離婚後も、元配偶者と同居をすることは可能ではあります。
離婚した後でも、生活の安定や子供の精神的ケアを優先して、元配偶者との同居を希望する人は一定数います。戸籍上の夫婦でなくなっても、同居することに法的な問題はなく、いわばルームシェアや同棲と同じ形になります。
しかし、生活費や家事の分担など、トラブルが起きやすいため注意しなければなりません。また、離婚後も同居していると、児童扶養手当や寡婦控除など、一部の公的制度が利用できなくなるケースもあります。事実上も、同居を続けることで新たな人生のスタートが切りづらくなるおそれもあります。
今回は、離婚後も同居を続けるメリット・デメリットについて、弁護士が解説します。あわせて、子供がいる夫婦の注意点や、スムーズな離婚後の同居のために行うべき手続きも紹介します。
- 離婚後も同居を続けることは可能だが、目的を明確にし、リスクを理解すべき
- 離婚後の同居はトラブルになりやすいので、費用や家事の負担を明確化する
- 世帯分離などの制度を活用し、行政支援や税制の不利益を回避する
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離婚後の同居は可能?

離婚が成立した後でも、お互いの合意があれば、同居を続けることは問題ありません。
離婚後も同居する理由には、例えば次のケースがあります。
- 経済的理由
住宅費や生活費など、別居の負担が大きいと、離婚後も当面は同居したままでいる元夫婦もいます。離婚による収入減で独立した生計を立てられなかったり、子供の教育費や養育費を優先することを希望したりするケースです。 - 子供の養育のため
離婚後も子供の安定した生活環境を保つことを目的に、同居を続ける家庭もあります。転校の回避のほか、「両親が揃った状態を保ちたい」という希望を持つ夫婦もいます。 - 住宅ローンや財産分与
婚姻期間中に共有名義で住宅ローンを組んでいて、離婚後にどのように処分するか決まっていないことで、しばらくの間同居を継続する夫婦もいます。 - 体裁を保つため
離婚した事実を周囲に知られたくなかったり、近隣への配慮が必要であったりするために、表面上「夫婦」のように振る舞って同居を続けるケースもあります。 - 離婚しても関係が良好な場合
以上のようなマイナスの理由のほか、関係が良好なために、離婚したが友人やパートナーのような関係を継続している家庭もあります。この場合、内縁や事実婚として、再び婚姻に近い関係に発展するケースもあります。
離婚後すぐには住まいが見つからない、子育ての負担を軽減したいといったネガティブな理由で「同居せざるを得ない」と考える元夫婦もいます。その一方で、二人の関係性によっては、同居人として協力し合うために、ポジティブな理由で同居を選択している家庭もあります。
離婚後は、共同生活を維持するのに必要な費用を負担する義務はなく、婚姻費用の分担義務はありません。しかし実際は、一緒に生活する以上、食費や光熱費などの負担について合意しておかないとトラブルの元となります。また、離婚後も、未成年の子供がいる場合は、収入の少ない一方が、他方に対して養育費を支払う義務を負います。
また、離婚後も、同居を継続することで内縁や事実婚と評価される場合には、法律婚に準じた扱いがなされ、一定の法的義務が生じる可能性があります。例えば、夫婦と同様に生活費を分担し、他の異性との肉体関係(性交渉)があると「不貞」と評価されて慰謝料を請求されるといったことも考えられます。
以上の通り、離婚後も同居すること自体は法律上問題ありませんが、円滑な共同生活を維持するためには、事前にルールを決めておくことが不可欠です。


離婚後の同居を続けるメリット・デメリット

次に、離婚後も同居を続けるメリットとデメリットについて解説します。
離婚後の同居のメリット
まず、離婚後の同居のメリットは、次の通りです。
離婚後の同居は、場合によっては精神的、経済的な負担を軽減できます。特に、婚姻期間中の生活を大きく変えたくない人や、復縁を求めていた人の中には、メリットを重視して離婚後も同居を希望する人が一定数います。
経済的な負担を軽減できる
離婚後、別居すると、家賃や光熱費などの生活費がそれぞれかかり、経済的負担が増します。
これに対し、離婚後も同居すれば、家賃や光熱費などの生活費を分担して、コストを抑えることができます。特に子供がいる家庭では、養育費や教育費について、同居を続けていた方が元配偶者に負担してもらいやすくなります。
同居が一時的なものでも、荷物を整理したり、新しい住まいや仕事を探したりといった新生活の準備がしやすくなります。
「同居中の婚姻費用」の解説

