から「モラハラ夫」呼ばわりされたときの対策・対応

離婚が問題となる夫婦間争いのとき、特に、夫側が、妻やその弁護士から、「モラハラをしていた」と主張されることがあります。

突然「モラハラ夫」のレッテルを張られると、心外だと感じことが多いことでしょう。しかし、これに対して反論すると、「モラハラ夫は、モラハラをしていることを自覚していないものだ。」という再反論を受けることとなります。

このようなハラスメントを巡るトラブルが起こるのは、「離婚原因が相手方にあると主張したほうが、離婚条件が有利になるから」なのです。

暴力行為(DV)など、明らかな証拠があればさておき、そのようなものがないとき「モラハラ」という定義が幅広く抽象的な言葉が、選ばれがちな傾向にあります。

そこで今回は、妻側の弁護士から「モラハラ夫」という認定を受けてお怒りの方に向けて、離婚時の交渉の進め方、対策などを、弁護士が解説します。

1. 「モラハラ」を巡る夫婦間の主張・反論

離婚の話し合いをしている最中に妻側に弁護士がつき、突然「モラハラですよ。」と言われると、釈然としない方も多いのではないでしょうか。

一般に「モラハラ」のイメージというと、暴言を吐いたり、妻に怒鳴り散らしたり、最悪のケースでは殴ったり蹴ったりという家庭内暴力(DV)を伴うようなケースをイメージするためです。

特に、これまで妻から「モラハラ」という文句を一度も受けていないのに、弁護士がついた途端、離婚調停・離婚訴訟などの書面で、「長年のモラハラに苦しんできた。」、「精神的苦痛に相当する慰謝料を請求する。」などと主張されると、「理不尽だ。」と感じる気持ちも理解できます。

  • 妻の弁護士が入れ知恵して、戦略的に「モラハラ」と言っているのではないか。
  • 今まで一度も「モラハラ」と言われたことがないのに、訴訟になったら突然「モラハラ」と言ってきた。

しかし、夫側のこのような反論に対しては、更に「モラハラ夫」認定をする妻側の弁護士から、次の再反論をされることがよくあります。

  • 長年、「モラハラ」と言えなかったのは、あなたが怖くて我慢してきたからだ。
  • モラハラという文句も言えないほどに抑圧、威圧し続けてきたのではないか。

「モラハラといえずに我慢してきたのかどうか。」という議論になってしまうと、それはもはや妻の内心の問題であるため、夫側としても否定しづらく、また、反論するための証拠が出しづらいものです。

しかし、「このままだと、モラハラ夫として不利な離婚条件を飲まなければならないのではないか。」、「モラハラで高額の慰謝料請求を支払わなければならないのか。」というと、そうではありません。事実と反する「モラハラ夫」認定に対して、夫側の適切な対応方法を解説します。

2. 「モラハラ」の定義はとても広く、抽象的

「モラハラ」といわれた夫側が想像するイメージは、「モラハラ」の中でも、特にひどい一部の類型であることがほとんどです。

実際には、「モラハラ」という用語は、もっと広い意味で使われています。「モラハラ夫」と離婚調停や離婚訴訟で主張する弁護士も、そのような広い意味で「モラハラ」という用語を使っていることが多くあります。

「モラハラ」という単語の過激なイメージに惑わされず、「実際に、どのような行為を行ったと主張されているのか。」に目を向けた、冷静な議論をすることが、夫側として適切な対応です。

「モラハラ」という言葉が、「暴力(DV)を除き、言葉や態度などで、夫婦の一方に対して、精神的苦痛を与える行為」というような広い意味でつかわれるとき、次のような類型の行為が、軽度なものも含めて「モラハラ」に含まれることがあります。

  • 妻を傷つける暴言を吐くモラハラ
  • 身体的な危害を予想させる暴言を吐くモラハラ
  • 家事・育児の不手際について過剰に攻め立てるモラハラ
  • 妻の容姿、肉体的な特徴について悪口をいうモラハラ
  • 金銭感覚の違いについて過剰に指摘するモラハラ
  • 妻の交友関係を悪く評価するモラハラ
  • 妻の家族・親族をおとしめるモラハラ
  • 一時の感情でカッとなって怒鳴りつけるモラハラ
  • 過度の性交渉を求める、もしくは、逆に性交渉を拒否するモラハラ
  • 近隣住民、共通の友人、知人に妻の悪口を広めるモラハラ

