離婚で後悔する理由と、後悔しないためにやるべきこと

離婚は、人生における重大な決断の一つです。

「やっと新たな人生を歩める」と前向きな気持ちで離婚しても、離婚後になって「思っていたよりも大変だった」「あのとき冷静になれていれば…」と後悔の念を抱く人は少なくありません。経済的な問題や子供への影響などは、想像や理想とのギャップを感じる人も多いです。

離婚後に直面する辛さは多岐にわたり、男女によっても、よくある後悔の内容は異なります。後悔のない選択のためにも、離婚を考えている方はチェックしておいてください。

今回は、離婚で後悔する理由と、後悔を防ぐために事前に検討すべきポイントについて、弁護士が解説します。また、既に離婚して後悔している方への対処法も解説します。

離婚で後悔する人は多い？

離婚して後悔している人は、思いの外多いものです。

当事務所の実施したアンケートによれば、調査に参加した男女100名のうち、およそ3割が「離婚して後悔した」と回答しています。

後悔が現れるタイミングは、離婚直後、離婚から数ヶ月や1年など、人によって異なりますが、一度は離婚を決断しても、後悔する人が一定数いるのが実情です。子供の成長や自分の生活の変化に応じて、あらためて後悔の念を感じる人もいます。

離婚したことを後悔する理由として、収入・資産の減少、子供との関わり、人間関係の変化などを指摘する声がよく見られます。例えば、実際の事例では、次のケースがあります。

「（離婚に踏み切る前に）もう少し我慢してもよかった」など、離婚タイミングについて後悔する声もありますが、一度離婚したら元に戻るのは難しいのが現実です。離婚成立後は、復縁を持ち掛けても拒否されたり、相手に新しいパートナーが見つかって再婚していたりする可能性もあります。後悔しないよう、慎重な決断を心がけましょう。

離婚でよくある「後悔する理由」

次に、離婚に対する後悔で、よくある理由について解説します。

自分に当てはめ、先々に後悔しないかどうか、よく検討してください。該当する理由があるなら、離婚以外の方法での解決も視野に入れ、冷静に考え直しましょう。

経済的な見通しが甘かった

経済的な見通しが甘かったこと理由に、離婚を後悔している人がいます。

離婚後は、自分一人の収入で生活費や住居費などを賄う必要があります。配偶者の支援を前提に生活していた人ほど、生活費の負担が増し、「思っていた以上に生活が苦しい」と感じて、離婚への後悔に繋がってしまいます。

離婚前の準備や計画が不足していると、次のような予想外の事態に直面します。

「夫は収入が多いから、相応の財産分与や養育費が期待できるはずだ」と考えていても、実際はそれほど貯金がなかったなど、離婚時の金銭的な条件に関する見通しの甘さが原因で、後悔してしまう人もいます。

感情や勢いで離婚してしまった

一時的な怒りやストレスで離婚を決断して、後悔している人もいます。

夫婦喧嘩の後など、ストレスが高まっているときは冷静な判断が難しく、ほとんど勢いで離婚届を出してしまうケースは少なくありません。例えば、義両親への不満が大きい、配偶者の不倫や浮気で離婚する、といった場面で、感情的に「別れよう」と発言してしまう例です。

時間が経って感情が落ち着くと、「もっと話し合えばよかった」「自分にも改善の余地があったのではないか」と後悔することとなります。

友人や両親といった第三者の意見に左右され、自分の考えなく離婚に進んでしまうと、特に後悔が残ります。互いの感情が高ぶっているときの接触は避け、冷静に話し合うことで、後悔が残らないよう注意しなければなりません。

強い孤独感や寂しさを感じる

離婚後に強い孤独感や寂しさを感じて、離婚を後悔する人もいます。

結婚生活中は、日常的な居場所であった「家庭」の存在も、別れれば失われます。長年連れ添った夫婦ほど、その喪失感は大きいものです。

また、離婚を機に、元配偶者と共通の知人・友人との距離が開きがちになることも多いです。家族ぐるみの付き合いだった友人や親族との関係性が変わり、これまで当たり前だった集まりにも参加しづらくなると、孤立感や疎外感を感じてしまいます。

