離婚・男女問題

親権争いで母親が負ける6つのケースとその理由・対策

2021年8月23日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

離婚にともなって子の親権が争われる例の多くが、母親側(女性側/妻側)が親権を勝ちとっていますが、一方で、親権争いで母親が負けるケースもあります。

例えば、母親に養育・監護をする能力がなかったり、虐待があるなど親権者として不適格であったり、子どもが父親についていくことを望んでいるときには、母親が親権争いで負けてしまい、父親側が親権者となることもありえます。

「父親は仕事、母親は家事・育児」という考えはもはや古く、現在では父親側といえども強く親権を主張してくることもよくあります。親権について話し合いでの解決が困難なときは、離婚調停、離婚訴訟で裁判所の判断を受けることとなります。

今回の解説では、

  • 親権争いに母親側が負けるケース
  • 親権争いに母親側が負ける理由・原因
  • 父親側からよく主張されるが、必ずしも母親側が負けるわけではない事情

といった親権に関する法律知識について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

親権争いに母親側が負ける6つのケース

親権争いは、基本的には母親側(女性側/妻側)が有利とされています。

その理由は、子どもが乳幼児(0〜5歳)のとき母親が育てるのが望ましいと考える「母性優先の原則」が基本とされる上、「現状維持の原則」によっても婚姻期間中から育児の中心となっていた母親にとって有利に判断がなされるからです。更に「兄弟姉妹不分離の原則」により、1人の子について母親有利なとき、他の子の親権も得やすくなります。
(参考解説:「親権の判断基準」

しかし、次のようなケースでは、親権争いに母親側が負けてしまいます。実際、当事務所への相談例でも、これらのケースでは父親側で親権獲得に成功している例があります。

参考解説

母親が子どもを虐待しているケース

母親が子どもを虐待しているとき、親権者として適切ではなく、母親側といえども親権争いに負ける可能性が高いです。家庭裁判所も、虐待している親には親権を与えません。

このように親権争いにとって不利になる「虐待」には、殴る、蹴る、物を投げつけるなどの典型的な身体的暴行だけでなく、精神的暴行、性的虐待やネグレクト(育児放棄)も含まれます。

  • 身体的暴行
    殴る、蹴る、体を強く揺さぶる、物を投げつけるなど
  • 精神的暴行
    怒鳴る、言葉で脅す、無視する、人格否定をするなど
  • 性的虐待
    性的行為を行う、児童ポルノの対象にするなど
  • ネグレクト(育児放棄)
    育児・家事を行わない、汚いまま放置する、学校に行かせない、適切な医療を与えないなど

親権争いにおいて、虐待があって養育・監護を母親に継続させることが難しいと主張するときには、父親側においては客観的証拠によって証明することが大切です。母親が子どもを虐待していることの証拠には、虐待中の録音・録画や、家事・育児を満足に行わずに自宅が荒れている状況の写真などがあります。

子どもが父親と暮らすことを希望するケース

子どもが父親と暮らすことを望んでいるときに、母親が親権争いに負けてしまうことがあります。親権の判断基準はあくまでも子どもの福祉のために決定されているため、子どもが一定程度の判断能力を備えた年齢(15歳程度)となると、原則として子どもの意思が尊重されるようになります。

子どもが父親についていきたいと考える理由は様々ですが、私学への進学や留学に要する学費など、経済面を理由とすることがよくあります。

なお、15歳以上の子どもがいるときはその意向の聴取は義務(家事手続法152条2項)であり、家庭裁判所の調査官が行います。調査官による調査では、親の働きかけや影響をできるだけ排除し、子どもの考えを正確に聴取します。

母親が精神疾患にり患しているケース

母親が精神疾患にり患しており、十分な育児をすることが難しい場合には、親権争いで母親が不利となり、負けてしまうことがあります。育児の障害となってしまうような精神疾患でよくある例には、統合失調症、うつ病、適応障害などがあります。

精神疾患だけでなく、薬物依存やアルコール依存症などの事情や、ギャンブル中毒や浪費、借金といった子どもの教育上問題のある事情があるときにも、母親側といえども親権争いで著しく不利になります。

なお、精神疾患にかかっていても、軽度であり育児は可能だということもあります。育児に支障がないときには、病気にかかっているというだけの理由で親権争いに負けてしまうことはありません。

参考解説

子どもと長期間離ればなれになったケース

親権争いの1つの判断基準として、家庭裁判所は現状の養育状況を重視する傾向にあり、現在の養育が特に問題がないとき、そのまま環境を激変させないことが子どもにとって良いと考えることがあります。そのため、子どもと母親が離ればなれになっている期間が長いと、親権争いにおいて母親側が負けてしまう例があります。

