離婚調停は、夫婦間の話し合いがうまくいかないときに利用する法的な手続きです。
感情的な対立や複雑な法律問題が絡み合うと、調停が思うように進まないことも少なくありませんが、そのような場面で力強い味方となるのが「弁護士」です。
離婚調停を弁護士に依頼すれば、法律の専門知識を活かして権利を守ることができます。弁護士に依頼して調停当日に同席してもらえば、調停を有利に進めると共に、精神的な負担を軽減できます。調停は本人だけでも行えますが、弁護士を依頼することには多くのメリットがあります。
今回は、弁護士に離婚調停を依頼するメリットや、調停を有利に進めるための具体的な方法について詳しく解説します。
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
はじめに、離婚調停を弁護士に依頼するメリットについて解説します。
離婚調停は、夫婦の話し合いがまとまらないとき、家庭裁判所で行う手続きです。調停では、調停委員が中立・公平な立場で仲介し、合意に至るまでサポートしてくれます。調停委員の助けがあってもなお、感情的な対立を抑え、有利な解決を目指すには法律知識と戦略が必要で、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
法律知識を解説してくれる
離婚調停では、法律知識に基づいて主張することが大切です。
離婚調停を弁護士に依頼すれば、自分の権利や義務を正しく理解できるよう、具体的なアドバイスが受けられます。財産分与や親権、養育費の絡む難しい調停も、自分に有利な法律解釈を生かせば、スムーズに進めることができます。調停委員の使う法律用語がわかりづらいときも、弁護士が同席していれば、その場で噛み砕いて説明してもらい、安心して調停に臨むことができます。
また、自分が積極的に主張する場合だけでなく、相手の提案する離婚条件が妥当かどうかチェックできることも、弁護士を依頼するメリットの一つです。
「離婚に強い弁護士とは」の解説
主張を正しく伝えられる
離婚調停を弁護士に依頼すれば、調停委員に主張を正しく伝えることができます。
離婚調停の法律相談でよく寄せられるのが「調停委員が自分の話を聞かない」「途中で話を遮られる」といった不満です。調停の時間には限りがあるので、夫婦いずれか片方に長い時間を割くのは難しいのが現状です。限られた時間の中で、重要な事実に焦点を当てて聞く必要がある分、感情的な発言や怒りなど、判断に影響しない内容には、関心のない態度を取る委員もいます。
離婚問題の解決という目的を果たすために、委員に正しく主張を伝えるには、法的に重視すべき事情に絞って簡潔にわかりやすく伝えるのが効果的です。そのために、離婚に関する法律知識の豊富な弁護士に整理してもらうことが有益です。
「離婚までの流れ」の解説
客観的で冷静な判断を聞ける
弁護士という第三者に相談することで、客観的な視点から冷静な判断を聞けます。
離婚問題は感情的な対立を伴うので、当事者同士ではお互い冷静に話し合えないことが多いです。離婚調停を弁護士に依頼して、第三者的な視点から、客観的なアドバイスをもらうことで、感情的な争いを避け、法的に妥当な解決策を提示することができます。
弁護士が「緩衝材」となることで、調停委員や相手方からの圧力を和らげ、落ち着いて考えることができるのも大きなメリットです。
書類作成や証拠整理を任せられる
離婚調停では、主張を書面にしたり、裏付けとなる証拠を示したりする必要があります。
弁護士は、裁判所の手続きを熟知しており、必要な書類を作成することが得意です。また、離婚トラブルの経験が豊富な弁護士なら、裁判所や調停委員の考えを多く聞いており、どのような資料を示せば納得する形で説明することができるのか、アドバイスをしてくれます。有効な書類を吟味して、証拠を整理できることは、弁護士に依頼するメリットの一つです。
離婚調停は、事前準備が不可欠です。準備不足で不利になってしまう事態を回避し、調停を有利に進めるために、弁護士に依頼することを検討すべきです。
「離婚調停の陳述書の書き方」の解説
調停対応のアドバイスを得られる
離婚調停を弁護士に依頼すれば、調停当日の言動のアドバイスを受けることができます。
離婚調停では、自分の主張をするだけでなく、相手に反論することも必要です。説得的な反論をするには法律知識が不可欠であり、かつ、多くの離婚調停では、調停期日における発言で、的確な反論をすることが求められます。調停中に、予想外の事情が発覚したり、相手から不当な要求を受けたりしたときも、弁護士が同席していればその場で対応できるので、安心して調停を進められます。
調停委員がどちらかに肩入れすることはないものの、相手にのみ弁護士が付いていると、法的に正しい意見が採用され、結果的に不利な状況になってしまうことがあります。
「調停委員を味方につけるには?」の解説