自分の親などにも離婚を反対されていると、「親族にも自分の決断は受け入れられないのか」といった寂しさを抱きがちです。

子供に寂しい思いをさせてしまった

子供に寂しい思いをさせてしまったという気持ちから、離婚を後悔する人もいます。

子供にとって、一緒に暮らしていた親と別々になることに、戸惑いや寂しさ、不安を覚えるのは当然です。「自分のせいで両親が離婚した」という自責の念にかられる子供もいます。子供が苦しむ姿を見るのは、親として、離婚を後悔する理由として十分でしょう。

また、子供を監護する親が引っ越すと、物理的な距離が遠くなり、離婚後の面会交流が思うように実現しないケースもあり、後悔に繋がりやすいです。

片親家庭というだけで「不幸」なわけではありません。しかし、慎重に配慮しなければ、子供の人格形成に影響するおそれもあります。子供のことで離婚を後悔しないためにも、双方の親が協力して、子供のためを思って考え、積極的に関わり続けることが大切です。

偏見やネガティブな視線が気になる

職場や親族、地域社会など、周囲の視線もまた、離婚を後悔する理由となります。

残念ながら、離婚に対する否定的な価値観や偏見は、根強く残ります。周囲からのネガティブな視線がストレスとなると、後悔に繋がることがあります。年配者ほど「離婚＝結婚に失敗した人」という価値観を持つことが多く、職場結婚からの離婚だと、社内に居づらくなって追い詰められてしまうケースもあります。

暴力や不貞が理由で離婚したケースでは、加害者だけでなく被害者も、「何か落ち度があって離婚したのでは」という偏見にさらされがちです。好奇の目が子供に向けられ、精神的な影響が及びかねない事態も見受けられ、離婚を後悔する理由となりやすいです。

元配偶者が実は良い人だったと離婚後に気付いた

離婚してから、元配偶者の良さや支えの大きさに気づく人もいます。

特に、刺激が欲しくて浮気・不倫をした結果離婚したケースで、後悔の理由としてよく挙げられます。また、離婚後に他の人と交際したり再婚したりした後で気づくパターンもあります。

このような場合、一緒に築いた時間や思い出を再評価し、「もっと大切にしてあげた方がよかったのでは」などと、更に後悔が募る結果となります。

女性が離婚で特に後悔しやすいこと

離婚後は、女性が親権者となって子供を引き取るケースが多いです。

結果として、女性の社会的な立場の低さやシングルマザーとして苦労が理由で、後悔につながることは少なくなく、離婚するには相応の覚悟が必要です。

経済的に困窮し生活水準が下がった

離婚をきっかけに生活水準が下がり、経済的に困窮するケースがあります。

離婚後は自分一人の収入で生活を支えるため、生活費を切り詰めざるを得ず、「離婚前の生活と比べて落差が大きい」という後悔を抱えることもあります。

婚姻中に専業主婦であったり、短時間のパート・アルバイト勤務だったりした女性は、特に注意が必要です。資格やスキルがあれば別ですが、再就職活動がままならない、想定より低い年収を余儀なくされるなどの困難に直面しやすいからです。

子なしの夫婦だと養育費も請求できませんし、子供がいても養育費を滞らせる人もいます。社会保障や公的支援に頼らざるを得ない部分も出てきますが、手続きが煩雑だったり、思ったほど支給されなかったりといった不満があると、後悔を感じてしまいます。

シングルマザーは仕事と育児の両立が負担

シングルマザーとなると、仕事と育児の両立が負担で、後悔に繋がることがあります。

育児をしながら仕事をすることとなると、時間的な余裕は極端に少なくなるのが現実です。勤務時間が制限されるのでキャリアを諦めざるを得ない、昇進の機会を逃す、希望の職種に就けないといった悩みを抱えるシングルマザーも多くいます。

保育園への送迎や家事・育児だけでなく、子供の急病で看護が必要になったり、学校行事に出席したりといった突発的な対応もあるため、職場を含めた周囲の理解は不可欠です。

このような負担感から、「もっと生活環境を整えてから離婚すべきだった」「子供が大きくなるまで待てば良かった」と後悔する声がよく聞きます。

男性が離婚で特に後悔しやすいこと

一方で、男性に特有の理由で、離婚を後悔する人もいます。特に、子供や家事の問題は、男性が抱えやすい後悔する理由です。

子供に会える機会が激減した

離婚後の親権は母親が取得し、男性は非監護親として子供と離れて暮らす家庭が多いです。

そのため、子供に会える機会が激減したことで、離婚を後悔する男性は珍しくありません。面会交流の取り決めが不十分な場合や、元配偶者との関係が悪化している場合などは、面会が実現しづらくなったり、妻に拒否されたりする人もいます。

