復縁をしたいと考えているときに、相手から離婚調停を申し立てられてしまっても、まだあきらめてはいけません。
離婚調停は、あくまでも話し合いを中心とした手続きで、裁判所で行われるものではありますが、強制的に離婚させられてしまう制度ではありません。そのため、離婚調停での対応を適切に行っていけば、まだ復縁に成功できるケースもあります。
当事務所における相談事例でも、離婚調停を申し立てられてしまったあとで、復縁に成功した例があります。
今回は、離婚調停で復縁するためのポイントと、調停への対応について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。
- 相手から離婚調停を申し立てられてしまっても、あきらめなければ復縁可能な事例あり
- 復縁するためには、離婚調停であってもかならず出席し、相手の言い分を聞く
- 離婚調停で復縁を目指すには、調停委員を味方につけるのがポイント
なお、復縁したい人に知っておいてほしい法律知識については、次のまとめ解説をご覧ください。
まとめ 復縁したい人が離婚請求に対応するとき理解しておきたい全知識
離婚調停でも復縁が可能なケースとは
まず、離婚調停で実際に復縁できた例をもとに、「どのようなケースで復縁が可能なのか」について解説します。
離婚調停まで申し立てられたとき、相手の離婚への思いは相当強いと予想されます。しかし、それでもなお復縁が可能なケースがあります。むしろ、離婚調停で復縁できたケースには、夫婦2人で直接話し合ってもうまくいかなかったが、離婚調停したことで逆に復縁につながったといえる事例もあります。
離婚調停で本音がわかった事例
離婚調停では、夫婦生活のなかで、直接つたえるのがなかなか難しい本音や不満をひき出すことができます。これにより、復縁を求める側でも改善点が明らかになり、将来に向けた建設的な提案をできるようになります。
復縁を求めていくためには、過去の反省をし、改善するのが大切ですが、そのためには、相手が夫婦のどのような点に不満を抱いているのかを知る必要があります。
これまで必死に復縁意思をつたえ話し合っても、「なぜ離婚したいのかわからない」、「自分ではうまくいっているつもりだった」というとき、離婚調停の場で、相手がさらけ出した本音をよく聞き、誠意をもって応えてることが、解決につながります。
離婚調停で現実を直視した事例
離婚調停では、離婚するときのさまざまな条件について話し合いを行います。
離婚条件には、おおまかにわけて次のような問題点があります。
これまでの離婚の話し合いで、このように離婚条件ごとにきちんと整理して話し合いをしていなかったとしたら、離婚調停が、はじめての法的な観点から考える機会となるかもしれません。
漠然と離婚を考えて調停まで進めてきた方にとっては、調停委員から法律についての考え方を聞くことで、現実を直視し、離婚に疑問、不安をおぼえることがあります。今まで感情にまかせて離婚を求めていた相手が、「思ったほど楽ではない」、「もらえるお金が少なく、離婚後の生活が不安だ」と冷静になってくれれば、離婚調停で復縁するチャンスが広がります。
復縁するための離婚調停のポイント
次に、どうしても復縁したい方に向けて、復縁するための離婚調停のポイントについて弁護士が解説します。
なお、復縁を目指す方が、離婚調停をうまく進めるためには、離婚調停の流れを知る必要があります。詳しく知りたい方は、次の解説も参考にしてください。
離婚調停には必ず出席する
離婚調停は、夫婦の本音をぶつけ合う大切な機会です。「離婚に向かう手続き」なので、離婚を拒否して復縁したい人にとって行きたくないのはやまやまですが、離婚調停を欠席するのはおすすめではありません。
離婚を求める側は、調停の申立までしたわけですから、調停を欠席されたというだけであきらめるわけはありません。あなたが調停を欠席しても、離婚訴訟になってしまうタイミングが早まるだけです。「話し合いをしたかったのに、不誠実な態度だ」と思われ、不信感が増すデメリットもあります。
むしろ、離婚調停に参加して、誠意を見せることにより、見直してもらうことができるかもしれません。また、離婚調停は、相手の気持ちを知る大切な機会です。離婚調停で復縁の意思をしっかり伝えるとともに、相手の言い分を聞き、これを受け入れて譲歩できないかどうか検討することが、復縁を成功させるために効果的です。
調停手続きは、本人の言い分をとても大切にする制度ですから、弁護士に依頼しているときにも丸任せすることなく、自分も一緒に出席するのが原則です。
この点は、書面審理が中心となり、弁護士のみが出席することの多い訴訟手続きとの大きな違いです。
調停委員を味方につける
