離婚を見据えて別居しても、離婚話が進まないことがあります。
感情的な対立や未練、経済面や生活基盤の不安など、様々な要因が絡むと、交渉は複雑化してしまいます。配偶者が話し合いに一切応じないとき、別居してもあきらめない相手とどうすれば離婚できるのかと不安に思うのではないでしょうか。
離婚話が進まないとき、まずは進まない原因を知り、それに応じた適切な対策を取ることが非常に重要となります。
今回は、別居しても離婚話が進まない原因や、相手が話し合いに応じない場合の対策を、弁護士が解説します。離婚話が停滞しているときに避けるべき行動についても参考にしてください。
- 別居しても離婚話が進まない原因や理由ごとに対策を検討する
- 必要に応じて調停や裁判といった法的手段を講じることを恐れない
- 書面で確実に記録を残しながら交渉を進め、いざというときの証拠を確保する
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別居しても離婚話が進まない原因は?

別居してもすぐに離婚話が進むとは限りません。
同居のままでは話し合いが難しいとき、「別居すること」は、「離婚に向けた強い気持ちがある」と相手に覚悟を示すのに役立ちます。それでもなお進まない離婚話を少しでも進展させるには、相手の主張を確認し、別居中の離婚話が進まない背景や原因・理由を理解する必要があります。
感情的な対立が深い
お互いの感情的な対立が深すぎて、離婚話が進まないことは十分にあり得ます。
離婚を考える段階にまで至ると、大半の場合はお互いに怒りや不信感、相手へのトラウマを持っています。特に、同居中に相手からのモラハラやDVがあったケースでは、たとえ別居しても当事者間では冷静な対話は難しく、その結果として離婚に向けた交渉も停滞してしまがちです。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

相手に未練がある
相手に未練や執着がある場合も、離婚に抵抗感を示され、話し合いが進みづらくなります。「好き」ではなくても情があり、「過去には良い思い出もあった」などと懐かしんでいる状態では、離婚に向けた覚悟を固めてもらうにはまだまだ時間がかかります。
経済面や生活基盤に不安がある
相手が専業主婦(主夫)であり、経済面や生活基盤に不安がある場合も、離婚話は進みません。離婚後の生活に不安がある状態では踏み切れないもので、更に子供がいると、養育費や離婚後の住まいなどの不安が高まり、話し合いが更にこじれがちです。
なお、離婚に際し、財産分与として一定額の財産が分配されるものの、離婚前の夫婦の財産が少なければ受け取れる額にも限界があります。すると、法的に夫婦であり続け、定期的に婚姻費用を受け取る方が生活が安定するからと考えて、別居後もあえて離婚に応じない相手もいるのが実情です。
「離婚時の財産分与」「別居中の生活費の相場」の解説


離婚条件に意見の対立がある
互いに離婚する気持ちはあっても、条件面で意見が対立すれば話し合いは進みません。以下の点は離婚後の生活に大きく関わり対立が起きやすいです。
- 子の親権や監護権
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与・年金分割
- 慰謝料
離婚話を進めたいなら、あなたの側で妥協できる点と、どうしても譲歩できない点を明確に整理しましょう。中でも、子供の親権については互いに妥協点が見い出しにくいので、まさに離婚話が進まない決定的な要因となっていることが多いです。
「親権争いは母親が有利?」の解説

離婚を拒否されても話し合いを強制することはできない
たとえ離婚話を拒否されても、相手に話し合いを強制することはできません。
前提として、離婚は夫婦間で合意に至れば自由にすることができます(「協議離婚」と呼びます)。しかし、離婚の合意に至るための話し合いに応じるかどうかは、あくまで個人の自由であって、「話し合いをしたくない」と言っている人に無理やり交渉の席に付かせることはできません。
そして、そもそも離婚話を全く聞いてくれないのであれば、話し合いがまとまるわけもなく、交渉での離婚を成立させることもできません。
協議離婚が難しい場合、家庭裁判所での離婚調停に移りますが、それでもなお、相手が出廷しなかったり離婚を頑なに拒否したりすれば、調停不成立としてやはり離婚は不可能になります(その後に、離婚裁判を申し立てて、法定離婚事由があることが認められれば、判決によって強制的に「裁判離婚」を成立させることができます)。

したがって、離婚話を相手に強制したいなら裁判まで必要であり、本解説のように「別居しても離婚話が進まない」という段階では、相手に何かを強要することはできません。
なお、別居が家庭内別居に収まっているなら、話し合うハードルは低いため、早期離婚できるチャンスは十分にあります。
「離婚までの流れ」の解説

