
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
離婚調停が成立した後であっても、安心するのはまだ早いでしょう。
調停成立後にも、離婚届の提出をはじめ、戸籍や氏、年金分割、財産の名義変更など、様々な手続きが残っています。その中には、期限のあるものもあります。適切に進めなければ、思わぬ不利益やトラブルを招くおそれがあります。当事務所にも、次のような相談が寄せられます。
離婚調停が成立すると、調停調書に記載された時点で離婚の効力が生じますが、当事者(原則として申立人)は10日以内に市区町村役場へ離婚届を提出する義務があります。また、調停で合意した内容は確定判決と同一の効力があり、相手が支払わない場合は強制執行が可能です。
今回は、離婚調停成立後の流れを解説するとともに、離婚届の提出をはじめ、その後に行うべき手続きについて、弁護士が解説します。
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はじめに、離婚調停が成立した後の流れについて解説します。
離婚調停が成立すると、調停調書への記載をもって離婚が成立しますが、裁判所の手続きが終われば全て完了というわけではありません。実際には、調停成立後に、離婚届の提出や調停で取り決めた内容の履行、名義変更などの各種手続きを当事者自身で行わなければなりません。
調停が成立して離婚できた場合、その後の生活を円滑に始めるためにも、まずは離婚調停成立後の基本的な流れを理解しておいてください。
離婚調停では、調停成立によって離婚となります(「調停離婚」と呼びます)。
離婚調停では、夫婦双方が離婚やその条件について話し合い、合意に至った場合には裁判所がその内容を確認し、調停成立となります。調停が成立した日が離婚日となり、離婚届を提出するのは、成立した離婚を戸籍に反映させるための「報告的届出」の意味合いとされます(一方、協議離婚の場合は、離婚届の受理によって離婚が成立する点が異なります)。
「離婚調停の流れと進め方」の解説

調停が成立すると、家庭裁判所は合意内容をまとめた「調停調書」を作成します。
調停調書には、離婚の成立のほか、親権者の指定、養育費の支払い、財産分与、慰謝料、親子交流(面会交流)など、調停で合意した離婚条件についても記載されます。
調停調書は、確定判決と同一の効力を有する重要な書類です。そのため、金銭の支払いや物の引渡しなどの給付条項が定められた場合、調停調書は執行力ある債務名義となるため、改めて裁判を起こすことなく、これに基づいて直ちに強制執行を申し立てることができます。
調停調書には強い効力があるため、内容にミスや誤記があると後々トラブルとなります。希望通りの解決が実現できる文言か、成立前に弁護士にチェックしてもらうのが確実です。成立後は速やかに確認し、ミスや誤記は更正を求めてください。
なお、離婚届の提出をはじめとした手続きにおいて、調停調書の謄本や正本の提出を求められるため、必ず入手し、失くさず保管しておいてください。
「調停成立後の再申し立て」の解説

