モラハラ・DVの被害にあったとき、さまざまな問題が山積みで、すぐには離婚に踏み切れないこともあります。
それでも、まずは「別居」を早急に進めなければなりません。
悪質なモラハラ・DVから逃げて別居し、あなたの身を守るのが最優先だからです。
弁護士に寄せられる法律相談でも、継続的なモラハラ・DVを受けている人は通常の精神状態にはなく、正しい判断ができないケースも多いもの。
モラハラ・DVのストレスを受けたままでは、離婚協議もうまく進みません。
そのため、モラハラ・DVから逃げるため、別居の方法と、最適な別居先について、慎重に考える必要があります。
ただちに別居し、モラハラ・DVから逃げ出したいとき、今回の解説を参考に、すみやかに行動を開始してください。
- モラハラ・DVを受けたら、正常な判断ができるうちに、すみやかに別居して逃げること
- モラハラ・DVが拡大したり、不利になったりしないよう、別居の準備や別居の進め方を知る
- モラハラ・DVの危険性の度合いによって、最適な別居先は異なる
なお、モラハラ・DVがあるケースでは、離婚前の別居に特に注意が必要です。
離婚前の別居について深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。
モラハラ・DVを受けても、なかなか別居に踏み出せない理由と、その対策
ひどいモラハラ・DVの被害があっても、別居に踏み出せない人は、思いのほか多いもの。
実際の相談事例でも、第三者から客観的にみれば、あまりにひどいモラハラ・DVなのに、「自分の責任だ」と追い込まれ、我慢してしまう方もいます。
「モラハラ・DVなのでは?」と少しでも疑問のある方に、別居へと踏み出す勇気を持ってもらうためにも、皆さんがなかなか別居に踏み出せない理由と、その理由ごとの対策をご紹介します。
モラハラ・DVの加害者が怖い
モラハラ・DVの被害者が別居を進められない理由の1つ目は、「加害者が怖い」というものです。
被害がひどいほど、相手に恐怖心をもち、「別居したら、追いかけて連れ戻されるのでは」、「さらに被害が拡大してしまうかも」と懸念される方もいます。
しかし、「モラハラ・DVが怖いからこそ、別居して逃げたほうがいい」というのが弁護士の本音です。
別居し、物理的に距離をおけば、モラハラ・DVの危険性をかなり低減できます。
別居後に、実家や職場におしかけてこようものなら、弁護士や警察に守ってもらえます。
さらに、ひどいモラハラ・DVがあり、別居すると被害が拡大するおそれのあるシーンでは、シェルターへの別居の方法をとることもできます。
別居には承諾が必要だと思っている
理由の2つ目は、「別居には、相手の承諾が必要だ」と思っているケースです。
モラハラ・DVを受け続けると、いわば洗脳された状態で、「自分が悪い」と言い聞かされ、加害者の言うなりになってしまう方も多いです。
しかし、モラハラ・DVから逃げるために別居するのであれば、相手の承諾は不要です。
夫婦は同居して助け合う義務(同居義務・相互扶助義務)を負うとはいえ、夫(または妻)がモラハラ・DVをしてくるときまでこの義務を守る必要はありません。
離婚を目指す方のほとんどが、相手の承諾をとらずに別居をスタートします。
このとき、置き手紙をしたり、別居直後に弁護士から通知してもらったりすれば、よりスムーズに別居を進められます。
モラハラ・DVの深刻さがわからない
理由の3つ目に、モラハラ・DVの深刻さが、被害者となった方にはわからないものです。
モラハラと、単なる愚痴や夫婦喧嘩の境界は、わかりづらく、よくあることと勘違いしている人もいます。
モラハラ・DVの被害にあう被害者の多くは、まじめで、責任感が強く、自己犠牲的な精神の持ち主。
一方、モラハラ・DVの加害者は、神経質で自己中心的、モラハラ気質な人が多いです。
そのため、自分が我慢してやりすごそうとしてしまいがちで、被害の深刻さを理解できていないケースもあります。
このとき、第三者にモラハラ・DVと思われる言動を伝えて、客観的な意見をもらうのがおすすめ。
「友人の一言で、モラハラを自覚し、目が冷めた」という方もいます。
親や友人などに聞くのもよいですし、法的な意見については弁護士に相談いただくのが有効です。
モラハラ・DVを受けたら、すぐに別居すべき理由
