
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
離婚調停の陳述書は、当事者の主張を補完し、立証の柱となる重要な証拠です。
離婚調停で陳述書を提出すれば、調停期日の限られた時間内に、自分の主張や気持ちを伝えるのに役立ちます。これは、早く離婚したい人にも、離婚を回避して復縁したい人にも当てはまります。暴言や暴力といった客観的証拠が入手しにくい場面では、陳述書の役割は特に大きくなります。
ただし、離婚調停の陳述書を有効活用するには、適切な書き方を知っておく必要があります。主張書面の書き換えではなく、具体的な事実を時系列で整理するのがよいでしょう。一方で、不適切な内容だと、調停委員の心証を悪化させ、不利な方向に考慮されるおそれがあります。
今回は、離婚調停における陳述書の書き方や注意点、有利に進めるための具体的な例文について、弁護士が解説します。

はじめに、離婚調停の陳述書とはどのようなものかについて解説します。
離婚調停で提出される書面のうち、陳述書は、当事者の体験を具体的に記載した書面であり、「証拠」としての役割を果たします。一方、法的な主張を記載した書面を「主張書面」と呼びます。
陳述書に決まった形式はなく、必ず出さなければならないわけではありません。一方で、適切な内容の陳述書は、客観的な証拠による証明を補完し、離婚調停を有利に進める役に立ちます。実務でも、調停の申立て時に、申立書とともに陳述書を出す運用がよく行われます。
離婚調停の陳述書とは、夫婦関係の経緯や離婚を希望する理由、調停で実現したい内容などを、当事者自身の視点からまとめた書面です。
離婚調停では、調停委員が夫婦双方から事情や希望を聞き、中立的な立場で調整し、解決案を提示します。調停期日に口頭で説明するのが基本となりますが、期日の時間には限りがあるため、夫婦関係の複雑な経緯を全て説明できるとは限りません。
そこで、あらかじめ陳述書を提出しておけば、調停委員に事情の全体像を把握してもらいやすくなります。陳述書には、主に次のような役割があります。
ただし、離婚調停は、裁判所が証拠に基づいて事実を認定し、判決を下す離婚裁判(離婚訴訟)とは異なり、あくまで夫婦の話し合いによる解決を目指す手続きです。そのため、全ての事案で、事細かに陳述書を記載するのが適切とも限りません。
陳述書にどこまで記載すべきかは、離婚自体に争いがあるか、親権や財産分与などについて希望に隔たりがあるかによって判断すべきです。
離婚調停では、陳述書のほかに、申立書、主張書面などが提出されます。
申立書は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てるための書面です。離婚の可否、親権、養育費、財産分与、慰謝料といった調停で話し合いたい事項を整理して記載します。主張書面は、争点についての法的な主張や反論を記載した書面であり、申立書をさらに具体化したものです。
これに対し、陳述書には、法律上の主張だけでなく、夫婦関係の実情や家庭内で起きた出来事、そのときに感じた気持ちなどを記載することができます。申立書や主張書面だけでは伝わりにくい具体的な事情を補足し、当事者の立場や事件の背景を理解してもらうことが主な目的です。
離婚調停では、夫婦が交互に調停委員と話をし、調整を行います。
自身に割り当てられた時間は限られており、伝えたい内容を十分に説明できないことがあります。また、調停の場では緊張や感情の高ぶりによって重要な事実を言い忘れたり、時系列が前後してしまったりすることも少なくありません。
特に、夫婦関係が悪化するまでに長期間の経緯がある場合には、口頭の説明だけで正確に伝えるのは容易ではありません。モラハラ気質の相手などの場合、聴取に非常に時間がかかり、「調停委員が相手の言い分ばかり聞いている」という気持ちになることも少なくありません。
事前に陳述書を提出しておけば、時間をかけて事実関係や希望を整理した上で、調停委員に分かりやすく伝えることができます。調停委員も事前に事情を把握できるため、期日では重要な争点を中心に質問し、話し合いを円滑に進めやすくなります。
特に、次のケースでは、陳述書を提出するメリットが大きいといえます。
陳述書だけで全てを説明しようとする必要もなく、重要な経緯や希望を簡潔にまとめ、詳しい内容は調停期日で補足するという使い方でも十分に役立ちます。
「離婚調停の流れと進め方」の解説

次に、離婚調停の陳述書の書き方について具体的に解説します。
法律の決まりはないため自由に書いてよいのが基本ですが、調停委員に分かりやすく伝えるためにも、一定の書式や書き方に従った方が、より良い効果を発揮できます。
離婚調停の陳述書の全体的なイメージは、次のようになります。