弁護士に同席してもらい離婚調停を有利に進める方法
次に、離婚調停に弁護士を同席させることで、有利に進める方法を解説します。
弁護士への離婚調停の依頼は、事前準備や法的アドバイスに留まりません。離婚調停が、期日のやり取りを重視する手続きであることからして、調停への同席こそ、最重要のサポートです。同席してもらえば、その場で法的な助言を受けられるのはもちろん、心理的な余裕が生まれ、ストレスを軽減することもできます。
離婚調停で納得いく結果を得るには、弁護士の力を最大限活用することが大切です。
調停前に綿密な打ち合わせを行う
離婚調停を弁護士に同席してもらう前に、綿密な打ち合わせをしましょう。
弁護士に依頼したとはいえ、離婚調停を有利に進めるには、事前準備が欠かせません。依頼していれば、弁護士が調停前の準備をサポートしてくれるので、主張すべきポイントを法律の観点から整理したり、妥協できる範囲を調停の相場に基づいて決めたりすることができます。
調停に同席してアドバイスをしてもらえるとはいえ、調停の場で弁護士と長時間協議をしたり、詳細な解説をしてもらったりする余裕はありません。
弁護士の発言を活用する
調停は、当事者も弁護士も、比較的自由に発言することができます。その中でも、弁護士の発言を活用することによって、説得力を強化して、離婚調停を有利に進めることができます。
例えば、法律知識が必要なことについては、本人が発言するのではなく、弁護士に伝えてもらった方が調停委員に説得的に伝わります。調停委員は、法律の専門家ではないこともあり、法律知識については弁護士の方が詳しいことが多いです。また、あえて弁護士から第三者的な発言をしてもらうことで、一方的な主張に固執していないことをアピールできます。
これに対して、夫婦生活に関する事情など、本人が発言するべき部分もあるので、弁護士の同席する調停においては、発言の役割分担が必要です。
弁護士に駆け引きをしてもらう
離婚調停中、相手の主張が事実に反していたり、不利な条件を押し付けられそうになったりしても、弁護士が同席していれば駆け引きを優位に進められます。弁護士は、調停で重視される相場感を知っており、あなたに代わって交渉してくれます。
また、相手の発言に矛盾がある場合には、弁護士がその場で指摘し、法的な根拠から反論することができます。相手の示した条件が不当だったとしても、単に自分で拒絶するよりも、弁護士が法的な理由を示して拒否する方が、こちらの主張が通りやすくなります。
弁護士をプレッシャーとして使う
弁護士が同席しているだけで、相手(夫または妻)や調停委員にとって、大きなプレッシャーを与えることができます。これにより、相手は「法的に正しい主張をしなければならない」「誤った見解で丸め込むことはできない」と意識し、警戒するでしょう。弁護士が同席することで、無理な要求や感情的な発言を抑える効果が期待できます。
弁護士の同席によって、調停委員もまた、より慎重に調停を進行する傾向にあります。弁護士が、法的な視点から随時指摘をするため、委員も中立・公平を保とうと意識してくれます。
「離婚調停の流れと進め方」の解説
離婚調停を弁護士に依頼する流れ
次に、離婚調停を弁護士に依頼し、解決するまでの流れを解説します。弁護士に依頼することで、調停の準備から進行、終了後の手続きまで、伴走してもらうことができます。
初回相談で状況を説明する
離婚問題を得意とする弁護士を探し、法律相談を予約しましょう。無料相談を活用して複数の事務所の意見を聞けば、信頼できる弁護士を探すことができます。
相談時は、自身の状況を簡単に説明できるよう、メモや質問を準備するとスムーズです。
法律相談では、離婚調停の申し立てを考えている状況を説明します。離婚調停を依頼するにあたり、次の点が弁護士のアドバイスの参考となるため、必ず伝えてください。
- 離婚理由
- 現在の状況
(特に、別居か同居か) - 子供がいるか
- 希望する条件
- 交渉の経緯
- 相手が調停に応じない可能性があるか
(特に、DVやモラハラの有無)
弁護士は、聴取した事情に応じてアドバイスを提供します。離婚調停についての依頼では、調停の見通しや進め方も必ず聞くようにしてください。なお、状況によっては「調停が最善の選択肢ではない」とわかるケースもあります。
弁護士への依頼を決定する
法律相談のアドバイスに納得できたら、正式に委任契約を結びます。
この際、かかる弁護士費用は、内訳と金額について見積もりを出してもらい、必ず説明を必ず受けてください。「どの範囲の依頼について」「いくらの費用でサポートできるのか」、疑問のないよう質問しておきましょう。
「離婚の弁護士費用の相場」の解説
調停の申し立てをする
弁護士に依頼した場合は、調停申立書の作成も任せることができます。
弁護士が申立書を家庭裁判所に提出し、調停の申立てを行います。戸籍謄本などの必要書類や証拠の収集についても、弁護士のサポートを受けることができます。弁護士が代理で申し立てを行うので、自分で裁判所に行く手間が省けます。