別居中の話し合いに応じない相手への対策

離婚話が進まないだけでなく、そもそも相手が別居中の離婚を前提とした話し合いに「一切応じない」ということも十分考えられます。どれだけ連絡をしても電話にも出ず、メールやLINEもブロックされたり手紙も受け取ってもらえなかったりといったケースです。
しかし、感情的な行動は相手を逆なでし、逆効果になるので好ましくありません。以下では、別居中の話し合いに全く応じない相手にどのように対応すべきか、具体的に解説します。
証拠に残るよう書面で連絡する
まず、相手が話し合いに応じない場合は、書面で連絡するのが効果的です。
メール・手紙・LINEなど、客観的に記録が残る方法で連絡すれば、いつ、誰にどのような文章を送ったのかを証拠に残すことができ、調停や裁判でも活用することができます。また、口頭や電話よりも文書で伝える方が、自分が離婚について軽く考えているわけではないことが相手に伝わる手段となり、真剣に考えさせるきっかけにもなります。
手紙で相手に連絡するなら、内容証明を使うことで証拠能力が高めるのがよいでしょう。内容証明は、郵便局が差出人・宛名・差出日時を記録してくれるサービスであり、法的な通知や請求を行う場合によく用いられます。

内容証明なら、別居中の話し合いに相手が応じず、連絡を無視されていても、「自分が連絡を取ろうとした事実」を証明できます。
希望する離婚条件を明確化する
話し合いに応じない相手に連絡を取る際は、自身が希望する離婚条件を整理し、明確に示してください。相手が無視したり、法外で過大な請求をしてきたりする可能性があっても、先にこちら側の態度が明らかになっていなければ妥協点を見つけることはできません。
示すべき離婚条件は、金銭的なもの(財産分与・年金分割、慰謝料など)と子供に関するもの(親権や監護権、養育費、面会交流など)に整理し、漏れのないようにしてください。「あなたが何を意図しているかわからない」ことが相手が話し合いに応じない原因となっているおそれもあります。離婚に気が進まない相手に、少しでも応じてもらうには、離婚したい理由や、離婚にあたっての希望条件を整理し、相手に伝わるよう具体的な要求にまで落とし込むべきです。
また、具体的要求にまで落とし込むことは、折り合いがつく見込みがあるか、どのタイミングで次のステップに進むかを明確にできるという意味で、自身にとってもプラスになります。
「離婚に伴うお金の問題」「子供がいる夫婦の離婚」の解説


あきらめず距離を取り続ける
別居しても離婚話が進まなくても、あきらめずに距離を取り続けましょう。
相手が話し合いに応じないからといって、感情的になって無理な働きかけをしたり、相手の無視が明らかなのに不適切な接触や連絡を続けたりすると、相手が態度を硬化させたり激しい言い争いになったりと、更なるトラブルを招く危険があります。
離婚話を進めるには、冷静さと粘り強さが必要です。そして、「一旦別居を止めて家に戻る」という行動は、裁判所に「夫婦関係がまだ破綻していない」と評価される原因となりかねないので控えてください。また、必要な場合には弁護士に間に入って交渉してもらう、離婚調停の準備を始めるなど、自身だけで解決を図らないことも重要です。
「離婚調停中にやってはいけないこと」の解説

別居中に離婚話を進める具体的な方法

次に、別居中に離婚話を進める具体的な方法を、段階的に解説します。
離婚中に別居話を進めたい場合は、専門家から法的なサポートを受けるのも重要です。また、当事者同士での話し合いや調停で解決が図れなければ、離婚裁判も視野に入れましょう。
弁護士を介して離婚話をする
相手が話し合いに応じてくれない場合は、弁護士を介して離婚の交渉を進めるのが効果的です。
感情的な対応が原因で言い争いになるなど、トラブルが起きるのを危惧して相手が連絡に応じてくれないことがあります。自分にそのつもりがなくても相手から「モラハラだ」と言われることもあります。弁護士が窓口になれば直接やり取りする必要がなくなり、希望を冷静に伝えられる上に、精神的なストレスも軽減することができます。
離婚案件の実績が豊富な弁護士であれば、相手との代理交渉だけでなく、離婚後の自身や子供の生活を含めた幅広いアドバイスを受けられます。そのためにも、弁護士がどのような案件に注力しているかを事前に確認したうえで、面談を経て依頼するかを判断しましょう。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

離婚調停を活用する
弁護士から連絡しても相手に応じてもらえなかったり、お互いが希望する条件に開きがあったりして交渉が進まない場合は、家庭裁判所に離婚調停の申立てるべきです。
調停委員が間に入って話し合いをするため、当事者同士だけでのやり取りだけでは難しいケースでも解決できる可能性があります。ただし、あくまで最終的な結論は夫婦に委ねられている以上、合意に至らない限り調停離婚はできません。
「離婚調停の流れ」の解説

離婚裁判を検討する必要がある場合
離婚調停でも合意に至らなかった場合は、離婚裁判(離婚訴訟)を検討してください。
裁判手続きを経て、離婚が相当であるという判決が得られれば、強制的に離婚することができます。ただし、離婚裁判も一般的な裁判所と同じく「三審制」が取られているので、第一審(家庭裁判所)での判決に不服があれば第二審(高等裁判所)に控訴し、更に不服があれば最高裁判所に上告する流れになります(上告が認められるには憲法違反、重要な法令違反などの事由を要する)。
なお、「人事訴訟事件の概況-令和5年1月〜12月-」(裁判所)によれば、離婚裁判の平均審理期間は15.3ヶ月とされています。ただし、これはあくまで平均値であり、揉める離婚裁判は解決までに数年かかるケースもあります。いずれにしても、解決までの時間がかかるため、裁判に踏み切るかは慎重に考えましょう。自身では「離婚話が進まない」と思っていても、相手の意図がわかれば対策を講じたうえで、裁判以外の方法で解決できることも少なくありません。
「離婚調停の不成立とその後の流れ」の解説