モラハラ・DVをされたと自覚できたら、次に「なぜ、モラハラ・DVですぐに別居すべきか」、その理由を解説します。
モラハラ・DVの被害にあい、強い恐怖を感じているときは、早急に別居するのがおすすめです。
「別居する」という手段は、夫婦関係に大きな影響を与え、強い効果を持ちます。
このことは、すでに「離婚したい」と決意を固めているときに有効なのはもちろんですが、すぐに離婚するほどの気持ちが固まらないときや、場合によっては円満に修復したいといった事例でも、距離をおいて頭をひやし、離婚すべきかどうかあらためて考えなおす機会を夫婦それぞれに与えることができます。
- 離婚したい方へ、別居をすれば…
離婚を早められる
モラハラ・DVから逃れられる - すぐには離婚しない方へ、別居をすれば…
モラハラ・DVをストップしてもらえる
相手の反省をうながし、関係を修復できる
あなたが「モラハラ・DVはつらいけど、できれば夫婦として続けたい」というとき、一旦別居をはさんで反省をうながせば、軽いモラハラならストップしてもらえる可能性があります。
逆に、モラハラ・DVの被害に長いことさらされると、「自分が離婚したいのかどうか」について、冷静な判断ができなくなるおそれもあります。
モラハラ・DVによって、一種の「洗脳」におちいった方からのご相談もよくいただくからです。
モラハラ・DV加害者のなかには、モラハラ・DVをおこなうと途端に優しくなったり、指摘すると「改善する」、「反省した」、「二度としない」と謝罪しながら、同じことを何度もくり返している人も少なくありません。
以上のことから、モラハラ・DVの被害にあっていると感じたときは、離婚したいときもしたくないときも、「ひとまず別居する」というのが、最良の選択なのです。
モラハラ・DVを受けた際の別居の進め方
次に、モラハラ・DVを受けた際の別居の進め方について、具体的に、5つのステップで解説します。
順に検討し、別居日から逆算してスケジュールを立ててください。
モラハラ・DVを受けても別居を決断できない方のなかには、そもそも別居の進め方をよく知らないために先延ばしてしまっているケースもあります。
最良のタイミングで別居し、モラハラ・DVから早く逃げ出すためにも、正しい別居のしかたを知る必要があります。
モラハラ・DVの証拠を集める
まず、モラハラ・DVにより、別居せざるを得ないとき、その証拠を集めておくのが大切なポイントです。
モラハラ・DVの被害を訴えて、裁判所に認めてもらい、有利な条件で離婚を進めたり慰謝料を請求したりするには、証拠が重要だからです。
モラハラ・DVの証拠は、別居後には入手が困難なものも多く、同居中にこっそりと集めなければなりません。
離婚時に財産分与などを有利に進めるために、相手の財産調査もしておきましょう。
なお、モラハラ・DVが強度で、心身に不調をきたす場合、証拠集めよりも身の安全を優先し、証拠が不十分だったとしても速やかに別居してください。
どんな資料がモラハラの証拠になるのか、適切な証拠の集め方は、次の解説をご参照ください。
別居先と別居日を決める
次に、別居先と別居日を決定します。
別居先には、実家や親戚の家、友人、知人宅のほか、すぐに離婚したい例では、新たに借りたアパートやマンションに転居し、生活を立て直す場合もあります。
いずれにせよ、別居日をきちんと決めて、その日に必ず入居できるよう事前準備を進めなければなりません。
別居先については、次章以降で詳しく解説していきます。
別居後の生活について計画する
モラハラ・DVで、予定外の別居をしなければならなくなると、経済面に不安がある方は少なくないでしょう。
夫婦の収入(または、相手の収入)で生計を立てていたのが、今後は自分の収入だけで生活しなければなりません。
子の育児や教育にお金がかかる場合、問題はさらに深刻です。
現在、専業主婦の場合には、別居後には職探しをしなければなりません。
どの程度の期間で、どれくらい収入が得られそうかを考え、生活設計を計画してください。
あわせて、相手に別居中の生活費である婚姻費用の請求をするのも忘れずに。
別居の準備をする
モラハラ・DVによる別居には、事前準備が必要です。
モラハラ・DVが続くと、少なくとも当面の間は家に戻れませんから、持ち出す準備を十分に選び、荷造りをひそかに進めていかなければなりません。
