別居の合意書は、離婚に向けて家を出る方にとって、戦略上、非常に有効です。別居時に、夫婦で合意した内容を書面に残すことには、多くのメリットがあるからです。
離婚前に別居するケースの中でも、浮気や不倫、DVやモラハラなど、相手の責任で家を出ざるを得ないなら、その事情を証拠にするためにも「別居の合意書」を作るべきです。別居時の生活費(婚姻費用)を払わせたいときも、合意書を作ってから別居する方法が効果的です
今回は、別居の合意書の書き方、作成すべきメリットや理由、作成方法について弁護士が解説します。
- 別居時に合意書を作成することは、将来のトラブル防止に効果的である
- 別居の合意書は、夫婦が合意できる範囲で、具体的で明確なものを作るべき
- 別居の合意書のメリット・デメリットを比較し、作成すべき場面を見極める
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別居の合意書とは

別居の合意書とは、離婚に向けて家を出るにあたり、別居後の様々な条件やルール、今後の流れなどについて夫婦間の合意内容を記載した書面です。わかりやすくいえば、別居後の夫婦のルールを定める書面で、「別居契約書」「別居時合意書」「念書」などとも呼びます。
別居の合意書を作る理由
別居せざるを得ない場面は、もはや「離婚の危機」といえるでしょう。穏便に話し合い、夫婦間で解決にたどり着くのは難しいケースも多いです。DVやモラハラが別居の原因であるときは特に、悠長に話し合っていては、心身に危険が生じるおそれもあります。
しかし、将来的には離婚に向けた話し合いをしなければならず、別居後も、最低限の信頼関係とコミュニケーションを保つ必要があります。そのために、別居のタイミングから離婚に至るまで、交渉が不利に進まないよう、一定の合意や約束をした上で家を出るのが有効です。
「離婚前の別居の注意点」の解説

家庭内別居でも、合意書を作るべき
合意書を作成すべきなのは「別居時」に限りません。家庭内別居時の合意書など、夫婦仲が悪化しているなら、同居を続けるにしても約束事を書面にした方がよいケースが多いです。
同居していても夫婦としての実態がない「家庭内別居」は、法的に「破綻」と認められず、長期間続いても離婚が成立しづらかったり、異性との肉体関係が「不貞」と評価されたりするリスクがあります。この危険を避けるには、現実問題として家庭内別居せざるを得なくても、もはや離婚に向けて歩を進めていることを示すために、夫婦間の合意を書面化することに意味があります。
「家庭内別居から離婚する方法」の解説

別居の合意書のテンプレート
別居の合意書のテンプレートは、次のものを参考にしてください。
なお、以下の文例はサンプルなので、家庭の状況によって条項を取捨選択し、ケースに応じて書式・ひな形を修正する必要があります。
別居合意書
夫XX(以下「甲」という)と、妻YY(以下「乙」という)は、別居について次の通り合意した。
第1条(別居理由)
甲及び乙は、価値観の相違や日常生活に伴うストレスによって夫婦仲が悪化していることから、当面の間距離を置くのが適切であると判断し、別居に合意した。
第2条(別居中の生活費)
甲は乙に対し、別居中の生活費(婚姻費用)として毎月◯◯万円を、乙の指定する銀行口座に振り込むものとする。振込日は毎月25日とし、振込手数料は甲負担とする。
第3条(別居期間)
別居期間は、20XX年XX月XX日から3ヶ月とする。期間満了時に、夫婦関係を継続するか、もしくは離婚に向けて協議をするかを夫婦間で検討する。
第4条(別居中の監護・養育)
別居期間中の子の監護・養育は乙が行う。ただし、教育に関する重要事項の決定は、甲乙双方の同意を要する。また、甲は、2週に一度、子供との面会交流を行うものとし、日時・場所は双方協議の上で決定する。
第5条(別居中の共有財産の処分)
別居中の共有財産の処分は、双方の書面による合意がある場合に限って行うことができる。
第6条(別居中の不貞)
甲及び乙は、別居期間中において第三者との不貞行為を行ってはならない。これに違反した配偶者は、相手方に対し、慰謝料300万円を支払う。
【作成日付・署名押印】
各条項の注意点や、どのように修正したらよいか、ケース別の書式については「別居の合意書に書くべき内容【書式】」を参照してください。
別居の合意書を作成するメリット