別居中の連絡を完全に無視される場合は?
以上は、「連絡は取れるものの話し合いが進まない」という前提で説明してきました。
しかし実際は、完全に連絡を無視されることもあり得ます。例えば、次のようなケースでは、相手に連絡を取ることが全くできないという事例も見られます。
- 相手があなたのDVや虐待を主張し、DVシェルターを利用するなどして逃げている。
- 相手の親が強硬にあなたとの連絡を取らせない。
- 相手が不貞相手のところに行ったため連絡を無視されている。
このようなとき、無理やり連絡を取ろうとする行動は逆効果です。連絡を無視されているとしても、こちらの気持ちや主張を伝えられる手段があるなら、冷静に整理して、必ず書面で伝える努力をしてください。相手に不貞行為などの非があるなら、証拠を集めておけば「法定離婚事由」に該当するため、速やかに調停・訴訟と進めることが可能です。
ただし、離婚裁判を起こすには、先に家庭裁判所に調停の申立をしなければなりません(調停前置主義)。そのため、まずは調停に向けて準備することになりますが、全く連絡が来ない場合でも1ヶ月程度は待って、その間に証拠集めをしておくのが重要です。
なお、弁護士が付いたら、直接夫や妻に連絡したり交渉したりすることは禁止されます。
「相手が弁護士に依頼したら直接交渉は禁止?」の解説

別居中に離婚の話し合いが進まなくなる行動とその影響

最後に、別居中の離婚話を進めている間に、不利になる行動の代表例を紹介します。
別居したのに離婚に向けた交渉が進まないとストレスでしょうが、自身が不利になる行動はしないでください。思いつくような強い働きかけは、多くの場合、解決に結びつくどころか、かえって交渉がこじれる原因になります。
不貞行為をすると離婚できなくなるリスク
不貞行為(不倫や浮気)をすると、離婚が難しくなるリスクがあります。
不貞行為をした側は「有責配偶者」、つまり離婚の原因を作った人として扱われ、裁判による離婚請求が認められづらくなり不利になるからです。
裁判で離婚請求をする際、有責でなければ3年~5年の別居期間が必要とされますが、有責配偶者だった場合、少なくとも8年~10年の別居期間を要するというのが実務上の扱いです。つまり、不貞行為をした上に相手が離婚話に応じてこないと、離婚成立までに10年以上かかる可能性があります。
また、不貞行為は道義的に許されることではありません。相手の怒りを買うのは必至ですし、信用も失墜し、問題が複雑化する原因となるので絶対にやめましょう。
「離婚成立に必要な別居期間」の解説

婚姻費用の支払いを怠るリスク
別居後に婚姻費用を払わないのも、離婚交渉が停滞する原因になるため注意が必要です。
民法では、夫婦には相互扶助義務が課せられており、たとえ別居したとしても、婚姻費用の分担という形で生活費を払わなければなりません。

そもそも相手が離婚に応じるかは、婚姻費用の支払いとは別の問題ですが、支払いを怠ると、相手から悪意の遺棄として慰謝料を請求される可能性があります。また、調停の際にも「生活費すら払わない夫(妻)」と調停委員が判断しかねず、不利に傾くリスクもあります。
「離婚前の別居の注意点」の解説

まとめ

今回は、別居したものの、離婚話が進まない際の対処法を解説しました。適切な対処法は、話し合いの有無や相手の対応によっても異なります。
話し合いにはなっているが「合意点をなかなか見つけられない」という場合は、粘り強く、かつ冷静に交渉を続けましょう。限界だと感じるなら、弁護士に依頼して法的に主張を伝えたり、場合によっては家庭裁判所に離婚調停の申立てをした方が結果的には早いこともあります。
一方、相手が浮気・不倫などで家を出て行き、話し合いすら成り立たない場合は、証拠を集め、速やかに離婚調停の申立てを進めてください。更に、離婚裁判(離婚訴訟)で強制的に離婚を成立させるしかないケースもあるので、速やかな着手がお勧めです。
離婚話が進まない場合の対処法は、個々の状況によっても異なるので、離婚問題に精通した弁護士に相談して適切な行動についてアドバイスを受けるのがよいでしょう。
- 別居しても離婚話が進まない原因や理由ごとに対策を検討する
- 必要に応じて調停や裁判といった法的手段を講じることを恐れない
- 書面で確実に記録を残しながら交渉を進め、いざというときの証拠を確保する
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別居は、夫婦の関係に大きく影響するため、慎重に進めなければなりません。別居をする前に、法的な観点から将来の計画を立て、準備することが重要です。
別居を考えている方や、具体的な方法、手続きについて悩むときは、「別居」に関する解説を参考にしてください。