このように類型化して列挙していくと、この中のいくつかは、一時的な感情でつい言ってしまったかもしれない、該当する発言があったかもしれない、と感じる人も多いのではないでしょうか。

つまり、「モラハラ」と言われる行為のうち、特に軽度なものは、夫婦関係を長く続けていく中で、一度二度は、誰しもがやってしまったことがあるかもしれない行為も含まれるほど、広い概念なのです。

しかし、「モラハラ」に当たる類型的な行為のうち、軽度な発言、言動に心当たりがあるとしても、それだけで、妻側の離婚条件をすべて受け入れたり、慰謝料を支払ったりする義務がただちに生じるわけではありません。

3. 「モラハラ夫」認定されたときの、夫側の適切な対応

ここまでお読みいただければわかる通り、「モラハラ」はとても広い定義であり、長く夫婦生活を続けていれば、誰しもが、心当たりがあるほどの軽度な言動も含まれます。

そのため、「モラハラ夫」という言われ方は心外であり、釈然としない気持ちは理解できるものの、だからといって、夫側が完全に不利な立場に立たされるかというと、そうではありません。

しかし、「モラハラ」という言葉が、暴力・暴言を伴う重度の言動を指すイメージで用いられていることも事実であり、「モラハラ夫」呼ばわりに対しては、事実と証拠に照らした適切な反論が必要となります。

そこで次に、妻やその弁護士から、「モラハラ夫」と主張されてしまったときの、夫側の適切な対応について、弁護士が解説します。

3.1. 弁護士に法律相談する

妻や、その弁護士から「モラハラ夫」と主張されているときは、まずは、離婚問題の経験豊富な弁護士に、法律相談してください。

特に、妻から「モラハラだ」と強く主張されている場合、妻が「モラハラ」の定義、概念について、正しく理解しておらず、「モラハラ」と主張すれば、自分に有利に離婚を決めることができると確信している可能性があります。

また、妻側に弁護士がついた上で、これまで主張されてこなかった「長年我慢し続けてきたモラハラ」が論点となっているとき、弁護士が、戦略的な考え方に沿って「モラハラ夫」のレッテルを貼ろうとしている可能性もあります。

いずれの場合も、夫側としては、「モラハラ」の正しい理解のもとに、事実と証拠に基づいた反論方針を練る必要があります。

法律相談の結果、弁護士にご依頼を頂くかどうかは、別途検討して頂くことが可能ですが、妻側に既に弁護士がついて、戦略的に「モラハラ」の主張をしている場合には、反論のために、夫側の弁護士を立てることをご検討ください。

この先の離婚調停、離婚訴訟へ進めたとき、妻側が主張している「モラハラ」の程度がどの程度重度のものかによって、夫側が不利になる主張なのかを理解しておかなければなりません。

3.2. 「離婚したいかどうか」の方針を検討する

「モラハラ」を過去に行ってしまったことについて、その回数や程度によっては、夫側がそれほど不利にならない可能性も十分にあります。

むしろ、重要なことは、「モラハラを行ったことがあるかどうか。」よりも、そのモラハラが問題となっている夫婦関係について、将来的にどのようにしたいと考えているか、という点にあります。つまり「離婚」についての方針決定です。

「モラハラ夫」のレッテルを外し、汚名返上したい気持ちはやまやまですが、離婚問題が円満かつ迅速に解決できることを一番に考えるべきです。

「弁護士にそそのかされて、『モラハラ』と言っているだけ」という可能性が少なからずある場合もあるでしょうが、いずれにせよ「モラハラ」と主張してくる妻との離婚をスムーズに、かつ、夫側にとって納得できる条件でまとめるほうが先決な場合もあります。