荷物が多いときは、夫(または妻)が仕事中に運び出しておいたり、あらかじめ梱包して郵送する手もあります。
子どもがいる夫婦の場合、別居時に、子どもを連れて行くかどうかも考えておいてください。
子どもを連れて出るときは、子どもの荷物の準備、転校・転園をするかどうか、といった準備も必要です。
別居を切り出す(もしくは、こっそり別居)
別居を決行するとき、モラハラが軽度なときや相手も離婚を望むケースなど、別居のハードルが低そうな場合は、どう相手に別居を伝えるか、別居の切り出し方を考えておくのがよいでしょう。
しかし、モラハラ・DVがひどく、別居を止められそうなとき、こっそり別居するのがおすすめです。
モラハラ・DVを受け続け、別居を切り出すのが怖いとき、面と向かって切り出すのは危険です。
無理して許可を得る必要は全くありません。
こっそり別居するときには、別居する際の置き手紙を作っておきましょう。
弁護士に依頼している方は、弁護士に別居日を伝え、当日すぐ相手に通知してもらえるよう準備をお願いしておきます。
モラハラ・DVを受け、生活場所を変えるときの4つの確認ポイント
DV・モラハラにあったときの「別居」は、「離婚にむけた猶予期間(準備期間)」です。
そのため、単にDV・モラハラから逃げるだけでなく、「離婚条件(離婚とお金の問題、離婚と子どもの問題)にどう影響するか」にも注意しなければなりません。
DV・モラハラから逃げ、生活の場所を変更する際には、あなたや子どもの心身の安全にも配慮が必要です。
ここでは、弁護士がアドバイスのときお伝えする、4つの確認ポイントをご紹介します。
いずれも、1つの基準だけで方針を決めるべきではなく、さまざまな考慮要素を、総合的に考えなければなりません。
モラハラ・DVの強度(危険性、悪質性)
モラハラ・DVの強度がどれほどかは、別居時の方針に大きく影響します。
つまり、モラハラ・DVの危険性、悪質性の高さと言いかえてもよいでしょう。
モラハラ・DVの程度が重大で、危険性・悪質性が高いとき、できるだけ同居の自宅から遠方で、かつ、相手に知られていない別居先を選ぶ必要があります。
モラハラ・DVが悪質だと、自宅近くのマンションに別居しても、居場所を特定されたり、子どもが連れ去られるおそれもあります。
知られている実家に逃げて別居しても、追ってきて連れ戻されてたり、家族にも危害があるリスクも。
生命の危機を感じるほどのDVだと、この点からして、シェルターに避難し、弁護士と警察に相談するのが一番です。
一方、モラハラ・DVが軽度なときや、まだ離婚の決断まではなく、別居して改善をうながしたいケースでは、自宅の近くや実家を別居先とするので足りることも多いです。
別居時に必要な費用
DV・モラハラ事例といえども、別居するときの現実問題として、別居に要する費用の問題は無視できません。
夫婦の共同生活であれば1人分でよかった費用も、別居すれば2倍かかります。
本格的な引っ越しともなれば、転居費用、家賃、敷金・礼金などの初期費用、家財道具の購入費用などもかかります。
別居による出費がかさみ、生活が立ち行かなくなるのは避けなければなりません。
専業主婦の方など、経済面での大きな負担が難しいとき、まずは実家や親せきの家を別居先とし、その後に本格的な別居を進めるのが最適なケースもあります。
相手からもらえる生活費(婚姻費用)
夫婦であるかぎりは、別居しても生活費をもらう権利があります。
夫婦のうち、収入の少ない「権利者」は、収入の多い「義務者」に、生活費である「婚姻費用」を請求できます。
夫婦は互いに助け合う義務があるため、婚姻費用は法的な権利として、家庭裁判所の調停で請求できます。
婚姻費用の具体的な金額は、子どもの人数、年齢と夫婦の収入差によって、養育費・婚姻費用算定表(裁判所)にしたがって定められるのが家庭裁判所の実務です。
モラハラ・DVを理由に別居するときには費用が必要なため、「婚姻費用をもらえるか」は、今後の方針に大きく影響する考慮要素となります。
モラハラ・DVを繰り返す配偶者が、婚姻費用の支払いに協力的とはかぎりませんが、子どもに愛情があるときは、一定の生活費をくれる可能性があるため、あきらめてはなりません。
別居中の生活費の意味、請求する方法や婚姻費用の相場について、次の解説もご参照ください。