陳述書
東京家庭裁判所 御中
【氏名】 印
・・・・
・・・・(ここに内容を記載します)
以上
形式面についてのポイントは、次の通りです。
次に、内容面について、どのようなことを書くべきかを例文とともに解説します。
なお、例文はあくまでサンプルなので、全ての内容を盛り込む必要はなく、事案の内容や方針によって必要な項目を取捨選択してください。
冒頭に、自分の個人情報や、離婚調停の事件番号といった基本情報を記載します。調停委員に対し、誰の陳述書であるかを明確にするためです。
私は、貴庁に継続中の令和◯年(家イ)第◯◯号の離婚調停の申立人の◯◯(氏名)です。
次に、結婚から離婚に至るまでの経緯について、時系列で説明します。
この部分は、客観的に事実を記載することを重視し、感情的な表現は避けるようにしましょう。調停委員が夫婦間の問題や、調停に至った背景を理解するのに重要です。婚姻や同居の期間の長さは、有責性や慰謝料額に影響する重要な事情の一つです。
私達は、20XX年XX月XX日に結婚しました。しかし、◯年前頃から夫婦間に以下の問題が生じました。
相手の問題点をわかりやすく伝えるには、陳述書に離婚を決意するに至った具体的な出来事を記載することが効果的です。不貞行為やDVなどが明確に証明できる場合はよいですが、性格の不一致や価値観の違い、モラハラなど、証拠に残りにくい離婚原因を主張する場合、陳述書で詳しく状況を説明することが重要となります。
夫は、20XX年頃から家庭を一切省みず、夜遅くに帰ってきて、気に入らないことがあるとお酒を飲んで暴力を振るうようになりました。
同年XX月XX日、探偵に依頼したところ、知らない女性とホテルに入っていくのを発見し、問い詰めると不倫を認めたため、離婚を決意しました。
調停前に協議をした場合は、その経緯や状況についても陳述書に記載しましょう。
特に、相手の交渉態度が不誠実であったり、過大な要求があったりしたことが原因で協議が難航した事情があるなら、調停委員に伝えておく必要があります。調停委員がこちらの言い分に理解を示せば、相手を説得してくれることが期待できます。
不倫が発覚した後、同年XX月XX日より離婚協議を開始しました。
私は、財産分与は不要なので速やかに離婚してほしいと伝えましたが、夫は、不倫の事実は認めるものの「家事をやらない妻が悪い」と開き直り、別居が開始されました。何度かメールで離婚条件の話し合いを試みましたが、妻の責任であるという一点張りだったため合意に至りませんでした。
離婚調停で争点となることが予想される事項について、整理して記載します。
問題点を明確にするため、争点ごとに整理して自身の意見を述べるようにしてください。陳述書に争点をまとめることで、調停委員が話し合いの焦点を絞りやすくなります。
財産分与について
現在の夫婦共有財産として◯◯万円の預金がありますが、この分割については2分の1ずつ取得することを希望します。
親権について
子供◯◯(現在XX歳)の親権については、子供の生活環境を最優先に考えると、私が養育するのが適切であると考えます。
最後に、調停でどのような解決を望むのか、自分の具体的な希望を記載しておきましょう。「離婚したいかどうか」と「求める離婚条件」に分けて記載するのがポイントです。
私は、本調停を通じて、以下の解決を望んでいます。
なお、親権について譲ることはできませんが、財産分与について相手のこだわりが強い場合には、養育費を◯万円以上確保できれば、柔軟に譲ることが可能です。
離婚調停を申し立てられたものの、離婚したくないという方もいるでしょう。
この場合、陳述書には夫婦関係が修復可能であることを具体的に示す必要があります。感情的に反論するのではなく、破綻していない根拠を記載することが重要です。例えば、直近の家族旅行、定期的な食事などの事情を挙げると説得力が増します。
また、離婚が子供に与える影響への懸念や、カウンセリングを受けるなどの関係修復に向けた努力をしていることを示すのも、調停委員の理解を得るために効果的です。
陳述書の最後に、感謝の言葉や調停委員への期待を記載して、締めくくりとします。調停委員への敬意を示すことで良い印象を与え、関係性を良好に保つことができます。
最後になりますが、調停委員の皆様が公平かつ迅速な解決を導いてくださることを心より期待しております。本陳述書がご判断の参考となれば幸いです。
陳述書を提出すれば必ず有利に考慮されるというわけではありません。
離婚調停における陳述書は、不適切な内容だと逆効果になることもあります。感情的な非難や裏付けのない決めつけを長々と記載すると、かえって話し合いを難しくするおそれがあります。調停委員に事情を正確に理解してもらうという目的を意識することが大切です。