特に、元夫の不貞やDV・モラハラなどが離婚理由だった場合、対立が深く、面会交流が実現できない、あるいは、制約が加わることもあり得ます。離婚後に会える頻度が減ると、子供との心の距離が広がるように感じ、焦りや寂しさを覚える父親は多いものです。

家事全般を自分でこなすのが大変

離婚して一人暮らしを始めた場合、全ての家事を自分で行わなければなりません。

特に男性側では、仕事との両立がネックとなります。仕事に集中するあまり家事が疎かになり、食生活が不規則になったり、栄養が偏ったりすることもあります。コンビニや外食中心の生活が続いて体調を崩すケースも少なくありません。

子育てをする元妻に比べ、元夫の一人暮らしは理解やサポートを得づらいのも実情です。家族・親族など周囲の協力が得られない場合、かなりの負担となることを覚悟しましょう。

離婚して後悔しないためにやるべきこと

ここまで解説した通り、離婚して後悔するのは、珍しいことではありません。

離婚すれば生活は一変することが多く、その変化を知らずに安易に踏み切るからこそ、後悔する結果となるのです。離婚後に気付いて後悔しないよう、念入りに準備しましょう。

感情の整理を冷静に行う

まず、感情の整理を冷静に行いましょう。

配偶者と喧嘩をして離婚が頭をよぎっても、冷静でない状態で「もう離婚だ」などと発言しない方がよいでしょう。一時的な衝突や誤解で離婚を選ぶと、後悔するケースが多いです。

冷静に話し合えば、離婚しなくても解決する余地は十分にあります。「本当に離婚をしたいのか」、しっかりと自分の感情に向き合うべきです。すぐには結論を出せそうにないときは、冷却期間を置いてください。別居して距離を取り、日記に気持ちを綴るのも有効な方法です。

離婚後の生活設計を具体的にシミュレーションする

次に、離婚後の生活をシミュレーションし、経済的に成り立つかを検討してください。

収入や支出を試算し、住居費用や光熱費、食費などを書き出して具体的なプランを立ててみましょう。子供がいる場合、育児や教育の方針も考慮する必要があります。例えば、受験するか、留学させるかといった判断は、元配偶者の理解を得る努力をしておくべきです。

子供の成長や自身の仕事などは、当初の試算通りにならないこともあるので、将来のリスクも加味しておくことが重要です。

特に女性の場合、シングルマザーとして育児と仕事を両立させなければなりません。

家族や親族の協力を得たり、保育園を利用したりなど、負担を軽減できる方法がないかも検討し要します。弁護士に相談すれば、離婚時の財産分与や養育費について詳細な見通しを立てられるため、正確な判断がしやすくなります。

金銭的な離婚条件で妥協しない

金銭的な離婚条件は、決して妥協してはいけません。

財産分与や養育費、慰謝料や年金分割など、法的に得られるはずの権利をよく理解し、損しないように受け取るべきです。本来受け取れたはずの相場を知らないと、経済的に損をして、ますます離婚に対する後悔を大きくしてしまいます。

子供が幼い家庭は特に、養育費の額が、この先数年〜十数年にわたって大きな影響を及ぼします。「早く離婚したい」と急ぐと、配偶者に足元を見られる危険があるので、じっくり時間をかけて交渉しておくべきです。

弁護士に相談して有利に進める

離婚して後悔しないために、弁護士に相談して有利な形で進めましょう。

離婚の方法には、話し合いによる協議離婚、調停離婚、裁判離婚の三種類があります。それぞれの手続の違いを理解して、最も適切な進め方を選ぶことが後悔を防ぐ第一歩となります。

離婚後の生活に、特に大きな影響を与えるのが「親権」と「財産分与」です。

親権は、かけがえのない子供の問題であり、金銭には代替できないものです。財産分与は、金銭的な離婚条件の中でも、特に高額となる可能性のあるものです。

いずれについても、弁護士のサポートを得ておけば、自分に不利にならないように進め、後悔のない離婚を目指すことができます。

合意した内容は公正証書に残す

トラブル予防のために、相手と合意した内容は公正証書に残すべきです。

離婚後になって約束した養育費や慰謝料が払われないと、「それなら離婚しなければよかった」という後悔を抱きかねません。特に、長期間にわたって支払われるのが前提となる養育費は、滞ると自分だけでなく子供の生活に大きな支障となります。