子どもの環境(育児・教育・面会など)
子どもを連れて別居するときは、子どもの環境にも配慮が必要です。
そのため、別居の方法や別居先の選定において、子どもを優先に考えることとなります。
モラハラ・DVを理由に別居せざるを得ないとしても、子どもへの影響は最小限にとどめたいところ
子どもが幼いときこそ、子育てに影響させないために、育児に協力してくれる両親や親せきのサポートを受けながら別居を進める必要があります。
夫婦の不仲によって転校を余儀なくされると、子どもに大きな不安を感じさせます。
子どもへの心理的負担が大きすぎる別居の方法、別居先は、控えなければなりません。
教育環境を変えないこと、友人関係を継続させることは、子の心理的影響を抑えるためにとても重要です。
モラハラ・DVがまだ軽度で、少なくとも子への危害は少ないと考えられるときは、同居の自宅からそれほど遠くない場所に別居し、夫婦間でよく話し合う必要があるケースもあります。
また、子どもがある程度の年齢以上のとき、近くに別居し、子どもが自由に面会できるようにして、うまく解決した事例もあります。
子連れ別居を進める際には、子どもの生活や教育にかかる費用についても計画的に考えなければなりません。
子連れ別居時の注意点やポイントは、次の解説をご覧ください。
モラハラ・DVから逃げるとき、検討すべき5つの別居先
モラハラ・DVから逃げるために別居するとき、どんな別居先を検討すべきでしょうか。
実際のモラハラ・DV事例でよく選ばれる5つの別居先ごとに、特徴とメリット・デメリット、注意点を解説します。
個別のケースにあわせ、最適な別居先を選ぶときの参考にしてください。
いずれもメリット・デメリットがあるため、良い別居先を選ばなければ、費用が余計にかかって生活を圧迫したり、相手を刺激してモラハラ・DVがひどくなり、離婚の支障となるリスクもあり、注意が必要です。
「別居先としてどのような選択肢があるか」はその人の状況によりますが、それぞれの別居先について詳しく知ることで、自分の状況にあった最適な別居先を選べます。
実家
DV・モラハラの被害にあったとき、最もよく選ばれる別居先は、実家です。
日常的なDV・モラハラにあうと、同居の継続は難しいものの、現実問題として、費用面から新たにマンションを借りられないというケースでは、実家への別居が良いでしょう。
実家を別居先とすることには、次のメリット・デメリットがあります。
メリット
- 賃料がかからない
- 敷金・礼金などの初期費用がかからない
- 実家の両親に育児を協力してもらえる
- モラハラ・DVの加害者が乗り込んできたとき、両親にかばってもらえる
デメリット
- 通学・通園・通勤の便が悪くなるおそれがある
- 転校・転園が必要となる
- 実家を知られていると、モラハラ・DVの加害者が押しかけてくるおそれがある
モラハラ・DV事例で、実家に別居するとき注意しなければならないのが、既に実家を知られていると、実家に乗り込まれてしまうというリスクです。
この場合、自分だけでなく、実家の家族まで、モラハラ・DVの被害を受けてしまいます。
実家を知られていてもなお、経済的な事情などでどうしても実家に別居せざるをえないとき、警察や弁護士の協力を求め、配偶者の接近を禁止し、身を守るのが有効です。
配偶者による危険な接近への対策について、次の解説もご覧ください。
親せきの家
実家が遠方であり、近くに親せきが住んでいるとき、別居先として、親せきの家を選択せざるをえないケースも。
そのメリット・デメリットは、実家に別居する例と共通します。
ただし、親せきとの関係次第では、実家のように気安い別居はできず、長期滞在も難しいでしょう。
あくまでも仮の住まいとなりますから、他の選択肢を、継続して検討していかなければなりません。
友人の家
両親や親せきなど、血縁者に助けを求めるのが難しいとき、友人の家を別居先にするケースがあります。
しかし、やむを得ず友人宅に逃げ込むにしても、親せきの家以上に気遣いをしなければなりません。
やはり長居は困難で、並行して、他の選択肢を検討する必要があります。
新たに借りたマンション
モラハラ・DVの事例では、新たに借りたマンションを別居先にすることがあります。
被害者に十分な収入があったり、実家から援助を受けたりできるとき、マンションを借りて別居するのが良いでしょう。