「モラハラ」と主張された事実についてどのように戦うかは、「離婚するかどうか」について決定した方針に従って有利になるよう、戦略的に行うべきなのです。

3.3. 「モラハラ」と評価される「事実」自体を検討する

妻側からの「モラハラ」の責任追及について、「モラハラに当たるかどうか」という観点で議論を進めることは、無駄が多いと言わざるを得ません。

というのも、先ほど解説したとおり「モラハラ」はとても広い概念であり、「モラハラに当たるかどうか」という観点で議論をすると、「確かにモラハラに当たるかもしれない」という結論になってしまう可能性が十分にあるからです。

問題は、「モラハラに当たるかどうか」ではなく、妻側が「モラハラ」と主張する「具体的な事実」がどのような態様、程度のものであるか、という点にあり、夫側としての反論も「事実」自体に着目して行わなければなりません。

妻側が「モラハラ」と評価する具体的な事実が、実は些細な夫婦喧嘩や、一時的な感情に基づく言い争いに過ぎない場合、それが「モラハラ」に当たるかどうかは、あまり大きな問題ではありません。

その「事実」自体が「モラハラ」にあたるとしても、「離婚原因」としては十分ではなく、慰謝料請求の根拠としても薄弱だからです。

3.4. 虚偽・誇張があれば証拠に基づいて反論する

妻や、その弁護士から、「モラハラ夫」といわれるとき、その事実に着目すべきことを説明しました。

事実に着目して精査してみると、「そのような行為は行っていない。」という場合や、「事実をあまりに誇張しすぎている。」という場合があります。

この場合にも、その具体的な行為が「モラハラにあたるかどうか。」という観点から、「虚偽・誇張だから、モラハラに当たらないのではないか。」と反論するのではなく、その具体的な行為自体が、虚偽・誇張であることを、証拠に基づいてわかりやすく反論していくことがお勧めです。

特に、離婚調停や離婚訴訟など、裁判所で行われる手続では、証拠が重要となります。

いかに裁判上の書面などで誇張をして、「モラハラ夫」のイメージを作出しようとしても、証拠に基づいて正しく行う事実の主張に打ち勝つことはできません。

3.5. 「モラハラ」が行われた理由を主張する

暴力(DV)を行う理由に、「やむを得ない理由」はありません。殴る、蹴るといった暴力をふるうことは、刑法上の「暴行罪」、「傷害罪」にあたる犯罪行為であり、「やむを得ない場合」など存在しないからです。

しかし、これに対して、モラハラは、その程度にもよりますが、犯罪行為にはなりません。妻側からモラハラと主張される行為を行ってしまった前後の事情やシチュエーション、状況によっては、「モラハラと評価される行為を行っても、夫側としては仕方がなかった。」と反論できるケースも少なくありません。

モラハラに当たる行為を行ったからといって、直ちに不利になるわけではないことはもちろん、モラハラを行ってしまった理由を主張することが必要となります。

特に、夫婦喧嘩中の「売り言葉に買い言葉」であり、妻側も暴言あるいは暴力などを行っていた場合には、「モラハラ夫」呼ばわりをする妻側の主張には、徹底的に争うべきです。

4. まとめ

今回は、良い条件で離婚をしようとする妻側からよく主張されがちな「モラハラ夫」との主張について、夫側の適切な対応を、弁護士が解説しました。

「モラハラ」はとても広い概念であり、誰しも当てはまり得る行為をしている可能性があるため、離婚の争いの中で、よく主張されます。

しかし、「モラハラ」の定義の幅広さを考えると、「モラハラ」に当たるからといって、直ちに離婚訴訟で離婚が成立したり、高額な慰謝料を受け入れなければならなかったりといった、夫側にとって極めて不利な事態になることは稀です。

むしろ、「モラハラ」と妻側から主張されている具体的な事実に着目して、冷静な反論を行った上で、離婚の交渉を有利に進めていくことが、夫側として行うべき対策です。

妻側が既に弁護士を立て、「モラハラ夫」のレッテルのもとに離婚の協議、調停、訴訟を有利に進めようと画策している場合、夫側でも、弁護士を立てて、法的に正しい考え方に基づいた反論を行うことがお勧めです。お困りの際は、ぜひ一度法律相談ください。

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