調停成立後は、離婚届を市区町村役場へ提出する必要があります。
通常は申立人が提出しますが、相手方でも提出できます。調停成立日から10日以内に提出しなければならず、離婚届に加え、調停調書の謄本などを添付します。相手の署名や押印は不要です。詳しくは「離婚調停成立後の離婚届の提出方法」で後述します。
離婚届を提出した後は、調停で取り決めた内容を実際に履行します。
例えば、財産分与として取り決めた不動産を売却して代金を分配したり、預貯金の名義変更を行ったり、慰謝料を支払ったりといった義務を履行します。養育費を定めた場合、支払期限から定期的に支払うようにします。親子交流(面会交流)についても合意内容に従って実施します。
「財産分与や養育費はいつ支払われるのか」と不安を抱く方もいますが、調停で取り決めた約束通り履行することとなるため、心配なら、調停の中で期限を取り決めておくべきです。調停調書に記載された内容には法的拘束力があり、その期限を過ぎた場合には、履行勧告や強制執行といった法的手段によって権利を実現することができます。
離婚成立後は、戸籍や氏名のほか、生活に関わる様々な手続きが必要となります。
例えば、姓や戸籍に関する手続き、運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証、銀行口座、クレジットカードなどの名義変更、住民票の移動、子供の戸籍に関する手続きなどがあります。期限があるものもあるため、あらかじめ一覧にし、漏れなく進めましょう。詳しくは「離婚調停の成立後に行うべき手続き」で後述します。
次に、離婚調停成立後の離婚届の提出方法について詳しく解説します。
調停が成立すると、法律上はその時点で離婚が成立しますが、戸籍に離婚の事実を反映させるために、「報告的届出」として離婚届の提出が必要となります。
調停離婚では、原則として調停の申立人が離婚届を提出します。
ただし、申立人が期限内に届け出ない場合、相手方からも届出が可能です。本人が直接行けない事情がある場合、郵送で提出したり、家族や弁護士などが代わりに提出したりすることも可能です。離婚の意思が家庭裁判所で確認されているため、他方の署名や証人は不要です。
離婚調停が成立した場合、調停成立日から10日以内に離婚届を提出しなければなりません(戸籍法77条1項、63条1項)。なお、前述の通り、調停離婚の場合には、離婚届の提出はあくまで戸籍上の届出であり、離婚そのものは調停成立日に成立します。
調停成立日に既に法律上の効力が生じているため、期限を過ぎたからといって離婚が無効になるわけではありません。ただし、正当な理由なく提出期限を過ぎた場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります(戸籍法137条、140条)。
離婚届の提出先は、夫婦の本籍地、または所在地(住所地など)の市区町村役場です。必ずしも本籍地で提出する必要はなく、現在住んでいる市区町村でも提出できます。休日や夜間でも受け付けている窓口があるため、平日の日中に行くのが難しい場合でも提出できます。
調停離婚の届出の際の必要書類は次の通りです。
協議離婚とは異なり、調停離婚では家庭裁判所が離婚の成立を証明しているため、その内容を確認するために調停調書の謄本を添付する必要があります。
離婚調停の成立後は、離婚届の提出だけでなく、氏名や戸籍、財産、社会保険などの様々な手続きが必要となります。期限のあるものもあるため、漏れのないよう計画的に進めてください。
離婚届が受理されると戸籍に離婚の記載がされます。
婚姻によって氏を改めた者は、離婚によって婚姻前の氏(旧姓)に戻り、婚姻前の戸籍に復帰するか、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作ることになります(民法767条1項)。 離婚後も婚姻中の氏を引き続き使用したい場合(婚氏続称)、離婚日から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する必要があります(民法767条2項、戸籍法77条の2)。この届出を行うと、自分を筆頭者とする新しい戸籍が編製されます。転居する場合は住民票の移動も必要です。
期限を過ぎると婚氏続称が認められず、裁判所の手続きを要するため、早めの手続きを心がけてください。なお、婚氏続称後、婚姻前の氏に戻りたいときは、家庭裁判所に氏の変更許可を申し立て、「やむを得ない事由」を示して許可を得る必要があります。
「別居するとき住民票を移すべき?」の解説

氏名や住所が変わった場合、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど、公的身分証明書の記載を変更する必要があります。本人確認書類として利用する機会が多いため、優先的に手続きを済ませておきましょう。
離婚によって、健康保険や年金の資格に変更が生じる可能性があります。
婚姻中に配偶者の扶養に入っていた方は、健康保険の資格変更、国民健康保険への加入といった手続きが必要となります。国民健康保険への切替えは、離婚後14日以内に、住民票のある市区町村役場の国民健康保険窓口で手続きを行います。
また、年金についても、第3号被保険者であった人は、離婚により元配偶者の扶養から外れ、国民年金の第1号被保険者として加入手続きが必要となります。
氏名・住所などが変わる場合、銀行口座やクレジットカード、生命保険・損害保険・学資保険などの各種保険、公共料金などの契約名義の変更も忘れずに行ってください。
子供の戸籍については、親権の帰属にかかわらず、離婚時の戸籍筆頭者の戸籍に残ります。筆頭者でない親が子供を自分の戸籍に入れたい場合、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の審判を申し立て、許可を得た上で市区町村役場に入籍届を提出する必要があります。
調停で年金分割を行うことになった場合は、年金事務所で請求手続きを行います。請求は5年以内に行う必要があるため、調停成立後は早めに手続きを進めましょう。
養育費や慰謝料について支払義務が定められた場合は、調停で取り決めた内容に従って支払いを開始します。相手方が約束どおり履行しない場合、「離婚調停成立後によくあるトラブルと注意点」で後述する通り、調停調書に基づく法的手段を進めることが可能です。
調停で取り決めた内容に従って、財産分与も実行していきます。
財産分与では、金銭の支払いに限らず、財産の種類や分与方法によって必要な手続きが異なります。例えば、不動産の売却を不動産会社に依頼したり、名義変更を司法書士に依頼したりといったケースがあります。預貯金口座の名義変更や解約は、金融機関での手続きが必要です。後のトラブルを防ぐためにも、できるだけ速やかに実行することが重要です。
なお、離婚時に検討しておくべき条件については、「離婚に伴うお金の問題」「子供のいる夫婦の離婚」の解説を参考にしてください。