別居先として、新たに借りたマンションを選ぶことは、次のメリット・デメリットがあります。
メリット
- 別居先を把握されづらい
- 同居の自宅の近くにマンションを借りれば、生活環境を変える必要がない
- 実家の近くにマンションを借りれば、育児などで両親の協力を得られる
デメリット
- 賃料がかかる
- 敷金・礼金などの初期費用がかかる
- モラハラ・DVの加害者に居場所を特定されたとき、一人で対応しなければならない
一人暮らしのマンションに、加害者が乗り込んでくると、助けを呼べない危険があります。
子どもがいると、保育園や学校から待ち伏せされて別居先を特定されたり、子どもを連れ去られるおそれも。
そのため、悪質なモラハラ・DV事例では、たとえ経済的に余裕があっても、とりあえずは実家に身を寄せたほうが安全なケースもあります。
シェルター
暴力が日常的に繰り返されるなど、生命・身体の危険を感じるケースでは、シェルターへの避難を検討します。
シェルターは、DVから避難する女性のために全国各地に設けられた施設で、行政や民間団体が運営しています。
別居先としてシェルターに避難することは、次のメリット・デメリットがあります。
メリット
- モラハラ・DVの加害者に別居先を知られない
- 費用負担が少ない(もしくは、費用がかからない)
デメリット
- 入居の要件が限定され、モラハラや軽度のDVでは入居できない
- 一時的な避難場所であり、長期の滞在はできない
シェルターでは、入居者の居場所が外に漏れることはなく、個人情報は厳格に管理されます。
そのため、シェルターに避難しているうちは、モラハラ・DVの加害者に乗り込まれたり、被害が拡大したりするおそれはありません。
ただし、シェルターにいられる期間は限られており、ずっとシェルターで生活を続けられるわけではありません。
そのため、DVの危険を感じてシェルターに避難するケースでも、その後にどこに転居するか、検討を要します。
モラハラ・DVから逃げるとき、別居先は近い方がよい?遠い方がよい?
DV・モラハラをきっかけに別居したいと望む方から、よく法律相談で聞かれるのが、「別居先は、現在の住居から、近いほうがよいか、遠いほうがよいか」という質問です。
別居先と自宅との距離についても、メリット・デメリットのある問題で、ケースに応じた判断が必須となります。
別居先が近い時のメリット・デメリット
メリット
別居先が自宅から近いことの最大のメリットは、これまでの生活環境を大きく変えずに済む点です。
子どもがいる夫婦では、別居先が遠いと転校が必要になったり、新しい保育園を探さなければならないなど苦労が増えます。
デメリット
別居先が自宅から近いと、別居先を推測されやすくなります。
居場所がバレたときには新たなモラハラ・DVが起こるおそれも。
モラハラ・DVが再開されるおそれのあるケースで、自宅から近い別居先しか用意できないときは、少しでも危険を避けるため、加害者に知られておらず、自分名義、親名義などではない別居先を検討してください。
また、危険度がとても高度なときは、ひとまずシェルターの利用がおすすめです。
転校・転園しないと、待ち伏せ、連れ去り、別居先の特定やストーカー行為の危険もあります。
連れ去られた子どもを取り戻す正しい方法は、次の解説をご覧ください。
別居先が遠い時のメリット・デメリット
メリット
別居先が自宅から遠いことのメリットは、モラハラ・DVの危険度が高く、日常的に暴力が繰り返されるようなケースでも、危険を回避しやすいことです。
物理的な距離を離せば、加害者が逆上して追いかけてきて、モラハラ・DVの二次被害が起こるのを防げます。
デメリット
ただし、自宅からは遠くても、実家やその近くだと、推測されやすいですから、遠いからといって安心はできません。
モラハラ・DVの加害者を甘く見たり、過信することは禁物です。
また、別居先が自宅から遠いことのデメリットには、これまでの生活が激変するおそれがある点が挙げられます。
モラハラ・DVの危険性が高いために、やむを得ず遠隔地に避難したとき、仕事を継続することが難しかったり、子どもの転校・転園を余儀なくされてしまいます。
モラハラ・DVで別居する際の注意点
最後に、以上の解説をもとに、別居の準備がすべて終わり、いよいよ別居することとなったとき、注意しておくべき点について解説しておきます。