子供に与える影響が少なくて済む
離婚後も同居を続けることで、子供の生活環境や家庭内の雰囲気を維持できます。
離婚後も両親が日常的に関わりを持ち続けることで、子供にとっての精神的な安定を保ちやすくなります。転校や引っ越しを避けることで、子供が感じるストレスを軽減できるほか、突発的な病気や事故にも、両親揃って対応しやすくなります。
ただし、離婚した両親の関係性が悪く、喧嘩や衝突が絶えない場合には、かえって子供に悪影響を及ぼす危険もあるので、慎重な判断が求められます。
「子供がいる夫婦の離婚」の解説

離婚時の財産の処分を猶予できる
夫婦の中には、早期離婚を優先して、財産分与や持ち家の売却、ローンの処理などを離婚後に解決しようとするケースもあります。この場合、しばらくは同居を続けることで、これらの離婚後の処理について段階的に進める時間的な余裕が生まれます。
ただし、離婚に伴う条件の交渉は、離婚時に一括で合意する方がシンプルであり、紛争化しづらいため、理由なく後回しにしないよう注意してください。
「離婚後の財産分与」の解説

離婚後の同居のデメリット
金銭や子育ての面でメリットがある一方、離婚後の同居はデメリットもあります。注意して進めないとトラブルになるおそれがあります。離婚後も同居するのは、あくまで例外なので、判断を誤らないために懸念点をよく理解してください。
離婚後の同居のデメリットは、以下の通りです。
ストレスやトラブルが再燃する
一度は離婚に至った関係である以上、感情的な対立が大きいことでしょう。
離婚後も同居を続ける中で、過去のトラブルが再燃したり、精神的なストレスが蓄積したりして、かえって生活環境が不安定になる危険があります。本来であれば距離を置くべき関係なのに、経済面や子供の事情を言い訳にして同居を続けた結果、更に大きな紛争を招いてしまう家庭もあります。
この場合、子供のためを思っての離婚後の同居が、むしろ子供にとっても精神的なダメージを負わせる結果となることもあります。
「夫婦喧嘩で暴力があった際の対処法」の解説

公的な支援を受けづらくなる
離婚後に同居を続けると、住民票上は世帯分離をしても、実態としての「同一世帯」であると判断され、各種の手当や控除が受けづらくなります。
- 児童扶養手当(母子手当)
ひとり親世帯に支給される支援金。両親が同居していると、養育を共同で行う同一世帯であると判断され、受給の対象外とされるおそれがあります。 - 寡婦控除
離婚または死別によって婚姻しておらず、合計所得金額が500万円以下の女性が対象となる所得控除。同居している場合は形式上「世帯として成り立っている」とみなされ、適用できないことがあります。 - ひとり親控除
合計所得金額が500万円以下のシングルファザーやシングルマザーが対象となる所得控除。「事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人」がいる場合は、ひとり親控除の適用対象外となります。 - 生活保護
生活に困窮する人に対して最低限度の生活を保障する制度。実態として生活費の支援があると判断されると、申請が認められないおそれがあります。
なお、虚偽の申請をした場合(離婚後も同居しているのに、別居していると申告するなど)、不正受給とみなされ、返還請求を受けたり刑事罰を科されたりする危険もあります。
再婚などの再出発の妨げになる
離婚は本来、人生の再スタートのための節目です。
しかし、離婚後も元配偶者と同居している状態では、新しい恋人と交際するハードルが高くなってしまいます。交際相手ができたとしても、「元配偶者と同居している」と説明しても理解を得られず、誤解を招いてしまうことは容易に想像できます。
また、同居を続けることで心理的な整理がつかず、自分自身の気持ちの切り替えができないこともあります。
離婚後の同居中に他の異性との恋愛は不貞行為?