調停前の打ち合わせを行う
せっかく依頼した弁護士を有効活用するため、調停前に必ず打ち合わせしましょう。調停期日は複数回行われますが、その回ごとに事前打ち合わせをするのがお勧めです。調停前の打ち合わせでは、弁護士から次の点のアドバイスを受けましょう。
- 前回の期日の反省
- 次回の期日で達成すべき目標
- こちらの希望する条件(親権、財産分与、慰謝料など)
- 譲歩できる範囲
- 相手から予想される反論と、その再反論
- 調停委員から予想される質問と回答
調停当日に同行してもらう
調停の当日は、弁護士が同席してサポートを行います。
調停中であっても、疑問のあるときには横にいる弁護士に聞いて構いません。調停委員に聞かれたくない質問は、相手のターン中の待ち時間に聞くか、緊急性のあるときは自分のターン中に中座しても構いません。
弁護士だけが出席して進めることも理論的には可能ですが、本人の気持ちや事情が重視される調停の手続きでは、本人も出席するのが基本です。
当日のサポートは「弁護士に同席してもらい離婚調停を有利に進める方法」を参考にしてください。
調停成立後もフォローできる
調停が合意に至ると、調停調書が作成されます。調停調書は、判決と同じ法的効力を持つので、内容をしっかり確認する必要があります。弁護士が同席していれば、その場で、法的に妥当な内容かどうかをチェックできます。
調停が不成立となった場合にも、離婚調停を担当した弁護士が、離婚訴訟(離婚裁判)などのその後の手続きについて相談に乗ってくれます。
「離婚調停の成立後にすべき手続き」「調停不成立とその後の流れ」の解説
離婚調停を弁護士に依頼する際の注意点
次に、離婚調停を弁護士に依頼する際の注意点を解説します。離婚調停を弁護士に依頼するメリットはたくさんありますが、気を付けないとデメリットやリスクが生じることもあります。
デメリットとなるのは弁護士費用のみ
離婚調停を弁護士に依頼する際の主なデメリットが、費用負担です。業務量や事務所によって費用の詳細は異なりますが、離婚調停にかかる費用の相場は、以下を目安にしてください。
着手金 | 44万円 |
---|---|
報酬金 | 44万円+経済的利益の11% |
着手金は離婚調停の着手時、報酬金は調停の終了時に生じるのが基本です。費用負担に見合ったメリットが得られるか、依頼前にしっかりと説明を受け、具体的なサポート内容を確認してください。離婚調停の弁護士費用は相手に請求できず、自己負担となるのが基本です。
「離婚・男女問題の弁護士費用」の解説
弁護士との信頼関係が大切
離婚調停は、複数回の期日を要し、1年を超える長い期間となるケースもあります。依頼した弁護士とは長い付き合いになるため、信頼関係が非常に重要です。調停には「流れ」があるので、進行中の弁護士変更は事実上難しいこともあり、費用も余計にかかってしまいます。
弁護士に依頼する際は、初回の相談で自身の話を親身に聞いてくれるか、的確なアドバイスを提供してくれるかを見極め、信頼関係を築けると感じる人を選びましょう。
初回相談で適切な弁護士を選ぶ
弁護士選びは、初回相談が重要です。初回の相談を活用して「自分に合った弁護士かどうか」を見極めましょう。耳障りのよい見通し、安い初期費用などに惑わされることなく、特に、離婚調停を依頼する場合には、調停の取扱い実績が豊富かどうかで判断してください。
また、弁護士費用や具体的な方針の説明がなかったり、リスクを隠したりする弁護士は、避けた方がよいでしょう。
途中からでも弁護士に依頼すべき
早いタイミングの方が効果的ですが、途中からでも離婚調停を弁護士に依頼できます。相談例でも「初回期日は自分で対応する」という人もいます。調停に参加し、思いの外手続きが難しく、不利になってしまわないかと不安なときは、早めに弁護士に相談してください。
「途中からだと断られるのでは」「費用が高くなるのでは」といった心配は無用です。離婚問題に精通する弁護士なら、途中まで自力で進めた調停だからといって断ることはなく、進行度合いにかかわらず通常の弁護士費用で依頼できます。
ただし、調停の手続きがかなり進んでいる場合は注意が必要です。特に、調停中に中間的な合意をすると、後から覆すのは困難なこともあります。取り返しのつかない状況を避けるためにも、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
「調停成立後の再申し立て」の解説
離婚調停を弁護士に依頼する際よくある質問
最後に、離婚調停を弁護士に依頼する際、よくある質問に回答します。
離婚調停は人生の重要な局面です。弁護士のサポートを受けることで、結果は大きく変わる可能性があります。不安があるときは、早めに相談し、自分に合った対応を検討してください。
離婚調停を弁護士に依頼すべき場合は?