別居後に離婚したいときは、別居理由を証拠化しておく
モラハラ・DVによる別居後に、離婚を予定するときは、別居理由を証拠化しておかなければなりません。
つまり、「勝手に別居した」のではなく、「別居するだけの理由があった」と証拠に残しておくのです。
このとき作っておくと役立つのが、別居の合意書です。
よく相談を受けるのが、「先に別居してしまうと、離婚で不利になりますか?」という質問。
夫婦には同居義務、相互扶助義務があるため、理由なく別居すれば不利な結果をまねくおそれもあります。
しかし、モラハラ・DVのように、同居を続けるのが難しい理由がきちんとあれば、先に別居したからといって、それだけで不利にはなりません。
むしろ、別居の理由になったモラハラ・DVの証拠があれば、慰謝料を請求し、有利な離婚条件を勝ちとれます。
離婚を予定して別居するケースでは、元サヤに戻る可能性はとても低いわけです。
そのため、事前にお金、子ども、財産といった離婚条件も見据えて、入念に準備しなければなりません。
先に別居しても、離婚に不利な影響を及ぼさないための対策について、次の解説をご覧ください。
別居後に復縁したいときは、子どもの面会交流をする
モラハラ・DVが原因で、一時的に距離を置かざるをえないとしても、ただちに離婚の決断はできないことも。
軽度のモラハラ事案では、やりなおしたいと望むケースも多いものです。
一時の感情で怒鳴ったり、揉み合いになっても、別居して期間をおけば、頭が冷え、復縁する例もあります。
モラハラ・DVで別居してもすぐには離婚せず、復縁の余地があるときは、別居中の子との面会交流が大切です。
夫婦の関係が悪化しても、子どもに影響させるのは良くないでしょう。
子どもが自分を責めてしまわないためにも、面会交流による継続的なケアが必要です。
ただし、モラハラ・DVの加害者のなかには、自分の思い通りにしたいがために、反省したふりをして優しくしても、復縁後にはすぐ同じようなモラハラ・DVを繰り返す人も少なくありません。
度重なるモラハラ・DVの後に復縁するときには、正しい判断を下せる精神状態かどうか、熟考してください。
なお、モラハラ・DVなどを機に一度は別居しても、どうしても復縁したい方は、次の解説を参考にしてください。
まとめ
モラハラ・DVから逃げたいとき、別居する方法や、別居先を決めるときに考えるべきポイントを解説しました。
生命、身体に害が及ぶほどのケースはもちろん、そうでなくても、交渉を優位に進めていくためには、別居を最優先に考えておきましょう。
別居後に、DV・モラハラを理由として離婚を主張したいときは、別居時にも、費用面、協力してくれる両親や親戚、子どもの教育や育児への配慮など、注意しておくべき点が多くあります。
別居を検討する際は、ぜひ「別居前」のタイミングで早めに弁護士に相談して、別居の準備からその方法まで、アドバイスを得ておいてください。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題を得意とし、モラハラ・DVの発生している対立の激しい事案に、特に強みをもっています。
モラハラ・DV被害にお悩みの方は、別居や転居する前のタイミングで、ぜひご相談ください。
モラハラ・DVのよくある質問
- モラハラ・DVから逃げるとき、おすすめの別居先はどこですか?
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モラハラ・DVを受けたとき、おすすめの別居先は実家、親せきの家、友人の家、新たに借りたマンション、シェルターの5つです。一長一短あるため、「モラハラ・DVから逃げるとき、検討すべき5つの別居先」を参考に比較してください。
- モラハラ・DVで別居するとき、別居先は近いほうがよいですか?
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モラハラ・DVで別居するにしても、別居先が近ければ生活環境を変えなくてよく、子どもへの影響を最小限にできます。他方で、モラハラ・DVがひどいと、居場所を特定され、二次被害が生じるおそれも。詳しく知りたい方は「モラハラ・DVを受け、生活場所を変えるときの4つの確認ポイント」をご覧ください。