次に、別居の合意書を作成するメリットについて解説します。
別居の合意書には多くのメリットがあるので、夫婦間に対立があるとしても、互いに譲歩し、合意できる範囲内で書面に残すのがお勧めです。別居の合意書は「家を出ていく側」のためというイメージが強いですが、「家に残る側(出ていかれる側)」にもメリットがあり、夫側・妻側のいずれでも作成する意味があります。
相手の非を指摘して反省を促せる
別居の合意書のメリットの1つ目は、「別居の理由」を証拠に残すことで、離婚の責任について夫婦の共通認識とすることができる点です。
事前の合意なく別居を強行すれば、「相手が自分の問題点に気付けない」というデメリットがあります。離婚原因を作り出した人ほど、自分の責任に鈍感です。全く指摘せずに別居してしまうと、夫や妻が謝罪してきて別居を解消しても、同じ過ちを繰り返すおそれがあります。
DVやモラハラがひどく、あなたや子供の生命に危険が及ぶおそれのあるときは、相手の責任を追及しすぎると、かえって危険性を高めてしまいます。
悪質なDV・モラハラの事例では「別居の合意書を作らない方がよいケース」もあることを理解し、固執せず速やかに別居することも検討してください。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

離婚協議がスムーズに進む
別居の合意書のメリットの2つ目は、別居後の離婚協議をスムーズに進められる点です。
相手が、自分の非を認める内容の合意書にサインしていることは、離婚協議はもちろん、調停や訴訟においても、「相手に離婚原因があること」を証明する重要な証拠となります。「別居や離婚について、原因が自分にある」と相手に理解させることができれば、話し合いを優位に進め、有利な離婚を実現する助けになります。
「協議離婚の進め方」の解説

別居後の生活を守れる
別居の合意書のメリットの3つ目は、別居後の生活を守れることです。
別居しても、まだ夫婦であるうちは相互扶助義務を負い、収入の高い配偶者には別居中の生活費(婚姻費用)を払う義務があります。ただ、相手が非協力的だったり支払額に争いがあったりすると、すぐには生活費が得られません。口約束だと後で守られないおそれがあるので、婚姻費用について約束できたなら合意書に残しておくべきです。
生活の安定を守るためにも、別居後に払われるべき婚姻費用は口約束で済ませず、書面で合意しておくのが賢明です。
「別居中の生活費の相場」の解説

別居の合意書に書くべき内容【書式】

次に、別居の合意書に書くべき内容について解説します。
メリットを最大限活かすには、適切な内容で作成する必要があります。とはいえ、あくまで話し合いで作るもので、自身に有利な内容を一方的に押し付けられるわけではありません。様々な書式やひな形を理解すれば、状況に合った譲歩を試みることができます。
別居理由を確認する条項
別居を決意するからには相応の理由や原因があるでしょうが、離婚協議の段階になると、別居理由について夫婦の主張が食い違うケースは多いものです。
別居の原因が相手の非にあることが明らかなら、合意書に記載し、夫婦間で確認しておくべきです。例えば、相手も認める浮気や不倫、DVやモラハラの事実があるなら、「5W1H」を意識して日時や場所、行為態様を具体的に書きましょう。

別居の合意書で相手の責任を確認しておくことができれば、別居後の様々な支払いや離婚時の条件についても、責任のある側に譲歩をさせる材料となります。
次のバリエーションも参考にしてください。
【シンプルな条項例】
「夫及び妻は、価値観の相違や日常的な対立を理由に、別居することに合意する。」
【不貞が理由であると明記する文例】
「夫及び妻は、夫が20XX年X月から現在まで、職場の◯◯と不貞をし、これを理由に夫婦の信頼関係が破壊されたことが別居理由となった点を相互に確認する。」
【一方の責任とはしない書き方】
「夫及び妻は、同居を続けるストレスが大きいことから、話し合いを試みたが修復の見通しが立たないため、当面は別居するのが適切であると判断するに至った。」
「法定離婚事由」の解説