離婚調停では、調停委員が話し合いを仲介してくれるのであって、夫婦が直接会話できる機会はありません。調停委員が、夫婦それぞれの考え方を相手に代わりに伝えるという重要な役割を担います。
そのため、離婚調停で復縁を成功させるためには、調停委員を味方につけるのがとても重要です。
調停委員は中立であり、夫婦どちらの味方でもないのが原則ですが、調停委員も1人の人間です。調停委員に悪い印象を与えたり、敵に回したりしてしまうと、相手に対しても、あなたに不利な発言をしてしまうおそれがあります。
調停委員にできるかぎり好意をもってもらえるよう、不利な状況になったとしても、暴言を吐いたり失礼な態度をとったりしてはいけません。場合によっては、法的な主張だけでなく、離婚したくない理由を熱心に伝え、情に訴えかける方法が功を奏します。
陳述書を効果的に活用する
離婚調停では、夫婦が面と向かって直接話し合う機会はなく、調停委員を介して話を伝え合います。そのため、口頭のみでのやりとりだと間違ったイメージを与えてしまうことがあります。また、調停委員があなたの真意をすべて理解してくれているとは限りません。
そのため、復縁に向けた強い思いを、正確に伝えるためには、陳述書を活用する方法が有効です。
陳述書は、あなたの思いや考えを記載したもので、基本的にどのような内容を記載してもかまいませんから、素直な気持ちで書いてください。
陳述書を効果的なものにするため、次のようなことを記載するようにします。
- 復縁に向けた強い思い
- 家族に対する愛情
- 過去に楽しかった思い出、幸せを感じた出来事
- 自分の非についての反省、改善点
自分が変わるしかない
復縁したいのであれば、まずは自分から変わるしかありません。
復縁を求めるあなたの側でも、相手への不満があるのかもしれません。しかし、相手は離婚を求めているわけですから、もはやあなたがどれだけ問題点を指摘しようとも変わることは期待できません。むしろ、あなたが相手の問題点を強く主張し、変えようと強いるほど、反発して離婚の思いが強くなります。モラハラ気質といわれやすくなるデメリットもあります。
相手から問題点を指摘されれば、冷静でいられないかもしれません。しかし、改善点がわかったら速やかに対応すべきです。
自分が変わるときの具体的なポイントは、次のとおりです。適切に実行することで相手に見直してもらう機会をつくり、復縁につなげることができます。
- すぐにできる小さな改善点から着手する
- 口でいうだけでなく、行動に移して相手に示す
- 改善することを誓うための誓約書を作成し、相手に渡す
- どのように改善していくか、具体的な改善方法を陳述書に書いて提出する
弁護士を依頼することはマイナスではない
離婚調停で、「弁護士を依頼すると、復縁という目的にとってマイナスではないか」と不安を抱く方がいます。たしかに、弁護士への依頼が刺激となって、離婚への態度をより強固にし、復縁を遠ざけてしまう例はあります。
しかし、そのような例の多くは、弁護士があまり復縁のケースを経験していないために、不適切な対応をしている可能性があります。適切な対応を行うことで、弁護士をつけるデメリットを最小限にしながら、離婚を求める相手の心情も理解し、できるだけ復縁の可能性を高めるためのサポートをすることができます。
復縁事例の取り扱いが豊富で、当事者間の話し合いをとりもってくれる弁護士であれば、弁護士を依頼することは復縁にとってもマイナスにはなりません。
離婚を勧めてくる調停委員への対応方法
次に、離婚をすすめてくる調停委員の真意と、対応方法について弁護士が解説します。
復縁を求めて離婚調停に参加しても、調停委員から「妻(または夫)の離婚の意思は固いです。あなたも離婚を考えてみては?」、「もし離婚するとしたら、どんな条件がいいですか?」と、離婚を強くすすめられてしまうことがあります。
調停委員の発言には拘束力、強制力はないため、復縁をあきらめる必要はありませんが、これらの発言には適切な対応を心得ておかなければなりません。
調停委員の役割を理解する
調停委員からしきりに離婚をすすめられると、「調停委員は妻(または夫)の肩ばかりもって、自分のいうことを聞いてくれていないのではないか」と疑問をもつことが少なくありません。しかし、調停委員を味方につけるのは重要ですから、調停委員に敵意をもったり、反発したりしては良い印象はありません。
調停委員の役割はあくまでも中立であり、夫婦それぞれの意見を伝えるメッセンジャーの役割でしかありません。調停委員は男女1名ずつですが、それぞれが同性の味方というわけでもありません。
調停委員は、調停を成立させるための努力をします。そのため、離婚を求める相手からの意見を伝えるにあたり、あなたに厳しい指摘をすることも当然であり、理解して受け入れていかなければなりません。
相手を否定しない