公正証書は、合意内容を示す証拠となると共に、未払いが生じた場合、訴訟を経ずに強制執行によって財産を差し押さえることのできる強力な効果を有しています。

離婚に踏み切る前に考えるべきこと

一度離婚したら容易には戻れない以上、後悔のない選択をしなければなりません。

「離婚すべきか」という考え方だけでなく、「離婚してどうなるか」まで見通しておくことが大切で、そのためには、離婚以外の方法で夫婦間の問題が解決できないかも、検討する必要があります。

離婚した場合としなかった場合を比較する

離婚という重要な決断に当たり、メリット・デメリットを比較しましょう。

離婚した場合としなかった場合で、自分や子供の生活がどう変わるか、検討する必要があります。整理するには、できるだけ具体的に想像し、紙に書き出す作業が有効です。

この際、単なる金銭的な条件の比較だけでなく、気持ちや感情への考慮もしなければなりません。例えば、離婚したことで子供が感情的に不安定になる、周囲から心無い言葉をかけられるといった事情は無視できません。逆に、「子供のためには離婚しない方が安心」と思っていても、夫婦の関係の悪さが、子供にストレスを与えることもあります。

時間の経過により解決できないか検討する

配偶者との間の争いも、時間の経過により解決できるものは少なくありません。

「すぐに離婚」と焦るのではなく、別居して距離を置き、話し合って解決できないかも検討しましょう。妊娠中や産後うつ・産後クライシス、育児ノイローゼなど、一時的な問題は、時間が経過することで収まるケースもあります。

離婚以外の解決策がないか再考する

最後に、離婚せざるを得ないと思い込まず、それ以外の解決策を再考しましょう。

コミュニケーションを密にしたり、夫や妻の親族との付き合い方を見直したりなど、一方が譲歩して変化することで、離婚以外の解決策を見出だせるケースもあります。改善可能な原因があるなら洗い出し、互いに歩み寄れるかどうかを話し合えば、状況を好転させられます。

感情的になり、夫婦二人だけで進めるのが難しい場合は、親族や知人、弁護士などを介して話し合う、家庭裁判所に円満調停を申し立てるといった対応も有効です。

既に離婚して後悔している場合の対処法

最後に、既に離婚して後悔している人に向けて解説しておきます。

残念ながら、離婚後は、離婚前よりも対処法の幅が狭まります。定期的な連絡があり、協力して子育てしているなど、良好な関係を築いているなら復縁のチャンスもあるかもしれませんが、そのような元夫婦は少数派で、大半の夫婦は元には戻れません。

重要なのは、後悔したことを受け入れ、前向きになることです。後悔はあっても、当時の自分が「最善である」と思って選んだ道です。過去を否定するのでなく、今後の人生にどう活かすかという視点に切り替えて再スタートを切るべきです。

精神的に辛いときは無理せず、カウンセラーなどの第三者の意見も聞きながら感情を整理すれば、新しい一歩を踏み出す助けになります。

弁護士に相談すれば、法律知識と経験に基づいたアドバイスを受けられます。

法律的に「離婚後でもできること」を知れば、「あのときもっとできることがあったのでは」という後悔の感情を少しでも軽減できるので、離婚後でも遠慮せず相談してください。

まとめ

今回は、離婚して後悔しないための準備について、法的な観点から解説しました。

離婚は人生を大きく変える決断ですが、その選択が正解かどうかは、時間が経ってから初めて見えてくることもあります。離婚後に後悔する人が一定数いるのは、事前に十分な準備をせず、その場の感情に任せて判断してしまうことが一因となっています。

経済的な不安、子供への影響、孤独感や世間の目といった後悔・不安の要素は、弁護士の経験からすれば、ある程度は予想できるものです。離婚後に感じる後悔は人それぞれですが、その多くが「離婚前には想像していなかった」「見通しが甘かった」ことです。複数の観点からしっかりチェックすべきであり、決して離婚を急いではいけません。

離婚を考えた段階こそ、感情に流されず、現実的なシミュレーションと専門家の意見が重要となります。後悔しない選択のために、「自分がどう生きたいか」を軸に、法律知識については弁護士のアドバイスを得ておいてください。