別居中の生活費(婚姻費用)
別居の合意書に書くべき重要な条項が、別居中の生活費(婚姻費用)についてです。婚姻費用の支払いを確実なものとするには、次のポイントを合意書に必ず盛り込んでください。
- 婚姻費用の金額
- 婚姻費用の支払日(支払期限)
- 支払方法(振込口座など)
- 特別な事情があったときの費用負担
別居中も、夫婦である限りは、自身と同程度の生活を保証する義務があり、その主たる内容が婚姻費用です。子供の養育が必要なときは、婚姻費用には養育費も含まれます。婚姻費用の金額は、家庭裁判所で利用される「養育費・婚姻費用算定表(裁判所)」に従い、夫婦の収入差と子供の年齢、人数によって算定するのが通例です。
【シンプルな条項例】
「夫は妻に対し、別居期間中、離婚に至るまでの間、毎月末日限り◯◯万円の婚姻費用を、妻名義の口座に振り込むものとする。」
【収入などに応じた柔軟性ある文例】
「夫は妻に対し、婚姻費用を支払うものとする。婚姻費用の額は、家庭裁判所の算定表を参考にして協議で決めるものとし、双方の収入に大幅な変動が生じた場合は金額を見直すことができる。」
【特別な支出に関する条項例】
「夫は妻に対し、毎月◯◯万円の生活費(婚姻費用)を、妻の指定する銀行口座に振り込む。なお、子に進学、病気、事故などの特別の事情が生じたときは、上記金額に加えて特別の支出を求めることができる。」
「離婚に伴うお金の問題」の解説

別居期間
夫婦が別居するのは、離婚に向かうケースばかりでなく、当面の「冷却期間」という意味合いのこともあります。どれほど熟慮が必要かは、夫婦の事情や非のある側の反省・改善の態度でも変わるので、別居期間の記載は慎重に検討してください。
別居期間を具体的に決めれば、「同居義務違反」「悪意の遺棄」といった反論は避けられます。ただし、定めた期間はあくまで目安であり、経過したからといって必ず別居を解消できるとは限りません。そのため、「少なくとも◯ヶ月以上」「当面の間」といった柔軟な定め方にしたり、「一定の時期になったら協議する」としたりする例もあります。
次のテンプレートも参考にしてください。
【具体的な期間を定める形式】
「本合意書に基づく別居期間は、20XX年XX月XX日から同年XX月XX日までとする。」
【延長や終了の条件を定める場合】
「夫と妻は、20XX年XX月XX日から同年XX月XX日の間、別居する。
別居期間の満了日の1ヶ月前から、別居が解消できるかについて夫婦で協議を行う。ただし、双方の合意によって別居期間を延長することがある。」
【柔軟性を持たせる文例】
「夫と妻は、本合意書に基づいて、当面の間別居する。
一方が別居終了の意思を示し、他方が異議を述べない場合は別居を解消するが、夫婦関係の修復または離婚に向けた話し合いの進捗にあわせて柔軟に検討する。」
別居期間を積み上げるほど、家庭裁判所で離婚を認めてもらいやすくなりますが、夫婦の合意の上で別居した場合は、ケースバイケースの判断を要します。
「離婚成立に必要な別居期間」の解説

別居中の子供の環境(育児・教育・面会交流など)
別居中の夫婦にとって、金銭面と並んで、子供の問題も重要です。すぐ別居するのではなく「ひとまず別居して距離を置く」という家庭は特に、別居中にも親子の絆を保つ努力が必要であり、その手段となるのが「面会交流」です。
別居の合意書では、親の一方的な押し付けではなく、「子の福祉(利益)」を最優先に検討しなければなりません。面会交流の頻度や回数、時間について具体的に定めるケースのほか、柔軟性を持たせる例もあります。夫婦仲が悪くても、親子関係への影響はできるだけ軽減する努力をすべきです。
別居中の子供の環境について、次のように様々な定め方があります。
【養育の責任について定める条項例】
「夫婦の別居中、子の監護と養育は主に妻が行うが、子の教育に関する重要事項については、夫婦で協議して決定するものとする。」
【面会交流に関する文例】
「夫は、別居期間中といえど、子供に対して父としての義務を果たすものとする。そして、夫と妻とは、別居期間中、少なくとも月に1回、夫と子供の面会交流を実施する。面会交流の日時及び場所は、夫婦の協議によって決める。」
「子連れ別居の注意点」「子供がいる夫婦の離婚」の解説