相手を非難するような過激な言葉、感情的な表現は、調停委員から悪い印象を持たれるリスクがあります。不貞行為やDVといった事情があると、許せない気持ちは理解できますが、陳述書にその怒りをぶつけるのはおすすめできません。
曖昧な記述は、かえって調停委員の信頼を損なうため、不確定な情報は避けましょう。例えば、「相手が浮気している気がする」「おそらく財産を隠しているに違いない」といった憶測や決めつけは書くべきではありません。
陳述書に嘘を書いてはいけません。また、意図的な嘘ではなくても、誇張した表現は信頼を損ない、かえって不利になるおそれがあります。例えば「常に暴力を振るわれている」「子供の面倒を一切見ない」といった抽象的な表現だと、読み手が事実と異なる印象を抱くおそれがあるため、正確な記載を心がけるべきです。
離婚調停の進行は、必ずしも思い通りにいくとは限りませんが、調停委員への不満や批判を陳述書に書いてはいけません。調停委員は中立の立場であり、敬意をもって接すべきです。離婚調停が思うように進まないからといって責任転嫁すべきではありません。
過剰な要求や非現実的な希望は、相手に受け入れられないのはもちろん、調停委員にも良い印象を持たれず、離婚調停が決裂する原因となります。例えば、「不貞行為があったのだから全財産を渡すべき」「離婚するなら子供には会わせない」など、法律や裁判例の相場からかけ離れた内容は、陳述書であっても記載すべきではありません。
「調停委員を味方につけるには」の解説


次に、実際に陳述書を書く際のポイントについて解説します。
陳述書は、申立書よりは気持ちを反映させることが多いです。
しかし、それでもなお、あくまで客観的な事実を中心に記載することを心がけましょう。調停委員に分かりやすく伝えるには、事実をできる限り具体化することが大切で、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識することがポイントとなります。
離婚調停の陳述書では、抽象的な意見や気持ち、感想ばかりになる例も見られますが、どれほど強く「離婚の責任は相手にある」と断言しても、調停委員の評価が変わるわけではありません。陳述書の役割は、意見を戦わせるものではないことを心得ておきましょう。
離婚調停の陳述書の目的は、事実を調停委員にわかりやすく伝えることです。
そのため、起きた出来事は、時系列に整理して記載するのがおすすめです。思いついた順に書いていると、調停委員が流れを把握できず、かえって混乱させてしまいます。事実関係については、結婚と同居、別居、離婚の決意、交渉といった流れで順序立てて説明するのが適切です。
相手の問題点を明らかにしようとするなら、離婚原因ごとに整理しましょう。
民法770条1項に定められた「法定離婚事由」は、裁判で離婚が認められるために必要なものですが、離婚調停においても、調停委員の判断の基準として大いに意識されています。具体的には、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由の4つです。
したがって、「離婚の責任は相手にある」といった抽象的な記載ではなく、不貞行為、悪意の遺棄といった要件に該当する具体的な事情を書くことが大切です。
離婚調停は話し合いの場なので、陳述書でも、相手を攻撃するような表現は避けるべきです。
「離婚調停の陳述書に書かない方がよいこと」でも前述した通り、過激な言葉や誹謗中傷は、調停委員に悪い印象を与える原因となり、かえって逆効果となります。
陳述書の文中では基本的に敬語を用いるべきで、「です・ます調」で、相手のことは「◯◯さん」「夫(妻)」などと表現します。調停委員に提出する以上、相手を尊重する姿勢を示すことが大切です。適切な表現を選びながらも、自分の希望や意見は毅然とした態度で示すことが重要です。丁寧に作成することが調停委員に好印象を与え、離婚調停をスムーズに進める助けとなります。
陳述書を記載する準備として、冷静に自分を客観視することが大切です。感情的になった状態で作成を始めれば、適切な表現にならないおそれがあるからです。
「離婚調停・離婚協議中の手紙」の解説

離婚の陳述書に記載する時系列のうち、別居開始日とその直接の経緯が特に重要です。
このタイミングの出来事は、将来的に調停が不成立となって離婚裁判(離婚訴訟)へ発展した際に、婚姻関係の破綻の有無やその責任の所在を判断するポイントとなるからです。具体的には、誰が、いつ家を出たのか、その際に子供を連れて行ったのかといった点を正確に記載します。
離婚調停で陳述書を提出したとしても、期日当日の説明が不要になるわけではありません。
むしろ、期日当日の口頭での説明が重視されるため、提出した陳述書に基づき、調停委員に具体的に説明できるよう準備する必要があります。陳述書を出しておけば、調停委員からの質問もある程度予想できるため、自分の言葉で分かりやすく説明できるよう練習しておきましょう。