離婚後の同居中、他の異性と恋愛しても、原則として「不貞」にはなりません。
法律上、「不貞行為」とは、婚姻関係にある配偶者が、他の異性と肉体関係(性交渉)を持つことを指します。つまり、離婚が成立していれば、たとえ同居していたとしても婚姻関係は既に解消されており、原則として不貞行為に該当することはありません。
ただし、離婚後も同居していると、次のような誤解やトラブルを招くおそれがあります。
- 子供に悪影響を及ぼす
同居中、一方の親が交際相手を頻繁に出入りされたり、これによって他方の親と喧嘩したりしていると、同居する子供にも悪い影響があります。親権者となった親に、育児に関する問題点があると判断されれば、親権の変更を請求される危険もあります。 - 財産分与の争いの火種になる
財産分与を後回しにして離婚後も同居していた場合、一方が新たな交際を開始したことが感情的な反発を生み、財産分与の協議が難航するリスクがあります。 - 内縁・事実婚と評価される
離婚後も共同生活を続けることで、その実態によっては内縁や事実婚と認定される可能性があり、その場合には貞操義務が生じ、不貞行為に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。
このようなリスクを回避するには、お互いが今後の恋愛や交際について自由に行動することに同意している旨を記載した合意書を交わしておくのが有効です。書面で証拠を残しておくことで、相手から予想外の責任追及を受けるのを防ぐことができます。
離婚後なら、同居していても法的には自由恋愛が可能ですが、トラブルを避けるためにも、元配偶者との関係性にはくれぐれも注意し、慎重に行動してください。
離婚後の同居を続ける際の注意点

次に、離婚後に同居を続ける場合の注意点について解説します。
離婚後も同居するとき、生活費や養育費などの金銭的なトラブルへの配慮は欠かせません。特に、同居が内縁や事実婚と評価される場合は、「単なる同居人」以上の法的な義務や責任を伴います。
将来の争いを防ぐために、離婚後も同居するなら、同居中のルールや費用負担について事前に話し合い、書面化しておくのがお勧めです。
生活費や養育費の負担を取り決める
離婚後も同じ家に住む場合、生活費や養育費の分担を決めておくべきです。
内縁や事実婚と評価されると、法律上の夫婦と同じく、相互に扶助する義務を負い、生活費の分担は必須となります。また、そうでなくても、実態として一緒に住んでいるなら、家賃、食費、光熱費などを一方のみが負担するのは不公平であり、トラブルになってしまいます。
元夫婦とはいえ、法的には「赤の他人」である二人だからこそ、あらかじめルールを定めなければ「言った・言わない」の問題が起きやすくなります。特に、収入格差のある元夫婦の場合、どうしても片方に負担が偏ってしまいがちです。
したがって、離婚後に同居を続けるなら、生活費や養育費について、具体的な金額や支払い方法、期限を取り決め、書面として残しておくのがお勧めです。公正証書化しておけば、強制執行をする根拠とすることもできます。
「養育費が支払われないときの対応」の解説

社会保険の新規加入が必要になる
婚姻関係を解消すると、元配偶者の扶養に入ることはできなくなるので、新たな保険に入り直す必要があります。具体的には、就労している場合は勤務先を通じて健康保険や厚生年金に、自営業者や専業主婦(主夫)の場合は国民健康保険、国民年金に加入する手続きが必要となります。
離婚届を提出したら、まだ同居が続いていても、速やかに保険の切り替えを行いましょう。
なお、内縁や事実婚の状態であり、生計を同一にしているなど、生活実態によっては扶養の認定を受けられる可能性があります。
子供がいる離婚後の同居は特に注意
子供がいる場合は特に、離婚後の同居でも特有の注意点があります。子供への影響を考えて同居を選択する家庭もありますが、必ずしもメリットばかりではありありません。
子供の健全な発育に配慮する
両親の離婚は、子供にとって大きな心理的負担となります。親の関係が不明確だったり、新たな交際相手ができたりすると、混乱や不安に繋がってしまいます。
たとえ法的に「夫婦」でなくなっても、子供にとっては変わらず「両親」であることを忘れてはなりません。離婚後に同居する場合には、互いを非難する発言や争いは控え、子供の前では穏やかに接することが大切です。
子供が混乱しないように、学校や親戚など、周囲への説明も適切に行うべきです。
親権・監護権が曖昧になりやすい
同居していたとしても、離婚後の親権は、両親の一方にしかありません(ただし、2026年5月までに思考される改正民法では、離婚後も共同親権が可能となります)。
そのため、離婚した後も、元配偶者と子供と同居している場合、「どちらの親が、どのような点の判断をするか」が曖昧になりやすく、育児や進学で意見が割れる危険があります。
監護権の分担や取り決めも、可能な限り書面化しておくことが望ましいです。
「親権争いは母親が有利?」の解説