別居中の共有財産の処分
「夫婦がしばらく距離をとり、冷却期間をおく」という趣旨の別居だと、全ての荷物を運び出すのは現実的ではありません。一方で、離婚に向けた夫婦の思いに差があると、残していった荷物を処分される危険があります。そのため、別居の合意書で、夫婦共有の財産であることを確認し、勝手な処分を禁止しておくのが有効です。
別居の合意書で処分を禁止すべきものは、例えば、そもそも動かすのが困難な財産(家や土地などの不動産)、持ち出すことが困難な動産(家具や家電、大きな物品)があります。特に大切な財産があるときは、具体的に列挙しておいてください。
【共有財産の処分を禁止する例文】
「夫と妻は、別居期間中、夫婦共有財産について、双方の合意なく処分しないことを約束する。共有財産の処分が必要な場合は、事前に書面で合意し、その記録を双方で保管することとする。」
【一定の財産の処分を許可する文例】
「夫と妻とは、別居期間中における共有財産の取扱いについて、以下の通りとする。
1. 日常生活に必要な範囲での共有財産の使用や処分は、各自の裁量に委ねる。
2. 100万円を超える預貯金の引き出し、不動産の売買については、事前に夫と妻の合意を得ることを条件とする。」
【特に重要な財産を列挙する場合】
「夫と妻は、別居期間中に共有財産を処分してはならない。また、自宅不動産、◯◯銀行にある夫名義の預金については、夫婦の共有財産として扱うこととする。」
財産分与では、別居時の財産額が問題となります。そのため、「ひとまず別居」という進め方をしても、離婚時には「財産分与の基準時」が争点となります。
また、財産の存在や金額・価値は、財産分与を求める側が立証しなければなりません。この点でも、別居の合意書を書くことで、どのような財産が存在していたかを事後に証明する助けとなります。
「別居時に持ち出した財産」の解説

別居中の不貞(不倫・浮気)
相手の浮気や不倫が理由で家を出るケースでは、別居したのをいいことに好き勝手されるのは納得いかないでしょう。法律上の「不貞行為」(民法770条1項1号)は、婚姻中に他の異性と肉体関係を持つことを指しますが、夫婦関係が破綻した後には成立せず、その際、「別居しているかどうか」が判断基準の一つとなります。
ただ、「別居したことで夫婦関係は破綻したので不貞ではない」という主張は認められづらく、別居後少なくとも一定期間が経過しないと、裁判所は「破綻」を認めない傾向にあります。そのため、別居の合意書でも、別居中の不貞に関するルールを記しておくのがお勧めです。
【別居後の不貞を禁止する条項例】
「夫と妻とは、別居期間中といえども、第三者との不貞行為を行わないことを約束する。本条項に違反した場合、違反者は他方に対して損害賠償責任を負う。」
【ペナルティを定める文例】
「夫及び妻は、別居期間中における不貞行為を行ったときは、違反者は相手方に対し、慰謝料として金300万円を支払う。」
【離婚と合わせて柔軟に定める場合】
「夫と妻は、別居期間中であっても、夫婦関係を継続させる努力をしている間は、第三者との不貞行為を控えるよう努力するものとする。ただし、いずれか一方が不貞行為を行い、それによって夫婦関係の継続が著しく困難になる場合は離婚協議を進める。」
別居の合意書に浮気・不倫について定めておけば、相手に責任のあるケースで、有利に離婚を進めたり、慰謝料を請求したりする証拠として活用できます。
「浮気・不倫の誓約書」の解説