最後に、離婚調停成立後によくあるトラブルと注意点について解説します。
調停成立後であっても、相手が約束を守らないことがあります。実際に、離婚届が提出されない、養育費が支払われない、財産分与が実行されないといった相談をよく受けます。調停で取り決めた内容には法的効力があるため、相手が約束を守らない場合、履行勧告・履行命令・強制執行といった手段を活用して、速やかに対応するのが適切です。
前述の通り、調停離婚では申立人が離婚届を提出するのが原則ですが、期限内に申立人が提出しない場合は相手方が提出することも可能です。また、調停成立時点で離婚の効力が生じるため、届出がされなくても、離婚が無効になるわけではありません。他の手続きに影響しないよう、相手が提出しない場合は速やかに離婚届を提出しましょう。
調停で養育費を取り決めても、支払いが滞るケースは少なくありません。
このとき、家庭裁判所に対し、相手に義務を果たすよう説得・勧告をするよう申し出ることができます。具体的には、履行勧告・履行命令の方法により、任意の支払いを促してもらいます。履行命令を無視すると10万円以下の過料の制裁があります。ただ、高額の支払いだと、制裁が機能せず、無視されてしまうことがあるため、その場合は強制執行に進みます。
強制執行の手続きでは、調停調書を債務名義として、義務者の給与や預貯金といった財産を差し押さえることが可能です。養育費については、将来分も継続的に差し押さえることが可能であり、給与について差押え可能な範囲が通常の4分の1から2分の1に拡大されます。
養育費は子供の生活を支える重要な金銭です。滞納が続く場合は放置せず、早めに弁護士へ相談し、適切な法的措置を検討するのがおすすめです。
なお、2026年4月施行の民法改正により、離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合も、法定養育費として月2万円を請求できるようになりました。また、養育費に先取特権が付与され、債務名義がなくても月8万円を上限として差押えが可能となりました。
「養育費が支払われないときの対応」の解説

調停で合意した財産分与が実行されないというケースもあります。
財産分与では、不動産の売却、預貯金の名義変更、生命保険の受取人の変更、自動車の引き渡しといったように、相手の協力が必要なことが多いです。非協力的な場合、養育費の場合と同じく、履行勧告・履行命令・強制執行といった手続きを進めることができます。
不動産をはじめ、財産分与が行われないケースでは、対象財産が高額であることが少なくありません。長期間放置すると、第三者に無断で売却されたり、元配偶者に相続が発生したりして権利関係が複雑になるおそれがあるため、速やかに法的手段を検討してください。

離婚調停が成立すれば、裁判所での手続きは終了します。しかし、その後も離婚届の提出をはじめ、財産分与の実行、養育費の支払い、各種の名義変更など、多くの手続きがあります。
養育費の支払いが始まらない、財産分与に応じてもらえないなど、調停で解決したと思ったら新たなトラブルが生じることも少なくありません。
そのため、調停が終わった後もしばらくは、弁護士に相談できる関係を維持しておくことをおすすめします。手続きの進め方や必要書類、相手方が調停内容を履行しない場合の対応など、法的な判断が必要となる場面は少なくないからです。
当事務所では、離婚調停による解決実績を数多く有しており、調停成立後の各種手続きやアフターフォローについても豊富な経験があります。離婚成立後の生活を安心してスタートできるよう、必要な手続きから万が一のトラブル対応まで、一貫してサポートすることができます。
「離婚に強い弁護士とは」の解説

今回は、離婚調停が成立した後に行うべき手続きについて解説しました。
調停成立日に離婚は成立しますが、戸籍に反映するには離婚届の提出が必要です。したがって、離婚調停成立後は、10日以内の離婚届の提出を最優先で対応する必要があります。
離婚後の生活を立て直すために、各種手続きは速やかに進めなければならず、調停が成立したからといって全て終了するわけではありません。さらに、調停が成立したからといって財産分与や養育費などが自動的に支払われるわけではなく、相手が調停条項を守らない場合、家庭裁判所の履行勧告や、地方裁判所における強制執行の手続きを検討しなければなりません。
したがって、離婚調停の成立後であっても法律や裁判手続きの知識を必要とする場面があるため、継続して弁護士に相談しながら進めるのが適切です。
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