この点で、特に注意したいのが「別居時に必ず子どもを連れて出る」ということです。子どもを置いて母親が家を出てしまったとき、その後の育児は父親が行わざるを得ません。子どもを放置して家出してしまったとき、子どもの育児を父親に任せたと評価されることもあります。

別居後の父親の育児に問題がないときには、父親が親権者に指定され、その後に子どもを引き取りたいと申出ても、もはや子どもを取り返せないおそれがあります。

参考解説

子どもの育児を任せきりにしているケース

別居時はもちろんですが、同居時でも母親が育児を行わず、父親に任せきりだったときも、親権争いにおいて母親側に不利な事情となります。家庭裁判所では、これまでの養育実績を、親権を判断するときの考慮要素とする傾向にあるからです。

しっかり育児をしていたのであれば、監護実績を証する証拠として、母子手帳や育児日記、ブログ、保育園や学校とのやりとりなどを準備しておいてください。

監護補助者が全くいないケース

親権を勝ちとって育児を行うとき、育児をサポートし、協力してくれる親族などのことを監護補助者といいます。これまで専業主婦だった人も離婚後は仕事をすることが多く、育児を十分に行うためには、監護補助者の協力が欠かせません。

監護補助者が全くおらず、親権を得てもワンオペ育児となり、万が一のときに子どもに危険が生じてしまうといったケースでは、母親側が親権争いに負けてしまうことがあります。

養育環境が十分に整備されていることを主張するため、両親の協力が可能であることや、実家の近くに転居することなどを裁判所に伝えることが、親権争いに有利な事情となります。

父親側からよく主張されるが、必ずしも母親側が負けるわけではない事情

親権争いが激化している夫婦では、基本的には不利な立場におかれやすい父親側(男性側/夫側)から、様々な主張がなされます。その内容の中には、母親側の「妻」としての非を問い、責任追及する主張があります。

しかし、あくまでも夫婦の関係についての主張が、親子の関係に影響するとは限りません。そのため、父親側からよく主張される次のような事情は、必ずしも母親側にとって不利にはなりません。

母親側の不倫・浮気

母親側に不倫・浮気、すなわち「不貞行為」があるとき、慰謝料請求の対象となるほか、夫婦の破綻について責任あるものとして、民法770条1項の法定離婚原因にあたりますが、親子関係には必ずしも影響しません。

そのため、不倫・浮気が育児に影響してしまうような例外的なケースを除いては、親権争いに有利にも不利にも影響しないのが原則です。親子の問題はあくまでも子どもの福祉によって判断されます。

ただし、不倫・浮気に熱中するあまりに育児を行わなかったり、不貞行為の相手が子どもに暴力を振るっていたり、そのような相手と再婚を目指していたりといった育児への悪影響があるとき、親権争いでも母親側が負けることがあります。

母親側の経済力が乏しいこと

親権を勝ちとるためには、子どもの幸せのために養育環境を整備することが重要となりますが、母親側の経済力が乏しいことは、必ずしも親権争いにおいて母親側が負ける理由とはなりません。経済力は、親権判断の1つの基準ではあるものの、たとえ専業主婦であっても親権を獲得できます。

離婚時に母親が無職で収入がなかったとしても、親権者は相手から養育費をもらうことができるため、この養育費の収入もあわせて、経済的に育児が可能かどうか判断されます。あわせて、離婚時には、財産分与や慰謝料などをきちんと獲得し、将来の育児の不安を解消しておくことがおすすめです。

参考解説

母親側の借金

同様に、母親側に資産があまりなく、借金があるときでも、親権争いで母親側が負けてしまう理由には必ずしもなりません。

また、住宅ローンや自動車ローン、学資ローンなど、夫婦生活のためにした借金は、財産分与の対象となり、離婚時に分与することが基本となります。

ただし、ギャンブル中毒や浪費によってつくってしまった借金であるケースなどのように、子どもの教育上悪影響だと考えられる場合には、そのような借金が、母親が親権争いで負ける理由となってしまうことがあります。

離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、親権争いにおいて母親側(女性側/妻側)が負けるケースについて、その理由と対策などを解説しました。

原則として親権争いで有利だとされる母親側ですが、万が一にも負けてしまわないよう、実際に母親側が負けてしまったケースをもとに対策を理解しておくようにしてください。逆に、父親側(男性側/夫側)では、母親側が負けてしまった例と同様の事情があることを、証拠によって立証することが大切です。

親権争いで有利だとされる母親側でも、負けてしまうケースは実際にありますから、確実に親権を得て離婚したいときは、離婚問題の経験が豊富な弁護士のアドバイスを得ることが有益です。

親権問題をはじめ、離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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