別居中の誓約事項
合意書を作った後でする別居は、「離婚原因ともなりかねない相手の行為の非を指摘する」という意味を含みます。別居期間中だとしても自由に羽根を伸ばして良いわけではないことを明らかにするため、別居の合意書には、別居中に遵守すべき誓約事項を定めるのがお勧めです。
別居理由となった浮気や不倫、DVやモラハラについて、相手が責任を認めて改善を誓った場合は、そのことを書面化し、誠実に努力することを別居の合意書に記すべきです。「離婚するかどうか」について夫婦間に争いのあるとき、別居の合意書を作成するタイミングは、離婚を求める側にとって、要求をしやすい有利な場面です。
【誓約事項の例】
「夫及び妻は、別居期間中、次の各項目を遵守することを誓約する。
・別居中に、やむを得ず連絡先を変更する場合には事前に報告する。
・別居中に、子どもに重要なことがあった場合には、必ず報告する。
・別居中の過度な飲酒、賭博、借金は控える。」
「復縁したい人が理解すべき全知識」の解説

合意書違反のペナルティ
別居の合意書にサインするからには、夫婦共に、その内容を守らなければなりません。合意書の拘束力を強め、守らせるために、違反した場合のペナルティを定めるのが効果的です。
合意内容のうち、別居中の生活費(婚姻費用)や不貞の慰謝料など、「お金」に関する条項の違反については、金額の増額や制裁金の追加など、金銭的なペナルティを定めるのが通例です。一方で、「お金」だけでは解決できない問題もあります。夫婦の「破綻」や「復縁」について争いがあるときは、「違反した場合、相手の求める条件で離婚に応じる」という定めが大きな抑止力となります。
例えば、次のテンプレートを参考にしてください。
【金銭的なペナルティを定める例】
「夫及び妻は、上記の誓約事項に違反した場合には、相手に対して、慰謝料として300万円を支払うものとする。」
【違反の制裁として離婚を求める条項例】
「夫もしくは妻が、本合意書に違反した場合、離婚に同意するものとし、その際の離婚条件は相手の要望に従うものとする。」
ただし、「違反したら離婚する」と別居の合意書に定めても、あくまで抑止力となるに過ぎず、違反したからというだけで強制的に離婚できるわけではありません。実際には、合意書に違反した相手が離婚を拒否した場合、調停や訴訟といった法的手続きを要します。
「離婚までの流れ」の解説

別居の合意書を作らない方がよいケース

本解説の通り、離婚を決意した場合はもちろん、冷却期間を置きたい別居でも、適切な内容の合意書を交わすことが役立ちます。しかし一方で、別居の合意書のメリットよりもデメリットやリスクが大きいとき、合意書の締結にこだわりすぎない方がよい場面もあります。
離婚の決意が固いケース
「別居を事前に伝え、合意書を作成する」というプロセスは、少なくとも夫婦間に、最低限の信頼関係は残っていることを意味します。別居の合意書には、婚姻費用を支払って別居後の生活を守ったり、離婚原因となる問題の改善を求めたりといったように、しばらくの間は夫婦関係を継続することを前提とした内容が多いからです。
そのため、離婚の決意が固いとき、別居の合意書の意味合いは薄くなります。相手の離婚の決意が固いのに、将来の改善を促すメリットはありません。速やかに離婚に向けて進み、相手の責任を厳しく追及したいなら、合意書を作成せずとも別居し、直ちに離婚協議に進むべきです。
別居時の合意書は、あくまで離婚前の一時的な合意です。離婚の話し合いを進めるなら、その終了時には、「離婚協議書」を作成して離婚条件の合意を書面化する必要があります。
「離婚協議書の書き方」の解説