離婚後の同居時にすべき手続き

次に、離婚後に同居を継続する際に必要となる手続きを解説します。
離婚後も同居していると、外見的には「離婚したとは思えない」状態に見えることもあるので、法律上、行政上の扱いを適切に整理しておく必要があります。
世帯分離
世帯分離とは、同じ場所に住んでいても、住民票上は別世帯とする手続きです。
世帯分離の意義は、同一生計ではないことを行政に示して、税金や保険料、各種支援制度の算定などについて実態に即した判断をしてもらうことにあります。これによって、例えば、児童扶養手当などが受給される可能性を高めることができます。
ただし、世帯分離をしたとしても、最終的には、生計が同一である、内縁や事実婚の関係にあると行政が判断されるおそれもある点に注意が必要です。
財産分与の請求
財産分与は、離婚に伴って夫婦の共有財産を公平に分ける制度です。
離婚後でも、2年以内であれば財産分与の請求が可能です(民法768条)。同居が続いていると後回しにしがちですが、期限を過ぎると権利が消滅し、財産分与の請求はできなくなります。
一方で、離婚後も内縁や事実婚の関係にあると評価される場合には、財産分与のタイミングが「離婚時」ではなく、もっと後ろの時点と評価される可能性もあります。また、形式的には離婚しても、実態として夫婦生活を続けていた場合、財産分与による資産の移動が、贈与税を免れることを目的としたものと評価されるおそれもあります。
「離婚時の財産分与」の解説

離婚協議書の作成
離婚協議書は、親権や財産分与、養育費、面会交流など、離婚時の条件について記録した書面です。「言った・言わない」の争いを防ぐためにも、離婚時には必ず書面化しておくべきです。
離婚協議書を公正証書にしておけば、いざ相手方に違反があったとき、裁判を経ずに給与などの財産を差し押さえることができます。離婚後に同居を続ける場合でも、養育費など、必ず支払ってもらうべき金銭の約束を証拠に残すため、離婚協議書は作成しておくようにしてください。
「離婚協議書の書き方」の解説

同居時のルール作り
離婚後も同居を続ける場合、お金や家事、子供に関する役割分担が必要です。
離婚した元夫婦という関係の場合、責任の所在が曖昧になり、感情面の衝突も起こりやすいものです。そのため、離婚時には、離婚条件と共に、今後同居するにあたってのルールも取り決めておく必要があります。
例えば、以下の項目を事前に話し合い、覚書などにまとめておきましょう。
- 生活費・光熱費の分担
家賃や水道光熱費、食費などをどちらがどの割合で負担するか。 - 家事の役割分担
掃除・洗濯・料理などをどちらが担当するのかを明確にしておく。 - 子供の送迎・養育方針
学校や塾の送迎担当、教育方針の統一などを確認しておく。 - 外泊や来客ルール
プライバシーの尊重として、外泊や来客時の連絡ルールを定める。
曖昧なままにしておくと、不満が蓄積し、関係が悪化する原因になります。あくまで「再出発のための一時的な同居」である意識を持ち、互いに納得できるルール作りを心がけましょう。
「同居中の婚姻費用」の解説

離婚後も同居する際のよくある質問
最後に、離婚後も同居を継続することを検討する人の疑問に回答しておきます。
離婚後も同居するのはおかしいこと?
離婚後も同居すること自体は「おかしいこと」ではありません。
では、なぜ「離婚後の同居はおかしい」という考えが生まれるのかというと、離婚するほど関係がこじれた元夫婦が、同居して生活するのは不自然だと感じられるからです。協議離婚ではなく、離婚調停や離婚裁判(離婚訴訟)にまでもつれたケースは特にそうです。一方で、借金や生活費の負担などの経済的事情、子供の生活環境への配慮など、実際は様々な理由があって、離婚後も一定期間同居を続ける家庭は少なくありません。
つまり、離婚後の同居は、「離婚=別居」という一般的なイメージと異なるだけで、状況によっては現実的な選択肢の一つです。
「協議離婚の進め方」の解説