陳述書に非常に細かい事情が書いてあるのに、調停期日では全く説明できないようでは、自分の本当の考えなのかが疑われてしまうおそれがあります。
相手の言い分が事実と異なるとき、反論したい気持ちは理解できます。
しかし、離婚調停は対話を重視した手続きであり、必ずしもどちらが正しいかを決めるものではありません。そのため、陳述書でも、反論ばかりの構成にならないよう注意が必要です。むしろ、相手への反論は端的に、客観的な証拠に基づいて行う方が効果が高いです。陳述書では、自身の体験した事実や希望について具体的に整理し、バランスの取れた内容にしてください。
離婚調停を有効活用するには、内容だけでなく、提出方法についても理解しておく必要があります。以下では、より効果的に利用するための注意点について解説します。
陳述書に説得力を持たせるには、客観的な証拠を添付するのがよいでしょう。
離婚調停の陳述書は、感情的な内容になりやすく、証拠による裏付けがないと、調停委員からは単なる当事者の気持ちに過ぎないとして軽視されるおそれがあります。陳述書と整合する証拠が多数存在していれば、その内容の信憑性を増すことができます。
離婚調停の陳述書について、法律上決められた提出時期はありません。
申立人(調停を申し立てる側)は、調停申立て時に、申立書や証拠資料とともに提出することが多いです。ただし、最初から全ての事情を詳細に記載するのではなく、第1回期日で、調停委員の考えや相手方配偶者の出方を見た上で、追加で提出することも可能です。
相手方(調停を申し立てられた側)の場合、申立書や第1回調停期日で申立人の主張を確認した上で、反論や自身の希望をまとめた陳述書を提出することが多いです。
ただし、調停委員に内容を確認してもらうために、できる限り期日よりも前に提出しておくのがよいでしょう。
提出した陳述書は、相手の目に触れる可能性があることに注意してください。
相手が家庭裁判所に閲覧・謄写の申請をした場合、内容を見られる可能性があります。そのため、知られると危険が生じる場合、住所や勤務先、避難先などの情報は伏せましょう。また、どうしても相手に開示されたくない情報がある場合は、「非開示の希望に関する申出書」を提出することで、非開示を希望する旨を家庭裁判所に伝えます。
特に、DVやモラハラがある事案では、陳述書の内容が伝わることで、暴力や嫌がらせが悪化したり、報復されたりする危険があるため、提出前に弁護士へ相談することが重要です。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説


離婚調停で陳述書を作成する前に、弁護士に相談しておくことが有益です。
陳述書は、単に自分の気持ちを書き殴ればよいというものではなく、調停委員に事実関係を正確に理解してもらい、調停を円滑に進めるという目的を果たせる内容としなければなりません。そのためには、離婚問題の経験が豊富な弁護士に、陳述書の作成や添削のアドバイスを受けるべきです。調停そのものについて依頼している場合、陳述書についてもサポートしてもらうことができます。
陳述書を弁護士にチェックしてもらえば、法的な観点からアドバイスを受け、不利になりやすい文言を削除したり、調停委員の共感を得やすい記載に変更したりすることができます。一方で、陳述書は、当事者が記載するものなので、丸投げするのではなく、添削を受けるのが適切です。
当事務所では、数多くの離婚調停をサポートしてきた経験をもとに、個別の事情に合った陳述書を作成するサポートができます。当事務所には、家庭裁判所長を歴任した弁護士が在籍しており、調停実務を踏まえた効果的な陳述書について助言します。
「離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説

今回は、離婚調停の陳述書について、書き方や注意点を解説しました。
離婚調停の陳述書は、証拠として非常に重要であり、当事者の証言を補完する役割があります。また、意見や主張を整理し、調停委員にわかりやすく伝えるための重要な手段となります。
陳述書を有効に活用するには、作成にあたっては客観的な証拠との整合性を保ちながら、当事者の直接の体験を具体的に記載することが重要です。感情的な表現や曖昧な内容は避け、具体的な事実を冷静に記載すれば、調停委員に伝わりやすくなります。
ただし、調停を有利に進める助けとなる一方で、不適切な内容で提出すれば、調停委員の心証を悪化させるなど、不利な結果になりかねません。適切な陳述書の作成は、離婚調停を成功に導く重要なポイントとなるため、お悩みの際はぜひ弁護士に相談してください。