DVやモラハラが危険なケース
別居せざるを得ない理由が、夫や妻からの激しい暴力、暴言にあるときは、DVやモラハラから身を守るため、合意書に固執せず、別居を急ぐべきです。
DVやモラハラの加害者に「別居の合意書を作りたい」と提案しても、相手の怒りに火を付け、更に被害が拡大する危険もあります。悪質なDVは、謝罪しても同じことを繰り返す例が多く、改善は困難です。ひどいDVがあるとき、別居の合意書を作っても根本的な解決は難しいでしょう。
別居について承諾を得られないケース
別居について相手の同意を得られないケースもあります。承諾がなくても別居自体は進められますが、合意書を作りたいなら、少なくとも別居することは認めてもらう必要があります。
悪質なDV・モラハラの被害に遭っていたり、子供が虐待されていたりケースでは、すぐに逃げるべきで、相手の承諾を得る余裕はありません。このようなケースでは、「同意なく別居したら怒られる」「自分が悪いのだから我慢しよう」などと自分を責めてしまう人もいます。
別居について承諾を得られない理由が相手にあるなら、「別居の合意書を締結してから家を出よう」などと悠長なことは言っていられません。この場合、置き手紙を残す、弁護士に代わりに連絡してもらうといった方法で意思を伝え、別居を先行させるべきです。別居時にトラブルが予想されるケースでは、別居前の準備の段階から弁護士に相談するのが有益です。
「勝手に別居すると不利?」の解説

別居の合意書に関する注意点

最後に、別居の合意書を有効活用するために、知っておきたい注意点を解説します。
別居の合意書は手書きでも有効
別居の合意書は、手書きでも有効です。準備の時間が十分にあるなら、本解説のサンプルを参考に作ったひな形を印刷しておけますが、実際は、突然に別居を切り出されるなど、入念な用意ができないケースもあります。特に、別居をされる側(相手が家を出ていくケース)は、突然に切り出された際も対処できるよう、別居の合意書の内容をあらかじめ練り、手書きの文書に指印させることでも有効な書面になると覚えておいてください。
別居の合意書を公正証書にできる
別居の合意書において金銭の支払いを約束するとき、公正証書にしておくのも有効です。
公正証書は、公証役場で作成する公的な書類であり、そこに書かれた金銭の支払いについて、裁判所の判決なしに強制執行(財産の差押え)できる強い効果があります。特に、別居中の生活費(婚姻費用)は、約束通りに払われないと生活が困窮し、離婚するにせよ復縁するにせよ、交渉を安心して進められなくなってしまいます。

夫婦の合意は取消し可能だが例外あり
夫婦間でした契約は、婚姻中であれば一方的に取り消すことができます(民法754条)。別居の合意書もまた、夫婦間の契約の一種なので、離婚までの間、取消しが可能です。
しかし、夫婦関係が破綻したときは、この条文は適用されなくなるとするのが裁判例です(最高裁昭和33年3月6日判決、最高裁昭和42年2月2日判決)。そのため、別居の合意書もまた、いつでも必ず取り消せるわけではありません。
むしろ、夫婦が円満でないからこそ別居するのであり、別居の合意書を簡単に取り消せるのでは作る意味がありません。上記の裁判例からしても、合意書を交わした上で別居し、その後に夫婦関係が破綻して離婚に至るときは、別居時にした約束を一方的に取り消すことはできず、離婚時の重要な参考となるものと考えられます。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

まとめ

今回は、別居を決意した方に向けて、別居時に作るべき合意書のメリット、条項の書き方などを解説しました。相手の問題点(不倫や浮気、DVやモラハラなど)を理由として離婚前に別居を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
別居時は、婚姻費用を確保したり、子供の環境を整えたりなどといった準備が必要ですが、別居の時点では既に夫婦の信頼はなくなっており、約束事は守られない危険があります。書面に残しておけば、別居から離婚までの流れを有利に進める役に立ちます。
一方で、適切な内容で結ばなければ、狙った効果を得ることができません。協議だけでなく、調停、訴訟といった法的手続きも見越して有利に立ち回りたいなら、法的に有効な書面を作成するために、お早めに弁護士に相談してください。
- 別居時に合意書を作成することは、将来のトラブル防止に効果的である
- 別居の合意書は、夫婦が合意できる範囲で、具体的で明確なものを作るべき
- 別居の合意書のメリット・デメリットを比較し、作成すべき場面を見極める
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
別居は、夫婦の関係に大きく影響するため、慎重に進めなければなりません。別居をする前に、法的な観点から将来の計画を立て、準備することが重要です。
別居を考えている方や、具体的な方法、手続きについて悩むときは、「別居」に関する解説を参考にしてください。