離婚後の同居を解消する方法は?
離婚後も同居を続けると、同居を解消しづらくなるおそれがあります。とはいえ、離婚したのですから、生活や価値観の違いがあることが多く、同居の解消を希望する人も少なくありません。この場合、同居の解消は、次のように進めてください。
- 別居の準備
離婚後も同居する原因が、経済面や子供の事情にあるとき、生活基盤の確保や転校手続きなど、その原因を解消する手立てが不可欠です。あわせて、住宅の所有権や、賃貸の場合は契約名義を確認し、どちらに居住を継続する権利があるか明確にしておきましょう。 - 話し合いによる別居
まずは元配偶者との間で、いつ、どちらが、どのように退去するかを協議します。トラブル防止のためにも、合意内容は「覚書」などの書面に残すのが安心です。 - 弁護士のサポートを受ける
話し合いによる円滑な別居が難しい場合、弁護士のアドバイスを受けましょう。元配偶者の同意が得られないなら、離婚後にも、調停や裁判を利用できます。例えば、民事調停で元夫婦間の関係の調整を求めたり、住居の明渡し請求や、財産分与に関する調停を起こしたりする方法も検討してください。
子供がいる場合、家庭内の不穏な空気は精神面にも影響を与えます。関係悪化が避けられない場合は早めに環境を整え、子供と共に新たなスタートを切るのが望ましいです。
「勝手に別居すると不利?」の解説

同居のまま離婚することはできる?
同居したままでも離婚は可能です。話し合いによって円満に別れることができるなら、同居のまま離婚に至る夫婦も多くいます。
ただし、同居中の離婚の場合、公的制度や税務上の取り扱いについて不利益が生じる可能性があります。例えば、ひとり親世帯向けの児童扶養手当が支給されなかったり、寡婦控除が適用されなかったりといった「離婚後の同居のデメリット」と同様のデメリットがあり得ます。
また、夫婦によっては、別居を遅らせたことによって早期離婚ができなかったり、再婚の準備が進まなかったりする危険もあります。
「家庭内別居から離婚する方法」の解説

離婚後の同居時の親権・監護権は?
日本では、離婚時に親権者を一方に決めることが法律で義務付けられています(単独親権制)。したがって、たとえ離婚後に同居していても、親権は両親のいずれか一方に帰属します。同居しているからといって共同親権になるわけではありません。ただし、同居している場合は、非親権者でも事実上、日常的な育児に関与する可能性があります。
そうすると、育児や教育の方針について、元夫婦間で意見衝突が生じるおそれがあります。トラブル帽子のため、次のような点に注意してください。
- 親権と監護権の分離
親権は一方が持ちつつ、監護権(実際に養育する権利)は他方が担うことも可能です。これによって育児の実態に即して法的な扱いを整理できます。 - 子供の学校や生活ルールを定める
学校の選択、塾や習い事の方針、生活習慣のルールなど、あらかじめ決定して書面化しておくのがお勧めです。
将来的に別居する可能性を見据えて、まだ同居の関係を保てている間に丁寧にすり合わせをしておくことが、将来的な育児の安定に繋がります。
「監護権と親権の違い」の解説

まとめ

今回は、離婚後も同居を続ける場合のメリットや注意点を解説しました。
離婚後も同居を継続すれば、生活費や家事を分担したり、子供の生活環境を変えずに済んだりといったメリットがあります。しかし一方で、内縁関係であると認められれば法的な義務が生じるおそれがあります。同居していることで、児童扶養手当などの公的支援が受けられない危険もあります。
そのため、離婚後に同居をするかどうかは、金銭面だけでなく、家族関係や公的支援への影響も踏まえて、慎重に判断する必要があります。離婚した後は、夫婦であったときほどの信頼関係が築けないことが予想されるので、必ず書面で取り決めを残し、トラブルを防ぐべきです。
離婚後の元夫婦が同居を希望するケースは例外的なので、疑問がある場合は早めに弁護士に相談するのがお勧めです。家庭の状況に応じた具体的なアドバイスを受けることで、不安や悩みを解消してください。
- 離婚後も同居を続けることは可能だが、目的を明確にし、リスクを理解すべき
- 離婚後の同居はトラブルになりやすいので、費用や家事の負担を明確化する
- 世帯分離などの制度を活用し、行政支援や税制の不利益を回避する
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
別居は、夫婦の関係に大きく影響するため、慎重に進めなければなりません。別居をする前に、法的な観点から将来の計画を立て、準備することが重要です。
別居を考えている方や、具体的な方法、手続きについて悩むときは、「別居」に関する解説を参考にしてください。