簡単な調停なら弁護士は不要ですが、多くのケースでは弁護士をつけるメリットは大きいです。特に次の場合、弁護士なしで離婚調停に対応するのはリスクがあります。
- 調停委員が中立・公平でない
- 調停委員が自分の言い分を聞いてくれない
- 相手に弁護士が付いている
- 求める離婚条件に大きな差がある
- 調停で飛び交う専門用語が理解できない
- 不利な流れになっているが理由が分からない
調停委員は中立的な立場で質問をしてくれますが、伝え方や話し方といったコミュニケーションの方法によっては誤った印象を与えてしまいます。離婚調停を多く経験した弁護士から、客観的なアドバイスを得ることが大切です。
離婚調停は弁護士なしだと不利?
弁護士なしで離婚調停に参加することも可能であり、直ちに不利になるわけではありません。ただ、法的な問題が発生する調停では、正しい主張や反論ができないと、弁護士がいなかったことが結果として悪い結果につながってしまいます。
離婚に関する法律知識のないまま自分ひとりで対応すると、調停委員に効果的に意見を伝えることができなかったり、相手の誤った主張や不当な要求に反論できなかったりするリスクがあるからです。
離婚調停を弁護士に依頼する最適なタイミングは?
離婚調停を弁護士に依頼するなら、できるだけ早いタイミング、可能なら調停が始まる前が最適です。調停前から弁護士が関与すれば、申立時に主張すべき内容や証拠を整理し、初回の期日から適切な対応を取ることができます。
場合によっては、離婚調停を申し立てる前に弁護士が窓口となって交渉することで、夫婦同士で話し合っていたときより、相手の態度が好転する可能性もあります。自分だけでは対応が難しいと判断したときは、早めの相談が重要です。
相手が弁護士を付けたらこちらも依頼すべき?
離婚調停の相手が弁護士を付けたら、こちらも弁護士を依頼する必要性が特に高いです。調停の場で一方の肩を持たれることはないものの、相手が法律に基づいた強い主張を展開してきた場合、対抗するには反論も法的根拠のあるものでなければなりません。お互い弁護士を付けることで、対等に調停を進めることができます。
離婚したくない場合も弁護士が必要?
離婚調停は「離婚」を前提とした場ですが、「離婚を望まない」という意思を伝えることもできます。その場合も弁護士を依頼して法的な観点から「離婚を拒否する理由」を伝えれば、離婚を回避する可能性を上げることができます。
また、離婚を望まない場合も、婚姻費用や面会交流といった付随する問題は調整が必要となる例が多く、弁護士のサポートを受けてよい結果を目指すべきです。
「離婚調停で復縁する方法」の解説
離婚調停の申し立ても依頼できる?
離婚調停の「申し立て」も弁護士に依頼できます。
離婚調停の経験が豊富な弁護士は、調停に同席してサポートするだけでなく、申立書や必要書類の作成、証拠の整理などのサービスを提供します。手続きの負担を軽減できるだけでなく、裁判実務をよく知る弁護士に作成してもらうことで、調停委員や裁判官に認められやすい主張を展開することができます。
まとめ
今回は、離婚調停を弁護士に任せるメリットや注意点を解説しました。
本解説は、夫側・妻側の双方いずれにも、離婚したい人にも離婚したくない人にもあてはまります。また、離婚調停を弁護士に依頼するメリットがあるのは、申立人側でも、申し立てられた相手方側でも同じことです。
夫婦のみで協議をした後だと、当初は「調停も自分でできる」と考えてる人もいます。しかし、調停委員の質問に答えるうちに「不利な扱い受けているのでは」と不安になるでしょう。
離婚調停は、話し合いを重視するとはいえ法的な手続きであり、甘く見てはいけません。弁護士に依頼するなら、早いタイミングで(できれば申し立て前の準備から)検討してください。まずはご相談でアドバイスを得るだけでも役立ちますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
離婚調停を有利に進めるには、財産分与や親権、養育費、不貞行為の慰謝料請求など、状況に応じた法律知識が必要です。お悩みの状況にあわせて、下記の解説もぜひ参考にしてください。
複数の解説を読むことで、幅広い視点から問題を整理し、適切な解決策を見つける一助となります。