調停委員から「相手の気持ちが固い」と聞かされても、復縁をあきらめてはなりませんが、一方で、相手や目の前の調停委員を否定しすぎるのも考えものです。そもそも、調停委員の発言には拘束力、強制力はないので、強く否定しすぎないようにしましょう。
動揺してすぐ回答できないとき、その場で回答ぜず、持ち帰って次の調停期日で回答したいと伝えるのがおすすめです。
むしろ、相手があなたとの夫婦生活には問題があると指摘していることをきちんと受け入れ、改善する態度を示すことが、調停委員の共感を得ることにつながります。
あなたが受け入れ、問題点を明らかにしたいという姿勢を示せば、調停委員も相手を説得してくれ、不満を聞き出してくれます。相手の気持ちを知り、これにあわせて改善を積み重ねていくことが、離婚調停で復縁するための重要なポイントであり、そのためには調停委員にも助けてもらわなければなりません。
円満調停を申し立てる
調停委員が、離婚を求める相手のことばかり尊重して、あなたの復縁についての話を聞いてくれないと感じるとき、円満調停を申し立てる方法が有効です。円満調停は、夫婦の円満な同居に向けた話し合いをする場です。円満調停を申し立てることによって、あなたが復縁について話したいという意思があることを伝えることができます。
家庭裁判所で行われる調停の多くが、離婚を求める側によって申し立てられています。そのため、調停委員も「離婚に向けた話し合いをする場」と考えていることがあります。
円満調停を申し立てると、原則として、離婚調停と同じ期日で、同じ調停委員に審理をしてもらうことができます。
調停を不成立にさせるべきか判断する
どうしても調停委員があなたの考えを理解してくれず、これ以上調停を続けても復縁が難しいと思われるとき、調停を不成立とすべきかどうかを判断しなければなりません。
離婚調停は、双方の話し合いの場であるため、解決が難しいときには、不成立で終了となります。離婚を求める相手は、離婚訴訟を行うか、それとも、復縁するかを選択することとなります。
このとき、訴訟に進めても勝ち目が薄いと考えるときには、訴訟に進まず、一旦距離をおいて待つこともあるため、復縁の絶好のタイミングだといえます。
特に、相手に不貞行為があるなど、相手が有責配偶者のときは、あなたにとって訴訟になれば勝ち目が十分あり、離婚を拒否できます。そのようなときには、復縁のためにも積極的に調停を不成立にしていくべきです。
相手は、自分が有責配偶者だと、訴訟で離婚を勝ちとるために少なくとも8〜10年以上の別居期間を必要となるのが裁判の実務で(参考解説:離婚するために必要な別居期間は何年?)、すぐに訴訟提起するのは躊躇せざるをえないでしょう。
まとめ
どうしても復縁したいと考えているときには、離婚調停を申し立てられてしまったからといってあきらめてはいけません。
離婚調停で行われるのは話し合いであり、強制的に離婚させられてしまう訴訟は違いますから、まだ復縁の可能性は十分に残っていると考えるべきです。
復縁を成功させるためには、自分の気持ちを一方的に押し付けるのでなく、冷静になって、夫婦の将来を考えていかなければいけません。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題に精通していますが、その一方で、離婚を拒否したり、復縁を求めたりしたい方からも多数のご相談をいただいています。
復縁を求める方針でも、相手が離婚を求めてくるときには法律知識が必要となるため、弁護士による専門的サポートが有効です。ぜひお気軽にご相談ください。
復縁のよくある質問
- 離婚調停を申し立てられてしまっても、復縁できますか?
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離婚調停を申し立てられてしまっても、あなたが復縁を求めるのであれば、あきらめてはなりません。むしろ、離婚調停をしっかりと行ったことによって夫婦の問題点があきらかになったり、あなたの改善すべき点の指摘があったりすることで、復縁を求めるにあたってもメリットとなることがあります。詳しくは「離婚調停でも復縁が可能なケースとは」をご覧ください。
- 復縁したいが、調停委員が離婚をすすめてくるとき、どう対応したらよいですか
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離婚調停では、調停委員は中立・公平の立場であるのが原則ではありますが、相手が強硬に離婚を求めるとき、それをそのまま伝えざるをえないことがあります。このとき、感情的に反発して調停委員を敵にしてしまうのではなく、よく言い分を聞き、冷静に対応するのが大切です。もっと詳しく知りたい方は「離婚を勧めてくる調停委員への対応方法」をご覧ください。